45.復讐の歌④
警視庁内の生活安全課に来た大内さんは南陽介を尋ねた。
「どういったご用件で」南は大内さんに話をした。
「四年前の殺人事件で話を伺いに来ました」
「八月十日、夜九時ごろのアリバイを伺いたいのですが」大内さんが尋ねた。
「四年前って、流石に覚えてないよ」南は答えた。
「それなら髪の毛を一本、頂けないでしょうか」大内さんが話した。
「令状はあるのか、無ければ話にならないぞ」南が話した。
「何か疚しい事でもあるんですか」大内さんが尋ねた。
「疚しい事なんて無いさ、でも個人情報だろ。正式な手続きを踏んで来いよ。話はそれからだ」南は横柄な態度で話をした。
「そうですか、ではまた日を改めてお伺いします」大内さんが話した。
三人は警視庁から少し離れた商業施設で大内さんを待っていた。
「上手くいっているといいな」健司が話した。
「大内さんなら大丈夫だよ」知樹が話した。
「結局、誰が犯人なんだよ」火草が話した。
「まだ分からないよ。よく調べてからだね」知樹が話した。
それから二十分後、大内さんと三人は商業施設で合流した。
「どうでした。大内さん」知樹が尋ねた。
「令状を持ってこいだそうだ」
「なんだか怪しいな」健司が話した。
「一先ず、ラボ(鑑識課)に行こう。俺の知り合いがディーエヌエーを検査してくれる」大内さんが答えた。
「俺たちも中に入って良いんですか」知樹が話した。
「知り合いだから問題は無いよ」
どしゃぶりの雨が降る中、四人はラボ(鑑識課)にエアータクシーを使って移動した。
「大内、久しぶりだな」気の良さそうな男が大内さんに話しかけた。
「竹中さん、お久しぶりです」大内さんが挨拶をした。
「で、髪の毛は持って来たか」
「何とか一人分だけ持って来ました」
「少し、待っていろ」竹中さんは奥の部屋に入っていった。
「昔、交番勤務だった頃の先輩なんだ」大内さんが話した。
「優しそうな方ですね」知樹が話した。
「昔は鬼の様に怖かったんだよ。よく怒られたもんだ」
「何だか想像できないですね」知樹が話した。
奥の部屋から竹中さんが出てきた。
「これは白だな、ディーエヌエーが一致しなかった」竹中さんが話した。
「成程、では鈴木健は捜査から外しましょう」大内さんが話した。
「生活安全課の南陽介が捜査令状を取って来いと言って来ました。竹中さん、何とかなりませんか」大内さんが聞いた。
「よし、俺の知り合いに頼もう。明日には正式な令状が取れるだろう」竹中さんが答えた。
「竹中さん、本当にありがとうございます」
「良いんだよ、洋子ちゃんの敵を取らないとな」竹中さんが話した。
「そっちの三人は誰なんだ」竹中さんが尋ねた。
「私の友人です」大内さんが答えた。
「そうか、お前にも仲間が出来たか。友だちは大切にしろよ」竹中さんが話した。
「大切にします」大内さんが答えた。
それから、四人はラボ(鑑識課)を後にした。外に出ると、まだどしゃぶりの雨が降っていた。街角にあるスピーカーから浸水警報のアナウンスが流れている。
「これからどうするんだ」大内さんが話した。
「俺たちはホテルにチェックインしてきます」知樹が答えた。
「そうか、なら今日の所は解散だな。明日、ホテルに迎えに行くよ」大内さんが話した。
どしゃぶりの雨が降る中、傘も差さずに大内さんは喧噪の中に消えて行った。
一先ず、知樹たちは予約してあるホテルに向かった。チェックインを済ませるとウェルカムドリンクを渡された。暖かいカモミールティーだった。
「大内さん、元気が無かったな」健司が話した。
「無理もないよ」知樹が話した。
「残りは後、二人だな。いよいよだぜ」健司が気合を入れていた。
「そうだね」知樹が話した。
「寝る」そう言いながら火草は自分の部屋に向かった。
「知樹はどうするんだ」
「外は酷い雨だからホテルに居るよ」知樹が答えた。
「じゃ、俺も部屋に行くよ」健司が話した。
二人は部屋で話を続けた。
「南は怪しいな、何が個人情報だよ」健司が話した。
「まぁ、任意の場合は拒否しても良いからな」「明日には捜査令状も出るんだし時間の問題じゃないか」知樹が話した。
「それはそうだけど」健司は何かを考えていた。
「南と阿久津、どちらに火草のスコープを使うんだ。逃亡されたらやっかいだぞ」健司が話した。
「成程ね、明日。南は俺と大内さんがマークする。阿久津は健司と火草でマークするってのはどう」知樹が答えた。
「それで行くか」健司が話した。
「南は仕事で身動きが取れないと思うんだよね」「明日、生活安全課に南が居る場合は限りなく白だと思うよ。居ない場合は限りなく黒だ」知樹が話した。
二人は夕方まで色々と話し合っていた。腹が減って来たのでホテル内にある高級レストランを訪れた。
「知樹、何を食べるんだ」健司が話した。
「ちょっと贅沢してシャトーブリアンを頼むよ」知樹は嬉しそうだった。
「俺は何にしようかな」健司はメニューを見ながら悩んでいた。
「ホタテのバター醤油は二人で分けようぜ」
「いいね」
「俺は伊勢海老のアラビアータを頼むよ」
「しかし、これで六千円だもんな。ぶっちゃけ高いよな」健司が話した。
「まぁ、高級レストランだし、値段は気にせずに食べた方が良いよ」知樹が話した。
明日、いよいよ犯人が分かる。そう思いながら二人は料理が来るのを待っていた。
◆登場人物
◆木下知樹 十七歳、物語の主人公。
◆松田健司 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。
◆上野火草 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。
◆大内重之助 三十八歳、警視庁少年育成課の刑事。
◆阿久津義孝 三十歳、警視庁ロボット整備係の職員。
◆鈴木健 二十八歳、新宿署の新宿一丁目交番勤務の男
◆南陽介 二十九歳、警視庁生活安全課の刑事。




