第2話 自己紹介でウケを狙う奴は他人の自己紹介で笑わない。
前回のあらすじ!
パチンコでタコ負けして涙を流していた本作の主人公、『石塚特人』は、真夜中の駅前で謎の関西弁銀髪少女と出会う!
彼女の「未来に来てくれ」の言葉を受け、特人はこの少女が電波系なのだと確信するが、それに怒った少女は特人を線路上へと突き落としてしまう!
電車に轢き殺されることを覚悟した特人だったが、気が付くと体はタイムリープをする空間に転送されていて...!?
未来と現在の狭間にて、現在タイムリープ中...
「ほな、このまま未来いくで~。」
真横から声がした。振り向くと、案の定そこにはさっきの銀髪少女が居る。
少女はその銀色の髪を風に靡かせながら、まるでスカイダイビングをしているかのように俺と一緒に落ちている。
「ちょ、ちょっとまって!これってホントに未来行ってんの!?なんかずっと落ちてんだけど!?」
「ん?あぁ、初めは慣れへんかもだけど、そのうち勝手に着くし、景色でも見とき。」
彼女はまるで人ごとかのように呟く。
(景色って言ったて、周りはどこ見ても意味わかんねェ数字しか書いてねぇじゃねぇか!!)
俺は恐怖のあまり、涙を上に流しながら落下している。
「めちゃ怖いんですけどォ!!ってか、....ゥオ”エ”ッ!!ぎもじわるいィィ!」
俺はこの慣れない感覚に、タマひゅんを超えてサオひゅんしそうな勢いだ。
そして何より.....気持ち悪い!!
この浮遊感が俺の内臓を満遍なく刺激し、今にも胃の中のカップヌードルが出てきそうだ!!
「おいィ!こんなとこで吐いたらあかん!!今落ちとるんやから、吐いたの全部顔にかかんで!」
彼女は、口では気を使っているような事を言っている。しかし、実際は既に俺を見捨てていて、空中で平泳ぎをしながら俺から遠ざかっていやがる。
「お、おい、俺から距離とんじゃねぇ__!あ、これヤバいヤツだ....は、はkブゥオ”エッ!!」
遂に、口という名の函谷関は突破され、俺の胃から出てきたキラキラは上空に飛び散っていく....
そしてその様子を見ていた銀髪娘は目を見開くと、腹を抱えて笑い始めた。
「うわぁ!ホンマに吐きよった!キッショ!!ww」
(母さん。俺は今、顔面ゲロまみれになりながらJKに気持ち悪がられて、タイムリープしています。とても辛いでゥウ”ボェッ!!)
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__どれくらい、経っただろう....
30秒と言われればそうな気もするし、3カ月と言われればそうな気もする。
今俺が座り込んでいるのは、...建物の中?気が付いた時には浮遊感はなくなっていて、ここに座り込んでいた。まるでどこかのオフィスの一角の様だ。辺りを見渡すと、幾つかのデスクと比較的新しいホワイトボードがあった。
そして特に目を引くのは、奥に設置されている大きな白色のソファーだ。
「うおっ!ゲロくさ!」
と、この現状に戸惑っている俺に向かい、人の心を抉るような台詞が聞こえてきた。声の方を振り返ると、例の銀髪少女が鼻をつまんでわざとらしく距離を取っていた。
「ここは、一体...」
俺は彼女に聞いたつもりだったが、彼女は口を開くことなく窓を指さした。
(窓の外を見ろという事か...?)
俺は立ち上がるのも一苦労な中、よちよちと窓に近づく。
そして窓を覗き込んだ。
そこから見下ろした景色は......
「ォ、ォォォォ....!グオオォォォ....!」
俺は驚愕のあまり、とても人の言葉が出せなかった。
車輪のない車、見たことのないような構造の建物....
(お、俺、ホントに未来、キチャッタァ...!)
そこには紛れもない、未来都市が広がっていた....!!
「よーこほ!へいれきにへんはんびゃくにゆうよねんのみあいへ!!」
銀髪女が鼻をつまみながら、俺を歓迎をしてくれた....
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あれから俺は5分程、状況が理解できずに窓際で立ち尽くしていた。そして必死に、我がFラン大学が誇るこの頭脳を動かしていた。
「あ、あぁ...!本当に未来キチャッタんだけど...!ありえないありえないありえない!...あ!これあれだろ!モニタリングだろ!カメラどこだ!?おいTBS!!おいブラマヨ!!ネタバラシにこーいッ!!」
俺は目の焦点が合わないまま慌てふためく。そんな俺を見かねた銀髪が、ドロップキックを繰り出してきた。
「ブバッ!!__いってぇなぁ!!何すんだよ!!」
「なんか慌てふためいとるお前が目障りだったから、つい。」
コイツ...!
(あー本当にもう滅茶苦茶だよ...!俺はこの世界でどう生きていけばいいんだ...!)
そんな不安に苛まれながら、地面のシミを数えていた俺に向かって、少女が質問をした。
「なぁ、そういえばジブン、名前聞いてへんかったな。名前は?」
(今になって名前かよ...!)
