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33.美しい人

 知樹は部屋でごろごろしていた。久しぶりの休日だ。部屋で寝そべりながらスマートデバイスを眺めていた。


 突然、スマートデバイスが停止した。画面上にメッセージが届いた。(駅前西口の高谷ビルまで来て欲しい)(君に依頼がある)画面上にはそれだけが表示されていた。他の機能は止まったままだ。


「何なんだよ」知樹は不機嫌になった。今日はゆっくり過ごそうと考えていた。「何だよ、高谷ビルって」「行くかよ」知樹は苛立っていた。


 少し時間が経過すると知樹は冷静になった。スマートデバイスが使えないと不便だったからだ。知樹は少し考えてから「分かったよ」そう言いながら着替えをした。


 エアーバイクに跨ると「一発ぶん殴ってやろうかな」そう言いながら知樹は駅前西口に向かった。


 高谷ビルを探しながら移動をしていたら、デバイスから呼び出し音が鳴った。知樹は呼び出しに出た。


「はい」


「木下知樹君だね」


「そうですけど」


「怒っているのか」


「はい」


「そうか、それは済まなかった」


「依頼って何ですか。バッズを通して下さいよ」


「君ひとりで十分な依頼だよ」


「何ですか、依頼って」


「彼女を、殺して欲しいんだ」


「一般人の殺しはやってないです」


「理由を聞いて欲しい」


「殺しはやってないって言ってんだろう」


 知樹は地面を蹴った。苛立ちが止まらなかった。周りの人たちが驚いている。


「彼女はもう死んでいるんだ」


「何を言っているんだ。それなら、話は終わりだろうが」


「無理矢理、生かされてるんだ」


「どういう事だよ」


「聞いてくれるかね」知樹は無言になった。


「彼女と出会ったのは十年前になる。美しい人だった」


「彼女は資産家だった。その遺産を全部、恵まれない子供たちに寄付をすると遺言状に残した」


「それが仇となった。親族は全員猛反対だったそうだ」


「そして、半年前に彼女の容態が悪化した」


「親族は彼女に生命維持装置を付けたんだ」


「十年間、彼女を生かしておけば法律によって遺言状は無効にされる」


「彼女を介護した者に遺産が渡るからだ」男は悲しそうな声で話した。


「そういうのって弁護士がやるんじゃないですか」知樹が聞いた。


「担当の弁護士は殺された」


「なら、軍警察は」


「動かないんだよ」


「私は病気で身体を動かせないんだ。頼む、知樹君」


 知樹は考えていた。軍警察が動かないって事は裏で何かあったんだろう。担当の弁護士の殺害には親族の誰かが関係している筈だ。


「一応、バッズに確認を取らないと駄目なんですけど」


「もう、ロックは解除してある」


 知樹は岩本さんに連絡をした。


「お小遣い稼ぎだね」「軍警察が動かないって事は賄賂でも送ったんじゃないか」そう言いながら岩本さんは通話を切った。知樹は仕方なく依頼を受ける事にした。


「それで、何をすれば良い」


「札幌総合病院に行って彼女の生命維持装置を破壊して欲しい」


「案内は私がする」


 スマートデバイスに地図が表示された。知樹は目的地の病院までエアーバイクで向かった。何故かエアーロードが大混雑していた。知樹はエアーバイクを手動に変えるとエアーロードの上を走った。アクセルを全開にした。


 病院にたどり着くと病院の案内図が画面に表示された。


「鍵とかどうするんだよ」知樹が尋ねた。


「遠隔操作で解除が出来る」男が質問に答えた。


「生命維持装置はスタンドアローン型なんだよ」


「スタンドアローン型って何だよ」


「ネットワークに繋がっていない機器。繋がっていれば私が殺していた」


 知樹は案内図を確認しながら目的の部屋の前に来た。中にはスーツを着た男が二人、座っている。


 知樹はドアを蹴とばした。


「何だ、お前は」男たちが知樹を睨んだ。


「今からその装置をぶち壊すんだよ」知樹は男たちに八つ当たりをした。


「ふざけるな」二人はハンドレーザーガンを取り出した。知樹はコンセントレーションを発動させた。


「お前ら、弁護士を殺した奴か」知樹が怒っていた。


「何の話だ。知らないな」男が話した。


「とぼけるなよ、どうせお前らみたいなのがやったに決まってるんだ」


「何の話だ。ガキが、調子に乗ってると殺すぞ」


「おっさん、やってみろよ」知樹は構えた。


「このガキ、調子に乗りやがって、黙らせてやる」男が構えた。


 知樹は頭に来ていた。休日なのに。邪魔をしやがって。そう思いながら男を殴り飛ばした。男は壁に激突した。


「何なんだ、このガキは」もう一人の男がハンドレーザーガンを構えた。知樹もハンドレーザーガンを取り出した。


「何者だ、お前」男は知樹に尋ねた。


「バッズの木下知樹だ。覚えておけよ。タコ」


「ギャングか、何が目的だ。金なら少しは払えるぞ」男が財布を取り出した。


「そんなに安くねーんだよ」知樹はコンセントレーションを発動させた。


「待て、金ならやるから。それで勘弁してくれないか」


「もう、寝てろよ」


 知樹は男を殴った。男はその場で気絶した。


 再び、知樹はコンセントレーションを発動させた。


「お別れの時だ。何かあるか」デバイスに話しかけた。


「デバイスのカメラで彼女を見送ってもいいかな」


「いいよ」


 ベッドに横になっている。高齢の女性をカメラに映した。


「ありがとう。知樹君」


 知樹は生命維持装置を破壊した。


 病院から出るとエアーバイクでエアーロードを飛ばした。


「ギャラは一千万円だ。君の口座に振り込む」


「それと、私はアンダーワールドの坂城と言う。何か困った事があればいつでも頼ってくれ。知樹君。本当にありがとう」


 夕暮れのエアーロードはとても美しかった。

◆登場人物


木下知樹きのしたともき 十七歳、物語の主人公。


岩本信いわもとしん 二十二歳、ストリートギャング(バッズ)の幹部。


坂城信夫さかきのぶお 年齢不明、ストリートギャング【アンダーワールド】のメンバー。

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