第23話 女の子と埼京線は思ったように動かない。
前回のあらすじ!
及川に怪しまれながらも、何とか『ブルー』と名乗る指名手配犯と合流することに成功した、特人とナノハ!
三人は路地裏で、暴力団を潰す為の作戦を立てようとするが...
西暦2324年
とあるビルの5階
作戦会議を始めてから、およそ30分後...
「がぁー捕まっちまったー(棒)」
「なんてことじゃー(棒)」
現在、俺とナノハは二人そろって、壁が透明の檻のような四角い籠に閉じ込められている。...前話から急に場面が変わったが、別にあなたは読み飛ばしていない。安心してほしい。
と、そんな囚われの身の俺達が現在居るこの部屋は、暴力団の本拠点となっている5階建てビルの最上階。この部屋は全体的にギラギラとしており、いかにも悪の親玉が好みそうな、虎柄の絨毯や盆栽などが立派に飾ってある。正面にある大理石の大きな机と、その背後に見えるガラス張りの壁は印象的だ。
そんな広々とした部屋の中には、檻に入れられた俺とナノハ、そしてソレを囲むように配置された数十人もの暴力団員達が居た。
(事前にブルーに聞いていたが、確かにそこそこの規模の暴力団だな...)
俺はブルーから聞いていた、この暴力団の情報を思い出す。まぁその肝心のブルーは今、檻の外から悠々と俺達を眺めているのだが。
そして、ブルーの横でニヤニヤと笑みを浮かべながら俺達を眺める悪趣味なサングラス年寄りが1人。そう、このグラサンジジイこそが、ここの組長である。
「こんなちっこいネズミ共をよく捕まえたな~、ブルー」
「イエ、たまたま我らのビルの前でコソコソしていたのを見つけたのデ。でも、まさかコイツ等が政府の犬だとは驚きましタ」
「そうだな~!こんなガキ共が警察だなんて、世も末だな~!!まぁ俺達からしてみれば、そっちの方がありがたいんだがな!がっはっはっは!!」
豪華な部屋に、豪快な笑い声がこだまする。
一旦、状況を整理してみよう。俺とナノハは暴力団に捕まり、協力関係にあったはずのブルーは、ボスと自然な主従関係で会話をしている。
はたから見れば、俺とナノハがブルーに裏切られ、絶体絶命の状況に置かれているように見えるだろう。
...だが、安心してほしい。
これも、作戦なのだ。
_________________________
遡ること30分前...
路地裏にて...
「よし、では早速、作戦の話に戻るゾ」
「あぁ、よろしく頼む」
ブルーの名前に関するひと悶着を終えて、薄暗い路地裏で俺たち三人はようやく作戦会議を開始した。
この、ほの暗さと閉鎖感、そしてそこに反響する水の滴る音がいい感じに合わさり、秘密の会合感を醸し出している。ブルーは再び真剣な顔に戻ると、俺とナノハに暴力団の情報を共有しはじめた。
「今からオレ達が向かう暴力団、...つまり俺の所属している暴力団は、東京で五本指に入る位の規模を誇る組織。名前は『和田組』。暴力団と言ってきたが、早いとこありふれたヤクザだ。」
「ゴクリ...」
俺はブルーの話を聞き、思わず固唾をのんでしまう。今から本当に、反社を敵に回すのか。今までの人生、暴力団どころか、深夜のコンビニにたむろしている高校生でさえなるべく避けてきていた俺が、ヤクザと相対すことができるのだろうか...