俺は彼女の質問に嫌気がさしながら、仕方なく口を開いた。
「...俺の名前は、石塚特人。特別な人って書いて、《《トクト》》っす...」
すると、俺の名前を聞いた銀髪女は、驚きながらも嬉しそうな声を出した。
「おお!ここにピッタリな名前やな!」
ここにピッタリってなんだよ、訳が分かんねぇよ...!
...そう言えば、俺もこの少女の名前を聞いてなかったな。もはや何でもいいけど、聞くだけ聞いといてやるか。
「...じゃあ、アンタの名前は?」
彼女は待ってましたと言わんばかりに、大きく口を開いた。
「一回で覚えろよ~!ウチの名前は、及川__」
と、自分の名前を名乗ろうとした彼女が一呼吸置き、続けるように自分のフルネームを口にする。
「『及川・エクストラデッキ・梅子』や!!」
....俺は耳を疑った。
「は?....エクス...なんて?」
そう。俺の脳が、コイツの言い放った意味不明な固有名詞を、人名だと認識できないのだ。
そして直後に、彼女に対する苛立ちを覚える。
(コイツ....ふざけてやがる....!エクストラデッキ梅子ってなんだよ!!エクストラデッキってアレだろ!?遊戯王とかで融合モンスターとか入れるデッキの名前だろ!?)
俺は若干イラつきながら、彼女に聞き返す。
「あ、あのぉ、ふざけてます?なんすかエクストラデッキ梅子って。人名の間に、普通エクストラって文字もデッキって文字も付かないんすよ。真面目にやってもらえます?」
すると、俺の言葉を受けた及川?が不機嫌そうな表情になった。
「なんやと!?ふざけてへんわ!!父ちゃんと母ちゃんがつけてくれた大切な名前やで!!」
彼女はここまで来ても、「ふざけてない」の一点張りだ。
あーもうめんどくさい。なんか全てがめんどくさい。
俺は自分の中の、混乱と怒りと呆れをギャル曽根バリのスピードで咀嚼し、彼女に真顔で質問をする。
「....もうじゃあエクストラデッキでいいっす。どっかのハーフの方ですか?」
すると、間髪入れずにエクストラデッキ野郎は返事をした。
「おう!大阪人とペイパン星人のハーフや!!」
「....なんとか星人ってそれ、宇宙人とかっすか?」
「せや!」
「あ、そうですか」
__フゥ~
もう俺は反応しない!
リアクションもしない!!
これ以上何も受け付けない!!!
(...落ち着け落ち着け俺、暴れ出すな。ここは未来なんだ!!宇宙人のハーフなんてそこら辺に転がっているだインヤ転がってねぇだろォ!!)
いかん!唐突な展開の連続で、この異様な空気に飲まれてきている!!こんな時はラマーズ法で心を落ち着かせるんだ...!
「ひっひっふ~、ひっひっふ~、ひっひ__」
俺が妊婦顔負けのラマーズ法を開始した、まさにその時!
「あら?EXデッキさん、ここに居たんですか」
「ひっひッブフォッ!!」
俺はその唐突なパワーワードに、勢いよく吹き出してしまう。俺が本物の妊婦だったら、今頃大惨事だったことだろう。
いや、そうじゃなくて!今、後ろの方で及川のことをエクストラデッキ、いや、EXデッキと省略して呼んだ人物がいた....!
まさか、未来人の仲間か!?
俺は慌てて後ろを振り向いた!そして、俺の眼球がその人物を視認する!!
「あ、初めまして!こんにち.....なんかゲロくさいですねここ」
俺が認識したその人物は、鼻をつまみながら笑っていた。
そしてその時、俺の脳に稲妻が走った。
「か、かかかか...」
可愛いぃ__!!
俺が振り返ったその先に居たのは、俺の性癖ドSTRIKE!!!な黒髪ポニテの美少女であったのだ!
そして、内心叫ぶ!!
(ヒロインキターーー!!)
「初めまして!!俺の名前は石塚特人!中学の時はイッシー、またはゲスメガネって呼ばれてました!好きなように呼んでください!!」
「え、えぇ、特人さんですね、初めまして。私の名前は『谷紫咲』って言います。気軽に『サキ』って呼んでくださいあとそれ以上近寄らないでくださいゲロくさいです」
彼女は俺に対して、笑顔で自己紹介してくれる。そして流れるように、俺の握手と接近を拒絶した。
あぁ!なんていい子なんだ!!
未来にはこんな清楚系な子もいるのか!!
あれ?でも名前が随分普通だな。この子はエクストラデッキが付いていないのか。
「なんか、凄いちゃんと日本人の名前ですね!貴女はパイパン星人とのハーフじゃないんですか?」
「ペイパン星人や!!」
及川のツッコミは無視して、俺は食い入る様に彼女の言葉を待った。
「あ、はい。私も過去...、というより、あなたと同じ、現代から来た人間ですから」
彼女の口から飛び出してきたその言葉は、予想だにしていない物であった。
「え...お、俺と同じってことは、それって...」
(...ンマジでーー!!?!?)
続くゥ!
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