第31話 ダウンロードは99%からが本番
前回のあらすじ!
作戦通り、和田組を制圧することに成功した特人とナノハ、ブルーの3人!
あとは檻から特人とナノハが出るだけだが、...何だか、ブルーの様子がおかしいようで...
西暦2324年
和田組アジト内にて...
俺はドシンドシンと檻の方に近づいて来たブルーを見上げ、笑顔で話しかける。
「お~いブルー!お疲れちゃーん!!いやぁ~、ここまで上手く作戦が運ぶとは思ってなかったわ!とりあえずお前も特能を解除して、この檻開けてくれ~い!」
「.......」
...ブルーは無言のまま佇んでいる。なにか様子が変だ。
「ん?ブルー...?」
と、俺がブルーの名前を再度呼んでみた、その時。
ブルーは歯をギラリと見せると、まるで肉食獣かのように大きく口を開けた。
「メガネザルゥゥッッ!!!」
彼は先程までのように、獣のような雄叫びで動物の標準和名を叫び出した。そう、まるでそれは、『狂犬』の様に。
その大声に、俺とナノハは思わず耳を塞ぐ。
「な、なんだァ!?」
「お、おい特人!もしかしてブルーの奴、自力で『狂犬モード』を解除できないのではないか!?」
ナノハが気づいてしまったかの様に、俺の左耳に訴えてきた。
しかし、仮にナノハの仮説が正しかったとしても、ブルーが俺達を襲うのはおかしい。
「でもよナノハ!ブルーは作戦会議の時、『狂犬モードの時、知力は4にまで下がるけど、仲間の判別くらいはできる』って言ってたぞ!だから狂犬モードとはいえ、俺達を襲うのはおかしいだろ!?」
ナノハは俺の言葉に、間髪入れずに反応する。
「ブルーの言っていたことが”真実”ならな!!じゃが、もしあやつの言っていたことが事実と異なっていたら、どうする...!?特人よ、ブルーのステータス画面を開くんじゃ!!」
彼女は俺に、ブルーのステータス画面を展開するように指示してきた。...けれど生憎、俺は他人のステータス画面の開き方なんて教わっていない。
「いやステータスの開き方とか知らねぇんだけど!!俺、今まで及川に勝手に開かれてただけだし!」
「及川はワシの体の前で手を「シュッ」ってやっておったぞ!多分それで開くはずだから、ブルーの方に近寄って手を「シュッ」てするんじゃ!!」
ナノハは随分テキトーに指図してくる。だが実際、このまま何もしなかったら、俺達は檻に閉じ込められたままだ。ブルーのステータス画面さえ見ることができれば、彼の特能について何かが分かる可能性もある。
俺は恐る恐る、ブルーの方に歩み寄ることにした。最高硬度の壁越しとはいえ、相手は攻撃力カンスト超えの正真正銘バケモンである。近づくのは自殺行為と言っても差し支えないだろう。
俺は生まれたてのオカピのようにビクビクと震える膝に鞭を打ち、たった一枚のスケスケな壁を隔てて、ブルーの前まで歩みを進めた。当のブルーは、未だに息を荒げたままこちらを睨みつけている。正直、彼がいつ暴れ出してもおかしくはない。
(ってか、ステータス画面って壁越しでも展開できるもんなのか~?...あー、クソ!考えてたってしょうがねぇ!ブルーを刺激しないようにゆっくりと手を近づけて...)
「シュッ!」
一か八か、俺は決死の覚悟で手を「シュッ」と横にスライドした。
すると、彼の巨体の前に、何か文字が浮かび上がったではないか。
「おぉ!特人、上手くステータスを展開できたのか!やればできるもんじゃのう!それで、ブルーのステータスはどうなっておる!?」
後ろの安全圏に居るナノハは、自己中心的に質問ばかりを投げつけてきやがる。俺が首輪のついていない狂犬の前で、どれだけ怖い思いをしているのかも知らずに。
ともかく、俺は目の前に展開されたブルーのステータス画面を、目を凝らして読み取ることにする。その青いステータス画面には、白い幾何学的な文字でこのように記述されていた。
名前:堀内・ブルーアイズ・純
攻撃力:1030/1000
守備力:390/1000
素早さ:260/1000
知力:-2/1000
運:310/1000
特力:670/1000
特能:『狂犬』
効果:攻撃力超アップ。知力超ダウン。疲れ果てて気絶するまで、目に見える全ての物を破壊する為だけに動くよ。
(スゥーッ......あーオケオケ、成程ね)
俺はゆっくりとステータス画面から目を離すと、ブルーを刺激しないように一歩だけ後ろへと後退した。
そして深く息を吸い、目を閉じる。最後にナノハの方を一瞥し、至って冷静に口を開いた。そう、それはまるで、全ての物事が計画通りに運んでいるかのような、紳士の顔つきで。
「......知力-2って、どういうことじゃァァアッ!!」
気が付いたら、俺は叫んでしまっていた。
しかしまぁ、そりゃ叫ばずにはいられない。
だって作戦会議の時点でブルーは、「自分の知力は狂犬モード発動中でも、4はある」とか言っていたんだぞ。それでも、カメムシの知力より下回っているという事で心配していたが、いざ本人のステータス画面を見てみたら、「知力:-2」って、...ハァ?
