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49.復讐の歌⑧

 どしゃぶりの雨の中、知樹は歌を歌っていた。歌は雨音に混ざり合い、悲しい模様を描いていた。


「洋子も歌うのが好きだった」


「でも、あの子の歌はもう聴けないから」大内さんは泣いていた。


「君たちのおかげで無事に娘の敵を取れたよ。本当にありがとう」


「なんだか、泣いてばかりだな。かっこ悪いよな」


「そんなことないっすよ」健司が話した。


「さて、後始末は俺の仕事だ」そう言いながら大内さんは竹中さんに連絡を入れた。


「はい、無事に終わりました。後は鑑識課の方で細工をお願いします」「はい、それではまた後ほど」大内さんは通話を切った。


「細工って何ですか」知樹が聞いた。


「阿久津は自殺で死んだことにする。竹中さんが細工をやってくれるそうだ」大内さんが話した。


「一旦、ここで解散しよう。現場に君たちが居たんじゃ話がこじれる」


「分かりました。また後で」知樹が話した。


 三人はエアータクシーを使って都内のホテルに向かった。ホテルに戻ると知樹はシャワーを浴びた。何だかんだで体は疲れていた。少しベッドで横になると仮眠を取った。


「起きてるか」健司が部屋の中に入って来た。


「眠ってたよ」知樹が目を擦りながら話した。


「晩飯、どうするよ」健司が言った。


「そういえば柚葉とご飯を食べる約束をしていたんだ。一緒でもいいか」


「勿論、良いぜ。楽しみだな」健司は嬉しそうに話した。


「んじゃ、連絡する」知樹はスマートデバイスで柚葉に連絡をした。


「一時間後に浅草で待ち合わせだ」知樹が話した。


「火草も呼んでくるよ」そう言いながら健司は火草の部屋に向かった。


 知樹は着替えを終えるとシューズの靴ひもを結んだ。三人はホテルのロビーで合流した。


「じゃ、行こうか」三人はエアータクシーを使って浅草に向かった。


 浅草に到着すると白いワンピースを着た柚葉が待っていた。


「初めまして、知樹ちゃんがいつもお世話になってます」柚葉はお辞儀をした。


「おい、めちゃくちゃ可愛いな」健司が小声で知樹に話した。


「柚葉、この二人が健司、火草だ」知樹が柚葉に話した。


「可愛いね」火草が柚葉に話しかけた。


「火草さんもとっても可愛いです」柚葉が答えた。


「どうも、健司っす。よろしくっす」


「こちらこそ、よろしくお願いします」柚葉が話した。


「ところで今日は何を食べるんだ」知樹が話した。


「浅草に最近オープンしたステーキのお店」柚葉が答えた。


「いいね」健司が話した。


「すごい美味しいって話です」柚葉が健司に話した。


よだれが出てきた」火草が口を拭った。


 店に到着すると少しだけ行列が出来ていた。四人は列に並んでまた会話を始めた。


「柚葉ちゃんはどんな男がタイプなの」健司が聞いた。


「たくましい人がいいかな」柚葉が答えた。


「そうなんだ」健司は心の中でガッツポーズをした。


「健司、柚葉を泣かせたら許さないぞ」知樹が警告した。


「怖いよ、知樹。冗談だぜ」健司は焦りながら話した。


「何の話をしているの」柚葉が話した。


「こっちの話だ。それより施設のみんなは元気なのか」知樹が話した。


「みんな元気にしてるよ。上の子が知樹ちゃんみたいに強くなるんだって」柚葉が答えた。


「そうか、子供たちにあんまり無茶をしないように伝えてくれ」知樹が話した。


 店内に入ると窓際の席に案内された。四人は特製ステーキ定食を頼んだ。火草は追加でステーキ五百グラムを注文した。「柚葉ちゃんはそれで足りるの、遠慮しないで注文しなよ。知樹の奢りだし」そう言いながら火草は笑っていた。


「食後にチョコレートパフェを食べます」柚葉が答えた。


「俺も追加でステーキを貰おうかな」健司が話した。


「健司も遠慮するなよ」知樹が話した。


 四人は楽しい会話をしながら食事を済ませた。外に出ると雨が止んでいた。


「どこか喫茶店でも入ろうぜ」健司が話した。


「いいね」知樹が話した。


「知樹ちゃん、私、そろそろ門限だから」柚葉が話した。


「もうそんな時間か」知樹が話した。


「またな、柚葉ちゃん」健司が話した。


「柚葉、何かあったら連絡してね」火草が話した。


「はい、皆さん。ご馳走様でした。また、遊んで下さい。じゃあね」柚葉は手を振りながら駅に向かった。


 三人は浅草の雷門かみなりもんで柚葉を見送った。


「本当に可愛い子だな」健司が話した。


「健司になら柚葉を任せても良いよ」知樹が答えた。


「何を言ってるんだよ。知樹。恥ずかしいぜ」健司が照れていた。


「お前には渡さないから」火草が腕を組んで健司を睨んでいた。


 その後、三人は大人しくホテルへ戻る事にした。


 それから二日間は東京都内を見て歩いた。水族館や動物園も回った。最後の日に三人は東京駅でお土産を選んでいた。


「岩本さん、吉田、今井、安達さん、権三郎さん」「何が良いだろう」知樹は悩んでいた。


「お菓子とか良いんじゃね」健司が話した。


「東京タワーのキーホルダーにしよう」火草が話した。


「じゃ、どっちも買って行こう」知樹が決めた。


 お土産を買い終えた三人は大内さんが来るのを待っていた。


「知樹、遅くなって済まない」


「うちの嫁だ。どうしてもお礼が言いたいんだそうだ」大内さんが話した。


大内美也子おおうちみやこです。この度は本当にお世話になりました」「本当にありがとう」そう良いながら美也子さんは泣いていた。


「阿久津は被疑者死亡で不起訴処分になった。これで洋子の敵討ちは終了だ」大内さんが話した。


「これは少ないけどお礼だ」大内さんは封筒を知樹に渡した。


「本当にありがとう。知樹は一生の恩人だ」大内さんが話した。


「俺も大内さんにはお世話になりましたから」知樹が答えた。


「しかし、知樹。お前は一体何者なんだ。この間までは普通の高校生だったんだぞ」大内さんが尋ねた。


「俺はストリートギャング、バッズの木下知樹ですよ」


「同じく、ストリートギャング、バッズの健司です」


「バッズの火草です」


「そうか、強くなったんだな。知樹」「しかし、ギャングか。厳しい世界だぞ」大内さんが話した。


「分かっています」知樹が答えた。


「それじゃ、大内さん。また会いましょう」知樹が話した。


「あぁ、気を付けて帰るんだぞ」大内さんが話した。


 三人は東京駅から羽田空港へと向かった。

◆登場人物


木下知樹きのしたともき 十七歳、物語の主人公。


松田健司まつだけんじ 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


上野火草うえのひぐさ 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


大内重之助おおうちじゅうのすけ 三十八歳、警視庁少年育成課の刑事。


阿久津義孝あくつよしたか 三十歳、警視庁ロボット整備係の職員。

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