「ビキラとジャウクの価値観」の巻。その他
「私にとっては人間も魔人もない。どちらも俗悪を吐く悪どもだ!」
おたずね者魔人ジャウクが、魔人ビキラに追い詰められ、廃工場の壁を背に叫んだ。
「同感よ」
応じながら、魔人少女ビキラは、
「俗悪吐く悪ぞ」
と素早くメモをした。回文である。
妖力を練り込み、己が回文妖術として使おうと思っての事だ。
そういう意味で、ビキラはジャウクに感謝した。
「魔人は人間の進化型とか吐かす魔人主義者もおるが、特殊能力を悪用して、なんと私利私欲に走る馬鹿者の多い事かっ!」
今度は、ビキラの肩に立つ古書ピミウォが、
「全く同感じゃ!」
と叫んだ。
「尻尾が生えても、角が生えても、愚かさは人間の時となんら変わらん!」
「救い難いのよ、人間も魔人も」
魔人であるビキラも喚く。
「おおう。なんじゃ、思いは同じか? 価値観は同じか?!」
ジャウクは驚き、そして喜んだ。
「では、余が殺人鬼と化した事も理解出来ようが?!」
「なに言ってんの。馬鹿な生き物だから、愛おしいんじゃないの!」
ビキラは負けずに叫び返した。
「『馬鹿な子ほどかわいい』ってコトワザがあるでしょうが?! 守らなきゃ、って思えるのよ!」
「えええ? なんでそうなるの?!」
再び驚くジャウク。
その驚いた隙を突いて殴り、失神させる魔人ビキラ。
「価値観はわりと近かったのに、残念な奴じゃ」
ビキラの肩からジャウクを見下ろしてピミウォが言った。
「近親憎悪かしら。拳骨に、ついチカラが入っちゃったわ」
と、ジッと自分のゲンコツを見るビキラ。
愛しく思うか、憎悪するか、最後の最後で左右に分かれてしまい、気が合いそうで正反対になってしまったビキラとジャウクだった。
(近い価値) ちかいかち!!
(気が合う足掻き) きがあうあがき!!
*** *** ***
「ビキラとかわいい」の巻
「かわいいですねえ」
木陰で眠るビキラの寝顔を見て、つくづくと呟く素浪人ププンハン。
「同感じゃ、ププンハン殿」
古書ピミウォも、ププンハンの肩から、その魔人少女ビキラの可愛い顔を覗き込んで言った。
「起きて動いている時との違和感が良いのう」
本人だけが知らないシチュエーションであった。
ププンハンは、改めてつぶやいた。
「喋らないと、こんなにかわいいんですねえ」
と。
(寝顔がね) ねがおがね!!
(良い違和感可愛いい) いいいわかん、かわいいい!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
明日から、今週分の「蛮行の雨」を投稿します。
木曜日〜日曜日にかけて、
第六十三話「大僧侶ユーム」前編。後編。
第六十四「仮面の盗賊団」前編。後編。
を投稿します。
タイトルだけでは話を思い出せない「仮面の盗賊団」?!
早く読み返さなければ……。