こんな前代未聞の負の数値を見てしまったら、そりゃあ叫ばずにはいられないだろう。
...と、俺はブルーに対する疑問と怒りが尽きなかったが、そんな俺の耳に、ふとナノハの緊迫した声が届いた。
「特人!!危ない!!」
その言葉に、俺はハッとする。
彼女の言う危険が、どこに起因しているかすぐに理解できたからだ。
俺は慌ててブルーの方を見上げる。案の定、ブルーは俺の大声に反応したのか、俺の目の前で拳を天井近くまで振り上げていた。
...そう、あの攻撃力カンスト超えの肉体から、俺に向かってパンチが繰り出されようとしているのだ。
「ぁやっべ」
「ミノカサゴォォッッ!!!!」
そして俺が身動きを取るまでもなく、ブルーの拳は無慈悲に振り下ろされた。
パリーーーーンッ!!!
直後、部屋に甲高い破断音が鳴り響いた。その拳は目の前にあった透明な檻の壁に衝突し、その壁に真っ白な亀裂を生みだしていたのだ。
俺は未来のテクノロジーで造られたこの最高硬度の檻に、命を救われていた。こんなにも死を間近に感じた瞬間なんて、高校の時、相撲部の渡辺からタックルを喰らったあの時以来だろう。
そして最高強度とはいえ、この檻にブルーの凶暴な拳を何発も受けきる耐久性があるとは思えない。
俺は一目散にナノハの方に逃げ帰ると、とりあえず彼女の背中に隠れる。ナノハもこの危機的状況に動揺を隠せないまま、背中にへばりついた俺を引き剥がそうとする。
「お、おい!一旦ワシの背中から離れろ!いったいアイツのステータス画面に何が書いてあったというんじゃ!?っていうか、知力-2とか叫んでおったが、どういうことじゃ!?」
背中にひっつく俺を引き剥がそうと、ナノハは迷惑そうな表情を浮かべているが、俺は頑なに彼女の背中から動こうとしなかった。そしてそのまま、怒りと焦りに満ちた表情でこう叫ぶ。
「どうもこうもありませェーんッ!!あの野郎、『オレは狂犬モードでも知力4あるから大丈夫』とか言ってたけど、アレ全部嘘!俺が今見てきたアイツのステータス画面に、『知力-2』って書いてあったんだもん!!」
ナノハは、俺が恐怖心から適当な事を言っていると思ったのか、俺のことを疑ったような眼差しで聞き返してくる。
「はぁ~??知力-2ィ?...そんなわけあるわけないじゃろ!!なんじゃ-って!知力にマイナスなんて存在しないじゃろ!冗談も大概にするんじゃ!」
この中二病は、あまりにも俺の話を信用しようとしない。
とっくに心の余裕なんて失くした俺は、大人げなくナノハに叫び散らかした。
「だ・か・ら!俺嘘ついてねぇから!!そこまで疑うんならテメェ、自分で見て来いや!!けどな、あのパンチを目の前で繰り出されてたら、お前は間違いなく漏らすだろうよ!!」
俺の反論がビシッと決まり、目の前の中二病は一瞬、口を閉じた。
...と、これでようやく静かになったと思ったのだが、
「な、なぁ、特人よ。漏らすで気づいたじゃが、お主のズボンが濡れてるのって、まさかとは思うが...!」
ナノハは顔面蒼白で、俺の下半身を指さしてきやがった。
(え、なんだって?俺が漏らした?...ハッ!成人済み大学生であるこの俺が?んなガキじゃねぇんだから、漏らすわけねぇわ!)
「あのな、ナノハ。俺は今年で21歳なの。たとえ命の危険を感じたからって、それで失禁する程、俺の尿道はだらしなくないかr__」
俺は右手を股間のあたりに持っていき、ゆっくりズボンを触ってみる。
「ぴちょ」
...ズボンは、確実に、濡れていた。
そう、まるで今ガンジス川から上がってきたインド人かってくらい、濡れていた。
続くッ!!
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