37.カワセミが飛ぶとき②【番外編】
女性組の二人は毅然としている。残った男たちはただ、呆然としていた。
「驚かれるのは無理もありません。私の方から説明をさせて頂きます」
望月宗男は落ち着いて話をした。
「三週間前に事件は起きました」
「私の娘、望月忍が何者かによって殺害されました」
「遺体を解剖した結果、死因は薬物による急性中毒でした。所謂、毒殺ですね」
「町内会で設置している防犯カメラが二台あります。これは分かりやすく説明すると入口、出口に設置してある定点カメラです。紙に直線を書いてみると更に分かりやすいでしょう」
「先ほどの入口、出口の間、中心地点にエアーバスの停留所があります。そこで下車したのがあなた達です」
「犯行後、入口、出口共にそこから移動したのはあなた達の映像のみです。他の方は防犯カメラには一切映っていませんでした」
「出口、入口の間には娘の住まいしか建物がありません」
「つまり、殺人を行ってから逃げる。これが出来たのはあなた達、六名だけなのです」
「これで、全員、容疑者という話を理解されたかと思います」
「質問はありますか」
「金は準備しているんだろうな」メガネをかけた黒いスーツの男が質問をした。
「勿論、準備しております」
「更に犯人を探し当てた方には、追加で五千万円をお支払いします」
「五千万円だと」メガネをかけた黒いスーツの男が驚いていた。
「マジかよ」若い男が唖然としている。
知樹は平然としていた。別の質問があったからだ。
「毒殺って話ですけど、何の毒なんですか」知樹が質問をした。
「正確にはシアン化カリウム、青酸カリの事だ」
「なるほど」知樹はメモ帳に書いた。「この中に犯人がいる事は確定だろうな」と呟いた。
「何故、そう思うのかね」望月宗男が質問をした。
「だって入口と出口は俺たちの姿しか映ってないんだ」
「どう足掻いても犯人は俺たちの中に居る。俺を除くと五人だけどね」
「面白い子だな、君は」望月宗男は少し笑顔になった。
「さて、質問は何時でも受け付ける。何かあったら呼び出してくれ」
望月はそう告げると大型モニターから姿を消した。
一同は無言だった。それぞれが互いに疑心暗鬼になっていた。
「自己紹介しませんか」知樹が切り出した。
「じゃ、先ずは俺ね。ストリートギャング、バッズの木下知樹。十七歳だ。よろしくね」
「お前はギャングなのか」若い男が少し怯えていた。
「お前の名前は」知樹は若い男に質問をした。
「俺は上杉健、二十一歳、フリーターだ」
次に作業服を着た男が話しを始めた。
「私は高村徹、二十六歳、会社員です」
「どうぞ、よろしく」知樹が話した。
「わ、私は高木義久三十三歳、銀行員だ」メガネをかけた黒いスーツの男が自己紹介をした。「私は犯人ではない」額に汗を流していた。
「そっちの二人は」知樹は二人を睨んだ。
「私は山下愛理、被害者の友だちよ。歳は二十三歳」
「私は土田友子」、同じく被害者の友だち。歳は二十三歳」
「これで一応、自己紹介が終わったね」知樹はメモ帳に名前を書いていた。
「さっそくだけど、やったの誰」知樹は全員に聞いた。
「あんたじゃないの。ギャングなんだから」山下は知樹を睨んだ。
「俺は人を殺した事があるけど、この件は関係ないね」知樹は山下を睨んだ。
「そんなの分からないわよ」山下は知樹を挑発した。
「あんたの頭を吹き飛ばしてやろうか、気分が良さそうだ」知樹は笑った。
山下は苦虫をかみ潰したような顔になった。
「お前はどうなんだ。上杉」知樹は上杉に質問をした。
「俺はやってない、やってないんだ」上杉は何故か慌てていた。
「あんた、忍のストーカーじゃない」土田が話した。
「あの日だって、忍を付けていたでしょう」土田が上杉を睨んでいた。
「どういう事」知樹は上杉に質問をした。
「俺はあの子が好きだったんだよ」
「だから、後を付けていたんだ。あの子に話しかける為に」
「でも、そういった関係から殺人を犯すケースもあるよね」知樹は言った。
「確かにそういう事件があるのは知っているけど、人を殺すなんて俺には無理だよ」上杉はそう言うと肩を落とした。
知樹はメモ帳にストーカー上杉と記した。
「あなたはどうなんですか、高村さん」知樹が聞いた。
「あの日、私はデバイスでオンラインゲームをプレイしておりました。事件とは何も関係が無いですね。あの現場から家が近いので、あのバス亭で降りました」高村さんは淡々と話した。
「では、高木さん。あなたは」
「わ、私はやっていない、あの場所には商談で向かっただけだ」額の汗をハンカチで拭いている。
「なるほど」知樹は額の汗、高木とメモ帳に記した。
「で、あんたは」知樹は山下に尋ねた。
「言わないわよ」山下は答えなかった。代わりに土田が答えた。
「私たちは忍が具合が悪いって言うから家まで付いていったのよ」「それだけ」知樹は土田の話をメモ帳に記した。
「あ、言い忘れていた。俺はエアーバスで寝坊して、このバス停で降りた。エアーバイクを自宅から呼び寄せてそれで帰った。映像にもある筈だ」
「人殺しの言う事なんか信じないわよ」また、山下が知樹を煽ってきた。
知樹は山下を無視した。
「望月さんを読んで貰えますか」知樹は家政婦に話した。
望月さんが大型モニターに映った。
「なにかね」
「望月さん、死体を発見したのは誰ですか」知樹が尋ねた。
◆登場人物
◆木下知樹 十七歳、物語の主人公。
◆望月忍 二十三歳、望月製菓の娘。被害者。
◆望月宗男 五十歳、望月製菓の社長。被害者の父親。
◆山下愛理 二十三歳、被害者の友人。
◆土田友子 二十三歳、被害者の友人。
◆高木義久 三十三歳、銀行員。
◆上杉健 二十一歳、フリーター。
◆高村徹 二十六歳、会社員。




