2-2.テネブリスの森
常闇での教導クエストが始まります。
教導クエストの舞台は、学都から幌馬車で二時間ほど南、「常闇の森」だった。
教官はバルタ街道の護衛を務めたパーティーから黒魔女と少年狩人。二人ともC級の冒険者だ。少年狩人は御者役も兼ねていた。
立会人は、学都冒険者組合の受付嬢エリーゼ。今日もギルドの制服だったが、いつものスカートではなくハンティングパンツを穿いている。面倒見の良いお姉さんといった感じのエリーゼだが、D級冒険者の資格も持っているという。ギルドの受付嬢はただの事務職ではないようだ。
森への道は次第に狭くなっていった。木々の密度が高まり、両側から森が迫り、緑の壁の間を進んでいるような状態になる。それでも、道はそれなりに整備されていた。森は、ポーションなどの材料となる薬用植物の宝庫だからだ。
森には木々が濃密に茂り、日光が地面まで届かないという。昼なお暗闇が支配することから名付けられた森だ。
やがて密林の中にぽっかりと開かれた空き地で馬車が止まった。ここがテネブリスの森の入り口だった。空き地には簡易的な宿泊設備も整った作業小屋が建っている。
馬車から降りると、じめっとした空気が理一郎の顔にまとわりついた。
理一郎は落ち着くためゆっくりと深呼吸をした。湿った土の匂いが鼻腔に満ちる。どこからともなく聞こえてくる水の滴る音が、森の静寂をより際立たせていた。
「では、改めてクエストの説明をします」
エリーゼが、きりっとした表情で話し始めた。その真剣な眼差しに、思わず背筋が伸びる。
通常、教導クエストは何人かの仮冒険者がパーティーを組んで課題に挑戦する。だが今回の参加者は、理一郎ただ一人だった。ギルドマスターは、理一郎の魔法を公にしたくないと考えたのだ。そのため、教官役もすでに物理学魔法を見たことのある駅馬車護衛パーティーの中から選ばれた。
「今回の課題は、五種類の薬用キノコを採取することです。対象となるのは、ミツタケ、ホタルタケ、チカラタケ、カゲタケ、オトタケです。それぞれ特徴的な外見と効能がありますので、慎重に見極めてください」
理一郎は、事前に渡されていた資料に目をやる。あまり良質でない紙に刷られていて、何度も読み込んだのでボロボロになりかけている。それぞれのキノコの形や大きさなどはすでに頭に入っていた。
エリーゼは一呼吸おいて続けた。
「ただし、重要な注意点が一つあります。常闇の森にはコケオオガエルという危険な魔物が生息しています。遭遇した場合は、適切に対処しなければなりません」
理一郎は緊張した面持ちでうなずいた。
「今回の教官役は、魔女のサマンサさんと狩人のジルバウさんです」
エリーゼの後ろで黒魔女サマンサが妖艶に微笑みながら手を振っている。相変わらず大きく胸元が空き、腰から裾に掛けて大きくスリットの入った黒のロングドレスを着て、大きな魔女帽を被っている。肌は透き通るように白い。この森では上空からの視界共有は役立たないので、使い魔のカラスは連れていなかった。
褐色の肌ともじゃもじゃ髪のジルバウは、親しげに笑いかけてきた。歳が近いせいか、なんとなく理一郎に親近感を抱いている。軽装だが要所はしっかりと革の防具でカバーし、背中に愛用の弓を負っている。
「お二人は万が一の時は理一郎さんを助けます。でもその時点でクエストは失敗です。よろしいですか? 何か質問はありますか?」
理一郎は「いいえ」と返事しようとしたが、想像以上に緊張しているらしく喉がからからで、上手く声を出せる気がしなかった。ただ首を横に振った。