そんな俺の緊張を見透かしたように、ナノハは俺を見てニチャリと笑った。
「まさかとは思うがお主...ヤクザという響きにビビったのかァ~?プププ」
「は、はぁ~?別に、ビビってませんけど~?お前こそ、そんな余裕こいてられんのかよ!」
俺はナノハを睨みつけながら指摘する。
正直、俺は少し力を抜いただけであられもなく失禁できるほどビビっているが、それはこのメスガキも同じはずだ。
しかし、ナノハは俺の期待とは裏腹に、平静を保ったような顔を続けている。
「ワシも以前までの、ただのか弱い乙女だったならば、確かにビビってたじゃろう!!」
「お前、自称九尾の生まれ変わりだろ。自分でか弱いって言っちゃってんじゃん」
「生まれ変わりだけど!今は普通の女子中学生じゃろ!!...ゴホン!話を戻すぞ!」
「ハイハイ」
ナノハは自分のまな板を自信ありげにポコっと叩くと、大きく口を開いた。
「未来に来たワシは、守備力特化ステータス!!この体ならば銃弾も効かないだろうし、どんな窮地に陥ろうと、特人は死んでもワシは助かるじゃろうて!!ふっふっふー!!」
なるほど。コイツの落ち着きようは、自分の防御力への絶対的な自信からくるものだったのか。
ってかコイツ今、俺は死んでも自分は生き残るとか言ってやがったな。これから身の危険を感じたら、積極的にコイツを盾にしてやろう。
ここで、俺たちの会話を聞いていたブルーが、ナノハに忠告をするように口を挟んだ。
「えーっと、ナノハ?だよナ。お前は防御力があれば命は助かると思っているかもしれないが、ウチの組はそんな甘くないゾ。ドラム缶に入れられ、そこにコンクリートを流し込まれたらどうスル?鎖でつながれ、餓死するまで放置されタラ?自分の力に自信があるのは良いが、過信しすぎないようにすることダ」
ブルーの言っている事は正論以外の何物でもなく、故に冷徹なまでに俺達の恐怖心を煽った。さっきまで余裕をぶっこいていたナノハも、見る見るうちに笑顔がぎこちなくなっていく。
「ゴクリ.........ちょ、ちょっとお手洗いにでも行ってくるかの~...」
「おい待てや中二病ガール。今更逃げようとしたって遅いぜ~?今から二人で仲良く、命がけの社会見学の時間だからなァ~!」
「反社会的勢力に社会見学しに行く人間が何処におるんじゃ~!!放せっ!ワシは帰りたいぃぃ!!」
今更顔を青くしてジタバタ抵抗するナノハを抑えつけ、俺はブルーに作戦会議の続行を促す。ブルーも一呼吸置いた後、再び作戦の概要を伝え始めた。
「まず、今回一番重要なのが、いかに騒動を起こさないでボスの居所に行くという事ダ」
「正面突破の武力行使じゃダメってことか?」
帰りたがっているナノハを抑えつけながら、俺はブルーに問いかける。
ブルーは指で空中をなぞりながら、説明を続けた。
「そんな目立つ真似したら、ボスの所に付くまでに感づかれて、逃げられてしまう可能性があるだろウ?」
「んまぁ~そうか」
ブルーの説明は続く。
「ソレデ、どうやってオレとお前ら二人がボスの元まで辿り着くかだが、ここはベタに、お前らを捕虜としてボスの部屋まで連行するゾ」
「ベタじゃな」
「みたらし団子くらいベッタベタ」
俺とナノハの冷えた視線を受け、ブルーがめんどくさそうな顔をする。
「ごちゃごちゃいうなよナ。コレが一番確実な方法なんだヨ。オレはボスの右腕としての信用があるし、捕虜という体ならオレたち三人が自然にボスの部屋に行けル」
「しゃーねぇなー。別に俺はレオン並みのアクションで華麗にヤクザ組織を蹂躙しても良かったんだけどなぁー。まぁ乗ってやるかー」
「ア?そんな自信あんなら今からレオンやって来いヨ。勿論アレダロ?最後はしっかりリングトリックで、ボス諸共消し炭になってくれんダロ?」
「......冗談ですや~ん!!」
ブルーが呆れたように「ハイハイ」と流すと、再び説明を続けた。
「そして、オレたち三人がボスの元に着いた後、本格的に攻撃を始めル。ここからがお前らも戦力になってもらう作戦ダ」
「おぉ、遂にか!それでそれで、どうやってボスを追い詰めるんだ!?」
いよいよ、ちゃんとした作戦会議らしい話が始まりそうだ。
俺は、緊張と期待を混ぜてペースト状にしたような面持ちで、ブルーの語る策略に聞き入る準備に入った。
ブルーは一呼吸置くと、眉を下げ、真剣な眼差しで口を開いた。
「作戦はこうダ。...オレが暴れて、全部ぶっ飛ばス」
俺とナノハは、瞬きすることなく、ブルーのキリっとした横顔を見つめた。
「...よし、ナノハ。帰ろうか」
「そうじゃな」
続くッ!!!
最後まで読んでくれてありがとうゥ!評価、感想、ビシバシよろしくゥ!!




