ヲタッキーズ172 料理の鉄人28号
ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!
異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!
秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。
ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。
ヲトナのジュブナイル第172話「料理の鉄人28号」。さて、今回は少年院上がりの鉄人シェフが厨房で冷凍死体となって発見されます。
淫乱グルメマダムやライバルシェフ、東秋葉原を牛耳る賭け屋などが現れ捜査は難航します。その時、解決の契機となった鉄人シェフの奇行とは?
お楽しみいただければ幸いです。
第1章 開戦前夜
流行りのフォトジェニックなお洒落レストラン。夜中まで客で賑わい、厨房で洗い物が終わるのは、ほとんど明け方だ。
ロッカールームでパティシエと皿洗いが着替えてる。
「やっと今日も仕事が終わったな!」
「今日は始まったばかりだけど…あの客、可愛かったな」
「どーせ、お前には口説けないさ」
軽口を叩き合いながら厨房を横切ると、細めの寸胴鍋が転がり、蓋や見慣れない調理器具も落ちてて…男が倒れている。
「誰?…おい、シェフじゃないか?」
「大変だ!コブラ!しっかりして、シェフ!」
「ウソだろ?脈はアルか?」
手首を持った瞬間、全て砕け散る。白い粉となって。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ガチャン!
「割れた?」
「砕け散ったわ。くだらないグラスょ」
「くだるグラスなんかウチには無いわ。何でそんなに不機嫌なの?」
御屋敷のバックヤードをスチームパンクに改装したらヤタラ居心地良くて常連が沈殿、客回転が低迷して経営の危機だw
しかも、朝から常連ハッカーのスピアが皿を割る←
「レイシ達の家族が大阪の日本橋に旅行スルの」
「ニッポンバシ?間違った周波数の電気を使ってる関西の秋葉原だな?楽しそうだ…あれ?ソレは旅行に逝けない人の顔だね」
「ほら、来週はテリィたんの"元カノ会"のワークショップだから、週末は色々準備をしたいの。でも、旅行も諦めきれない」
スピアは、僕の"元カノ会"の会長だ。まぁ自称だけどw
「お仕事スル身に降りかかる遊びの誘惑。永遠につきまとうな。対応策として、将来は遊びっぽい仕事に着くのが1番だ」
「SF作家とか?…仕事と言えばナゼ今日は早起きなの?」
「別に。早起きは3文の得だからさ」
スピアの頭のてっぺんにキス。
「ヤメて!キスはちゃんと唇に!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋警察署の階段を、コーヒー2つとベーグルの紙袋を持って、駆け上がって逝く。
早朝とあって人影も疎ら。ラギィ警部のデスクも珍しく空席だ。ギャレーから笑い声。
「もうおかしくてさ」
談笑しながら、ラギィとトムデが廊下に現れ、仲良さそうに歩いて来る。おお、2人の手には、既にマグカップが…
「じゃあ明日の夜ね?」
「うん。よろしく」
「楽しみょ」
手にしたマグカップを、人差し指でコツコツと叩きながら、ヤタラと上機嫌なラギィ。
「桜田門のエリートがなぜココにいるんだ?」
「まぁ良いじゃないの。ウチのパーコレーターのコーヒーを飲みに来たのょ」
「あのパーコレーターは、万世橋のみんなのために買ったんだ…明日の夜って何?」
ズバリ単刀直入に聞く。我ながら男らしい←
「トムデが誘ってくれた。タマには一緒に出かけようって。どうして?ダメ?」
「ダメなワケがナイだろ」
「だって…」
スマホが鳴る。
「はい、ラギィ…了解。すぐ行くわ」
殺人だ。瞬時にマジ顔になるラギィ。僕は後を追う。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
五つ星レストラン"ヲバQ3"は中央通りに面した高層タワーのペントハウスにアル。既に規制線が張られ警官が立哨。
「ヲバQ3で殺人?死ぬほど逝きたかったレストランだ。なかなか予約が取れなくてさ」
「ホントに死人が出たわね。状況は?」
「ラギィ、こっちょ。被害者はバザル・コブラ。ヲバQ3の主任シェフ」
ヲタッキーズのエアリが答える。あ、彼女はメイド服だ。ついでに、相棒のマリレもメイド服。ココはアキバだからね。
「バッド・コブラか…リアリティ番組"料理の鉄人28号"の鉄人28号シェフだ。あぁ彼のフォアグラサンド、食べたかったのにな」
「今朝、遺体をパティシエと皿洗いが発見したわ」
「テリィたん、STOP!カラーコーンがアルでしょ?ソレ、踏むなってシルシなの。わかってる?」
