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42.復讐の歌①

「娘さんの事件、もしかしたら解決出来るかも知れません」知樹が話を切り出した。


「突然だな」大内さんが話した。


「どうするんだ。犯人に繋がる証拠は何も無いんだぞ」


「事件現場と犯行時間が分かれば大丈夫ですよ」


「一体、どうやるつもりなんだ」大内さんが尋ねた。


「知り合いに過去の記憶を見れる人がいます。その人に見て貰いましょう」


「何だか胡散臭い話だな」


「でも、犯人に繋がる情報なら喉から手が出るほど欲しいよ」


「何も手がかりが無いからな」


「四年前の夏の話だ。娘の大内洋子おおうちようこは横浜の倉庫街で発見された。洋子は暴行を受けて胸を刃物で突き刺されていた。死因は刃物で刺された事による失血死だった」


「殺す必要なんて無かった筈だ。まだ十六歳なんだぞ」大内さんの声は怒りで震えていた。


「大内さん、必ず犯人を見つけます」


「少し感情的になっていた。知樹、よろしく頼むよ」


「後でまた連絡を入れます」


「あぁ、頼んだぞ」大内さんはそう言いながら通話を切った。


 知樹はアタッシュケースに一千万円を準備するとストリートギャング【スケルター】の事務所に向かった。


「坊主、久しぶりだな」強面の男が知樹に話しかけた。


「キールさん、お久しぶりです」知樹が挨拶をした。


「実はお願いがあって来ました」


「こっちに座れ」そう言いながらキールさんは知樹を応接間に案内した。


「何か飲むか」


「いえ、大丈夫です」


「で、要件は」


「マリアさんをお願いしたいんですが」


「金は持ってきているんだろうな」


 知樹はアタッシュケースを開けると、中に入っていた一千万円をキールさんに渡した。


「了解だ。坊主。今から案内する」


 知樹はキールさんと一緒にロシア政府特別病院に向かった。厳重な警備がされている特別隔離病棟に入ると地下の階段を降りて行った。


「マリア、仕事だ」キールさんがマリアさんに話しかけた。


「今、忙しいんだけど」マリアさんは気だるそうに答えた。


「お久しぶりです。マリアさん」知樹が話しかけた。


「あら、久しぶりね。色男」マリアさんが笑顔になった。


「また過去を見に来たの」マリアさんが尋ねた。


「はい、大事な過去なんです」知樹が答えた。


「時間と場所のデータをお願いね」


 知樹は詳細な時間と場所を書いたメモ帳をマリアさんに渡した。


 マリアさんは虚空を見つめた。


「女の子はもう死んでいるみたい。死体とやっているんだわ、この男」


「最低な奴ね。床に何か落ちている。多分、警察手帳かな」


「他に目立つところが無いわね。とても用意周到な奴だわ」


「少し待ってね。似顔絵を書くわ」マリアさんはメモ帳に男の似顔絵を書いていた。


「マリアは絵が上手なんだ」キールさんが話した。


「茶化さないでよ」マリアさんが恥ずかしそうにしていた。


「しかし、犯人は警察関係者になったな。どうするんだ。小僧」キールさんが尋ねた。


「偽造の観光ビザでニュージャパンに行こうかと思っています」知樹が答えた。


「それなら腕利きの職人を知っている。紹介しようか」


「是非、お願いします」


「書き終わったわよ」マリアさんがメモ帳を知樹に渡した。淡白な顔立ちの男が書き出されていた。


「こいつが犯人ですね」知樹は男の似顔絵を見ていた。


「不気味な野郎だな」キールさんが話した。


「さぁ、もう終わったわよ。私は忙しいの」マリアさんは小説を手に持っていた。


「相変わらず読書が好きなんだな。そんなに面白いか」キールさんが尋ねた。


「今回の小説はかなり面白いのよ」マリアさんが答えた。


「マリアさん、ありがとうございました」知樹は深々とお辞儀をした。


「良いのよ、仕事だから。またね」マリアさんは読書に夢中になっていた。


 知樹とキールさんはロシア政府特別病院を後にした。


「これが職人の住所だ」キールさんは紙切れに住所を書いて知樹に渡した。


「ありがとうございます。キールさん」


「じゃ、またな。小僧」そう言いながらキールさんは知樹と別れた。


 知樹はエアーバイクを自宅から呼び出した。紙切れを見ながら目的の場所に向かうと古い建物の二階が偽造職人の部屋だった。


「こんにちわ」と言いながら知樹は部屋の扉をノックした。


「誰だ、仕事か」そう言いながら部屋から二十代くらいの男が出てきた。


「キールさんに紹介されて来ました」知樹が話した。


「旦那に紹介されるなんて珍しいな」男は笑いながら話をした。


「何を偽造するんだ」男は尋ねた。


「ニュージャパンの観光ビザをお願いします」


「了解だ」


 男は知樹をスマートデバイスで撮影した。部屋の中に案内されるとお茶を出してくれた。


「出来たよ」男は観光ビザをカードホルダーに入れるとそれを知樹に渡した。出来上がった観光ビザを眺めながら知樹は男に十万円を渡した。


「毎度、あり。偽造関連なら何でも出来るから宜しくな」男はそう言いながらタバコを吸い始めた。


「何かあったらまたお願いするよ」そう言いながら知樹はお茶を飲み干して部屋を後にした。


 それから知樹は岩本さんに連絡を入れた。大内さんの件を報告した。


「そうか、知樹がお世話になった方なんだな。好きにするといい。今の所、オーダーも入って無いし何かあれば権三郎さんにお願いするよ」


「健司、火草も連れて行くと良い、ちょっとし休日だ。俺から話しておくよ」岩本さんはそう言いながらデバイスの通信を切った。


 それから三十分くらい時間が経過した。健司から連絡が来た。


「俺も行くよ」そう健司が話すと知樹は「観光ビザを作らないと、健司と火草の両方だね」


「火草には俺から連絡を入れておくよ」健司が話した。


 知樹は職人の住所を健司に伝えた。


「じゃ、二人とも観光ビザを用意しておいて、後で合流しよう」


「分かった」健司は通話を切った。


 知樹は再び、ニュージャパンへと向かう。大内さんの娘の敵を取る為に。

◆登場人物


木下知樹きのしたともき 十七歳、物語の主人公。


松田健司まつだけんじ 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


岩本信いわもとしん 二十二歳、ストリートギャング(バッズ)の幹部。


◆キール 三十二歳、ストリートギャング(スケルター)の幹部。


◆マリア 三十歳、ストリートギャング(スケルター)のメンバー。


大内重之助おおうちじゅうのすけ 三十八歳、警視庁少年育成課の刑事。

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