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41.カワセミが飛ぶとき⑥【番外編】

 大型のモニターに望月さんが映った。


「知樹君、犯人が分かったそうだが、聞かせてくれないか」望月さんの表情が真剣になった。


「では、色々と説明をします」知樹が話した。


「先ずは高木の事です。高木は忍さんから呼び出されたと言っていましたが高木の通信記録に二人のやり取りはありませんでした」


「忍さんは銀行の窓口で直接、横領の話をしたそうです」


「おそらく、高木は忍さんを殺すために家に向かったのでしょう」


「ですが、部屋には鍵が掛かっていた」


「大きな音を立てれば吉岡さんが気づきます。それで殺人を諦めた」


「次は上杉の話です。上杉は犯人じゃありません。ただの恋愛ですね。忍さんに一目惚れした。普通の男です」


「吉岡さんは立派な母親だと思います。犯人に近い存在でしたが、彼女が陰ながら忍さんを見守っていたのは確かです」


「土田さんは二人を殺す動機がありますが、彼女も殺人はやっていないでしょう。理由は後で説明します」


「二人目の犠牲者、山下は犯人じゃないです。最初は自殺の線も考えたんですが、とある理由でそれは不可能になりました」


「そして高村さん、動機が無いので犯人では無いでしょう」


「そして、俺。木下知樹も動機がありません。依頼を受けた覚えも無いし、仮に依頼があっても、俺は一般人を殺すことは無いです」


「それでは全員、犯人じゃ無いと言うのかね」望月さんは驚いていた。


「いえ、忍さんを殺した犯人はこの中にいます」知樹が話した。


「どういう事かね」望月さんは知樹に尋ねた。


「犯人が嘘を付いているんです」知樹は名探偵のようだった。


「誰が嘘を付いているんだ」望月さんは知樹に聞いた。


高村徹たかむらとおる、あなたがこの事件の犯人だ」知樹は言った。


「知樹さん、何を言っているんだ。私は犯人じゃない」高村さんが話した。


「いえ、高村さん。あなたが犯人です」


「何故だ。私には理由がないんだぞ」高村さんが知樹に聞いた。


「それが嘘だからですよ。高村さん」


「なんでそう言い切れる」


「あなたにも妹がいたからです」


 高村の表情がけわしくなった。


「あなたの妹も生きていれば年齢は二十三歳ですよね」


 高村は無言だった。


「望月忍、山下愛理、土田友子は妹さんの同級生です」


「あなたの妹は高村良子たかむらよしこ、中学二年生の時に自殺しました」


「原因は学校で虐めがあったからだ」


「主犯格は山下愛理と望月忍の二人。相当、酷い虐めだった様です」


「暴行、レイプ、それらを撮影して高村良子を脅していた」


「俺が考える中でも最悪最低な奴らです。俺に依頼があれば殺していたかも知れません」


「高村さんは初めから動機が無いと発言していました」


「でも、これ以上は無いほどの動機を高村さんは持っていたんですよ」


「でも、知樹さん。これは密室殺人事件ですよ。鍵を持っていたのは吉岡さんだけだ」高村さんはそう話した。


「たしかに密室殺人事件ですが、種を明かせば密室じゃ無くなる」知樹が答えた。


「簡単な話でした」


「知樹さん、どういう事っすか」上杉が聞いた。


「吉岡さん、忍さんの遺体は部屋の奥にあったんですよね」


「はい、そうです」


「なら、入口の扉の後ろに立っていれば良いんです。吉岡さんが部屋に来るまで」


 知樹は建物の平面図をテーブルに広げた。


「吉岡さんから見ると扉の後ろは死角になるんですよ」


「遺体が奥にあると更に死角は大きくなる。その隙に部屋から出るだけで密室殺人事件の出来上がりです」


「なるほど、流石っす」上杉が話した。


「さて、密室殺人事件では無くなりました」知樹は鼻を指で撫でた。


「これで誰もが忍さんを殺害出来ます」


「まだ、言う事がありますか、高村さん」


「誰もが殺せる状況なら、私じゃなくても犯人はいるんじゃないですか」高村さんが反論した。


「高村さん、毒殺にしたのは間違いでしたね」知樹は鋭い目つきになった。


「もし毒殺じゃなかったら高村さんの計画は失敗しませんでした」


「シアン化カリウムは市販じゃ手に入りません」


「それが、決め手でした」知樹は冷静に話をした。


「シアン化カリウムは高村さんが務める工場で使用しています」


「何か言う事は無いですか、高村さん」


「土田さんにも二人を殺す動機がある」高村は答えた。


「毒殺では、土田さんに犯行は無理ですよ」


「そして、山下が自殺じゃないのはシアン化カリウムのビンが土田さんのバッグに入っていたからです」


「それも失敗の要素でしたね。仮に山下がビンを持っていれば自殺と殺害で話は通るかも知れなかった」


「そうか」高村さんが泣いていた。


「土田さんのバッグにビンを入れたのは妹の同級生だったからだ。虐めに参加していたかも知れないと思ってね」


「悪いことは出来ないな」


「知樹さんの言う通り私が殺したんだ」


「妹は散々、虐められて自殺をした」


「私にはとてもじゃないが我慢が出来なかった」


「学校側が虐めは無かったと言った。でも、本当は違った」


「そこにいる望月宗男が虐めを隠ぺいしたんだ」


「お前に復讐するつもりだったんだ」


「望月忍と山下愛理はとても苦しんで死んだ」


「息をしても息は出来ず、頭が割れるような頭痛。地獄を味わうそうだ」


「二人とも無理矢理に毒薬を飲ませた。十五分間、悶え苦しんでいたよ」


「俺が正真正銘の犯人だ」高村さんは目を閉じていた。


「そうですか」知樹がため息をついた。


「望月さんは虐めの件で隠ぺいしていたんですか」知樹が尋ねた。


「そうだ。娘の為に事件を隠ぺいした。高村君、私が悪かった」


 全員が無言になっていた。


「五千万円は知樹さんのっすね」上杉が話した。


「そうですね」吉岡さんも賛同した。


「ありがとうございます。賞金は知樹さんの物です」土田さんも賛同した。


「知樹君、賞金は君のだ」望月さんも同意した。


 軍警察が屋敷の中に突入した。高村さんと高木を連行して行った。


「知樹さん、ありがとう。本当に済まなかった。名探偵だよ。君は」高村さんが最後に言い残した。


 知樹が外に出るとカワセミが飛んでいった。夏の終わりだった。

◆登場人物


木下知樹きのしたともき 十七歳、物語の主人公。


望月忍もちづきしのぶ 二十三歳、望月製菓の娘。被害者。


望月宗男もちづきむねお 五十歳、望月製菓の社長。被害者の父親。


吉岡幸子よしおかさちこ 四十八歳、望月家の家政婦。第一発見者。


山下愛理やましたあいり 二十三歳、被害者の友人。


土田友子つちだともこ 二十三歳、被害者の友人。


高木義久たかぎよしひさ 三十三歳、銀行員。


上杉健うえすぎけん 二十一歳、フリーター。


高村徹たかむらとおる 二十六歳、会社員。

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