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笑え!進め!我ら特課なり!!  作者: 今木照
初仕事はヤ〇ザ潰し
27/46

第26話 人生が変わるのは覚悟を決めた時か逃げる時。

前回のあらすじ!


ブルーの特能「狂犬」のデメリットは2つ。

ひとつは、知力のステータスがたったの4になること。ふたつ目は、特能発動中、動物の標準和名しか話せなくなること。

西暦2324年

とある路地裏にて...


「まぁどっちにしろ、お前の言うデメリットが本当かどうかなんて、本番で明らかになる。...けどな、その本番を無事に迎えられるかは、お前の作戦にかかってるわけだ。...今度こそ、作戦の全てを聞かせてもらうぞ、ブルー」

「あぁ、そうだナ。...デハ、今度こそ作戦の詳細を伝えル!!」


 俺がブルーに作戦の続きを促すと、ブルーもそれに応えてくれた。

 この作戦の説明に至るまで、俺達は紆余曲折という名の迷宮を乗り越え、なんだかんだここまで漕ぎ着けた。後は作戦を3人で共有して、実行に移すだけだ。

 今度のブルーはふざける様子もなく、ただ冷静に作戦の全容を話し始めた。


「マズ、和田組のビル、つまり本拠地に侵入する時は、オレが特人とナノハを捕まえたていでボスの所まで連行スル。オレはボスの右腕として信用があるし、捕まえたのが一応警察のオマエラとなれば、ボスも直接出て来るダロウ」

「ふむふむ。そこまではさっきも話を聞いたな。それで、そのボスとやらの元に行ったら、ブルーは特能、『狂犬』を使って暴れるんじゃろ?」


 ナノハはブルーから教えて貰っていた作戦を整理して、彼に確認をした。ブルーはナノハの認識を正しいと認めたのか、首を縦に振って、そこに補足する。


「あぁ、ナノハの言う通り、ボスの部屋に着いた後は、オレが特能を使ってひと暴れスル。俺の狂犬(ちから)があれば、部屋や周囲の手下共に壊滅的な被害をもたらせるダロウ」

「けど、それだけで済む話じゃあない。...だから俺とナノハを呼び止めたんだろ?」


 ブルーは「...あぁ」と小さく呟くと、俺とナノハの顔を交互に見て説明を続けた。


「その通りダ。当然、和田組だって無為無策にこんなオレを手元に置いていナイ。奴らは、万が一オレが特能で暴れた時の為に、麻酔銃を常に携帯してイル。だから俺一人が和田組の中で暴れた所で、すぐに眠らされてゲームオーバーだろウ」


 ブルーはそう言って一呼吸置くと、ナノハの方を見つめた。

 ナノハはブルーに見つめられている理由が分からないのか、「ん、わし?」と溢して、思わず自分に指をさす。

 ブルーはそんな彼女に向かって、何故ナノハが必要なのかを説明し始めた。


「そこで、ナノハの力が必要になるンダ。ナノハの特能、『アイスウォール』は守備力がカンストしている。...当然、麻酔銃の銃弾なんて通さないと言う訳ダ」

「なるほど。...ではワシは、アイスウォールを駆使して麻酔銃からブルーを守って援護すればいいわけじゃな??」


 ブルーは「ビンゴ!」という風に指をパチンと鳴らし、ナノハの方に人差し指を向けた。


(こちらのメインウエポンであるブルーを後方支援するのがナノハの役目か...)


 俺は頭の中で各々の役割をイメージしながら、作戦本番を想定する。

 この作戦は、圧倒的な破壊力を持つブルーがいなければ成り立たない作戦だ。故に、そのブルーを守るナノハの役割は、この作戦の要と言えるだろう。ナノハは作戦中での自分の仕事を理解できたらしく、胸を膨らませて強気に張り切っていた。


 ナノハ(こいつ)はダンゴムシの糞くらいの肝っ玉しか持ち合わせていないチキン野郎だが、『作戦』だとか『任務』となると妙に張り切りだす。多分、あのステージ5の中二病のおかげで、自分の活躍を想像している時だけは自分のことを特別な存在か何かだと思い込めるんだろうな。その単純明快な思考回路が羨ましい。

 ...もちろん俺の思考回路は、バッグに入れていた有線イヤホンくらい複雑に絡まっている。


 と、目を輝かせているナノハの方をジッと眺めていると、左耳からブルーの声が飛びこんできた。


「次は特人、オマエの役割について説明スル」


 彼はそう言うと、今度は俺の方を指さした。

 俺は待ってましたとブルーの真剣な眼差しに息を飲み、彼が考えた俺の役割について考えを巡らせてみた。


(俺の役目か。...例えば、俺の特能、『気づいたらそこに』で和田組の構成員達をボコすとか?...いや、攻撃はブルーの役割だ。それか、俺のカンストしてる運ステータスを活かして、戦況を有利に進めるとか?...いや、今まで自分の運が良いと思ったことなんて一切無いし、それも現実的じゃないだろう。それ以外で俺に残った武器と言えば、この整った男前な顔面と、人より幾分かあるパチンコ知識くらいしか無いんだが...)

