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6.血と仲間

 翌朝、ネットカフェの支払いを済ませて店の外に出た。四千円と割高だったが、疲れていた知樹には良い休息になった。松前町の駅に向かうと札幌駅行きのチケットを購入した。札幌駅までは函館駅で乗り換える必要がある。合計で一万二千円を支払うと残りは一万四千円だった。知樹は「金が足りない」と呟きながらとぼとぼと駅を歩いた。エアートレインが来ると中に入って座席シートに座った。


 知樹は日雇い労働を探していた。札幌、日雇い労働で検索するとかなりの数が表示に出ていた。セメント運び(一万二千円、日払い対応)現場での清掃及び軽作業(一万円、日払い対応)一先ず、肉体労働なら当分食うには困らなそうだ。そう思うとエアートレインの窓から外を眺めるのだった。高層ビルと森林が綺麗な配置で並んでいる。


 函館駅に到着すると腹が減ったので、なるべく大盛で安い弁当を探した。大盛海苔弁当が七百円だったので迷わずに購入した。乗り換えの特急エアートレインが到着するまで休憩所で弁当を食べた。意外と美味しかった。


 特急エアートレインの座席シートに座ると考え事をした。身分証が無いと色々と不便だったからだ。今の手持ち(一万三千円)では偽造身分証は買えないだろう。どこで売っているかも分からない。取り合えず、日雇い労働でお金を貯めるしかないか。そう考えると札幌駅までは眠って過ごした。なるべく、体力を温存したかったからだ。


 札幌駅に到着すると物凄い人の数だった。ニュージャパン(旧日本)で例えるなら新宿駅が似ているなと思った。駅構内を人ごみをかき分けながら前に進むと、ようやく駅の改札口があった。外に出ると熱気が下から湧き上がって来た。駅構内も駅の外も変わらずに人が多かった。


 駅前を歩いて散歩でもしようと思った。散歩なら金は使わないからだ。色んな店に入って観光をしていた。店の中は冷房が効いていて涼しかった。知らない土地に来るのは初めてだったので、知樹は少々、浮かれていた。バーガーショップに入るとアイスコーヒーを頼んだ。外はヒートアイランド現象でとても暑かったから、夜まで店内で寝るつもりだ。


 夜、二十一時頃にバーガーショップから出ると、まだ外は熱気で暑かった。知樹は繁華街で観光を続けた。客引きが強引に話しかけてくる。「一時間、三千円で飲み放題だよ」「居酒屋もあるよ」「安くするから、どうお兄さん」「女の子付けるよ」金が無いので無理ですと言うと、男は舌打ちをしながら別の男に声を掛けた。それにしても人ごみが凄いな。知樹は繁華街の裏のほうに回った。裏道でも人が混んでいた。歩いていると何やら騒がしい声が聞こえた。


 路地裏の小さな公園で一人の男と十人の男たちが言い争っていた。


「てめーら、ぶち殺すぞ」


 そう言いながら一人の男が十人の集団に向かって行った。集団の中の一人を殴り飛ばすと他の連中に袋叩きにされた。多勢に無勢だな、と思っていた。中には鉄パイプを持っている奴もいる。バッグを地面に置くと知樹は集団に向かって走り出した。鉄パイプを持った男に飛び蹴りを食らわすと、持っている鉄パイプを取り上げた。すぐさま鉄パイプで連中の二、三人を殴った。


 後ろから男が来て羽交い絞めにされ、知樹は集団に袋叩きにされた。石で頭を殴られて意識が朦朧もうろうとしている。すると、先ほどまでボコられていた男が連中に向かって来た。連中の一人に膝蹴りをするとその一人は地面へと倒れた。


「お前ら、バッズに喧嘩を売ってタダで済むと思うなよ」


 男はそう言いながら腕のタトゥーを見せた。すると、十人の集団は身動きが固まった。


「このまま、消えるか、バッズに喧嘩を売って死ぬか選べよ」


 十人の集団は震えていた「いや、知らなかったんだよ」「バッズに喧嘩なんて売らないよ」「すいませんでした」と言いながら公園から大勢、逃げていった。


「お前、名前はなんて言うんだ」


 血だらけの頭を左手で押さえながら知樹は答えた。


木下知樹きのしたともき


「俺はバッズの松田健司まつだけんじだ」


 そう言いながら、手を差し出してくれた。その手に捕まって知樹は立ち上がった。「お前、根性があるな」「男ならそうでないと」「止血パッドがいるな」と言い、松田の家が近くにあるので向かうことになった。あの連中は酔っぱらって一人の女性に嫌がらせをしていたそうだ。そこに松田が出くわした。そして公園で連中と話をして、その流れで喧嘩になったという。


「お前がいたから連中も死なずに済んだな」


「仲間を呼ぶところだった。でも恥ずかしいじゃないか、たかが素人相手に袋叩きにされたとか笑える話だろ」


 そう言いながら松田は笑顔になった。公園から徒歩で十五分、松田のアパートに到着した。頭から血を流していた知樹はそこで意識を失うのだった。

◆登場人物


木下知樹きのしたともき 十七歳、物語の主人公。


松田健司まつだけんじ 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。

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