28.ギャングスター①
九月上旬、まだ暑さが残る札幌市内に知樹と健司はいた。バッズの通常業務(自動販売機の補充と現金回収、釣銭両替)をこなしていた。
「暑いな、少し休憩しようか」
「そうだね」
そう言いながら自販機の前で休憩を取った。二人で会話をしていると岩本さんから連絡が来た。
「事務所に来られるか」
「はい、行けますよ」と健司が答えた。
「じゃ、待っているよ」
健司は作業を途中で止めてエアカーを事務所に回した。
「二人ともお疲れさん」岩本さんが出迎えた。火草はアイスコーヒーを四つ運んできた。
「実はオーダーの件なんだけど」
「今回は権三郎さん、京子ちゃんにも参加して貰う」
「ちょっと、大掛かりな案件なんだ」
「大掛かりな案件。何ですか」健司が質問をした。
「うーん。これはちょっとギャングっぽい仕事かな」
「簡単に説明すると荷物の強奪だ」
「強奪」知樹が口にした。
「そう、強奪だね」
「みんなで襲って荷物を奪う。昔のギャング映画でありそうな話だよ」
「荷物って金塊かダイヤですか」知樹が笑いながら質問をした。
「これが、分からないんだよ」
「ただ、途轍もないお宝なんだそうだ」
「今回のギャラは一人、八百万円」
「まじっすか」健司が驚いた。
「な、悪い話じゃないだろう」岩本さんが笑った。
「ただ、大変な案件だ」
「これを輸送しているのがスターエクスプレス社【アメリカ】だ」
「武装レベルが軍と同じ、つまり軍隊とやり合うって話だ」
「それ、かなり危険なんじゃないですか」健司が呆然としていた。
「まぁ、ちゃんと作戦があるから」
「特に健司なんかは暴れたくてしょうがないだろう」
「今回は好きなだけ暴れていいぞ」
「まじっすか。なんかやる気が出てきた」健司は気合を入れた。
「作戦を説明する」
「スターエクスプレス社【アメリカ】の輸送機をロケットランチャーで破壊する。これは権三郎さんの仕事だ」
「墜落した現場付近の警護ドローンを破壊する。これは健司がやる」
「アーマーギアを装着した警護兵を倒す。これは知樹君が担当だ」
「火草は京子ちゃんのボディーガードと、万が一の為、お宝をスコープで追跡する」
「京子ちゃんには特殊能力、マスターキーを使用してお宝の鍵を開けてもらう」
「最後に権三郎さんが用意した。特別なエアカー(ステルス機能搭載)でお宝を運ぶ。以上だ」
「映画みたいですね」知樹が言った。
「まぁ、上手く行けばの話だけどね」岩本さんはタバコを手に取った。
「誰の依頼なんですか」火草が質問をした。
「エレクトロ社【ロシア】だ」
「サイバーウェアの大手じゃないですか、俺のベアナックルもエレクトロ社【ロシア】だ」健司が興味を抱いた。
「そうだね、世界企業の一つだからね」
「でも、内緒だよ。本当は話をしたら駄目なんだけど、君たちなら情報が漏れる事もないしね」
「さて、作戦は三日後だ。上手く行く事を願っている」
知樹と健司は通常業務に戻った。お酒を自販機に補充している。
「なんか、俺、緊張してきた」健司が知樹に言った。
「どうなるんだろうね」知樹も若干、緊張していた。
夕方まで二人で作業をした。夕方になると気温も少し下がった。
そこに火草が尋ねてきた。
「お、火草。なんか用か」健司が尋ねた。
「お前たちヘッドギアを持っているか」
二人とも「持っていない」と答えた。なら、買いに行くぞと二人を強引にウェポンショップに連れて行った。店内に入るとごつごつとしたヘッドギアを頭に被せられた。「領収書を貰って来いよ」火草は店の外に出て行った。
「突然、何なんだ」健司が唖然としていた。
「この作戦で使うんじゃないかな」知樹は店内にあるヘッドギアを色々と眺めていた。
「このギアがおすすめだよ」と店員が話しかけてきた。
「メタルインダストリー【アメリカ】の最新モデルだ」「頑丈でフェイスガードも付いている」
「おいくらですか」知樹が尋ねた。「二つで三十万円だ」「なら、お願いします。領収書も」知樹がデビットカードで支払いをした。
「いつの間にカードなんて作ったんだ」
「現金は口座に入れてあるよ。ポイントも貯まるし」
二人は外で待っている火草の所に戻った。
「買ったか、なら帰る」火草が帰ろうとしていた。
知樹が夜ご飯、みんなで食べに行かないかと火草に聞いた。
「何を食べるんだ」
「たまには焼肉なんかどう。前祝いに」
「行く」そう言いながら火草はデバイスを見た。
健司が「一時間後に繁華街で待ち合わせしようぜ」と二人に言った。
知樹はアパートに戻ってシャワーを浴びた。一先ず、健司と合流して繁華街に向かうと火草が焼肉屋の前で立っていた。「遅いぞ、お前たち、焼肉はお前らの奢りな」
「何を言っているんだ。一時間後に来たじゃねーか」健司がそう言うと火草は「私は一時間待ったんだ」と返した。知樹が「まぁまぁ、ここは俺が奢るから」と二人を制止した。
店の中に入ると飲み物を注文した。知樹と健司は生ビールを火草は烏龍茶を頼んだ。
「上カルビ、上ロース、上タン塩、上ミノ、上ホルモンを十人前」火草が注文をした。
知樹は「火草、お肉は逃げないからゆっくりと注文しなよ」
「お前は知らないからだ。お肉は逃げることもあるんだ」と火草が言った。
飲み物が届くとみんなで乾杯をした。健司は女の子の姿に変わった。
「ふーん、今日はブラジャーを身に着けているんだな」火草が言った。
「スポーツタイプの奴だよ。付けないと絶対にお前が文句を言うからな」
「分かってるじゃないか、下着も変えろよ」
「それは無理だ」
「お肉、焼けたよ」知樹が間に入った。
火草は「美味い、美味い」とお肉を食べた。健司は「火草、俺にも上カルビを食わせろ」「嫌だ」「お前はそこのピーマンでも食ってろ」と二人は争っていた。知樹はそれを見ながら笑っていた。「二人とも仲が良いんだな」と呟くと「それは無い」と二人が答えた。
◆登場人物
◆木下知樹 十七歳、物語の主人公。
◆岩本信 二十二歳、ストリートギャング(バッズ)の幹部。
◆上野火草 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。
◆松田健司 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。
◆時田権三郎 五十一歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。
◆安達京子 二十二歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。




