第4話 短所を伸ばすなら長所をずば抜けさせろ。
前回のあらすじ!
【悲報】主人公、開始三話で脱糞する。
西暦2324年 未来
特課オフィスにて
(ふぅ...。さっきは特能を出そうとして、間違って茶色い特濃が出ちゃったけど、まだ慌てるような時間じゃない。ここから挽回すればいいだけの話!!)
俺は先程、女子2人の前で、通常なら自分の頸動脈を引きちぎって自害すべきレベルの痴態を晒してしまった。
しかし!俺はこれでもなろう系主人公!
あと少しで最強スキルをゲットし、可愛すぎるヒロインにチヤホヤされ、努力もせずに金と権力を思うままにできる人生が待っているハズなのだ。
だから、俺はこんな所で折れている場合では無い!まずは及川とサキちゃんに自分の身とケツの潔白を説明し、改めて特能の訓練と行こう!
俺は廊下で息を整え、軽やかに二人の待つオフィスの中へと入っていく。そして、竹内涼真顔負けの爽やかな笑顔を携え、元気に及川とサキちゃんに声を掛けた。
「やぁやぁ!先ほどはお見苦しい物を見せてしまいました!けどアレ、実は出てないから!!ちょっと水気のあるおならだったから!分かってると思うけど、一応ね!!」
俺の声に気づいた及川とサキちゃんが、一斉にこちらを振り向く。そして、及川が小悪魔的な笑顔をうかべ、俺の方を指さす。
「お!特能う〇こが帰ってきよったで!!」
「ちょ、おいテメッ...!誰が特能う〇こじゃ!!屁って言ってんだろうがァ!!あ、サキちゃんは信じてくれるよねぇ?」
俺はサキちゃんの方を振り向く。しかし、俺の目に映った彼女の顔は、汚物を見る目...いや、汚物を身に纏った化け物でも見るような目をしていた。
「それ以上近づかないでください。」
及川は俺のことをからかってくるレベルで済んでるが、サキちゃんは普通に引いてるっぽい。傷ついた。
...しかし!俺は、こんなことでめげない!!主人公が必殺技の習得に苦戦することなんて当然のこと!
だから俺が脱糞してしまうことも、きっとありふれた展開だろう!!
「...よし!気を取り直して、今度こそ俺の特能を見せてやりますよ!!はぁぁあぁ!!」
俺はサキちゃんに見直してもらおうと再び全身に力を入れた!!
(今度こそ、かめはめ波までは行かなくとも螺旋丸くらいは出してやる!!)
と、俺が意気込んでチャクラを練っていると、及川が慌てて静止してきた。
「だ・か・ら!!ウチの話を聞き!!またう〇こ漏らされても堪らんわ!」
「もう漏らさねぇよ!!ってかさっきも漏らしてねぇってッ!!」
及川は何やらゴソゴソとポケットを漁りながらこちらに近づいて来た。
そして、及川は何かを手の平に乗せて差し出してきた。それは、銀色の指輪であった。
「そもそも、未来に来ただけで特殊な能力が使えるわけあらへんやん。この指輪つけてみ。」
俺はその銀の指輪を受け取る。
「これを付けたら特能が使えるようになるのか?」
「せや」
「それはどうゆう原理で?」
「そこら辺は未来やから気にすんな」
「...ですよねー。未来ですからね」
俺はおそるおそる指輪を装着する。
(ってかこれ、つけた瞬間に俺の特能が暴走したりしないよな...!?やっぱ俺って主人公だから、誰にも抑えられないほどの力くらい簡単に出ちゃう気がするんですけど!!)
そして遂に、するりと指輪が人差し指に通った__!!
(く、来る!!)
「シーン.....」
それは悲しい程に、何も、起こらなかった。
「...なんも起こんないっすよコレ」
「よし。ほな特人のステータスと一緒に特能確認しよか」
及川はそう言うと、目の前で俺のステータス画面を展開した。
なるほど、特能もステータスと一緒に見ることができるのか...!!
そして遂に、俺のチートステータスが露わに...!!
名前:石塚特人
攻撃力:298
守備力:298
素早さ:298
知力:250
運:1000
特力:10
(ん?なんか低くね?)
「うわっ...ハズレやんこれ...」
「オイ誰だ今ハズレって言った奴ッ!!!」
いやいやいや、おかしい!!
この俺の攻撃力、守備力、素早さが、見事に平均以下!!なんかニーキュッパってのも嫌だし!特力に至っては10って、なんだそれ!!
しかも...
「特人さんってナチュラルに知力低いんですね」
「サキちゃんそこ触れないで」
ってか、俺が唯一特化しているステータス、『運』ってなんなんだよ!?
「及川さん!俺、運が高んすけどこれってどうなんすか!?」
「あ?前沢社長の100万当たるとかやろ。ハナクソポーイ」
(て、適当になってる!!)
え俺のステータスそんなハズレ!?ってかナチュラルに知力低いって結構嫌だな!
「あ、けどまだ特能見てへんかったな。まぁ一応見とくか」
「一応ってなに!?まだ見捨てないで!!」
(いや、だが確かに特能があるじゃないか!!きっと特能がバカみたいに強いはず!)
俺は固唾を飲んで、ステータスの下に表示されていた特能の欄に目をやる。
石塚特人の特能:『気づいたらそこに』
効果:気づいたら相手の背後に立ってる。
(ン何それェ~~....)
