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11.お嬢様の夏休み①

 八月上旬、事務所に呼ばれたので札幌駅近くの高層ビルの二十八階に出向いた。岩本さん、健司、火草ひぐささんがソファーに座っていた。火草さんがこちらを強い視線で睨んでいる。やはり、相当怒っているのだろう。場の空気感が緊張していた。岩本さんが「知樹君も座りなよ」と言い、俺がアイスコーヒーを持ってくるよ。とその場から離れた。直後に火草さんが「あー、ぶっ殺してえ」と独り言を話した。


「火草さん、本当にすいませんでした」と知樹はその場で土下座をした。


「お前、殺す気だったろ。冗談で済む話じゃねーんだよ」


「左手がサイバーウェアじゃなかったら、頭かち割って死んでたぞ」


 火草さんは手元のナイフをくるくる回し始めた。怒りは収まりそうもなかったが、そこへ岩本さんがアイスコーヒーを持って戻ってきた。


「火草、土下座までしてるんだ。少しは勘弁してやれないか」


「岩本さん、無理です」


「火草、今回のオーダーは三人でやるんだよ。少しは冷静になれ」


 火草さんは苦虫を潰したかのような顔だった。


「それと知樹君、ギフトを授かったんだって、おめでとう」


「能力は判明していないのか」


「まだ、能力が何なのかは分からないですね」


「そうか、分かったら教えてくれよ。リーダーに報告しないといけないから」


 知樹は土下座を止めてソファーに座った。そういえばリーダーが誰なのか知樹は知らなかった。後で健司に聞いてみようと思った。少しの間、みんなでアイスコーヒーを飲んでいた。火草さんは氷をカラカラさせている。


「今日、呼んだのは明日から三人で子守をしてもらう。勿論、オーダーだ」


「子守ですか」と健司が尋ねた。


「そう、子守だね。とある金持ちのご息女を守ってもらう」


「ボディガードを連れてくるそうなんだけど、バッズからも護衛を出すって話だ」


「誰かに狙われているとか」知樹が質問をした。


「そうだね、詳しくは分からないけど、色んな可能性を考えていた方が良いかもね」


 火草さんは無言だった。それを見た岩本さんは両手を上げながらお手上げのポーズをした。


「相手が女の子だから火草がメインになって護衛をやる、トイレとかお風呂とかね」


「残りの二人は火草のアシストを頼む、明日の待ち合わせは、朝に連絡をする」


「了解しました」と健司が立ち上がった。


 それに続いて知樹も立ち上がる。知樹は「これ、貰ってください」と火草さんに赤いスニーカーを渡した。その後、少し緊張しながら事務所を出た。アパートに向かって歩いていると知樹は健司に質問をした。


「健司、バッズのリーダーってどんな人なんだ」


「アンダーグラウンドのパンクバンド、バッズって聞いたことないか、そのバンドのボーカルがリーダーだよ」


「そのバンドなら知ってるけど、超有名だよね、本当にそうなの」


清宮錬せいみやれん、バッズのリーダーだ」


「まさか、バンド名とギャング名が同じだなんてびっくりしたよ」


「年齢は二十八歳、その若さでバッズのスーパーリーダーだ。喧嘩は無敗だそうだぜ」


「勿論、覚醒者だし、色男だし、抜群にかっこいいぞ。本当に」


「頼もしいリーダーなんだね」


「そう、その通りだ」


 健司はアパートに帰るまでリーダーの事を熱く語った。


「じゃ、明日の朝に迎えに来る」


 そう言いながら健司は自分の部屋に戻って行った。知樹はまだ揃えていない細々とした買い物を済ませるために商店街へと向かった。


 次の日、健司が部屋にやって来た。知樹も準備をして待っていた。「オーダーは絶対だからな」「了解、ボス」そうしていると岩本さんから連絡が入った。「札幌駅に九時の待ち合わせだ」二人で駅に向かった。駅構内で時間を潰していると火草さんがやって来た。赤いゴスロリの衣装だった。健司が言うには火草さんの本気モードなんだそうだ。足元を見ると赤いスニーカーを履いていた。少しは気に入ってくれたのかなと思った。


 時間が来たので三人は駅構内でお嬢様を待っていた。すると、綺麗なドレスを着た細身の女性がこちらにやって来た。三十代くらいのボディガードは二人だった。


「まだ子供じゃない、本当に役に立つの」


 年齢は十五歳、伊集院グループ、会長のご息女、伊集院亜希子いじゅういんあきこさんは呆れた顔でこちらを見ている。火草さんは「大丈夫ですよ、この二人ならお嬢様の盾に、身代わりに使えます」と言った。


「何かあったらお父様が許さないわよ」


「十分、心得ております。そうならない為にも我々が付いております」


「先ずは、ホテルに行きたいんだけど」


 火草さんは高級エアータクシーを手配した。健司と知樹は周りを注意深く見ていた。高級エアータクシーが来ると後部座席にお嬢様、ボディガードの三人を乗せて、知樹たちは前の座席に座った。札幌ヒールズホテルと言われる超高級ホテルへと到着すると火草さんが横に、健司と知樹は前、後ろになるように護衛をした。予約したスィートルームに案内されると、中を三人で調べた。危ない物は特に無かった。


「一息付いたら、札幌遊園地へ遊びに行きたい」


 了解しました。と火草さんが言うと健司と知樹に(遊園地は危険だ)とチャットで話しかけた。健司も知樹もそれを見ながら、確かに火草さんの言う通りだ。と思い、岩本さんに連絡を入れた。すると岩本さんは(出来るだけお願いを聞いてやれないか、それもオーダーなんだよ)と返信を返してきた。俺たちはそれに従うしか無かった。

◆登場人物


木下知樹きのしたともき 十七歳、物語の主人公。


松田健司まつだけんじ 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


岩本信いわもとしん 二十二歳、ストリートギャング(バッズ)の幹部。


上野火草うえのひぐさ 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


清宮錬せいみやれん 二十八歳、ストリートギャング(バッズ)のリーダー。パンクバンド(バッズ)のボーカル。


伊集院亜希子いじゅういんあきこ 十五歳、伊集院グループ、伊集院猛いじゅういんたけしの娘。


◇設定資料


◇サイバーウェア、体に埋め込む機械パーツのこと。軍事用サイバーウェアならそれによって超人的な力を得られる。

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