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エピローグ

 岩志木は奇跡的な回復を遂げ、数日後には退院を果たした。

 しばらく通院は必要だが、心配することはないと担当医師は言った。

 医師は集中治療室で起きたことに関しては何も言わなかった。彼は岩志木すみれのかつての担当医でもあった。

 岩志木に衝突をした女子生徒は罪に問われることはなく、厳重な注意を受けるにとどまった。岩志木家からの申し出によるものだ。彼女は両親にともなわれて岩志木家を訪れ泣きながら謝罪した。

 宗像一菜は復学することにしたが、休学したのが二年生の時だったので、再び二年生として真桜高校に通うことになった。しかしそれは夏休み明けからの話となる。

 真桜高校は夏休みを迎えていた。

 休みの間にも部活はある。


 大きな入道雲が空にかかっている八月初旬のある日。

 文芸部室には五人の女子部員たちが集まっていた。

 倫子、春奈、美帆、紗希、あわた。

 五人はお茶を飲み、お菓子を食べながら雑談をしている。

 一菜の姿はない。岩志木を助けるために大いに活躍してくれたが、彼女に対する出禁は解けていなかった。一花によると「それはそれ、これはこれ」だそうだ。

 一菜は「このオレにそんなものが通用すると思うのか」と不敵な笑みを浮かべていたものの、実際に部室に姿を現すことはなかった。なんでも、再び吉野に向かったらしい。

「部長、遅いね」

 と倫子が言う。

「病院、混んでるんじゃない?」

 と美帆が言う。

「途中で熱中症とかになってなきゃいいんですけどね」

 とあわたが言う。

「ホント、今日は暑いね」

 と紗希が言って窓の外を見る。つられて窓に目を向けた春奈が「あ」と声を出す。

「ぶぶ部長、来たよ。学原さんと一緒だ」

 全員が立ち上がり、窓際に近づく。

「あ、ホントだ。あの女、鞍替えしやがったか」

 校門から校庭を横切って校舎に向かってくる部長と鏡子の姿が見えた。

「あの様子だと用意しておいた方がいいかもね」

 美帆が言ってパソコンを起動させる。

「用意って、入部届?」

 紗希が言い、美帆が「うん」とうなずく。

「フルネームでサイン。ここに保護者の印鑑をもらってきてくれ」

 倫子が部長のマネをして全員を笑わせる。

「私、お茶の用意をしておきますね」

 あわたが言って、窓際から離れた。


 蝉の声が遠くに聞こえる。






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