「では、始めてください。健闘を祈ります」
エリーゼの合図と共に、理一郎は森の中へと足を踏み入れた。
森の奥へと向かう後ろ姿を見送りながら、少年狩人ジルバウが誰に言うでもなくつぶやいた。
「大丈夫なのかな、あいつ。コケオオガエルはCクラスの魔物じゃん。こんな難しい教導クエストなんて、学都のギルドでは初めてだよね」
黒魔女サマンサは、ジルバウのもじゃもじゃ髪をぽんぽんしながら応えた。
「それだけ大物ってことなのよ。ね? 受付のお嬢さん」
「エリーゼです。私も心配ですが、組合長の指示ですから。さ、行きましょう。見失ってしまいます。ただし、本当にぎりぎりになるまでは手助けしないでくださいね」
狩人ジルバウを先頭に、三人は理一郎を追って森に入っていった。
* * *
苔むした巨木が立ち並び、厚く積もった腐葉土が足元に沈む。森の中は完全な暗闇というわけではなかった。木々の枝が織りなす天蓋は、まるで緑の大聖堂のステンドグラスのように光を濾過し、森の中に神秘的な薄明かりを作り出している。
奥に行くにつれて湿気がさらに増していった。ギルドが作成した資料はかなりの情報量だったが、生育環境などが事細かく記されていた。それを思い出しながら適地を探す。しばらく歩くと、倒木の根元にびっしり生えた苔の中に黄金色が見えた。近寄ると、甘い香りがする。しゃがみ込んで観察すると、傘に水滴のように蜜を付けたキノコがあった。資料は実に正確かつ有用だった。
その蜜は体力回復や疲労回復に非常に効果的で、冒険者にとって貴重な栄養源となる。傷の治癒を促進する効果もあり、ポーションの素材にもなった。ただし、そのまま食べると少量でも酩酊してしまうため、適切な処理が必要だ。そのためか、獣や魔物も食べない。
――これは、……ミツタケか。不思議なキノコがあるものだ。もしも俺が生物学者だったら、この世界は研究テーマの宝庫だったろうな。
そんなことを思いながら、理一郎は小型ナイフで慎重に採取し、保存袋に入れる。
森の中をさらに進み、目を凝らしてキノコを探し続けた。湿った空気が肌にまとわり付く。時折聞こえる正体不明の不気味な鳴き声に、背中がゾワゾワする。木々の間から差し込む薄明かりが枝の影を踊らせ、まるで森全体が生きているかのような錯覚を起こさせた。
そうこうしているうちに、カゲタケ、チカラタケ、オトタケも見つかった。
カゲタケは真っ黒なキノコで、気配を消すためのポーションの原料になる。
傘に赤い無数の棘を生やしたチカラタケは、一時的に筋力と闘争心を高めるが、効果が切れると強い倦怠感に襲われるため、使いどころが難しい。
オトタケは傘の表面に電子回路のような模様があり、五感を鋭敏にする効能があり、探索や潜入に役立つポーションの原料となる。
この時の理一郎は知らなかったが、どれも薬用キノコとしては特級品で、採取難易度の高さから、市場ではかなりの高値で取り引きされている。
「あとはホタルタケか――」
そう呟いた瞬間、木の陰から巨大な影が飛び出してきた。
全長二メートル、体重百キロはあろうかという巨大なカエルのような魔物、コケオオガエルだ。
暗緑色の肌には苔やキノコが生えており、赤黒い目が不気味に光っている。
カエルと名は付いているが、この魔物は舌で獲物を絡め取るのではなく、鋭い歯でかみ砕いて動きを封じ、丸呑みして強力な胃液で消化する。口からはその消化液が滴り落ち、薄い煙を上げて腐葉土を溶かす。四肢には鋭い爪が生えており、樹皮を掻きむしった跡が周囲の木々に残されていた。
コケオオガエルは強力な後ろ足で大きく跳躍し、襲いかかってきた。その動きは予想以上に素早い。
