第10話 口喧嘩は先に折れた方の勝ち。
前回のあらすじ!
初めて未来の世界を散策することになった特人は、迷いなくパチンコ屋へと足を運んだ。
仕事中であるにも関わらず。
西暦2324年 パチンコ屋前
「だってここ、パチンコ屋じゃないかぁ〜!!」
ナノハはものすごく嫌そうに、俺の腕を引っ張っている。
「おいおいナノハちゃん、分かってないよキミは。パチンコ屋にいるババアはすげぇんだぜ?これは俺調べだが、パチンコババアはノーマルババアに比べて、知恵袋のサイズが3倍ほどでかいんだ。つまり!そのババアに大男の噂を聞き込めば何か掴めるはずだ!」
「なんじゃそのよく分からん説明!!大体知恵袋のサイズ比ってどう調べるんじゃ!その知恵袋にはギャンブルの知恵しか入っておらんぞ!!」
どうしても未来のパチ屋に行きたい俺 VS 真面目に仕事をしてほしいナノハ の戦いが今、未来の路上で勃発している!!
ナノハは必死に俺の腕を掴んでパチ屋から遠ざけようとしている。が、俺は一切力を緩めることなく、ナノハを引きずって徐々にパチ屋に近づいていく。
「うぅ!女子中学生相手に大人げないぞ特人!別に情報ならこんな場所じゃなくても聞けるじゃろ!」
確かに、ナノハの主張は100%正しい。
けど正直なところ、俺はババアも大男もどうでもいいんだ。今俺は、この遥か未来にパチ屋があるというその事実に感動しているのだから!
「ナノハ、よく聞け!エベレストで遭難した英国人登山家のジョージ・マロリーは、なぜ山に登るのかと聞かれ、『そこに山があるから』と答えた!ということは、今の俺が行くべき場所は1つ!!そこにパチ屋があるからだ!!」
「あぁ!本性現しおった!お主、ただ自分がギャンブルしたいだけじゃろ!」
徐々に俺はドアの前に歩み寄り、入店まであと1mという所まできた。
その時、
ふと、俺のことを引っ張るナノハの手が引っ込んだ。
「ん?諦めてくれたのか?」
「もうよい...!そこまで行きたいのなら好きにするがよい!」
ナノハは少し拗ねたように、赤い頬をぷくっとふくらませた。
俺に残っていた、駅前で貰うポケットティッシュ程の良心が傷んだが、それよりも今は目の前のユートピアだ。
「分かってくれたかナノハ!そんじゃあお言葉に甘えて__」
俺は光と大音量が織りなす18歳以上限定の桃源郷に足を運ぼうとした__
__その時!!!
「ただしっ!!わしのアイスウォールを越えられたらなぁ!!」
「な、なにィ!?」
ナノハが唐突に、手の平を地面にくっつけた!
直後、俺とドアの間に、ナノハの特能である『アイスウォール』が聳え立った!!
「ふぁっはっは!わしのアイスウォールは守備力1000!!つまり、何者にも壊すことは不可能って事じゃ!あーこんなこともあろうかと昨日家の庭でアイスウォール出す練習しておいて良かったわ!」
「う、嘘だろ!?...こんの重度中二病メスガキ!!この奥にはテメェにはまだ分からない大人のパラダイスがあんだよ!!それをこんな氷壁で...!」
俺は何とか目の前の障壁を破壊できないかと、ゲシゲシ氷の壁を蹴りつけた。
しかし、この氷の壁は仮にも守備力カンストのナノハが出した物だ。ビクともしないどころか削れる気配すらしない。
そんなみっともなく暴れる俺に対して、ナノハは訝しげな視線を送ってきた。
「っていうか、お主はこの未来で使える貨幣のようなものを持っているのか?そもそもお金がなかったら、ギャンブルなんてできないであろう?」
「ギ、ギクゥ!!」
これだから、自分より知力が高いガキは嫌いだよ...!