いつの間にかハッキングされた僕のタブレットから、超天才ルイナの声がスル。彼女はラボから"リモート鑑識"中だ。
「コレは…手が砕けたモノ?」
「YES。L2によるモノょ。冷却剤として使用される液体窒素ナンだけど」
「N2地雷みたいなモンか?」
ルイナは完全無視←
「接触すれば、人間でも何でもガラス細工のように粉々になって砕け散るわ」
「ソレは、文字通りにも比喩的にもクールだな。コブラは、分子ガストロノミーを得意とした。つまり、科学を駆使して美食を作り上げていた鉄人シェフだ」
「え。」
完全にシラけてるルイナとラギィw
「興味がナイんだね…」
「L2は、頭から浴びない限り、安全なモノょ」
「死亡時刻は?」
珍しく言い淀むルイナ。
「なんとも言えないわ。あらゆる判断基準が液体窒素にヤラれてる。ラボで調べたいけど、動かそうにも脆くて運べナイの。まず"解凍"しないと」
「かなり抵抗した痕がアルね」
「強盗かしら?」
エアリ&マリレが首を横に振る。
「いいえ。侵入の跡も、なくなったモノもナイわ」
「コチラのリレィ・アワァさんとコスタさんによると、コブラは、みんなが帰った後も残って残業してたようね」
「何時まで?」
ラギィの問いに実直そうなパティシエが答える。
「11時ごろでした。コブラは、その後も1人でケーキの仕上げをしていました」
「パティシエは君だろ?」
「私は名前だけです。奇抜なコトはコブラが全部自分でやっていました。彼がピンク色の王冠とハートと宝石をお菓子で作ったのです。エバポレーターと液体窒素を使ってね」
まさに科学を駆使した美食w
「遺体を移動したら繊維痕や指紋を調べて」
「了解」
「ラギィ。オーナーが来たわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「今回は事故というコトで徹底しましょう」
オーナーは金髪女子。スタッフと話し合っている…
「マディーソ?」
「ラギックス?なぜココに?」
「秋葉原で警部をやってるからょ」
キャアキャア系の出逢いw
「ウソでしょ!ラギックス」
「ホント!信じられないわ。でもラギックスはヤメて」
「じゃマディーソもナシね」
大笑いしながらハグする2人。
「驚いたわ!こんな状況で再会スルとは」
「こちらテリィたんょ」
「知ってる。"地下鉄戦隊サボイ7"のepisode12は神回だったわ。私はマディ」
気さくに握手スル。間近で見ると…ますます美人。
「テリックスと呼んでくれ。2人の出会いは?」
「スイスの寄宿学校ょ。フランス語の授業で一緒だった。でも、学校1のワルが警部だナンて」
「え。学校1のワル?」
苦笑いするベケット。ちょうど、首からパスを下げた鑑識2人が歩いて来て(多分僕ではなくw)ラギィに敬礼して逝く。
「エヘン!アハン!ウフン!ヲバQ3スタッフ全員のリストを提出して頂戴!」
「ラギィ。ウチの従業員の犯行だと言うの?」
「うーん恐らく侵入の跡がないから、顔見知りか、鍵を持ってる人の犯行だと思うの。全員のアリバイが必要ょ。モチロン貴女のもね」
美しい顔を歪めるマディ。
「わかったわ。因みに、私は遅い時間までパーティにいた。大勢が見てる」
「コブラに危害を加えそうな敵はいた?」
「彼は悪役を演じたからね。私も審査員だったけど…ラギィ、貴女"料理の鉄人28号"を知らないの?ウソでしょ?」
ラギィは、助けを求めて僕を見るが、僕はマディの横顔をウットリ眺めてる。仕方なく、自分の身を自分で守るラギィ。
「私は…地上波を見る時間がナイのょ」
「ウッソォ。昔は、学園ドラマの再放送ばかり死ぬほど観てたのに!」
「そーなんだ!他にどんなコトにハマってたのかな?ラギックスは?」
嬉しそうに聞くキャッスル。振り向く"ラギックス"w
「テリィたん!ココは殺人現場ょ。ソレを忘れないで。小説のリサーチはホドホドにね!」
「ROG…後でね」
「SIG」
僕が囁くと、鼻の頭にシワを寄せて微笑むマディ。
ドキューン!僕のタイプだょ!間違いない(何が?)
「エヘン!アハン!ウフン!最近コブラに何か変化はあった?何でも良いの」
「1つあったわ。彼は、いつもキッチンにこもりきりだった。でも、数週間前から、大体、そうね、3時から5時の間、姿を消すようになったわ」
「どこに行ってたの?」
フランス人みたいに両肩をスボめるマディ。絵になるなー。
「さぁ。息抜きって言ってたわ」
「ラギィ!…テリィたんも。発見ょ!」
「厨房スタッフが帰る時、食器は全部洗ってあったそうなの。でも、シンクに汚れた食器と鍋が…」
残ってる。ゴミ箱には残飯も捨てられてる。
「深夜に訪問者が来て、料理してった?」
「コレは、ドミン・ミンゴのポテチコーンスープだわ」
「ドミン・ミンゴ?」
東南アジアの元首とか?
