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「ビキラと山の魔物」の巻

魔人少女ビキラと古書ピミウォは、旅先のある村で、人身御供(ひとみごくう)の話を聞いた。


去年までは食べ物をお(そな)えするだけで良かった。

  だが今年の山の魔物は、

『村の早乙女(さおとめ)を差し出せ』

  と通達してきたと言うのだ。


「それは大変じゃ。これビキラよ、お主が代わりに差し出されなさい」

  ピミウォが電光石火に同情して言った。


「お任せ下さい」

通行手形を見せ、職業が「捕り物屋」、平ったく言えば賞金稼ぎであることを明かすビキラ。

「魔物を退治したあかつきには、食事と、お風呂と、一夜の宿を」

  と、(そつ)なく言い()える魔人少女。


「お安い御用で御座います」

「精一杯のご馳走(ちそう)を用意してお帰りをお待ちしております」

村人たち、特に人身御供になった少女とその家族、友人には大いに感謝された。


「あたしは幾多の悪党、魔物を倒して来ました。今度も必ずや倒して見せます」

  胸を張る魔人ビキラ。


そしてビキラは、ヒョウ柄のジャケット、ショートブーツ、黒革のショートパンツを脱いで、人身御供の衣装、ピンク系の中振袖(ちゅうふりそで)に着替えさせられた。


「孫にも衣装だのう」

  と、感心するピミウォ。

「戦いにくいかも」

  百センチばかりの振り袖を振るビキラ。

「足を広げるような事があってはなりませんぞ」

  着付けをしたお婆さんが言った。


そうして、魔物が棲むと言う山に登った。

振り袖で歩くと時間が掛かるので、神輿(みこし)に乗せられて山道を運ばれて行くビキラ。

  振り袖の肩に乗っている古書ピミウォ。


神輿を(かつ)ぐ四人の村人は、ビキラが逃げずに魔物と戦うのかどうかを、見届ける役目もあるのだろう。


やがて、鬱蒼(うっそう)とした森の中に、ぽっかりと木のない草原が広がっている場所に着いた。

  木がない上にお昼時とて、草原に陽光が差している。


「魔物の寝間(ねま)で御座います」

  村人の一人、人身御供の娘の父親が言い、神輿は止まった。

神輿が下げられ、下りるビキラ。

  と、葉を散らし、頭上から降ってくる魔物。


「なんじゃ、天狗ではないか」

  つぶやく古書ピミウォ。

山伏姿の、背中に翼を生やした偉丈夫だった。

  赤ら顔で、鼻が高い、と言うより長い。


(にお)うなお主。魔道に()ちたか」

  さらに言葉を続けるピミウォ。

「山の守護神(テンゴヌカミ)ともあろう者が、情けない」


  天狗はピミウォの言葉を無視して、喜びの声を上げた。

「おお、あの貧相な村にも、こんなメンコイ娘がおったのか?!」

  両手で、振り袖姿のビキラを招く天狗。

「もそっと近う。近う!」


「はい」

  うつむいたまま返事をし、慣れない白足袋(しろたび)草履(ぞうり)なので、小股(こまた)歩きで進んでゆく魔人少女ビキラ。


「うむ。娘よ、(われ)の好みの体躯(たいく)である。顔を見せよ」

「はい」

頬紅を差し、口紅を差し、見事に化けた偽早乙女(にせさおとめ)は、顔を上げるなりニヤリと笑って、張り手を繰り出した。


その張り手は、草原に差す陽光に()え、一発で天狗を失神させた。



(照り映ゆ張り手)

てりはゆ、はりて!!


「村に帰ったら、さっそく天狗汁にしますで」

  と言いながら、神輿に天狗を(くく)りつける村人たち。


昔話あるある、のような展開に(おのの)くビキラとピミウォ。

しかし村人たちの心尽(こころづく)しを、無碍(むげ)には出来ない少女と古書であった。



お読みくださった方、ありがとうございます。

急に? 秋らしくなって、震えております。

長そでに着替えました。


投稿作品の方は、季節感がありませんが。

あったと思えば、現実の季節とは、真逆だったり。


「蛮行の雨」第五十七話

「ローカル魔王ドゥクェックの話」前編を投稿します。

ではまた、明日。

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