創世の書 第一章・世界の誕生
起源龍神・熵の意志から生まれた二柱の神龍が、創造と破壊の世界を築く。
宇宙の初め、星はなく、光もない。
計り難い時の間、宇宙は空無の虚空にてエネルギーを集め続けた。
やがて第一次大爆発が起こり、ついに光が生まれた。
その爆裂の奔流のうちに、「起源龍神・熵」の意志から化生した二柱の神龍が誕生した。
以後、宇宙万象の歯車はこの二柱によって駆動されることとなる。
創世神龍・燭
燭は宇宙の虚空より生まれた神龍。
熵に付与された秩序の意志にして、万物の絶対法則と均衡を体現する。
祂は自らを基として、世界の一切を創り上げた。
天・地・海・群星……無数の名と形が祂の意志の下に具現した。
燭は喜怒を持たず、善悪にも染まらない。
ただ静かに、自らが創った万物が如何に生き、如何に変わるかを見守り、干渉しない。
やがて破滅神龍・劾との長き争いの後、燭は虚空へと還り、ほとんど目覚めることなき長き眠りに入った。
破滅神龍・劾
劾は燭と同時に生まれた兄弟。
熵に付与された混沌の意志にして、尽きせぬ破滅と狂気を司る。
祂は理を持たず、唯一の欲は、兄・燭の創りし一切を虚無へ帰すこと。
祂の怒りはあらゆる負のエネルギーと暗黒を凝らす。
長き争いの果て、劾は燭に敗れ、
三つの頭を持つその身は一つを噛み断たれ、宇宙虚空の果てに封ぜられた。
されど断たれた首はなお混沌の力を撒き散らし、本体と共鳴して、
封印を破り、再び破滅の時代を呼ばんと試みる。
創始の争い
創造を司る燭と、破滅を司る劾は、生誕の時より休みなき戦に陥った。
混沌は秩序を呑み、秩序は混沌を噛み返す。
一切はこの兄弟の衝突の中で、幾度も生まれ、幾度も滅んだ。
ついに、燭は自らの光でもって劾を打ち倒し、虚空の果てに封じた。
しかし祂もまた大きく力を損なった。
劾の残留意志が再び災いを為すことを防ぐため、
燭は宇宙の破片をもって牢となし、劾の噛み断たれし首をその内に封ぜしめた――
それが後に衆生の呼ぶ「神州」世界である。
深く傷ついた燭は万物を自らの三子に委ね、
虚空へと帰り、永遠の眠りについた。




