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32.ギャングスター⑤

 岩本さんは市内の地図を取り出した。


「ここと、ここ」地図の上を指で軽く叩いた。


「ギークと夜桜のたまり場だ」


「何をする気なんですか」知樹が聞いた。


「この二か所を、知樹君の特殊能力ギフトで破壊する」


「そんなことをして大丈夫なんですか」


「平気だよ、俺たちはバッズだからね」


「ギークも夜桜もバッズを舐めているんだ。徹底的にやるしかないだろう」


「こちらも人数を用意して市内を回る。向こうも兵隊を準備しているだろうから、町の中で抗争だね」


「ギャングは舐められたらお終いだ。知樹君」岩本さんは力強く話した。


「知樹君は権三郎さんとペアで」「火草、京子ちゃん、俺は、アネモネちゃんを護衛する」


 そう言いながら岩本さんはタバコに火を点けた。


「俺たちは事務所で籠城だ。何、そうそうバレないよ。ここは」


 知樹は権三郎さんに連絡を入れた。「健司は大丈夫ですか」「あぁ、問題無い」「権三郎さん、事務所の近くに来れますか」「今から向かう」権三郎さんはそう言いながら通話を切った。


 アネモネは不安そうに火草に寄り添っていた。


「では、外で権三郎さんを待ちます」知樹が動いた。


「大丈夫なの」アネモネが心配をしてくれた。「大丈夫だよ」知樹がアネモネの頭を撫でた。


 知樹は権三郎さんと二人で夜桜のたまり場【夜蝶】の近くにいた。


「よし、俺はお前のボディーガード役だ。しっかり頼むぞ」


「はい、よろしくお願いします」


 知樹はコンセントレーションを発動させた。


 コンセントレーション、スタート。


 テンセカンズ


 トゥエンティセカンズ


 サーティセカンズ


 ワンミニッツ


 スリーミニッツ


 セブンミニッツ


「脳みそぶちまけろよ」そう言いながらアンダースローの構えで店の前から拳を振り上げた。大きな爆発と轟音、地面が大きく揺れた。店は潰れた。下敷きになった人々の悲鳴が聞こえる。


