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31.ギャングスター④

 知樹は健司に「あと三分、時間稼ぎが出来るか」と聞いた。健司は「任せろよ」と知樹の前に出た。


「お前ら、バッズを舐めてんのかよ。お前らごときにバッズがビビるかよ。笑えるぜ」健司は笑いながら相手を挑発した。


「何を言ってるね、この雑魚が」シャンロンが言い返した。


「ボビー、バッズはやる気満々だぜ。どうする」アーノルドがボビーに聞いた。


「オーマイ、ゴッド。アーノルドさん。殺すしかないですよ。両方とも」ボビーは筋肉隆々の体を見せつけた。


「筋肉だけじゃ、人は殺せないあるよ」シャンロンが笑い飛ばした。


「アーノルドさん、あいつは僕が叩き殺します」ボビーが構えた。


「なら、俺はこのおっさんを血祭りにするぜ。ボビー」アーノルドは権三郎さんを睨んだ。自慢のゴリラアームを見せつけた。


 この辺り一帯が殺伐としていた。誰かが少しでも動けば抗争の始まりの合図だった。


 知樹が叫んだ。「健司、権三郎さん。俺の後ろに」


 その場にいた全員が知樹に集中した。(セブンミニッツ)カウントが七分になった。


「お前ら、全員。脳みそ、ぶちまけろよ」


 知樹はアンダースローのような構えを見せた。地面から突き上げるように拳を斜め上に上げた。その瞬間、大きな爆発が起きた。轟音、爆風、地震、そこにいた総勢六十名を全て吹き飛ばした。地面には扇形の小さいクレーターが出来ている。


「逃げるんだ。火草」知樹がまた、コンセントレーションを発動させた。


「この小僧、何をしやがった。ファック」アーノルドが片足を付きながら両手をぶらりと下げていた。


「自慢のゴリラアームが台無しだ。まいったぜ。なぁ、ボビー」しかし、ボビーは何も答えなかった。他のギークメンバー、夜桜メンバーは共に壊滅状態だった。


「こいつ、今、殺しておかないと、駄目ね」シャンロンがボロボロの体で立ち上がった。


特殊能力ギフトね、とんでもない爆弾小僧あるね」シャンロンが構えた。知樹を狙ってナイフを投げた。知樹はナイフをかわしたが、何故かナイフが太腿に深く突き刺さった。


特殊能力ギフトはお前だけじゃないね。次は頭を狙うね」


「させるかよ」健司がシャンロンの前に出た。シャンロンと睨み合いになった。


「お前みたいな雑魚に用はないね」シャンロンはまたナイフを投げた。健司はそれをよけたが、何故か首筋にナイフが深く突き刺さった。健司は血反吐を吐いた。


「こ、の、野、郎」と健司がその場に倒れた。


 知樹が「お前を許さない」とシャンロンに言った。


「どうするね、次でお前も死ぬね。爆弾小僧」


 知樹が走り出した。シャンロンがナイフを投げた。


「脳みそぶちまけろよ」知樹がシャンロンを殴った。シャンロンがぶっ飛んだ。同時にナイフは地面に落ちた。シャンロンはその場で気絶した。


 知樹はコンセントレーションを発動させた。


「次はアーノルド、お前だ」そう言いながら知樹はアーノルドを睨んだ。


「上等だ、爆弾野郎、お前の喉に噛みついてやる」


「こいつは俺に任せろ」そう言いながら権三郎さんはアーノルドにスリーパーホールドをかけた。数秒後、アーノルドは地面に両膝をつけると気を失った。


 健司を早く病院に連れて行く必要があった。権三郎さんは「俺が健司を病院まで運ぶ、知樹は火草を追いかけろ」と言った。


 知樹はデバイスで火草に連絡をした。「みんな、無事なの」と火草が言った。「俺は足をやられた、健司は病院行きだ」「火草はどこに居るんだ」「エアカーで走ってる」「なら、どこかで合流しよう」「分かった」そう言いながら通話を切った。


 知樹はナイフを抜き取ると止血パッドで太腿を治療した。夜桜のメンバーが乗ってきた鍵の付いたエアーバイクに跨るとアクセルを回し、走り始めた。


 火草とは札幌市内で落ち合う話になった。知樹は市内まで全速力で向かった。


「みんな、無事か」知樹は火草たちを心配した。「なんとか、無事ね」京子さんが言った。「知樹お兄ちゃんは大丈夫なの」アネモネが心配そうな声で知樹に尋ねた。知樹は「お兄ちゃんは全然、大丈夫だよ」と笑って見せた。


 みんなで打ち合わせをした。衛星のカメラがエアカーを追いかけて来るのでエアカーは捨てて行く事になった。どこに向かうか迷っていると「事務所が一番良いかな」京子さんが提案した。知樹たちは行く当ても無いので、一先ず、衛星カメラから見えないように、エアートレインを乗り継いで事務所に移動することにした。


「大変だったね」岩本さんが出迎えた。


「君がアネモネちゃんかな。よろしくね」岩本さんが笑顔になった。


「取り合えず、バッズもメンバーを集めている」


「ギークと夜桜も集まっているそうだ」


「久しぶりに全面抗争だね」


「しかし、知樹君。六十人程、一人で倒したんだって。もう、噂が広まっているよ」


「みんなのおかげです。時間を稼いで貰いました」


「そうだね、みんな良くやったよ」岩本さんはみんなを労った。


「衛星カメラか、今後、気を付けないと駄目だね。作戦が台無しだよ」岩本さんが肩を落とした。


「俺たちもまさか、衛星カメラで追いかけて来るなんて予想していませんでしたよ」知樹がカバーを入れた。


「アネモネちゃんを守るんだ」火草が言った。


「何時までですか、岩本さん」知樹が聞いた。


「明日の朝、九時まで」岩本さんが気を取り直した。


「考えがある」


「今回は派手に行こう」


 そう言いながら岩本さんは不敵に笑った。

◆登場人物


木下知樹きのしたともき 十七歳、物語の主人公。


上野火草うえのひぐさ 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


松田健司まつだけんじ 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


時田権三郎ときたごんざぶろう 五十一歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


安達京子あだちきょうこ 二十二歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


岩本信いわもとしん 二十二歳、ストリートギャング(バッズ)の幹部。


◆アネモネ 十歳、全身義体の少女。


◆ボビー 二十五歳、ストリートギャング(ギーク)のメンバー。


◆アーノルド 三十歳、ストリートギャング(ギーク)の幹部。


◆シャンロン 三十歳、ストリートギャング【夜桜】の幹部。


◇設定資料


◇全身義体、人間の体を完全に機械サイバーウェアで置き換えたサイボーグのこと。


◇北海(現ロシア領行政特区)には主に五つのギャング集団が存在する。ストリートギャング【バッズ】は構成員人数が三千人、主にニュージャパン(旧日本)系のギャング集団と言われる。


◇北海(現ロシア領行政特区)には主に五つのギャング集団が存在する。ストリートギャング【夜桜】は構成員人数が四千人、主に中華系のギャング集団と言われる。


◇北海(現ロシア領行政特区)には主に五つのギャング集団が存在する。ストリートギャング【ギーク】は構成員人数が三千人、主に黒人、アメリカ系のギャング集団と言われる。

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