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24.給料日

「ノーペイン・ノーゲインか、伝説級の人物だ」岩本さんが話をした。


「完全に負けました」知樹が肩を落としていた。


「いやいや、相手の左手を破壊したんだろう。相当凄いことだよ」


「化け物でした」健司も肩を落としていた。


「まぁ、相手が悪かったね」と岩本さんが二人を宥めた。


「終わったことは仕方が無い。次にどう活かすかだ」


 それより、今日は給料日だ。と封筒を二人に渡した。知樹は封筒を確認すると中に三百四十万円が入っていた。健司も封筒を確認している。二人は顔を合わせると笑った。


「無駄遣いは程々に。それじゃ、失礼するよ」岩本さんは奥の部屋に入っていった。


「知樹は何に使うんだ」健司が尋ねた。


「俺は大内さんに金を返す、あとは柚葉にお土産を送る」健司はどうするんだと知樹が聞いた。


「俺は軍事用のサイバーウェアを買う。やっぱり、どう考えてもエレクトロ社【ロシア】の中古のベアナックルがいいな」


 健司は本当に嬉しそうだった。これまでの戦いの中で色んな経験を積んだからだ。「もう、お荷物はごめんだ」「じゃあな、知樹。夜にでも会おうぜ」そう言いながら事務所を出て行った。


 知樹は事務所で大内さんに連絡を入れた。


「知樹か、元気にしてたのか」大内さんが出た。


「元気にしてましたよ。それで、借りていたお金を返したいんですけど」


「無理しなくて良いんだぞ、元々はあげるつもりで渡したんだからな」


「俺、こう見えて結構稼いでいるんですよ」


「なに、本当か。どうした。宝くじにでも当たったか」


「そんな感じです。ってそんな訳ないでしょう」


「まぁ、詳しくは聞かないよ」口座番号を知樹に伝えた。


「何かあれば連絡するんだぞ」そう言いながら大内さんは通話を切った。


 次は柚葉に連絡を入れた。


「おはよう、知樹ちゃん。元気にしてた」


「おはよう、柚葉。俺は相変わらずだ。ところでお土産を送る、柚葉宛にするからみんなに配ってくれよ」


「良いよ、甘いのが良いな、甘いの」


「これから買いに行くところだから甘いのな。分かった」


「気をつけてね。知樹ちゃん」


「おう」と言いながら通話を切った。


 知樹はお金を振り込む前に病院に向かった。腰にある認証チップを外していなかったからだ。施術は十五分くらいで終わったが、待ち時間が三時間だった。それが終わるとコンビニで大内さんにお金を振り込んだ。そして、お菓子屋を探した。何が良いかな。知樹は考えていた。そこに今井里奈が現れた。「知樹さん、こんにちは」と知樹に声を掛けてきた。「そうだ。里奈は美味しいお菓子屋さんとか知っているか」「はい、何軒かありますよ」二人でお店を回ることになった。


「これなんかどうですか」里奈は可愛いヒヨコのお菓子を選んだ。


「じゃ、それを百人分下さい。贈り物にするんで送ります」と店員に頼んだ。


 お店のカウンターで児童養護施設の住所を入力した。それが終わると支払いを済ませてから里奈と喫茶店に入った。


「あれから調子はどう」


「何も変わっていないです」里奈が答えた。


「でも、何故だか心がすっきりしてるんですよ」


「そうか」そう言いながら知樹はコーラフロートに口を付けた。


「知樹さん、実は相談したい事があるんです」


「何、また人探しとか」


「違います。その、バッズに入りたいんです。駄目ですか」


「どうしてストリートギャングに入りたいんだ」


「危ない世界だよ」


「分かっています、でも私でもお役に立てるのかなと思いました」


「まぁ、岩本さんに話してみてからだな。次、事務所に行ったら聞いてみるよ」


「ありがとうございます。知樹さん」そう言いながら里奈は通信番号を知樹に伝えた。


 二人は喫茶店を出て外で別れた。


 知樹はエアーバイク販売店に向かった。店頭には様々なエアーバイクが展示されていた。


「いらっしゃいませ」「何かお探しですか」と店員が話をした。


「トリックを決めたいんですが、良いのありますかね」と知樹が尋ねた。


「ならポンダ社【ニュージャパン】のレーサーエックスシリーズをお勧めしますよ。小回りが十分に効くし、スタートダッシュも良いですよ」


「価格はいくらくらいですか」


「どれも百二十万円くらいですね」


「では、レーサーエックスの赤いモデルを下さい」知樹は指を差した。


「ありがとうございます」と店員が言った。


 支払いを終えてエアーバイクに跨ると知樹は夕方のエアーロードを走った。


 どのくらいぶりだろう。気分が爽快になった。自由だ。知樹はこんなに自由を感じたことが無かった。何かに囚われているように生きてきた。だが、今は違う。誰よりも自由だと思った。武田さんが言っていた言葉が頭に浮かんできた。「俺たちみたいなのにとっては楽園かもな」そうだ。その通りだ。誰もいないエアーロードでアクセルを全開にした。車体が強く振動している。ただ、エアーバイクに跨って操縦をしているだけだった。それだけで心から自由を感じた。夕暮れが暗闇に変わる。ライトを照らしながら知樹のエアーバイクはエアーロードをどこまでも突き進んだ。潮風の匂いとひんやりとした空気が体にあたる。ここはどこだろう。どこでもいいや。知樹はアクセルを強く握りしめていた。

◆登場人物


木下知樹きのしたともき 十七歳、物語の主人公。


松田健司まつだけんじ 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


岩本信いわもとしん 二十二歳、ストリートギャング(バッズ)の幹部。


鈴木柚葉すずきゆずは 十六歳、主人公と同じ児童養護施設の仲間。


大内重之助おおうちじゅうのすけ 三十八歳、警視庁少年育成課の刑事。


今井里奈いまいりな 十七歳、女子高生。


武田哲夫たけだてつお 四十歳、密入国の案内人。


◆ノーペイン・ノーゲイン 年齢不明、アメリカでは超一流の殺し屋。名前の意味は「痛みなくして得るものなし」


◇設定資料


◇レーサーエックス、ポンダ社【ニュージャパン】のエアーバイク。主にトリック用に開発されたマシーン。

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