「ウチのスープ職人ょ。シェフと来てたのね」
「シェフと最後に会った人はドミンだわ。彼の住所は?」
「わかるわ…"彼"じゃなくて"彼女"だけど」
ヲタッキーズのメイド2人に指示が飛ぶ。
「ドミンに何を見たか聞いて来て…ソレからマディ。コブラの身内の連絡先も教えて欲しいんだけど」
「やってる…出たわ」
ほどなく、マディのPCの画面に"緊急連絡先:デヴド・ライデ"の文字が明滅スル。苗字が違う。誰だろう?しかし…
「寄宿学校の友達か。かなりラギィは秘密を握られてるな」
「フン。彼女に聞いても無駄ょ。彼女は絶対に話さない」
「ソンなコト、なぜわかる?」
ヤタラ自信タップリなラギィ。
「私も彼女のスゴい秘密を握ってるから。あの頃、良く遊んだわ…大人数でだけど」
「遊び?遊びって何?」
「その年で遊び方も知らナイの?終わってるわね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の会議室。
「コブラには、ホントの家族がなく、子供の頃は、養護施設で育っていました。彼にとって身内と言えば、私と私の婚約者のセシリぐらいです」
"緊急連絡先"デヴド・ライデはコブラと1才違いの青年。
「私達はホントの兄妹みたいでした」
「みなさんは、いつ頃出会ったんですか?」
「10代の頃です。彼が少年院を出所し、私の親父のレストランで仕事を始めてからです。そこで料理の腕を認められた。以来、家族同然につきあっています」
「彼に敵はいませんでしたか?」
清楚な婚約者が穏やかに"力説"スル。
「悪のイメージだけど、実は彼は優しい人でした」
「その彼は"料理の鉄人28号"で優勝して、人生が変わってしまったのですね?」
「楽しんでた。名声も金も手に入れてね。ただ…」
言い淀むデヴド。
「ただ何?」
「多分経済的な問題があったみたいでした」
「どうして、そう思うの?」
淡々と語るデヴド。
「数ヶ月前に親父が死んで、私とコブラに乙女ロードにある、ちょっとしたダイナーを残してくれました。2週間前、彼が店の権利を買い取ってくれないかと言って来た。金が必要なら貸すょと言ったが、拒否されました。それで仕方なく彼の権利を買い取ったのです」
「おいくらで?」
「400万円」
僕は頭をヒネる。
「番組から出た優勝賞金はどうしたんだろう?」
「全部ヲバQ3につぎ込んでました。少しは残しとけと助言したのですが…彼は妥協しなかった」
「そーゆー人でした」
涙を拭く婚約者セシリ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋に捜査本部が立ち上がる。本部のモニターに"料理の鉄人28号"の動画が流れている。
"ジェニ・ファウ。バザル・コブラ。2人の料理の審査が終わった!かなりの接戦となったが"料理の鉄人28号"の勝者となったのは…バザル・コブラ。君だ!」
画面は、両手を上げ拳を振り上げるコブラで静止。
「この顔を見ろ。メチャクチャ喜んでる。ソレが8ヶ月後に死ぬナンて」
「彼の口座の令状が取れた。死ぬ前の経済状況がわかるわ」
「ラギィ!…ソレから、テリィたんも。例のスープ職人のドミンを見つけたわ!神田リバー水上空港にいた。50万円と中近東までの航空券を手にね」
「海外逃亡?完全にアウトだな」
今まさに、連行されて来る、思い切り怪しいドミンw
第2章 容疑者はピンヒール
万世橋の取調室。
「次に人を凍らせる時には後始末を忘れるな。シンクに汚れた皿が残ってたぞ」
「何のコトょ?」
「貴女は、スーツケースの中にUAEまでの長距離飛行艇の航空券と現金50万円を所持していたそうね」
それぞれ証拠品袋に入ったブツを机に投げるラギィ。
「ソレの何が悪いの?パスポートもアルけど」
「殺人現場から逃げようとした」
「殺人現場?何処?誰が誰を殺したの?」
何か嫌な予感がしてくるw
「貴女のボスだけど…」
「コブラが?!コブラが死んだの?」
「座って!」
思わず立ち上がるドミン。ラギィが制する。
「私は誰も殺してナイわ…座るわょ指図しないで」
「でも、昨夜彼と会ってたでしょ?」
「YES。確かに、仕事の後で私は店に戻った。今、中近東では大規模な軍事侵攻に伴う難民が大量に発生している。だから、難民救済の国際ボランティアに志願した。スープ職人でも、何か出来るコトがあるハズょ」
不思議な説得力のアル話し方w
「でも、50万円の大金はどこから?」
「現地で使えとシェフが渡してくれた。私は円安だし断ったのに、彼は難民を助けろと聞かなかった…彼とは、5年一緒に働いた。私の大切な友人ょ。セックスの相性も抜群。私が彼を殺すハズがナイわ」
「彼は、深夜に50万円を持ち歩いてたの?」
うなずくドミン。
「レトロなカニ形の横長リュックに背負ってた。あ。モチロン私は返すつもりだったわ」
「おいおい。コブラはリュックに大金を入れて持ち歩いてたのか?昭和の地上げ屋かょ?」
「知らない。でも、あと軽く100万円以上入ってた。だから、注意したの。そんな大金を持ち歩くと殺されるわって」
何とドミンは涙ぐむ。マジか?
「でも、現場にリュックは残されてなかった」
「あのビッチが盗んだのね」
「あのビッチ?」
新キャラの登場だ。深夜の厨房は出入りが激しいw
「シェフのセフレの1人が入れ違いに来てたわ」
「(セフレは貴女でしょ?)いつ?」
「0時45分ごろだったわ」
思わず身を乗り出す僕。
「女の名前は?」
「さぁ。でも、お店の常連ょ」
「特徴を教えて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「もうちょっと髪が長くて…」
取調室に呼んだ漫画家に指図をするドミン。
ソレを部屋の外から見てたらエアリが来る。
「店の従業員に聞いたトコロ、あの夜、確かにコブラはリュックを持ち歩いてたって」
「普段は、そんなモノを持ってない人だったから気になってたそうょ」
マリレも口を揃える。
「つまり、ドミンの話はホントってコトか」
「うーん全部がホントかはワカラナイわ」
マリレは口をトンがらせるw
「でも、お金についてもホントだ。コブラの口座を見た。この半年間は何も不審な点はナイが、2週間前に全額を引き出してるわ。150万円」
「あら。デヴドにダイナーの権利を売ったのも確か2週間前だったわね」
「で、権利を売った直後、その400万円も引き出してる」
因みに、その日に殺害されてるw
「何かで大金が必要になってたみたいだ」
「きっと違法なコトね。彼は3時から5時の間に姿を消してる。その場所とお金が関係してるカモ。同僚への聞き込みとカード履歴の確認をして。何処に通ってたかを知りたい。通話記録は?」
