第30話 女子の赤面は可愛いのに俺は日本猿
前回のあらすじ!
組長を『高齢者破壊拳』で気絶させ、何とか檻の中へと連れてきた!
西暦2324年 和田組本拠点にて
「それにしても、大分組員も減ってきたな。こりゃもうそろそろ決着か~?」
檻の外ではブルーが相変わらず盛大に暴れまわっており、目に入った物全てに破壊の限りを尽くしている。
ブルーに吹っ飛ばされた組員達は、床のそこかしこに這いつくばっており、もはや戦うことなどできそうにない。組長が俺に攫われた今、まだ生き残っている組員達も、1人、また1人と逃走しだしていた。
俺達の勝利は、もはや時間の問題だ。
ナノハもすでにブルーを攻撃から守る必要がないと判断したのか、小さく溜息を吐いて床から手を放す。そして俺の方を振り返ると、なんだか疲れた顔で、そしてどこかやり切った顔で、俺に話しかけてきた。
「ふぅ。もうワシらの勝利は決まったようなもんじゃな。組長はワシらの手の中だし、組員達は戦意喪失で逃げ惑っておる。...いや~、それにしても、...まさかワシらの特課での初仕事が、こんなにもとんでもないことになるなんてなぁ~」
ナノハは腕を組み、首を傾けながら「やれやれじゃ」と溢した。
(『とんでもないこと』か。)
確かに、俺達の初仕事はとんでもないモノになってしまった。
最初こそ、及川に『指名手配の大男を探せ!』とだけ言われていた仕事だったが、俺とナノハはすぐにその大男と遭遇してしまい、更にはパチンコ屋で右京さん顔負けの推理すら披露する羽目になった。
それだけで終わりならまだ良かったものの、俺とナノハはその大男の正体、...つまりブルーと手を組み、いつの間にかヤクザ潰しにまで巻き込まれてしまった訳だ。
今思い返しても、本当に初仕事の仕事内容じゃないよな...。
とは言いつつ、何だかんだここまで上手くやってきた自分と、そんな自分の横に居てくれたナノハに、何だか少し感動のようなものを覚えてしまっている自分も居る。
俺も年かな。
俺はナノハからちょっとだけ目を背け、らしくもなく恥ずかし気に口を開く。
「ま、まぁその~、なんていうんだ、...確かに、初仕事にしてはハチャメチャだったと思うけど、...ず、ずっと横に居てくれて...あ、ありがとうな///」
鏡で見るまでもなく分かってしまうこの赤面を彼女に見せないために、俺はすぐにそっぽを向いた。
そんな俺の背中にむかって、ナノハのいつも通りの強気な声が届く。
「...ふん!男子大学生のツンデレ発言とか聞きたくないわ!!需要ないからな!」
「お、お前なぁ!俺が珍しくまともに感謝を伝えてるってのに、そんな言い方__」
と、ナノハのツンツンとした物言いに俺が傷ついて、声を荒げかけたその時。
俺が振り返った先には、今まで見たこともないナノハの温かい微笑みがあった。
そんな彼女の表情を見た俺は、不覚にも何だかドキッとしてしまい、さっきまで吐き捨てようと思っていた言葉を詰まらせてしまう。
そして微笑んだナノハは、少しだけ恥かしそうに小さく呟いた。
「じゃが、今回ばかりは素直に感謝として受け取っておく。...そして、ワシからも、.......ありがとうな。お主が居たおかげで、初仕事がこんなにも楽しいものになった」
「ナノハ...」
俺は未だ紅潮冷めやらぬ顔で、ゆっくりとナノハの目を見つめる。俺はナノハを振り回してばっかだったし、ロクでもない言動も沢山繰り返してきた。
それでも、彼女はこんな微笑みで「楽しかった」なんて言ってくれた。
ナノハとなら、...いや____
及川、サキちゃん。そして、ナノハ。
特課のあいつらとなら、この仕事も、本気で笑える。本気で楽しめる。そんな、根拠のない予感を、この瞬間に感じた。
俺がナノハに照れ隠しで笑いかけると、ナノハも満更でもないように笑顔を返してくる。
...と、柄にもなく感傷に耽っていた俺は、いつの間にか檻の外が静かになっていることに気が付いた。檻の外にさっきまでの喧騒はなく、床中にダウンした組員達がゴロゴロと転がっている。
どうやら俺とナノハが話をしている間に、ブルーの壊滅作戦は終わっていたらしい。
そんな檻の外の荒れ果てた部屋に、唯一動く影がある。
ブルーだ。
ブルーは未だ『狂犬モード』を解除しないで、3メートル近い巨体のままドシンドシンとこちらに近づいて来た。
和田組の組員は制圧。アジトには甚大な被害をもたらし、組長は俺達の手の中。つまるところ、俺達の完封勝利である。
最初はブルーがなかなか開始の合図を出さなくてヒヤヒヤしたり、組長が思ったように気絶しなくて焦ったりもしたが、なんだかんだ作戦は成功した。まさか俺の人生でヤクザ組織を潰す瞬間が来るとは思っていなかったが、人生何事も経験だろう。
(帰ったらブルーとナノハと、打ち上げでもするか!)
俺はドシンドシンと檻の方に近づいて来たブルーを見上げ、笑顔で話しかける。
「お~いブルー!お疲れちゃーん!!いやぁ~、ここまで上手く作戦が運ぶとは思ってなかったわ!とりあえずお前も特能を解除して、この檻開けてくれ~い!」
「.......」
....ブルーは無言のまま佇んでいる。
なにか、様子が変だ。
「ん?ブルー...?」
「......」
続くッ!!
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