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10.覚醒者

 物凄い頭痛で起き上がるのも大変だった。トイレへ行くのにも壁と壁を押さえながらの移動だ。健司は何回か知樹の部屋に来てくれた。飲み物を買ってきてくれたのでそれを貰うと、一気に飲み干した。乾いていた身体に少しだけ潤いが戻った。「大丈夫か」と言いながらサンドイッチを布団の脇に置いて少しすると健司は部屋を出て行った。


 知樹は夢を見ていた。未来の楽園の夢だった。人々はその楽園へと向かって歩いていた。人々は悲しみを心の中に探していた。人々はどこが楽園なのか教えてほしいと知樹に尋ねた。でも、結局、楽園を壊すのは自分だと知っていた。知樹には意味が分からなかった。


 三日後、知樹は起き上がった。あれだけ、酷い頭痛が何事もなかったかのように治まっていた。「きつかったな」とため息をしながら言うと、布団の脇にあった昨日のサンドイッチを食べた。タオルをバッグから取り出してシャワールームに向かった。シャワーを浴びてすっきりすると布団を畳んだ。


「おーい、生きてるか」と健司が部屋に入ってきた。


「生きてるよ」と知樹が返事をした。


 知樹、お祝いだ、と袋から箱を取り出した。スマートデバイスだ。


「お前のスマートデバイスは古すぎる、新しいのに交換だ。ヒューマンロジック社【アメリカ】の最新モデルだぞ」


 これまで使っていたスマートデバイスは施設への寄付(官品を含む)で貰えるものだった。勿論、何世代も前の代物だ。でも、基本的な機能は揃っていたから使っていた。愛着もあったし、頑丈だった。


「バッズ専用のアプリも入れてあるから、新しいのに変えろよ」


「専用アプリって」


「先ず、掲示板、グループチャット、通話、緊急信号、等々の機能がある」


「優先して覚えるのは緊急信号だ」


「緊急信号が鳴っているなら、何かのトラブルが起きているから、その現場へと向かう」


「どの緊急信号も、出来ればフル装備で出向くのがベストだな。何が起きているか分からないから」


「了解です。ボス」


 知樹は昨日、買った装備を身に着けてみた。ロングティーシャツに防弾、防刃チョッキを着て短パンを履いた。腰にハンドレーザーガン、超高密度ブレードを装備した。


「意外と似合うな、もう立派なギャングだよ」


「こんな感じがギャングかなって思ってたんだよ」


「知樹、それ、その右手、お前、マジかよ、覚醒してるじゃねーか」


 知樹は右腕を見た。右手の甲に大きい十字の痣が出来ている。


「知樹、覚醒者はそれだけで給料が(二十万円)アップするんだよ」


「覚醒者はどんな能力でも貴重だからな」


「これで何かの能力が身についたと言うのか」


「そうだよ、羨ましいぞ、知樹。俺も欲しかったんだ、だけど無理だった」


 そう言いながら健司は肩を落とした。本当に残念そうだったので、知樹は話題を変えた。


「良いヘアーサロン知ってるか、髪を少し切りたいんだ」


「それならあるよ。行こうか」


 二人でヘアーサロンに向かった。健司は笑いながら、でもよ。どんな能力なんだろうな。と知樹に聞いた。知樹はこれと言って何が変わったのか分からないんだよ。と健司に言った。健司は岩本さんの話をした。岩本さんが言うには能力が何なのかは時間が掛かると言っていたそうだ。分かりやすい例もあれば分かりにくい例もあるんだそうだ。すると、知樹はジャンプをして見せた。飛べるんじゃないかと思ったからだ。健司はそれじゃないだろうと笑った。


 雰囲気の良いヘアーサロンについて椅子に座ると、三十分くらいで髪を切り終えた。何だか、身体も心もさっぱりとした。ついでに健司も髪を切っていた。知樹は冷たい紅茶を飲みながら目を閉じた。「何だかんだで疲れたよ」と知樹が言うと、健司がおじいちゃんみたいだなと笑った。健司が髪を切り終えると二人で町を歩いた。


 健司が火草のプレゼントを買おうと言い出した。スニーカーなんてどうだ。と言うと、知樹はシューズショップに行こうと言った。二人で店内を探して回った。


「あいつのご機嫌を直しておいた方がいいぞ」


「やっぱり、そうだよね」


 知樹はやりすぎだったと少し後悔していた。まさか病院送りにするつもりは無かったからだ。もう、同じギャングとして火草さんは仲間だった。


「俺はこれにする」健司は流行りのスニーカーを購入した。


「俺はこれとこれにする」


 最新モデルの赤いレディースのスニーカーと大き目のスニーカーを購入した。火草さんには赤いレディースのスニーカーをプレゼントしようと思っている。


「それなら、ご機嫌も少しは直るかもな」


 健司はそう言いながら、次は射撃場に行こうぜと言った。取り合えず、銃に慣れておいた方がいいと言うので知樹も射撃場に向かった。撃つのは生まれて初めてだ。


 チャンピオンガンシューティングという射撃場でレーンに入った。ゴーグルを装着して目標の的に向かってハンドレーザーガンを撃ち尽くした。意外と真ん中に命中している。次は動くターゲットに向かってハンドレーザーガンを撃ち尽くすとこれも真ん中に命中している。


「知樹、本当に撃つの初めてか」


「初めてだけど」


 お前は本当に大きくなるのかもな、俺も負けないぞ。知樹。そう健司は思うのだった。

◆登場人物


木下知樹きのしたともき 十七歳、物語の主人公。


松田健司まつだけんじ 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


岩本信いわもとしん 二十二歳、ストリートギャング(バッズ)の幹部。


上野火草うえのひぐさ 十八歳、ストリートギャング(バッズ)のメンバー。


◇設定資料


◇ハンドレーザーガン、太田工業【ニュージャパン】のハンドレーザーガン。汎用バッテリーマガジンで八十発撃てる。安定性能は抜群で命中力も高い。初心者向けのハンドレーザーガン。


◇超高密度ブレード、太田工業【ニュージャパン】の超高密度ブレード。軽くて丈夫で扱いやすい。


◇ボディアーマープレート、ファーマスインダストリー社【ロシア】の防弾、防刃チョッキ。


◇インフィニティ(錠剤)飲むとまれ特殊能力ギフトを授かる。服用すると激しい乗り物酔いと頭痛で三日間くらいは寝込む。特殊能力ギフトを覚醒させると身体のどこかに十字の痣が出来る。

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