「SIMカードがL2で破損してた。今、技術班がデータをサルベージ中。モチロン、電話会社にも問い合わせてる」
似顔絵が仕上がり、警官が持って来る。ラギィは一瞥して…
「うーんビッチな顔ね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
開店前のヲバQ3。ラギィはマディに似顔絵を見せる。
「サドラね。夫婦で毎週来てるわ。常連ょ」
「夫婦で毎週(どんだけ金持ちなのw)?」
「奥さんは、コブラの恋人の1人。厨房でいかがわしいコトをしてたコトもアル」
サラリと語るマディ。
「苗字はワカルかしら?」
「うん。予約リストに描いてあるハズ。ちょっと待って」
「…マディ、気分は?」
突然親友の顔を見せるラギィ。
「沈んだママょ。悲しむ暇もない。友達が死んだと言うのに、早くも代わりのシェフを見つけようとしてる。コブラが作ってたケーキの注文者も不明。そんな中、明日はロッコの店でチャリティに顔を見せないと。Q3も終わった、と思われたら、ソレこそ命取りだから。ねぇラギィ。一緒に来てょ。貴女がいれば心強いし、昔話も出来るわ」
「行きたいのは山々なんだけど、ちょっと用事があるのょ」
「用事って何?」
答えに詰まるラギィ。ワカッテルって顔のマディ。
「もし、良かったら…僕はどうかな?ちょうどロッコの店に逝ってみたかったンだ」
「え。テリィたんみたいにチャーミングで話上手なSF作家なら最高の相手だわ!」
「ありがとう。問題アルかな?」
スゴい形相で僕を睨むラギィ。
「いいえ、全くナイわ」←
「ラギィ、予約リストに名前があったわ。ココ」
「サドラ・マヤズ?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「(ビッチな顔の)サドラ・マヤズさん!」
万世橋の取調室。金髪に分厚いメイク。目を細めてるのは西陽が差すせいだ。ミニスカだが派手に足を組み直すw
「貴女とコブラの関係は?」
「料理してる男って官能的で萌えちゃうの。"料理の鉄人28号"でコブラが情熱的に料理してるのを見てるとムラムラしちゃう。Q3の開店日、夫と行って彼がテーブルに来た時にスマホの番号を渡したわ」
「いつもセックスはレストランでイタすの?」
先制パンチを繰り出したつもりだが…
「YES!彼は厨房だと萌える!」←
「夫にバレないの?」
「ERドクターょ?夜勤がない日は、睡眠薬で爆睡。リビングで私がポルノを撮影してても起きないわ…え。もしかして、夫に話すつもり?プライバシーの侵害だわ!」
権利?だけは振り回すw
「貴女は、殺人の第1容疑者なのょ。夫の心配をしてる場合かしら?」
「ワイルド過ぎるセックスが死を招いたと思わないのか?」
「え。セックスはしてないわ。2週間前に別れたから」
何だって?
「2週間前?別れた?」
「YES。スマホしても出ないから、昨晩は店に押し掛けた」
「ソレで?」
ピンヒールの脚を組み直すサドラw
「もう遊びはヤメた、成長して心を入れ替えた、とか何とかホザいてたわ」
「貴女は、ソレに激怒したハズね」
「モチロン。でも、殺してナイ」
鼻で笑うラギィ。
「あのね。貴女は、長年夫を欺いて来たヒトょ?そんな貴女をどーやったら信用出来るの?」
「じゃあウチのマンションのコンシェルジュに聞いて。私は1時半には帰宅していたし、その時間には、コブラは生きてたわ」
ピンヒールは雄弁だ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ラギィ。サドラの件、コンシェルジュに確認が取れたわ。サドラの評判も聞いたけど…ウソをつくのは、夫に対してだけみたいね」
万世橋の捜査本部。ホワイトボードの時系列表に描き込みをしていたラギィは、マリレの報告に、大きく溜め息をつく。
「でも…死亡時刻がワカルまでは何とも言えないわ」
「ラギィ。クレジットカードの履歴からコブラが通い詰めてた場所がわかったわ。ここ数週間、3時45分ごろ"カフェX"で支払いをしてる」
「"カフェX"?東秋葉原70丁目の辺り?そんな遠くで何をしてたのかしら。ヲタッキーズ、ソコで誰と会ってたか確認してくれる?」
ヲタッキーズが出掛ける。同時にラギィのスマホが鳴る。
「ラギィ…了解。直ぐ行くわ。テリィたん、ルイナが検視局で呼んでる」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の検視局は地下にアル。ルイナは自分のラボから"リモート鑑識"なので、遺体を見せながら話したいのだろう。
「お。アイスの解凍が進んだみたいだ」
「やっと溶けたわ。色々苦戦したけど、破壊されてない組織からコブラの死亡時刻を午前2時から4時の間に絞れた」
「となると、ドミンもサドラもシロか」
僕のタブレットをハッキングしたルイナは画像の中で笑う。
「誰だか知らないけど、テリィたんったらメッチャ残念そうね…ライトの下で詳しく遺体を調べたら痣が見つかった。背中から足にかけて深刻な打撲症が見られるわ。かなり殴られてる」
「事件当日の痣かしら?」
「いいえ、ラギィ。最低でも2週間前ょ」
僕は、新たな事実を反芻。
「体中の痣。ダイナーの権利の売却…全部2週間前だ」
「テリィたん。あと殺される直前に受けた打撃による痣があった。現場の写真を鑑識から回してもらって確認したんだけど、その痣を作った凶器もわかったわ」
「まさか…エバポレーター?」
僕は、証拠写真の画像を指差す。
「コレは、食材を蒸留スルことにより、本来の味を引き出すために使われルンだ」
ドヤ顔の僕。ますますシラけるルイナとラギィ。
「そっか。君達は2人とも料理に興味がなかったょな」
「…機械の本体から指紋は出なかったが、割れたガラスの1部から指紋の1部が検出された。だから、破片を集めてパズルみたいに組み合わせて指紋の採取に成功したの。で、桜田門の統合指紋データベースを(相棒でハッカーのスピアがw)ハッキングしたらヒットした。従業員じゃなかったンだけど…」
「誰?」
ルイナはメモを読み上げる。
「ジェニ・ウォンだって。知ってる?」
「げげっ。マジかょ?」
「誰なの?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部…で、TVを見てる。いきなり包丁のUPw
"コブラ!アンタ、なぜ仔牛を買い占めたの?私が食材として使うと知ってて"
"危ない!厨房で包丁を振り回すな!トンだ被害妄想だ。君を妨害するつもりはない。妨害どころか、片手しか使わなくても君には勝てる…君は、食材を包丁でカットするからダメなんだ。俺は、魂でカットする!"