「くっ!」
咄嗟に身を翻し、かろうじて避けたものの、コケオオガエルの爪が腕を掠め、あやうく裂かれそうになった。
コケオオガエルは着地するやいなや、再び跳躍の態勢に入る。魔物の目は理一郎を捉えているが、縦に細長い瞳孔を備えた目からは何の思考も感情も読み取れない。けっしてどんなコミュニケーションもできないことを実感させる目だ。大きく開いた口から吐き出される息は、腐った肉の匂いがする。
コケオオガエルが再び自分に向かって跳躍した。
理一郎はメガネを押し上げてゾーンに入った。
この攻撃パターンは、グラスランナーに似ている。ならば――。
その瞬間、視界に方程式が浮かんだ。
x(t)=x0+vt
等速直線運動の式だ。
まず速度をゼロにして、魔物の運動を停止させる。
「その理に従え!」
停止した瞬間、理一郎は横に飛んで魔物の突撃を回避できる位置に逃れ、同時に今度は速度を秒速百メートルに書き換えた。
次の瞬間、コケオオガエルは猛烈な速度で地面に激突する。
その衝突エネルギーは、ビルの百七十階から落下したときの衝撃に匹敵する。コケオオガエルは自身の質量エネルギーで、文字通り圧潰した。
緑色の体液と粘液上の消化液が辺りにまき散らされ、周囲の植物を溶かしていった。理一郎は、毒物耐性を付与した白衣のおかげでなんとか難を逃れた。安くない買い物だったが、追加効果を付与しておいて良かったとつくづく思う。
――やりすぎだったか。
息を切らしながら、肉辺となったコケオオガエルを見つめた。速度はあんなに速くしなくてよかったようだ。バラメーターを大きく書き換えるほど、身体に負担がかかる。心臓が激しく鼓動している。
黒魔女と狩人は掩護の体制をといて、ただただ驚きの表情を浮かべている。エリーゼも息を飲んで目を輝かせていた。
「やっぱり、すごい魔法ねぇ」
黒魔女サマンサが艶っぽい声で近づいてきた。
「その魔法、もっと詳しく教えてほしいわ。私にも使えるかしら?」
黒魔女の吐息が耳元をくすぐる。十代の体が敏感に反応し、思わず顔が赤らんでしまう。
「物理法則を操作している」
「ふーん? 物理法則? 難しいお勉強のことかしら?」
黒魔女は理一郎の周りをゆっくり回りながら、さらに妖艶に囁く。
「あなた、頭いいのね」
理一郎は言葉に詰まる。からかわれているのは分かるが、どう対応すればいいのか、さっぱりわからなかった。
「いい加減にしてください! クエストの途中ですよ!」
見かねたエリーゼが止めに入り、黒魔女をたしなめる。
「サマンサ、止めなよ」と少年狩人ジルバウもやってきて、「すごいなあ、物理法則を操るなんて聞いたことがないよ。君の魔法は本当にびっくりだ」と理一郎の肩を叩いた。
理一郎は、実戦でもなんとか対処できそうだという自信とともに、クエストを再開した。
* * *
さらに奥へ進んでいくと、足元は湿地に近い状態になっていった。渡されていた地図によれば、所々に沼もあるらしい。腐葉土の積もった底なし沼もあるので、慎重に進んだ。だが、ギルドの資料によれば、ホタルタケの適地はそういった沼の縁だった。
しばらく歩くと、行く手がほのかに青白く明るんでいる。さらに進むと。朽ち木の向こうに、青白く明滅するキノコがあった。ホタルタケだ。
お椀型の傘も太めの軸も透きとおり、生物発光の冷たい光を放っている。ずっと見ていたくなるほど幻想的だった。夜目を効かせるポーションの材料となり、暗闇の中での戦闘や探索に役立つ。