「え!?特能ってサキちゃんの『紫電』みたいに、炎出したり水出したりとかそういうのじゃないの!?なに『気づいたらそこに』って!!なんかキモイんだけど!!」
「『気づいたらそこに』って...草」
「いや草じゃねぇよ!!」
...ちょっと待ってくれ嘘だろォ~...!もっとド派手な能力が良かったんだけど!!
(い、いや、現実を悲観するな俺!!単純に考えて相手の背後を取るのは強くないか!?...そうだ!!試しに特能を使ってみよう!!)
俺はこの現状に絶望するのを後回しにして、実際に特能を使用してみることにした。使ってみたら意外と強いかもしれないしな!
「な、なぁ及川。今この銀の指輪をつけているってことは、この特能は使えるってことだよな?」
「ん?あぁ、使えるぞ。」
(よし、それじゃあ早速...!)
「いくぜ俺の特能、『気づいたらそこに』!!」
俺はその特能を頭の中に思い浮かべながら力を込めた!!すると、銀色の指輪が呼応する!!
そして......
「き、消えたやと!?」
「あ、あれ?特人さん!?どこに行ったんですか!?」
及川とサキちゃんが、突如消えた俺を探しだす。
そして、当の俺はというと...
(目と鼻の先に、こんなにも艶やかに揺れるポニーテールが!!)
「ここだよぅ、サァキちゃぁんン...」
俺は狙い通り、サキちゃんの背後に移動していたのだ!!
(あぁ~^いい匂い。何のシャンプー使ってんだろ)
俺の声に反応したサキちゃんが、ビクリと体を動かした。流石に急に声をかけて驚かせてしまったかな?
「あぁサキちゃん、ごめんごm__」
「ぎゃぁぁああ!!『紫電』!!!」
「グィヤァアア!!!」
俺は彼女の放った紫電に痺れ、まるで感電して地に落ちた虫のように、床に這いつくばった。
「あ!ごめんなさい特人さん!!いきなり真後ろに立たれたものだから驚いてしまって...!」
「ええよサキが謝らんでも。サキの後ろに立ってたコイツの眼、完全に犯罪者の眼やったもん。初犯じゃないタイプの」
サキちゃんの心配するような暖かい目とは真逆に、この銀髪女は冷えきった蔑みの視線を向けてきやがった。
(ひどい、俺はただ自分の特能を使っただけなのに...。いい匂いだったけど)
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10分後...
俺は幸せなことに、サキちゃんに介抱され、徐々に体の痺れを回復させていた。
「もう体は大丈夫ですか?さっきは本当ごめんなさい、急に紫電を喰らわせてしまって...」
「いや、大丈夫大丈夫!もうちょっと火力調節はしてほしかったけどね!!」
俺は足を踏ん張って、立ち上がる。一方、及川は俺のことを心配することもなく、未だに蔑んだ目でコチラを睨んでいた。
「こないな男、もう何発か痺れさせるくらいが丁度ええねん。」
(この銀髪女...理解らせる必要があるようだな....。いっちょやってやるか、『気づいたらそこに』!)
俺はこの及川の言い草に腹を立て、この女を理解らせることにした。
さっき使った俺の特能、『気づいたらそこに』を発動させ、俺はまたまた姿を消す。
「ありゃ?特人どこ行った?」
再び視界から消えた俺を探し出す二人。
一方、俺の目と鼻の先には、柔らかそうな銀色の髪が!
「スゥーーッ。...やっぱり及川も女子だなぁ。あーいい匂い。」
「うぎゃぁ!!」
背後にワープした俺に気づいた及川が、ネコ的な悲鳴を上げて猛烈なスピードで壁際まで逃げた。
「なんでコイツもう使いこなしてんねん!一番この特能を持たせちゃダメな人間やんか!!」
「ふっふ~!神はこの俺を選んだんだよ!背後に立つのは俺にしかできぬ特権!あっはっはっは!!」
俺は大きく口を開いて笑う。初めはこのパッとしない特能にあまり嬉しくはなかったが、今となっては神に感謝している!!
「ありがとう!!神様!!」
俺は神に感謝するためオフィスの天井を見上げる。
しかし...
「...はぇ?」
そこには、灰色の天井ではなく、スカートの中から覗く可愛らしいおパンツが見えていた。
(は?俺の頭上に、パンツ?しかもスイカ柄?)
俺はその状況を一瞬で理解することができなかった。
しかし、突然俺の頭上にスカートを履いた女の子が現れたことは、紛れもない事実だったのだ。
そしてその女の子は当然のように、重力に従って俺に向かって落ちてくる。
ガッシャーン!!
俺は唐突に上から落下してきたその女の子を避けることもできず、ただ顔面を踏みつぶされた。
「特人さん!?」
俺の耳に、サキちゃんが心配してくれる声が聞こえた。
しかし、俺が最後に見た景色は、その少女の靴の裏であった。パズーもこんな気持ちだったのだろうか。
「___いったた...何事?って誰だお前!?」
倒れこんだ俺は、自分の背中に乗っているその少女に叫ぶ。すると背中の上に乗ったその少女は、顔を真っ青にしてこう呟いた。
「ここって...本当に未来!?っていうか、...吐きsゥオエッ!!」
そして彼女は、俺の背中の上で、胃の内容物を盛大にぶちまけたのであった。
続くッ!!