厨房風のセットで、プイと背中を向け合い、鰤のお頭にグサリと包丁を突き刺すジェニ。迷彩色のバンダナをしているw
"あの嘘つき!私からレシピを盗んだのょ?絶対に許さないわ!アイツが勝ったら絶対殺してやる!"
卓上PCで再生。憮然とした顔のジェニ。トレードマークの迷彩バンダナをほどくと、黒く長い髪は美しくセクシーだ。
"…私からレシピを盗んだのょ?絶対に許さないわ!アイツが勝ったら絶対殺してやる!"
も1度、再生したラギィはパタンとPCを閉じる。
「コブラとはライバルなのね?」
「…だから?」
「認めろょ。コブラが1000万円を手にして、相当悔しかったハズだ。その上、コブラは名声も得て仕事も順調。その恨みが数ヶ月のウチに積み重なり、そして、ついに君は限界に達した!」
法廷モノの決めセリフみたい。カッコ良いな、僕。
「待って!私が殺したと言うの?私とコブラがケンカしたと言うのは、ただの演出ょ?」
「はい?演出?」
「だ、だって、アレはリアリティ番組でしょ?」
ラギィも怪訝な顔だ。
「結局は見せ物番組ょ。勝っても負けても関係ない。局は視聴率、私達は世間にインパクトを残してナンボの業界ょ」
「なるほど。いつも、悪役は最大の広告塔だからな」
「その通り。だから、私は決勝に残れたの。視聴者の受けが良かったからょ」
合点のいかないラギィが口を挟む。
「でも、貴女は負けたわ」
「君の豚の三枚肉のローストが負けるなんて、僕は、とても信じられなかったょ」
「だから、勝負は関係ナイの。コブラは店を、私はケイタリング会社を持てた。2人共うまくやってるのょ」
ドヤ顔のジェニ。イマイチ合点の逝かない僕達w
「じゃ殺してナイとしたら、なぜ貴方の指紋が殺害現場にあったの?殺害の凶器となった料理道具のアチコチに貴女の指紋がついてたけど」
「ソレ、もしかしてエバポレーターのコト?アレは、私のだから指紋がついて当然ょ。一昨日、彼に貸したわ。何か特別なモノを作るから必要なんだと言われてね」
「一昨日?貴女、事件当日にコブラと会ったの?」
うなずくジェニ。悪びれた様子もない。
「えぇ。早朝にコブラから電話があった」
「その日、コブラはリュックを背負ってたかな?」
「YES。背負ってたわ。何で知ってるの?何だかヤルことが多いみたいで、かなり急いでた。エバポレーターを渡した後、彼をミッドタウンまで送ってあげた。誰かと約束してたみたいょ」
慎重に問うラギィ。
「住所は?」
「東秋葉原47丁目とレキシントンの角ょ。オフィスビルの前で彼を落としたわ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「従業員に聞いたトコロ、あの日、確かにジェニは仕事で池袋の乙女ロードで1泊をしてる。アリバイ成立ょ」
「良かった。彼女が収監されたらアキバの料理がマズくなる」
「ヲタッキーズ!この住所を調べてベケット」
ちょうど歩いてきたヲタッキーズにメモを転送。
「東秋葉原47丁目?」
「コブラが通ってた場所なの」
「その時、彼はリュックを背負ってたそーだ…カフェはどうだった?」
肩をスボめるエアリ。
「スタッフ全員に聞いたわ。ウェイター、皿洗い、マネージャーに聞いた。確かに全員がコブラを見てるけど、いつも1人で同じ席に座ってたって」
「何をしてたの?」
「お茶を飲んでぼーっとしてたって。タマには、ベーカリーのパンも食べてたらしいけど」
僕達は、拍子抜けw
「毎日、放電しに逝ってただけ?」
「ソレも2週間毎日?なぜそんなコトのために、わざわざアッパーイーストまで行くのかしら」
「運命の出会いを待ってたとか?ソレとも、宇宙人と交信してたとか。そうだ!マディとのデートには何色を着ていこう?」
途端に眉間にシワが寄るラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。僕が液体窒素で遊んでると…
「ラギィの友達とデート?テリィたん、ヤメとけば?」
「いや、ラギィは気にしてないんだ」
「テリィ様?」
カウンターの中のメイド長からも異議が上がるw
「もう決めたんだ。ミユリさん、林檎を取って」
「だって。スピア、そのしかめ面。テリィ様に冷凍されちゃうわょ」
「別に良いモン。来週の"元カノワークショップ"に顕微鏡が必要だってわかった。でも、顕微鏡なんか日本橋に持っていけないわ」
おお!冷凍リンゴ。カチンコチンだ。
「じゃあ"元カノワークショップ"をヤメれば?何か不穏な集まりに思えてならないンだけど」
「テリィたんの元カノが一堂に会するイベントょ。世界中の元カノが集まる元カノの祭典!ね?ミユリ姉様」
「え。私は元カノじゃナイし…コッチを見ないで。"二兎追って両方ゲット"が私の哲学だから」
知らなかったなw
「素晴らしい!ソレか、僕が週末までに発明しておこう。この液体窒素を使った"気候変動兵器"で大雪を降らせれば、交通はマヒし旅行はキャンセルだ。スピアは悩まなくて済むし、そして…余は世界を手にスルであろう!ハハハ。ハハハハハハ」
ゴム手に魔法瓶で黄金バット風の笑い声←
「テリィ様、全く助言になってません」
「僕は、そもそも邪悪じゃナイからなー」
「テリィたん。デートの準備は出来たの?」
