7.ストリートギャング
気が付くと台所の下で寝ていた。頭には止血パッドが貼られている。横になりながら辺りを見渡すと、こじんまりとした綺麗な部屋だった。整理整頓もしっかりされている。体中のあちこちが痛かった。「お、起きたか」そう言いながら、松田さんは昨日のことを話した。
「突然倒れるから心配したんだぞ。一応、知り合いの医者に遠隔で見てもらった」
出血によるショックで気絶をしたんだと聞かされた。「すいません、ありがとうございました」お礼を言うと、松田さんは取り合えず、シャワーを浴びてこいと言うのでシャワールームを使わせてもらった。固まった血が水に溶けて流れている。擦りむいた傷にボディソープが少しだけ沁みた。頭のほうは傷口が無事に治っている。
さっぱりとしたのでシャワールームから出て、バッグから着替えを取り出して着替えた。「飯、食うだろ」テーブルの上にハムエッグとご飯が置いてあった。知樹は遠慮せずにご飯を食べた。松田さんはアイスコーヒーを飲んでいた。
「知樹はなんか訳ありだろ」
医者に見せる前に身分証を確認する為、バッグの中身を見たんだそうだ。松田さんなら話しても良いかなと思った。裏の事情に詳しそうだったからだ。知樹はこれまでの話を大雑把に話した。柚葉のこと、大内さんのこと、そして嵐山のことを。
「なるほどな、最近、密入国してくる奴らが多いとは聞いていたが、知樹もそうなんだな」
「松田さんは、偽造身分証が手に入るルートって、分かりますか。もし、知っていたら教えて欲しいんですけど」
そう尋ねると「俺のことは健司でいいよ」「もちろん、知っている」と言うので、どのくらいの値段なのか聞いてみた。
「十万円くらいじゃないか」
日雇いで稼いでお金を持ってくれば良いですかね。そう尋ねた。健司は俯いたまま、何かを真剣に考えていた。アイスコーヒーの氷をカラカラさせながら「うーん」と言った。
「知樹は日雇いでその日暮らしをするのか、もっと、大きくなりたくはないか」
「大きくって、どういう事ですか」
「質問を変える、普通に就職して普通に生きて、普通に死ぬのがいいか」
「どうでしょうか、それも良いとは思いますけど」
「知樹は普通にはなれないと思う、なんせ、十人組に喧嘩を売るような奴だからな、しかも東京では暴れていたんじゃないか、密入国までして」
「それは」
「なぁ、知樹、バッズに来ないか」
「一人、探していたんだよ」
知樹は困惑していた。バッズが何なのか、どういう物なのか分からなかったからだ。
「バッズって何なんですか」
健司は笑っていた。そうか、知らないよな。と一人で盛り上がっていた。
「要するにストリートギャングのバッズに入らないかって話だ」
「食うには困らない程度には稼げるし、大きくなれば稼ぎはデカくなるぞ」
「その分、命を掛けてもらう。これが出来る奴じゃないと無理だ」
知樹は返答に少し困っていた。突然の話だったし、俺にギャングが務まるのか。そう思いながらも知樹は健司に質問をした。
「人を殺すとか、そういう話もあるって事ですか」
「殺すこともある。通常は無いけどな、揉めたり、喧嘩になったり、上からの指示で殺すことは勿論ある」
「だけどな、北海(ロシア行政特区)では誰よりも自由に生きられるんだ。知樹の生まれたニュージャパン(旧日本)なんて下らないだろう」
「よく考えてみろよ。これからの人生、日雇いで生きるのも自由だ、でも、知樹はそうじゃないと思っている。だからこの話を持ちかけた」
知樹は心の奥で求めていたのかも知れない。誰にも制されずに生きる生き方を。過去に幾度となく悔しい思いをしてきた、施設育ちでは我慢することも多かった。悪い奴を殴っても悪いのはいつも知樹だった。だから健司の話を聞いて、自由に生きる生き方に知樹は憧れを持った。
「もし、入れるならやってみたいです」
「決まったな」
アイスコーヒーを勧められると知樹はアイスコーヒーをゆっくりと飲んだ。健司が説明をしてくれた。ギャングに入るには、正式に幹部の承認が必要なんだそうだ。なので昼頃に幹部の所へ行こうという話になった。それまで、健司とギャングの話をした。
「北海には、五つのギャング集団がいる」
「先ずは俺たちのバッズだ。主にニュージャパン(旧日本)系の組織だな」
「スケルター、これはロシア系だな。バッズとは同盟関係だ」
「夜桜、中華系の組織だ」
「ギーク、黒人系アメリカの組織」
「最後にパゴズ、東南アジア系の組織で他の組織とは犬猿の仲だ」
「パゴズは何で他の組織とは犬猿なんですか」
「こいつらは子供をレイプだのするから嫌われているんだよ」
「後は例外でアンダーワールドってのがいる。ハッカー集団だ。こいつらはどこにいるか分からないから五つの中には入らない。けど、ネットワークで活動している」
一先ず、これが北海(ロシア行政特区)のギャング集団だ。と話をした。スマートデバイスを見ると、もう時計が十二時になっていたので、知樹と健司は幹部のいる場所へと向かうのだった。
◆登場人物
◆木下知樹 十七歳、物語の主人公。
◆松田健司 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。
◇設定資料
◇北海(現ロシア領行政特区)には主に五つのギャング集団が存在する。ストリートギャング【バッズ】は構成員人数が三千人、主にニュージャパン(旧日本)系のギャング集団と言われる。
◇北海(現ロシア領行政特区)には主に五つのギャング集団が存在する。ストリートギャング【スケルター】は構成員人数が五千人、主にロシア系のギャング集団と言われる。
◇北海(現ロシア領行政特区)には主に五つのギャング集団が存在する。ストリートギャング【夜桜】は構成員人数が四千人、主に中華系のギャング集団と言われる。
◇北海(現ロシア領行政特区)には主に五つのギャング集団が存在する。ストリートギャング【ギーク】は構成員人数が三千人、主に黒人、アメリカ系のギャング集団と言われる。
◇北海(現ロシア領行政特区)には主に五つのギャング集団が存在する。ストリートギャング【パゴズ】は構成員人数が五千人、主に東南アジア系のギャング集団と言われる。
◇ストリートギャング【アンダーワールド】は構成員人数が二百人、主にネットワークで活動している。ハッカー集団。




