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46.復讐の歌⑤

 大内さんは朝早くからホテルのロビーで待機していた。


「おはようございます。大内さん。早いですね」知樹が挨拶をした。


「おはよう。知樹。何だか落ち着いていられなくてな」


 二人が話をしていると健司と火草がロビーのテーブルに座った。


「大内さん、どもっす」健司が挨拶をした。


「おはようございます」火草も挨拶をした。


「知樹、昨日の話。大内さんに話したか」健司が話した。


「まだ話してないよ」知樹が話した。


「何の話だ」大内さんが尋ねた。


「今日は二手に別れて犯人をマークするって話です」知樹が説明をした。


「阿久津は健司と火草、南は俺と大内さんです」


「成程な、それなら南を先にしよう。俺がラボ(鑑識課)に髪の毛を持っていくから知樹が南をマークしてくれ。阿久津は健司君と火草ちゃんにマークしてもらう」


「分かりました」知樹が答えた。


 それから四人は二手に別れて行動をした。外の天気は相変わらず大雨だった。


 警視庁生活安全課に来た二人は軽い打ち合わせをしていた。


「知樹はそこのベンチで待機していろ」


「俺が南と話をして来る」そう言いながら大内さんは生活安全課の窓口に向かった。


「南さんは居ますか」大内さんが職員に尋ねた。


「あぁ、居るよ。呼んでくる」職員はそう言いながら奥の部屋に入っていった。


 怠そうな顔をしながら南がやって来た「またあんたか」そう言うと嫌そうな顔で「令状はあるのか」と質問をした。


「あぁ、これが捜査令状だ」大内さんが紙を開いて南に見せた。


「はいはい、髪の毛を提供すれば良いんだっけ。ほら持っていけ」髪の毛を引っ張りながら南が話した。


「それで大丈夫です。ご協力感謝致します」大内さんが話した。


「別に感謝しなくて良いよ。令状があれば文句は無い」南は答えた。


「では、失礼します」大内さんが話した。


「まぁ、犯人が見つかるといいな」南は大内さんを見ながら話をした。


「今日で決着が付きます。ご心配なく」大内さんはそう言うと生活安全課を離れた。


「知樹、南を見張っていてくれ。俺は竹中さんの所へ急いで行って来る。南が怪しい動きをしたら、すぐに連絡だ」


「分かりました」知樹は南を見張ることにした。


 一方、健司と火草は新宿区にある警視庁の整備工場の隣に来ていた。健司が傘と双眼鏡を持ちながら中を調べている。


「あいつだな、何だか不気味な奴だぜ」


「一応、スコープ付けておいた」火草が話した。


「これで逃げられないな」


「後は大内さんが来るのを待とう」健司が話した。


 雨が激しく降っている。傘を差しながら健司と火草は阿久津を監視していた。


 健司に大内さんから連絡が来た。


「検査の結果、南は白だった。阿久津が犯人と見て間違いないだろう」


「今から現場に向かう。知樹に連絡を入れてやってくれ」 大内さんが話した。


「分かりました」健司は知樹に連絡を入れた。「阿久津が犯人か」と言いながら知樹も整備工場に向かう事になった。


「火草、今日は忙しくなりそうだぜ」健司が火草に話した。


「退屈していたから丁度良い」火草は笑みを浮かべていた。


阿久津義孝あくつよしたかが犯人だ。どうしてやろうか」健司は少し興奮していた。


 二人は大雨の中、十分に注意しながら監視を続けた。先に大内さんが現場に到着した。


「一応、阿久津も検査をする。ラボ(鑑識課)に行っている間、二人は監視を続けてくれ」


「分かりました」健司が答えた。


 大内さんは一人で整備工場に向かった。


阿久津義孝あくつよしたかさんですね」


「はい、そうですが」


「話をしたいんですが時間はよろしいでしょうか」


「えぇ、大丈夫です」


「四年前の八月十日、夜九時ごろのアリバイを伺いたいのですが、何をしていましたか」


「四年前ですか、ちょっと覚えていませんね」


「成程、では髪の毛を頂けませんか、令状はこちらにあります」大内さんは胸のポケットから捜査令状を取り出した。


「分かりました」そう言いながら阿久津は髪の毛を抜いた。


「これで良いんですか」


「えぇ、ご協力ありがとうございます」「それでは失礼します」大内さんはその場を後にした。


 大内さんはスマートデバイスを取り出して健司に連絡を入れた。「では、監視を頼むよ」そう告げると大内さんは急いでラボ(鑑識課)に向かった。


 大内さんと入れ違いで知樹が現場に到着した。


「監視はどう」知樹は健司に尋ねた。


「今の所、動きは無いな」健司が答えた。


「検査に引っかからない場合はどうするんだ」健司が知樹に話した。


「どうだろう、もう一度調べ直さないと駄目かもね」知樹が話した。


「阿久津が動いたよ」火草が話した。


「どこに行くつもりだろう」知樹が話した。


「何か怪しくないか」健司が話した。


「スコープを付けてあるから無理に追いかけなくても良いよ」火草が話した。


 三人は整備工場の近くの喫茶店で大内さんの連絡を待つことにした。


 一方その頃、ラボ(鑑識課)にたどり着いた大内さんはディーエヌエーの検査結果を待っていた。


「大内、出たぞ」大声で叫びながら奥の部屋から竹中さんが出てきた。


「黒だ。阿久津が犯人だ」


「そうですか」大内さんは肩を震わせて泣いていた。


「しかし、よく犯人を絞り込めたな。奇跡としか言いようがない」竹中さんも泣いていた。


「知樹のおかげです」


「心のどこかでは諦めていたんです。でも、知樹が力を貸してくれた」大内さんは手を握りしめた。


「今から、洋子の敵を取ってきます。竹中さんもありがとうございました」


「行ってこい」竹中さんが話した。


 東京の空模様はどしゃぶりの雨だった。

◆登場人物


木下知樹きのしたともき 十七歳、物語の主人公。


松田健司まつだけんじ 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


上野火草うえのひぐさ 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


大内重之助おおうちじゅうのすけ 三十八歳、警視庁少年育成課の刑事。


阿久津義孝あくつよしたか 三十歳、警視庁ロボット整備係の職員。


南陽介みなみようすけ 二十九歳、警視庁生活安全課の刑事。

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