今カノと元カノ会長がヤイノヤイノうるさいw
「おっと!もう、こんな時間だ。あ…」
ウッカリ時計を液体窒素の中に落とす僕w
「スゴい!時間が凍ったぞ」←
第3章 美食デートから幕は開き
万世橋の…女子トイレから出て来たラギィは、カラダの線がクッキリ出る真っ赤なワンピースを着たマディに出くわす。
「マディ?どーしたの?何かスゴいお洒落しちゃって!」
「ありがとう!はい、どーぞ。コレを渡したかったの。みんな捜査を頑張ってくれてるから感謝の印ょ」
「仕事だもの。でも、クッキーの差し入れは大歓迎!」
小分けクッキー入りの巨大バスケットを受け取る。
「オートミールクッキー、大好きょ!」
「良かったわ!…ねぇラギィ。同じ男の子を好きになった時のコト、覚えてる?」
「覚えてる。ブレト・エドワ。超カッコよかった」
輝くばかりのマディだが…慎重に言葉を選んでるw
「イケメンだったょねー。で、その後も覚えてる?」
「えぇ。まぁ、そぉね…でも、なぜ?」
「テリィたんとのデート。もし貴女が…」
即座に笑い飛ばすラギィ。
「テリィたんと?ナイわ」
「ホントに?また"ブレト・エドワ状態"にナルのは、避けたいの。絶対にイヤだわ」
「大丈夫ょマディ。ホントょ」
パッと顔を輝かせるマディ。
「そう?なら良かったわ」
「楽しんで、マディ」
「ありがとう。貴女もね」
再びエレベーターの中に消えるマディ。
見送るラギィは、溜め息…声がかかる。
「Hi!」
「トムデ、行ける?」
「ラギィ、仕事が入ったんだ。今夜中に報告書を仕上げなくちゃいけない。ごめん」
イケメンから詫びが入る。悪い気はしないw
「良いのょ。私もちょうど片付けなくちゃいけない書類があるから。では、また別の日に」
「でも、どうしても今日が良いンだ。中華は好き?」
「大好物ょ」
最近乱発してるオスマシ顔で微笑むラギィ。
「OK!じゃあ待ってて」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
ロッコの店。チンとグラスを当てる僕とマディ。
ワインを口にすると、シェフ自らが挨拶に来るw
「マディ、お悔やみを!コブラは良い奴だった」
「彼は、貴方を尊敬してたわ」
「来てくれて、ホントにウレしいょ」
コブラのライバルの筆頭ロッコだ。
「ロッコ。国民的SF作家のテリィたんょ」
「お前を殴ってやろうか!」
「ええっ」
拳を固めるロッコ。僕を紹介したマディも目を見開くw
「よくも"宇宙戦艦ヤマ子"を沈めたな!」
どうも僕のベストセラー"船コレ"のファンらしい。微笑み握手するキャッスル。
「"ヤマ子"のキャラ、大好きだったのに。"宇宙女刑事ギャバ子"も気に入ってるけどな」
「ギャバ子は、私の友達がモデルなのょ。ねぇロッコ。貴方とラギィ、意外にお似合いカモ?」
「紹介してよ。"ヤマ子"キャラなら大歓迎さ。絶対好きになる。じゃ楽しんで」
僕とマディを交互に指差しながら厨房に戻るロッコ。
「最高のシェフょねぇ」
「…でも、アレがラギィのタイプ?」
「え。あの子にタイプは無いわ。歴代の彼氏はバラバラ。ギタリストに医学生。王族出身か何かのフランス人もいたわ…今の彼氏はどーなの?」
僕は断言スル。
「まぁ長続きはしなさそうだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の会議室。照明が消え、キャンドルが灯るw
「この炒飯、最高だわ。何処の?」
「チョンさんのチョイナシーさ」
「ウソょ。あの店は絶対に出前をしない」
素直に驚くラギィに茶目っ気タップリなトムデ。
「実は、僕は特別なのさ。と言うのも、チョンさんはメダルを持ってた。ミンの頃の徽章だ。先祖代々受け継いだモノだったが、去年強盗に入られて、現金と一緒に盗まれた。意気消沈してるチョンさんに、僕がそのメダルを取り返して渡した。ソレからというもの、僕にはデリバリーをしてくれるようになったのさ」
「そうなの。すごーい」
「えっへん」
合コンデビュー女子大生級の反応に気を良くするトムデw
「コブラが大量の現金を持ち歩いてた謎を、貴方にも解いて欲しいわ」
「協力スルょ。色んな知り合いがいルンだ。情報がないか聞いてみる…君のために」
「お願いね。御褒美を用意しなきゃ!」
お前、ホントに前の職場で"新橋鮫"と恐れられた…
「ラギィ!あ、あら?あらら…キャンドル?」
「エアリ、入って。何?」
「コブラがジェニの車を降りたオフィスビルを調べてみた。ヘイムって弁護士と会ってたわ」
素早く(紙)ナプキンで口を拭うラギィ。
「あの大量の現金を弁護士に渡してたの?」
「いいえ。ヘイムは現金については触れてなかった。でも、ラギィのお友達のマディについて触れてたわ」
「コブラは、ヲバQ3を辞めようとしてた。契約を解除して出資金の返金を考えてたみたい」
ヲタッキーズのメイド2人が交互に報告。
「オープンしたばかりでメッチャ流行ってるのに、なぜ?」
「方向性の違いだ。コブラは彼女を訴えるとした」
「ヲバQ3は、コブラの評判で成り立ってる。コブラが去ればマディは全てを失うわ。そもそも、コブラが死んでからのQ3はどうなってるの?」
申し訳なさそうに報告するマリレ。