「知樹、行くぞ」権三郎さんと店を離れた。次はギークのたまり場【ブラックマウンテン】だ。


 店の近くにたどり着くとアーノルドとボビーが店の前にいた。


「ボビー、体は大丈夫なのか」


「アーノルドさん、僕は強いですから、もう大丈夫です」


「流石だな、ボビー」


「アーノルドさんこそ、ベリーベリー、タフガイじゃないですか」


「俺は最強だからな。そうだろ、ボビー」


「えぇ、間違いないです。アーノルドさん」


 二人はタバコを吸いながら話を続けた。


「しかし、どこに商品が消えたか分からないんだよ。ボビー」


「アーノルドさん、それはベリーベリー、バッドです」


「このままじゃ、リーダーに怒られるぜ。ボビー」


「それは、一番怖いです。アーノルドさん」


 知樹はゆっくりと歩いて【ブラックマウンテン】の前に来た。二人が目を丸くした。


「なんて事だ、爆弾野郎だぜ。ボビー」


「オーマイ、ゴッド。この爆弾野郎。何しに来やがった」


「こいつ、店を爆破するつもりだ。ボビー」


「アーノルドさん、僕が爆弾野郎を始末します」


「お前には無理だ。ボビー」


「さぁ、掛かって来いよ。爆弾野郎」


 知樹はアンダースローの構えになった。


「こいつ、マジか。逃げろ。ボビー」


「アーノルドさん、僕は逃げません」


 アーノルドがボビーを無理矢理抱えて横に飛んだ。


「脳みそぶちまけろよ」知樹が下から上へ拳を突き上げた。


 爆発と轟音、地面が大きく揺れた。店は潰れた。アーノルドとボビーは店の前で倒れていた。


「バッズを舐めるからこうなるんだ」知樹が叫んだ。


 権三郎さんは「知樹、行くぞ」と言いながらエアカーを店の前に回した。知樹はエアカーに飛び込んだ。二人は事務所に向かった。


 各地でギャングの抗争が起きていた。知樹は何故か後味が悪かった。何故なのか理解も出来なかった。店を破壊した。それだけなのに気分が悪かった。


「二人とも、お疲れさん」岩本さんが話した。


「情報によると、どの組織も死者は出ていないね」「本当ですか」「本当だよ」知樹は嫌な気分が和らいだ。


「医療技術は凄いからね。そう簡単に死なないよ」「負傷者は沢山いるだろうけどね」


「さて、これからどう動こうか」岩本さんは悩んでいた。


「明日の朝、九時に石狩湾で待ち合わせだ」


「なら、俺も抗争に参加しますか」知樹が聞いた。


「いや、知樹君と権三郎さんもアネモネちゃんの護衛だね」


「問題は石狩湾までどう動くか」


「俺のエアーバイクでアネモネちゃんを連れて行くのはどうですか」


「良い案だね。火草もエアーバイクで援護する。俺たちは権三郎さんのエアカーで移動だ」


 夜はみんでお弁当を食べた。最高級の焼肉弁当だった。


「美味い、美味い」と火草がお弁当を食べていた。アネモネが「こんなの初めて食べた」と感動している。火草はアネモネにお茶を出した。


 朝、八時、みんなで石狩湾に向かった。


 知樹はアネモネを後ろに乗せるとアクセルを回した。アネモネは「すごく楽しい」と無邪気に騒いだ。


 石狩湾にたどり着くと大きな戦闘護衛艦がアネモネを待っていた。


「博士」とアネモネが走り出した。博士と呼ばれる初老の男性が知樹を手招きしている。知樹は博士の傍に向かった。


「今回は本当にありがとう。アネモネが誘拐されて大変だったんだよ」


「アネモネは一体、何なんですか」知樹が尋ねた。


「全身義体は通常、脳は生きたままの状態なんだけど知っているかね」


「アネモネは脳もサイバーウェアなんだよ。つまりは不老不死に限りなく近い存在だ」


「不老不死ですか」知樹は驚いていた。


「そうだ、アネモネは九歳で一度死んでいる。それを蘇生させたのが我々の技術だ」


「今回は他国の大企業も裏で動いていたと聞いている。本当に無事で良かった」


 アネモネは「知樹お兄ちゃん、元気でね。みんなにも伝えて」


「分かったよ。元気でなアネモネちゃん」


 そう言うとアネモネは戦闘護衛艦に乗り込んだ。博士が深く頭を下げた。


 それを見ながら知樹はアネモネを見送った。

◆登場人物


木下知樹きのしたともき 十七歳、物語の主人公。


上野火草うえのひぐさ 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


松田健司まつだけんじ 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


時田権三郎ときたごんざぶろう 五十一歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


安達京子あだちきょうこ 二十二歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


岩本信いわもとしん 二十二歳、ストリートギャング(バッズ)の幹部。


◆アネモネ 十歳、全身義体の少女。


◆ボビー 二十五歳、ストリートギャング(ギーク)のメンバー。


◆アーノルド 三十歳、ストリートギャング(ギーク)の幹部。


◇設定資料


◇全身義体、人間の体を完全に機械サイバーウェアで置き換えたサイボーグのこと。


◇北海(現ロシア領行政特区)には主に五つのギャング集団が存在する。ストリートギャング【バッズ】は構成員人数が三千人、主にニュージャパン(旧日本)系のギャング集団と言われる。


◇北海(現ロシア領行政特区)には主に五つのギャング集団が存在する。ストリートギャング【夜桜】は構成員人数が四千人、主に中華系のギャング集団と言われる。


◇北海(現ロシア領行政特区)には主に五つのギャング集団が存在する。ストリートギャング【ギーク】は構成員人数が三千人、主に黒人、アメリカ系のギャング集団と言われる。

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