摘むと発光が止まってしまうらしい。少しためらったが、クエストであればやむを得ない。慎重にナイフを入れた。
これで五種類のキノコがすべて揃い、教導クエストは達成された。
だが、さらに奥の方に、より強い光が見えた。群生しているのかもしれない。そうであれば、さぞ美しい光景だろう。そう思い、木々を縫い、倒木をくぐりながら、近づいていった。
だが、光の正体はホタルタケではなかった。
驚いたことに、全裸に近い姿の女性が、青白い光に包まれてうずくまっていたのだ。
その姿は美しく、幻想的で、まるでテネブリスの森の精のようだった。
――助けなければ。
ふいに湧いた衝動に突き動かされ、女に引き寄せられていった。空気が次第に甘い匂いに変わり、意識を蕩かしていく。
突然、頬に強い痛みを感じ、我に返った。
「しっかりおし! ヒトマネキだよ! スライムの化け物さ!」
サマンサの風魔法で頬を殴られたのだ。
さっきまで女性の姿をしていた生き物が、巨大な粘性体へと変形し始めた。
透明感のあるゼリー状の物体が、みるみるうちに膨張していく。その中には、様々な生物の骨や消化されかかっている肉塊が浮かんでいるのが見えた。そして、理一郎を包み込もうと無数の触手のような突起を伸ばしてきた。
危機を感じ、脳の情報処理速度が飛躍的に高まる。そのフル回転している頭で考える。
とにかく止めたいと思った。だが、移動していないから運動方程式は使えないだろう。
では何が有効なのか。
この魔物は変形するが、形を留めることもできる。粘りのゆるい液体のような流動性を備えるが、その粘性はなんらかの仕組みで変化する。
つまり『非ニュートン流体』だということだ。
――であれば。
τ=τy+ηpγ
視野に浮かんだのは、ビンガム方程式のビンガム塑性モデルだった。
歯磨き粉や泥、そしてスライムなど、非ニュートン流体を記述する基本的な構成式だ。
明滅しているのは『降伏応力』τy。非ニュートン流体は、この値を超えないと流れ出さない。つまり、降伏応力の数値を異常に大きくすれば、ヒトマネキは固まってしまい、流体として振る舞えなくなるということだ。
理一郎はτyを数万倍に書き換えて唱えた。
「その理に従え!」
するとヒトマネキの内部の微小な高分子鎖やコロイド粒子の結びつきが一瞬にして爆発的に増えた。高分子鎖の随所に一時的な結合部位が発生し、緊密化した結びつきが強固な網目ネットワークを形成した。ゼリーの中に網目の鉄骨が張り巡らされたようなものだ。
ぶよぶよしたヒトマネキが、瞬時にガラスのように固まりる。同時に体液が流動しなくなったために代謝系が機能しなくなり、半透明だった体が見る見るうちに白濁し、やがてボロボロと崩れていった。
「すごいぞ、リイチロウ!」
近くまで来ていたジルバウが手を叩いて感心する。
「それの本当の名前はグラトニースライムっていうんだ。獲物の心を読んで近寄りたくなる姿に擬態して狩りをするんだよ。人を襲う時はたいてい人に化けるから、別名ヒトマネキさ」
本来の生息地はもっと奥地で、試験区域での遭遇はギルドにも予定外だった。一般的には火魔法で焼くか、氷魔法で凍らせて倒すか、あるいは近寄らないのが最良の対策だという。
「そんな倒し方、初めて見た!」
ジルバウが駆け寄ってきたが、理一郎は思わずしゃがみ込んでしまった。脳のエネルギー切れだ。
「大丈夫かい?」とジルバウ。
理一郎はうなずきながら、氷砂糖を口に入れた。痺れるような甘さがエネルギー切れの脳に染み渡っていく。
同時に今の出来事を振り返る余裕も生まれた。
――あの時、なぜあの方程式が浮かんだのだろう?