「保険をかけてあったから、ヲバQ3は丸ごとマディのモノになってる」
「コブラが死んで200万ドルも厨房も不動産も、全て失わずに済んだ」
「…立派な殺人の動機ね」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
色彩豊かなグラス、皿、料理。ホタテ、イクラ、リゾット、シュリンプカクテル。次々食べては身悶えして喜ぶマディ。
最高のデートだw
「これ…うーん、このイクラのパフェ最高に美味しい!」
「僕のトリュフのリゾット海老添えと交換しないか?」
「あら。とても魅力的なオファね。断れないわ」
原始以来、最凶のセックスアピールは美食に悶える異性w
2人で"ふーふーアーン"をし合い、2人でウットリ目を閉じ(僕は薄目でw)、互いに悶絶顔の交換中に…ラギィ登場←
「な、何なの?…ちょっと悪いけどお邪魔スルわ!」
サッと身を引くマディ。
「ラギィ?」
「…モグモグ(逃げ遅れた?僕w)」
「ちょっと…マディに聞きたいコトがアルの」
素早く笑みを浮かべるマディ。
「どーぞ。座って」
「モグモグ(僕ですw)」
「違うの。署に来て」
マディの笑顔が消える。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
覆面パトカーで万世橋に戻る。
「コースの半分しか食べてなかった!食事のお楽しみまで取り締まるのか?」
「テリィたん。だって、彼女は殺人の容疑者なのょ?当然でしょ?市民として、ご協力プリーズ!」
「次は鴨のパイ包だった!ロッコ特製のかぼちゃのニョッキも、テナガエビも、ラベンダーのクレームブリュレも、最高のワインだって全部逃した!」
食べ物に関しては、僕は負けないw
「わ、わかったわょ」
「文明人らしく最後まで食べさせてくれ。ソレだけだ」
「あぁダメダメ。ソレ、無理だから」
何と取調室に入れてくれないw
「テリィたんは隣の部屋。取り調べはマジックミラー越しに見て欲しいな」
「な、なんで僕を…」
思わず声が上ずるw
「僕をのけ者扱いスル気か?ヲタッキーズのCEOだぞ!」
「その前に、テリィたんは容疑者とリゾットを"ふーふーアーン"で食べさせ合ってた人なのょ?自覚して」
「アレは死ぬほど美味かったぞ」
ラギィを指差し隣の部屋に消える僕w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
一方、取調室の中ではマディが吠えるw
「ちょっと!次から先に言って頂戴!アンタの男とデートする度に逮捕しないで!職権濫用だわ!」
「マディ。ソレは誤解なの…」
「いやいやいやいやいや。わかってるわ。テリィたんのコトが未だ好きなんでしょ?ラギィは、テリィたんの子供を欲しがってる。ナンでソレを認めないの?」
口をポカンと開けるベケット。小声で囁く。
「マディ!テリィたんが聞いてる」
「え。マジ?」
「マジょ」
急に小声になる。でも、もう遅いw
「マジックミラーの向こう側?」
「YES」
「スゴい!海外ドラマで見たわ」
マディは、鏡の向こうから僕に手を振る。
「テリィたん、見てる?ニョッキを食べられなくて残念だったわねー。おいしかったのに」
返信に鏡をコンコンとノックしたら大ウケ。
「笑える!ツイート…じゃなかった、ポストさせて」
スマホを打ち出すマディ。ラギィは"新橋鮫"の顔になるw
「マディ。スマホを置いて座って。貴女は、警察にウソをついた。コブラは店を辞め、貴方を訴えるつもりだった」
「知ってたの?」
「ええ。もちろんょ」
ラギィはドヤ顔。しかし、マディも負けてナイ。
「あら。私、ウソはついてないわ。ただ、言う機会がなかっただけ…あのね。秋葉原で店をヤルことが、どんなに大変なコトなのかワカル?コブラが店を辞めるコトが公になったら、ソレでもうQ3は終わるの」
「だけど、コブラが死んだら保険が下りる。ねぇ何があったか話して?口論になって、いつもの癖でモノを投げたンでしょ?」
「何ょソレ。個人的な情報を捜査で使って問題ナイの?」
頭を抱えるラギィ。
「マディ。いい加減に正直に話して」
「私は殺してない。2週間前。コブラが突然店を辞めたいと言って来た。ソレも何の前触れもなくょ。人生を変えたいって言ってたわ」
「大方、他の店に目をつけられて、引き抜かれただけナンじゃナイの?」
うなずくマディ。
「だから、より良い条件を出して引き止めたの。なのに、彼は心を変えなかった。彼の人生に何か大きな変化があったみたい。だから、契約は解除するつもりだった。ただ代わりを探す時間が欲しかった。ホントょラギィ。私は彼を殺してない!」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
取調室と隣の部屋から同時に出て来る僕とラギィ。
「ほら見ろ!マディは犯人じゃないだろ?」
「ソンなの、ワカラナイわ。動機はアルもの」
「でも、アリバイがアルだろう?」
ヤイノヤイノやりながら捜査本部を横切る。
「だから、無視はしてナイわ。今、アリバイは確認中」
「急いでくれ」
「わかってる。でも、マディには秋葉原を出ないように言わざるを得なかった」
デスクに座るラギィ。
