40.カワセミが飛ぶとき⑤【番外編】
みんなで山下の部屋に向かった。
「誰も中に入るな」知樹が指示を出した。
「入って良いのは俺と上杉だけだ」知樹はそう言うと部屋の中に入った。
ベッドの上で仰向けになっている山下を見つけた。上杉が「何で、俺なんすか」と言うと、知樹は「お前は犯人じゃないからだ。俺を見張っていろ」「分かりました」上杉は知樹を見張った。
知樹は山下の死体を調べた。目立つ外傷は無かった、口を開けている。部屋の内部を軽く調べた。特に何も見つからなかった。知樹は部屋の外に出た。
「多分、毒殺ですね」知樹は言った。
「誰なんすか、殺したのは」上杉が知樹に尋ねた。
「忍さんを殺した奴だろうね」知樹は考えていた。
「家政婦さん、望月さんをお願いします」
みんなで大広間に移動した。
大きいモニターに望月さんが現れた。
「何かあったのかね」望月さんは知樹に尋ねた。
「山下愛理が殺害されました」
「軍警察を呼ぶのは事件が解決してからでも良いでしょうか」
「私のコネクションを使おう。知り合いに軍警察の上層部がいる。正し、部屋には誰も入らないように」
「俺と上杉が簡単な調査をしました」
「成程、では今後、部屋に入らないように。その事も後で軍警察に報告する」
「では、犯人捜しを頼んだよ」望月さんはモニターから消えた。
「みんなの荷物を検査してもいいか」知樹が話した。
「いいっすよ」上杉が答えた。
他のメンバーも異論は無かった。順番に手荷物を検査していった。
土田さんのバッグからビンが出てきた。ビンのラベルには(シアン化カリウム)と表記されている。
「私、知らない」土田さんは慌てていた。
「こんなの見たこともない」土田さんは知樹を見ていた。
「何で土田さんのバッグに入っているんでしょうか」知樹は土田さんに聞いた。
「昨日、お風呂に入る前にバッグを見たけど、その時は無かった」
「だと、お風呂に入っている時に入れられたんでしょうか」
「そうとしか言えない」土田さんは戸惑っていた。
「何か隠していることがあるなら今のうちに聞きますよ」知樹は土田さんを見つめた。
土田さんは重い表情になった。
「動機は私にもあるの」土田さんが言った。
「どんな動機ですか」知樹が尋ねた。
「あれは小さい頃、カワセミが鳴いていた夏の日。この屋敷の外で事故が起きたんです」
土田さんは語った。
「十二歳の時、この屋敷で忍さんのお誕生日会が開かれました」
「山下愛理もパーティーに参加していました」
「パーティーが終わると水着を着て外の川に遊びに出かけたんです」
「私には妹が居ました。妹はまだ六歳でした。名前は今日子と言います」
「水辺の岩場で忍さんと山下が妹に話しかけていました」
「『仲間に入れて欲しいの。なら、ここから飛びなさい』と命令していたんです」
「妹は泣きながら岩場を飛んだんです」
「そうしたら、川に流されて意識不明の重体になりました」
「五時間後、妹は近くの病院で亡くなりました」
「私はその時の事をよく覚えています」
「二人は岩場の上で笑っていました」
「二人に死んで欲しいと神様にお願いしたこともあります」
「だから、私には動機があるんです」土田は涙を流した。
「そうだったんですか」知樹は真剣に話を聞いていた。
「そんなの、誰だって怒るよ」上杉が話した。
「お前が犯人だ」高木が後ろから叫んだ。
「お前が犯人なら五千万円は俺の物だ」「俺が先に言ったからな」「俺に賞金をよこせよ」高木の目が血走っていた。
「お前、黙っていろよ」知樹が高木を睨んだ。
「うるさい、このガキが」高木はメガネをかけた。
「犯人はお前だよ」高村さんが言った。
「昨日の夜、山下さんの部屋から高木が出てきたんだ。見たんだ。俺は」
「どういう事だ。高木」知樹が聞いた。
「何を言っているんだ。知らないな」
「ちゃんと答えろよ」知樹が言った。
「山下ならとっくに死んでたよ」高木が話した。
「殺したのは俺じゃねぇ、だから、その女が殺したんだ」高木は土田さんを指さした。
「高木、真っ先にお前が捕まるぜ。どの殺人現場にもお前が居たんだからな」知樹は話した。
「うるさいな、ガキ。俺は殺してねぇんだよ」
「山下に呼び出されて部屋に行ったんだ。お前を嵌める為にな」
「聞いてんのかガキ、嘘の証言でお前を犯人にするつもりだったんだ」
「俺が言い出した訳じゃねぇ、山下が墓穴を掘ったんだ」
知樹は高木を殴り飛ばした。「ぶべぇ」と高木が叫んだ。高木は壁に激突して気を失った。
「知樹さん、パンチ力半端ないっすね。人が吹き飛ぶところを初めて見ました」上杉が言った。
「どうってことないよ」
「山下は最後まで救えない奴だった。まぁ、殺されても仕方が無いよ」
「そうすっね」上杉が言った。
「ところで、本当に高木が山下を殺したのか調べないと」知樹が言った。
「あいつは気絶してますぜ」上杉が話した。
「あいつの鞄を調べるか」
知樹は高木の鞄を調べた。何も出て来なかった。
「あいつは頭がおかしいけど、人は殺して無いんじゃないか」
「どうすっかね。でも、みんな、裏で何か訳でもあるんじゃないすか」
「良いことに気づくね。やっぱり、俺の推理は当たっているんだ」
「あの、良いですか」吉岡さんが土田さんに話をした。
「土田さんの事故がそういう理由だなんて思いもしませんでした」
「忍を甘やかして育てていたのは私です。責めるなら私を責めて下さい」
「止められなかった私も悪いんです」二人とも涙を流していた。
健司から連絡が入った。「知樹、お前の言う通りだったぜ」知樹は目が鋭くなった。
「犯人が分かりました」
「望月さんを呼んでください」知樹は家政婦に伝えた。
◆登場人物
◆木下知樹 十七歳、物語の主人公。
◆望月忍 二十三歳、望月製菓の娘。被害者。
◆望月宗男 五十歳、望月製菓の社長。被害者の父親。
◆吉岡幸子 四十八歳、望月家の家政婦。第一発見者。
◆山下愛理 二十三歳、被害者の友人。
◆土田友子 二十三歳、被害者の友人。
◆高木義久 三十三歳、銀行員。
◆上杉健 二十一歳、フリーター。
◆高村徹 二十六歳、会社員。