「...一応、未来で使えるお金は持ってる。紙とかじゃなくて電子マネーだけど...」
俺はポケットから四角いタブレットを取り出す。この中に電子マネーが入っているのだ。
このタブレットは、未来において財布的な役割を持っているらしい。
「そうか。して、何故お主が未来のお金を持っておるのじゃ?」
「.........」
「何を黙っているんじゃ?」
「..........れた。」
俺は氷の壁の前で俯き、小声で呟く。そんな俺に向かって、ナノハは容赦なくグイグイと詰めてきやがる。女子中学生に言葉攻めされるプレイだと思えば何とかこの状況を快楽に変換できるのかもしれないが、生憎俺にそんな趣味はない。本当に。
しかもこの辺りを行きかう未来人たちが、物珍しそうにこちらを眺めているのがメンタル的にキツいのだ。
「もっとはっきり喋らんか!どこでそのお金を手に入れたと聞いておる!」
「...ぇっと、そのぅ、及川が、俺とナノハの昼飯代として、渡してくれたぁ、みたいな...?」
俺はなるべく要点が聞こえにくいよう、ごにょごにょ喋ったつもりだったが、横のナノハさんにはしっかりと全文が聞こえてしまったようだ。
「こんのバカチンがァッーーー!!」
「ふぐぅ!」
俺の左頬めがけて、九尾の生まれ変わりパンチが炸裂した。
この憤怒の拳には流石の俺も.....
「痛った!!...くねぇ全然。ほっぺたにハエが止まったのかと思ったわ」
「クソぅ!わしの攻撃力が0.2なの忘れてた!!」
ナノハが悔しそうに自分のアイスウォールを叩いた。しかし、今度はキリっとこちらに目を向けて口を開ける。
「とにかく特人!お主は自分たちの飯代を使ってギャンブルしようとしてたのか!?わしのお昼ご飯がチョコ一枚になったらどうすんじゃ!!」
「う、うるせぇ!チョコで持ちこたえたらまだ良い方だと思え!」
「なに開き直っとんじゃ!このゲロメガネ大学生!」
「あ!それ言うんだ!お前だってゲロってたくせに、自称ゲロ九尾!」
「自称じゃないし!本当に前世九尾じゃったし!ってかそもそも特人の運のステータスカンストってよく分からんし!」
「はい運めっちゃ良いってことでぇす!お前、もし俺が前沢社長の百万円当てても絶対に分けてやんねぇからな!?」
「いらんし!ってかもうその企画とっくに終わってるし!」
「は...!?う、うるせぇバカ中学生!」
「いやわしの方が知力のステータス高かったじゃろ!」
「くっ、確かに...」
クソ!なんで俺はパチ屋の前で女子中学生と口喧嘩してんだ!....しかもちょっと劣勢だし!
俺の人生、一体どこから間違えてしまったんだ!!...あぁ、小2の時あみちゃんの鍵盤ハーモニカ舐めたとこからかな。じゃあ割と序盤じゃねぇか!!
「ハァハァ、やるなナノハ。茂原の口先王と言われたこの俺をここまで押すとは...」
「いや大した事言ってないけど」
俺はこの中二病に完敗した。
物理的にもパチ屋への道は完全に塞がれたし、精神的にも、普通の人間なら半年はメンタルヘルスしないと回復しないくらいには削られていた。
ここは大人らしく、いや、紳士らしく負けを認めよう。
「あーあ!俺の負けだ、ナノハ。じゃあ敗北の証として何か1つ俺に命令していいぞ。靴舐めろとか、アキレス腱舐めろとか、太もも舐めろとか」
「キモイからやめろ。次言ってきたらサキ呼ぶから」
「ぁごめんなさい」
こうして俺は負けを認め、ナノハの言う通り大男を探すための捜査に向かうことにした。いよいよ、初仕事への本当の第一歩を踏み出す時が来たのだ。
と、思ったのだが。ふと俺の視界にアイスウォールが映りこみ、この壁の存在を思い出す。
「...って、ちょっとナノハ。このパチ屋の前の氷、何とかできないの?これ思いっきり営業妨害になってるけど。」
「んー無理!まぁその内太陽で溶けるじゃろ!今はどうやって大男を見つけるかが先決じゃ!」
(コイツ意外と適当だなぁ。まぁでも、確かに守備力カンストのアイスウォールは誰にも、絶対壊せないしな。その大男とやらも、どこにいるんだか、皆目見当もつかねぇし__)
そんな会話をしながら、パチ屋の前から俺達が離れようとした、
まさにその時であった。
「スルメイカッ!!」
俺の真横にある氷の壁の奥、そこで誰かが叫んだ。つまり、パチ屋の中で、誰かがそう叫んだのだ。
「す、するめいか...?」
俺はその摩訶不思議な雄叫びに反応して、パチ屋の方を振り向く。
すると目の前には、ありえない光景が広がっていた。
アイスウォールに、ヒビが走っているのだ。
...そして次の瞬間、更に信じられない光景を見ることになる。
なんとあの守備力カンストのアイスウォールが、壊されたのだ。
続く!!
最後まで読んでくれてありがとうゥ!評価、感想、ビシバシよろしくゥ!!