 ...と、俺は一瞬だけ自分の役割について不安を覚えてしまった。

 しかし、次の瞬間ブルーが話してくれた俺の役割は、完全に予想の斜め上をいく物であった。


「特人には、ボスの()()をしてもらう。」

「ほ、保護...?」


 俺は理解の追い付かないその単語に、不覚にも間抜けな表情を浮かべていた。


「え?ぼ、ボスの保護って、...つまり、相手の組長を俺が守るって事か!?」


 思わず、ブルーから告げられたその仕事内容を聞き返してしまう。それでもブルーは至って落ち着いて、ただ短く、「そういうことダ」とだけ返した。


 俺は自分の耳から聞えてきた情報が誤っていないことを悟った。しかし、そのせいで俺の脳内は余計に混乱をしてしまう。


「いやいやいや、ちょっと待ってくれ!なんだって俺がわざわざ敵の親玉守んないといけないんだよ!...まさかお前、和田組だがフィットチーネグミだが知らねぇが、自分が世話になった組長だからって変な情を掛けてるんじゃねぇだろうな!?」

「情を掛けている訳じゃあナイ。むしろ逆ダ」


 ブルーは困惑している俺とは正反対に、至極冷静に口を開ける。

 だから俺も何だか調子を崩されて、大人しく彼の話を聞いていることしかできなくなってしまった。


「さっきも説明した通り、オレは特能狂犬を使うと、知力が4にナル」

「カメムシ以下のやつじゃな」


「......あぁ。知力が4になったオレは、何も考えずに組長を巻き込んだまま組織を潰そうと暴れるダロウ。そうすれば、巻き込まれた組長はそこで死んでシマウ」

「それでいいじゃん。相手はブルーの親の仇なんだろ?」


「仇だからこそダ。組長が一瞬の苦しみで簡単に死ぬのは、オレが許さナイ。...組長(アイツ)はこの暴力団潰しの作戦が終わった後、オマエ達が警察に連れてイケ。アイツはしっかり法に裁かれて、死ぬまで罪を償うべきなんダ」


 思わず、ブルーを見直してしまった。

 動機自体は、組長をより長い期間苦しませたいだけなのかもしれないが、彼は自分の感情に身を任せて人殺しをするわけではなく、しっかりと法に乗っ取って罪に相応しい罰を与えようとしている。


 しかし、彼の言い分には納得したとはいえ、正直な所ブルーの猛攻から組長を守りきる力が俺にあるとは思えない。彼が組長を死なせたくない理由は分かったが、何故組長を守る役割が俺なのかは、依然として理解できないままであった。


「なぁブルー。お前が組長を死なせたくない理由は分かったが、俺はどうやって組長を守ればいいんだ?俺には運ステータスのカンストと、背後に回り込むだけの特能しかないけど...」

「その、『背後に回り込むだけの特能』があれば充分ダ」


 ブルーは相変わらず、自信のある様子で俺の問いに答えた。そして彼は指で宙に四角を描きながら、具体的な説明を始める。


「マズ、オマエラがボスの元に連行されるときは、恐らく透明の檻のような物の中に入れられて連れて行かれるダロウ。...過去から来たオマエラは知らないと思うが、その檻は優れた耐久性を持つ素材で作られていて、恐らくナノハのアイスウォールにも引けを取らくらい、頑丈ダ」

「むぅ...。まぁワシのアイスウォールは好きなだけ出せるから、こっちの方が便利じゃろうがな!」

「動かせねぇし溶けない限り消えなくて邪魔になるけどな」


 ナノハの負けず嫌いに茶々を出した俺は、早速彼女に睨まれる。

 ブルーはそんな俺らに構うことなく作戦を伝え続けているが。


「つまり、組長を保護する作戦はこうダ。頑丈な檻に入れられた特人は、オレが狂犬を発動して暴れ出した直後、特能きづいたらそこにを使って、組長ボスの背後にワープすル。そして組長を確保したら、再び檻の中に居るナノハの元に組長ごとワープしロ。そうすれば檻の中の組長とオマエラを間違って殺したりすることは無いダロウ」

「いや、ワシのアイスウォール壊してる時点で檻も心もとないんじゃが...」


 ナノハが、彼の楽観的な作戦を自身の経験測に元づいて危険視する。しかし、ブルーの耳はそんな弱音が聞こえないように設定されているらしく、完全に彼女の危惧をスルーして、今度は笑顔で俺達に語り掛けてきた。


「ヨシっ。という事で、作戦は以上ダ!俺は特能を発動した後は体任せに動くことしかできないから、二人の活躍に期待しているゾ!!ハッ!」


(これが俺達の「作戦」、か)


 まぁ、「完全に不安のない作戦か?」と聞かれたら、胸を張って「不安しかない」と答えるくらいの作戦だが、今からするのはヤクザのホームでの戦いだ。アウェイの俺達は作戦を持って突っ込めるだけありがたい方だろう。


 俺は大きく深呼吸をして肺に酸素を溜め、目をカッと見開いた。

 そして肩をゆっくりと下ろしながら口で息を吐き出すと、ナノハとブルーの方に目くばせをする。二人も覚悟は決まったらしく、オレの目を見るとコクリと頷いた。

 俺は恐怖で震える足に、(報酬は4Dの人妻だぞッ!)と激励の言葉を掛けて、大きな一歩を踏み出した。


 俺たち三人は、薄暗い路地裏から、燦燦と太陽が照り付ける表通りへと歩み出る。太陽はこんな俺達をケラケラ笑っているのか、はたまた鼓舞しているのか、容赦ない程の光で三つの人影を道路に描き出した。

 俺は自身のほっぺたを「ペシーンッ」と叩くと、三人の先頭に立ち、人目も気にせずに声を上げた。


「さぁさぁさぁ...!よっしゃア!行くぞ俺ェ!!」

「フゥー、やっとこの時が来タ。和田組を潰して親父の仇、必ず取ル...!!」

「うわっはっはー!!世に蔓延る反社会的勢力共め!!恐れるが良い!慄くが良い!!我ら正義の使者、特課なり!!」


 パチンカス眼鏡大学生、中二病JC、そして裏切りのドレッド男。

 世にも奇妙な三人組は、各々の思惑を胸に、西暦2324年の東京を闊歩していったのであった...!!




続く!!

最後まで読んでくれてありがとうゥ!評価、感想、ビシバシよろしくゥ!!

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