「ビキラと天邪鬼」の巻
魔人少女ビキラは裏街道を歩いていて、ばったりと邪悪な存在に出会った。
妖怪、天邪鬼である。
旅人を騙して、面白半分に見ぐるみを剥ぐと言う碌でもない存在であった。
「あーー、そこな旅のお嬢ちゃん。突然な腹痛で難儀をしておる。助けてたもれ」
上がり眉のおじさんに化けた天邪鬼は、灰色の作務衣姿で道の脇にうずくまり、点のような目をショボつかせて言った。
「うん。今、助けるから」
そのおじさんの正体を、邪悪と見破った回文妖術師のビキラは、回文を詠唱した。
「闇堕ちお宮 (やみおち、おみや!!)」
具現化するお宮さん。
闇堕ちしてどんよりとした身体を、漆黒の浴衣に包んで、現世に晒した。
「小脳の奥深く、幽閉されて早、千年……」
と、つぶやくお宮さん。
「えっ? あたしそんなに長生きしてないよ」
と、ビキラ。
「しっ!」
と、唇に人差し指を立て、険しい目でビキラを睨むお宮さん。
「大事な設定を喋っています! お静かに」
「あっ、ごめん」
と素直に謝るビキラ。
「貴様かっ! この世に仇なす悪党と言うのはっ!」
ガシッ! と腕を伸ばし、
ビシッ! と指を天邪鬼に突きつける闇堕ちお宮。
「天に代わって、この闇堕ちお宮が成敗してくれるわっ!!」
「ふむ。闇堕ちしたのか? お宮とやら」
顎に手を当て、立ち上がる天邪鬼。
「天と言うたな? すると元は天使? 堕天使と申すか?!」
「あっ……、そ、そうね。ダテンシだったような気がしてきたわ」
「余は、人の心の正邪を入れ替える事が出来る。天使に戻してやろう」
「OH! ゴッドファーザー!」
「ブレブレじゃな、お宮さんのキャラは」
「うーー、恥ずかしながら、根っこはあたしだからね」
「根っこ……、そうか。術者の小娘を逆転させねば意味がないか」
「ふん! あたしに妖怪ごときの妖術が効くとでも思ってんの?!」
ビビりながらも見栄を切る魔人ビキラ。
「本質逆転! まさかさかさま!!」
天邪鬼は、頭部をぐるりと反転させて詠唱した。
すると、あーら不思議。
上がり眉は下がり髭に。
一文字に結ばれていた口は一本眉に。
点のようだった目はホクロに。
ホクロと見えた鼻の傍らにあった点は、目になった。
丸くて小さな鼻は、そのまま鼻だった。
「おのれ妖怪!」
叫ぶなり天邪鬼に突進するビキラ。
「天誅っ!!」
「えっ? えっ? 仲間になったよね?!」
一本眉の天邪鬼は、下がり髭をピクつかせながら驚いた。
「問答無用! 一期一会!」
思いついた四文字熟語を叫びながら、天邪鬼に殴りかかる魔人ビキラ。
顎にゲンコツを喰らい、頭部をくるくる回転させながら地に伏す天邪鬼。
「な、なぜだ? 貴様、悪党だったと言うのか?」
と呻きながら気を失う天邪鬼だった。
天邪鬼が意識を失ったので、ビキラに掛けられていた妖術が解けた。
「はっ。あたしは一体……」
我に帰るビキラ。
「なんでもないです、マスター」
闇堕ちお宮さんは静かに言った。
「お見事でした」
「う、うん。天邪鬼、倒れてるしね。結果オーライよね」
根っこが邪悪なビキラは、にたりと笑うのだった。
古書ピミウォは、感心してつぶやいた。
「うむ。見事な討伐であった、ビキラよ。人間性は、正邪と共にある」
(人間性宣言に)
にんげんせい、せんげんに!!
お読みくださった方、ありがとうございます。
投稿を始めたばかりなので、昨日に続き、「新・ビキラ外伝」続投です。
明日も「新・ビキラ外伝」になります。
「新・ビキラ外伝」を投稿した日は、「続・のほほん」は、お休みします。
また、「続・のほほん」を投稿した日は、「新・ビキラ外伝」を休みます。
その理由は、両方はシンドイからです。
ではまた明日、「新・ビキラ外伝」で。