29.ギャングスター②
作戦、前日。五人は知樹の部屋で作戦を練っていた。
「色々と調べてきたぞ」権三郎さんが説明を始めた。
「これが輸送ルートだ」と地図を示した。札幌郊外の森の上を走るルートだった。
「この高台からスターエクスプレス社【アメリカ】の輸送機を破壊する。お前たちはこの崖を降りて敵の懐に潜り込め。藪の中で戦うんだ」
「敵の援軍が来るまで三十分だ」
「三十分だからな。忘れるなよ」
知樹は人数分のアイスティーをみんなに配った。「紙コップですみません」「飲めれば何でもいいぞ」権三郎さんがアイスティーを一気に飲み干した。
「何か質問はあるか」
「特に無いです」健司が女の子の姿で言った。
「お前は男だったり、女だったりで忙しいな」権三郎さんが笑った。
「色々と大変なんですよ。俺の特殊能力」
「権三郎さんは特殊能力が使えるんですか」知樹が質問をした。
「俺には特殊能力は無い。ただ、両手、両足。サイバーウェアだからな。何も問題は無い」
「アーマーギアって何なんですか」知樹が聞いた。
「アーマーギアは特殊装甲の事だ。歩く戦車とも言われている」
「エアカーはどこから来るんですか」火草が質問をした。
「エアカー(ステルス機能搭載)は既に現場に隠してある。高台の傍に置いてあるから十五分くらいで準備可能だ」
「他に質問はないか」
「無いなら明日、朝、八時に作戦決行だ」
それから五人は解散した。知樹が後片付けをしていると健司も手伝ってくれた。「いよいよ、明日だな」「うん、そうだね」「今日は早めに寝ておけよ」「了解、ボス」そう言いながら知樹は明日に備えた。
朝、知樹は起きてシャワーを浴びた。装備を整えると権三郎さんが迎えに来た。「準備はいいか、現場に向かうぞ」そう言いながら五人は作戦現場に向かった。
高台にエアカーを止めると権三郎さんは支度を始めた。大きい四連ロケットランチャーを手に取ると構えた。「どうだ、似合うだろう」と健司に見せた。健司は「渋いですね」と言いながら右手のサイバーウェアに油を差していた。京子さんは「今日は晴れるかな」とデバイスで天候を確認している。火草は眠そうな顔で「眠い」と目を擦っていた。知樹はヘッドギアを被って締め付けの調整をしている。
乗ってきたエアカーを自動運転で帰した。茂みに隠れながら全員、無言になった。あと五分くらいでターゲットが現れる。権三郎さんは「みんな、準備は良いな」と最後の確認を入れた。
遠くからスターエクスプレス社【アメリカ】の輸送機が現れた。あと少しで高台の近くを通る。
「いくぞ、野郎ども」権三郎さんが四連ロケットランチャーを撃ち始めた。輸送機の後ろにロケット弾が命中した。輸送機は徐々に高度を保てなくなって地面に不時着した。知樹と健司は崖を滑り落ちた。健司は警護ドローンを目指して走り出した。知樹はコンセントレーションを発動させた。
無数の警護ドローンが辺りを散開している。健司は藪に隠れながら警護ドローンを右手のベアナックルで殴り始めた。「デストロイ」と言いながら警護ドローンを一体破壊した。
輸送機の中からアーマーギアを装着した警護兵が二人出てきた。知樹は藪の中に隠れた。警護兵は別々に辺りを散開している。知樹は隠れながら藪の中を移動した。警護兵の後ろに出ると「脳みそぶちまけろよ」と言いながらアーマーギアを装着した警護兵を右手で殴り飛ばした。アーマーギアを破壊された警護兵はその場で気を失った。そして、またコンセントレーションを発動させた。
健司は藪の中に隠れながら、次々と現れる警護ドローンを破壊して回った。警護ドローンからレーザー弾で攻撃をされても防弾、防刃チョッキでそれを防いだ。「デストロイ」今日の俺は一味違うぜ。と思いながら警護ドローンを相手にしていた。
もう一人のアーマーギアを装着した警護兵は藪の中をレーザーマシンガンで撃ちまくっていた。知樹はその後ろ側に回った。が、相手に気づかれてレーザーマシンガンを撃ち込まれた。頭に何発か食らったがヘッドギアのおかげて無事にそれを防いだ。知樹はポケットから煙幕手榴弾を取り出すと警護兵に向けて投げた。視界を遮られた警護兵はその場から逃げようとしたが、知樹がその隙を見逃す訳が無かった。「脳みそぶちまけろよ」今度はアーマーギアの正面を右手で殴ると全てが吹き飛んだ。
健司は疲弊していた。「少し、きついな」と肩で息をした。そこに知樹が合流した。「手伝いにきた」「そっちは終わったのか」「終わったよ」「なら、遠慮なく頼らせて貰うぜ」もう一度、気合を入れた。
ゆっくりと火草、京子さんのペアが現れた。警護ドローンは健司の方角に集中していた。今なら輸送機はノーマークだった。「解除に十秒掛かるわよ」京子さんが火草にそう話しながら扉に手を当てた。輸送機の扉が開いた。中には厳重に管理された棺桶が入っていた。その棺桶の鍵を京子さんが開けると、中には全身義体の子供が寝そべっていた。「これがお宝なの」と京子さんは驚いた。
そうこうしている間に権三郎さんのエアカー(ステルス機能搭載)が輸送機にたどり着いた。「もう二十四分だ。急げよ」火草が子供を抱えて車内に座った。それに続いて京子さんも車内に入る。知樹と健司が走って来た。「しんどいな」と健司が愚痴をこぼした。知樹は健司の肩を支えながら車内に飛び込んだ。扉を閉めると権三郎さんが「行くぞ」と言いながらアクセルを全開にした。
◆登場人物
◆木下知樹 十七歳、物語の主人公。
◆上野火草 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。
◆松田健司 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。
◆時田権三郎 五十一歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。
◆安達京子 二十二歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。
◇設定資料
◇ベアナックル、エレクトロ社【ロシア】の旧世代、軍事用サイバーウェア。旧世代とはいえ、そのパワーはコンクリートの壁を粉々にする。
◇アーマーギア、軍事用特殊装甲、別名、歩く戦車。他には建築用の装甲がある。主に力仕事、解体作業で使われる。
◇全身義体、人間の体を完全に機械で置き換えたサイボーグのこと。