高速移動する魔物に対しては、速度を殺せる運動方程式だった。ヒトマネキに対しては、非ニュートン流体を固形化できるビンガム方程式だ。状況や相手に応じた方程式が思い浮かぶのは間違いない。だが、他にも応用できそうな方程式はいろいろある。そんな中で、なぜあの方程式だったのか。それは自分が直観的に選んでいるのだろうか。あるいは自分の意志とは無関係に選ばれるのか。もっと言えば、どの方程式を使うか、自分で決められるのだろうか――。
使えるようになったとは言え、まだまだわからないことだらけだ。
「あなた、やるわねぇ。キノコも集まったし、教導クエストは合格よ」
黒魔女のサマンサが近づいてきた。
「ジル坊もそれでいいわよね」
「ジル坊は止めてって言ってるじゃん。もちろんリイチロウは合格だよ。文句の付けようがないもん。最初からC級ぐらいでもいいんじゃないの」
「そういうわけにはいかないんですよ」とエリーゼ。
「でも、ヒトマネキが裸の女に擬態するなんてねぇ。やっぱりお年頃なのかしら?」
サマンサが理一郎の腕をつかみ、胸を押し当てながら立たせた。
「その個体についての情報は共有されていなかった」
理一郎は身体を離しながら言い訳をする。
「たしかにグラトニースライムについてはギルドの手落ちです。事前探索したときにはいなかったので、注意喚起をしていませんでした。お詫びします。討伐報酬に少し上乗せさせていただきますので、ご容赦ください。それにしても、理一郎さんの魔法には驚かされました。これからの活躍が楽しみです」
エリーゼが手を差し出してきた。理一郎はその手を握り「ありがとう」と答えた。
「教官が二人とも認めましたので、この教導クエストは合格です。おめでとうございます。では戻ってギルドで手続きをしましょう」
* * *
理一郎は動き出した幌馬車から常闇の森を振り返る。
森は、自信を与えてくれた。今日の経験は、この世界でのこれからの暮らしの礎になる。理一郎はそう確信していた。そして、この先どんな世界が開けていくのだろうかと、わくわくするような期待を与えてくれた。その感じ方には、理一郎自身が驚いた。
「次は二人きりで来ない? もっといろいろ教えてあげるわよ?」
いつのまにか黒魔女サマンサが密着するように座り、耳元で囁いた。
サマンサの狙いは、理一郎を自分のパーティーに入れることだ。たわいのない話の合間に、思わずドギマギしてしまう言葉を投げかけ、時にはボディタッチも仕掛け、誘惑してくる。
肉体は十代男子だが精神が中年男なので抑制はできる。だが女性経験に乏しいため、サマンサの真意がわからない。
――誘われているのか? それとも試されているのか?
いずれにしても、軽率は避けるべきだろう。救いを求めようとエリーゼを見る。だが、仕事熱心な彼女は、馬車の揺れに抗いながら、なんと今日の報告書を書きはじめていた。
助け船を出してくれたのは、馬車を操っている少年狩人ジルバウだった。
「リイチロウ、こっちにおいでよ」と御者席に誘う。
二つ返事でジルバウの隣に移動した。
「思ったより早く終わったから、この分なら夕方前には着くよ」とジルバウ。
ジルバウは十三歳。もともと人なつこい性格だ。歳が近く、しかも物理学魔法にも興味津々なので親しくなりたくて仕方ない。
「サマンサに気に入られちゃったね」
「そのようだ」
「あんな活躍を見せられたらね。しかも扱いやすそうな男の子の新人なんて、サマンサにはいいカモだよ」
「君も彼女のお気に入りか」
「カモにされた一人だよ。いつもからかわれてる。そうじゃなければ小言ばっかり」
「そうなのか」
「母ちゃんとか姉ちゃんて、そういう感じなのかな。じいちゃんしかいないから、よくわからないんだ」
「たぶん、そんな感じだ」
それからジルバウに問われるまま、物理学魔法について話した、そうすることで、発動の機序を振り返るなど、客観的に整理することもできた。
そうする中、理一郎はある懸念を抱いた。今のところ、周辺環境を巻き込むような大規模な事象改変の魔法は現れていない。だが――。
――もしも、あの方程式が浮かんでしまったら?
アインシュタインのあの美しく簡潔な方程式が目の前に現れたら? その時、自分はどうするだろう……。
教導クエストが終わり、学都に帰還した理一郎ですが、新たな事件に巻き込まれます。




