第33話 人に見せられる走馬灯を見たい。
前回のあらすじィ!!
ナノハに対し、二人で脱出できると豪語した特人!
しかし、案の定脱出には失敗してしまう!
ナノハを置いて一人で逃げようとする特人だったが、ナノハはそんな特人を見逃すはずもなく、二人は醜くお互いの足を引っ張り合うことに!!
そんなこんなをしている間に、最後の砦であった檻も破壊されてしまい...!?
果たして特人とナノハは生きて帰れるのか!?
西暦2324年 和田組アジトにて...
バッギィィィィィィンッッ!!!
「あ。」
「え。」
遂に、その時は来た。
俺達の眼の先には、粉々に打ち砕かれた檻の破片が、光を反射してキラキラと飛び散っていた。壁には大きな穴が空いて、その向こう側で鼻息を荒くしているブルーと、目が合った。
遂に俺達は、最後の防衛ラインであったこの檻に、破壊神の侵入を許してしまったのである。
攻撃力カンスト越えのブルーの猛攻に、1分近く耐えてくれたこの檻は本当に凄いと思うが、生憎、俺の体には彼のパンチ一発で風穴が開いてしまう事だろう。
...俺は悟った。自分の人生が、ここで終了する事を。
ブルーは大きな穴をくぐり、ドシン、ドシンと大きな足音を立てて、こちらに近づいてくる。
彼の特能は、『狂犬』。その特能が一度発動してしまえば、彼の攻撃力ステータスはカンストを超えるが、その代償として知力ステータスは驚異のマイナス域に突入する。結果、敵味方の判別ができない状態に陥ってしまうのだ。つまり特能を発動中の彼は、敵も味方も一切なく、ただ目に映った物を破壊するだけの、文字通り狂犬になってしまうのだ。
そんな、歩く大量破壊兵器に一歩、また一歩と迫られる俺の気持ちが、皆さんに計り知れるだろうか? 否、分かるわけがない。
死が歩み寄ってくるこの恐怖を。
俺はナノハを振り解こうとするのを諦め、今度は一転、こちらからナノハに抱き着いてやった。
死を前にして怖くなったから?
...いいや、違う。
では何故俺はナノハに抱き着いたか?
それは...
「せめて死ぬ時くらい、女子にくっついて死にたぁぁぁい!!!」
「!?」
俺からの突然の抱擁、そして魂の叫び。ナノハの顔が引き攣るのに、時間はかからなかった。
ナノハは必死に俺の顔面を押しやってくる。
「や、やめろっ!そんな不純な理由でこのワシにくっつくんじゃない!!」
「うるさい!俺は生涯童貞で死ぬの!!だからせめて死ぬ瞬間くらいは女子と0距離で接していたいの!!こんな中二病野郎相手だけど、この際女子なら何でもイイから!!」
俺は有終の美を飾るべく、意地でもナノハの体から離れなかった。それでもナノハは俺を引き剥がそうと、小さい体でジタバタ抵抗しやがる。
と、人生最後の小競り合いを繰り広げていた俺達の上に、黒い影が覆いかぶさった。いよいよ、俺達の目の前にブルーが到達したのだ。
俺の鼓動と同じように、抱き着いているナノハの心拍も徐々に早くなっている事に、すでに気が付いていた。
俺は怯えながら、目の前のブルーを見上げる。彼の巨体は3メートル近くあり、これだけ間近に見ると、神々しさすら感じてしまう。
そんな破壊神の野太い右腕が、何の前触れもなく不意に振り上げられた。それが俺には、断頭台で持ち上げられたギロチンのようにも見える。
きっとこの拳が振り下ろされたその時が、俺とナノハの終わりなのだろう。
俺はナノハに抱き着き、力いっぱい瞼を閉じる。さっきまで俺を引き剥がそうとしていたナノハも、今になって俺の腕にしがみついて来ていた。
俺は身を硬直させ、いつ衝撃に襲われてもいいように覚悟を決めていた。ナノハの小さくて暖かい体が、天国への入り口かと思える程心地いい。
(これで、人生で抱き着いたことのある女は2人目か。...1人目は及川だった。あの時もたしか、電車に轢かれる寸前で、死を覚悟してたっけな。...まぁ、女とハグしながら死ねれば、御の字か____)
俺はそんな低俗な幸福感に浸りながら、来る死を待った。
「............」
________そろそろか?
「.............」
_________まだ来ない。
「.............」
_________え?何?焦らされてんの?
「___ぅおぉぉいッ!!!いつになったら俺は死___」
と俺が痺れを切らしてブルーに向かって叫んだ、直後。
「ドッシィィィィンッッ!!」
この狭い檻の中で、穏やかではない轟音が反響した。
まるで何か、巨大なものが落下したかのようなその音の正体は、有難いことにブルーの拳が振り下ろされた音ではなかった。
では、音の正体は?
思わず目を開けたナノハと俺は、信じがたい光景を目にする。
「な、なんで...」
「ブルーが、倒れている...!!」
そう。さっき俺達の目の前で拳を振りかざしていたあのブルーが、今では目の前で床に突っ伏しているのだ。
彼の体を見ても、狂犬モードが自然に解除されたようには思えない。
俺は摩訶不思議なこの奇跡を前に、ただ立ち尽くして浅い呼吸を繰り返すことしかできなかった。
しかしその時。
今度は、また別の方向から、俺とナノハを驚愕させる音が聞こえてきた。
「二人共、生きてるゥ~??」
それは聞き覚えのない、男性の声。
その声はブルーを挟んで反対側から、つまり、檻の外から聞えてきた。ブルーによって壊滅させられた筈の、あの檻の外側から。
俺は急いで眼鏡を掛け直し、奥の方を目を凝らして眺める。
するとそこには、目を引く赤い髪の人物がただ一人立っていた。
俺はその赤髪の人物の顔をよく見ようと、更に目を細める。しかし、そんな俺の視線を、ナノハの驚愕したような声が遮った。
「あ、あやつは、...まさか!!」
どうやら、ナノハはこの人物を知っているらしい。
ナノハの驚きの声を受けた赤髪の人物は、音もなくこちらに歩み寄って来た。
ある程度距離が近くなって分かったが、彼の手には未来チックな二丁拳銃が構えられている。服装は業務中の及川と同じ警察官の制服、顔には、黒が薄めのサングラスが掛けられていた。
正体不明の彼は檻の穴のそばまで歩くと、足を止め、のんびりと檻の壁にもたれかかった。その後彼は一呼吸置くと、サングラス越しに俺の目を見つめ、ねっとりと口を開いた。
「初めまして、特人クン。アタシの名前は、『さんずい』に『えろ』で、《《江口》》よ~。これからヨロシク~!...何を隠そう、アタシもアナタと同じ、特課の人間だからねん」
彼は真っ赤な前髪をサッと払って、自己紹介を終えた。
(あ、アタシ......?)
続くッ!!!
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