「あぁ聞こえてたさ。全てな」
「とにかく!店の権利を売ったり、現金を持ち歩いたり…コブラは逃げる気満々で準備してたワケょ」
「逃げる?何から?」
ココに颯爽と現れる爽やかイケメンw
「やぁラギィ」
「あ。食事の途中にごめんなさい」
「別に良いさ」
勢いよくデスクから立ち上がるラギィ。瞬時にヨソ逝きの"オスマシ顔"に豹変スル。女ってホント変わり身早いょなw
「ラギィ。僕もさ、被害者の情報を集めてみたンだ」
「まぁ!ソレで何か?」
「とにかく座ろう」
全員着席させる僕w
「東秋葉原の情報屋から、ギャンブル組織の話を聞いた。どうやら、コブラは賭け屋で大負けしたらしい」
「え。借金してたの?ソレなら、遺体の殴られた痕にも説明がつくわ」
「で、賭け屋の名前は?」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「ウェズ・スレド!私は、万世橋のラギィ警部。バザル・コブラの件について聞かせて」
東秋葉原の、文字通り地下にある地下プールバー。
「バザールでござーる?知らないな」
「マジ?彼の遺体に、貴方のお友達が色々殴った痕があったンだけど?」
「おい!何があったかサッサと歌え?返済しないから"処分"をしたンだろ?」
柄にもなく思い切りスゴむ僕。似合わない←
「おいおい。アフター5にビジネスの話をしろってか?しかも…サツと?」
「おや、ラギィ。重要参考人は協力を拒否したぞ?」
「わかったわ。殺人罪に問われても良いのね?」
スレドは、面倒臭そうに振り返る。
「良いか?全部、仮の話だぞ?あくまで、仮にだが、奴が俺と賭けをしたとしよう。そこで相当な借金を彼が背負ったとしよう。大金だ。あくまで、仮の話だがな」
「…仮に、いくら?」
「250万。俺は、もしかしたら、彼に金を返すように、催促したカモしれない。仮にだが」
食いつくラギィ…仮にだが笑
「催促?そんな生優しいモンじゃナイでしょ?やり過ぎたンじゃナイの?」
「いいや、ちょうど良かった。何しろその後、全額耳を揃えて返済して来たからな」
「いつ?」
コレも即答。仮にだが…
「奴が死んだ日だ。昭和レトロなカニ型のリュックに現金を詰めて、指輪を返せって怒鳴り込んで来た」
「指輪?まさか…世界を統べるワンリング?」
「いいや、もっと大事なモノだ。婚約指輪」←
息を呑むラギィ。女子の憧れアイテムに目の色が変わるw
「なぜ返せと?貴方、まさかダイヤの婚約指輪を借金の糧に取り上げた、とか言うンじゃナイでしょうね?!?!」
「わ!急に怒るな!仮に、あくまで仮に、の話だ!あれぇテリィたん、助けてぇ…と、とにかく!おまわりさん、良いか?あくまで仮定。仮定の話だが、数週間前、俺の友人が取り立て…じゃなかった、"商談"に行くと、奴は指輪に全財産を使ったと言った。だから、俺のお友達は穏やかに"商談"を進めながら、部屋の中を全く悪気なく隈なく見回したら、タマタマだ、良いか?タマタマだぞ?素敵なダイヤの指輪が勝手に目に飛び込んで来やがった。さすがは"ワンリング"さ。OK?指輪の方から勝手に、だぞ…で、つまり、奴は借金も返さずに指輪を買ってたってワケだ」
「ソレで、担保に奪ったの?ダイヤの婚約指輪様を?!」
鬼気迫る形相のラギィ。スレドはドン引きw
「き、聞いてくれ!おまわりさん、お友達は、100%悪気が無くて、単に奴を"刺激"しただけさ。だってさ、ソレで十分だった!効果があって、金は戻るし指輪は返した…あ、しまった。真っ当な"商談"を重ねた結果、双方合意の納得ズクで、ホンの出来心、じゃなかった、ホンの気の迷い、仮にだが、所有権が移動…したとも言い切れない!量子のゆらぎ的に"移動したカモしれない"状態の指輪だが、とにかく、コブラの手に戻ったワケだ。で、その時、コブラは間違いなく生きてた。モチロン今してる話は、全てが仮の話ナンだけども、奴が生きてたのはホント」
後半、ラスボスの威厳も捨てヤタラ多弁になった"東秋葉原の賭け屋の王"だが、フト押し黙り再びビリヤードに戻る。
僕とラギィは立ち話。
「婚約指輪の話は筋が通るな。だから、不倫を終わらせたり、貯金を下ろしたりしてルンだ」
「でも、肝心の指輪は何処にアルの?殺害現場は、鑑識が入って徹底的に探したけど無かったのょ?」
「きっとあったのさ。鑑識には"プロポーズする男の目線"が欠けてただけだ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「おまわりさん、奥です!」
厨房のスイングドアを、見習いコックが開けてくれる。
「ありがとう…どうして、コブラは残業してたのかな?」
「きっとケーキの仕上げをしてたのね」
「"プロポーズの仕上げ"だ」
奥の冷蔵庫を開けるとピンクの王冠のケーキ。その上にハート型の小箱が載ってる。ソレを開けたら…中から婚約指輪。
「彼は、逃げるつもりはなかった。少なくとも1生に1度のプロポーズから」
息を呑むラギィ。無駄に涙目になってる。
おいおい頼むょ"新橋鮫"に戻ってくれ。
「相手は誰なの?」
「今頃、想定外の展開にビビってるカモな」
「その人が犯人?」
第4章 2人のムーンライトセレナーダー
その夜の"潜り酒場"。
「あのぉ…普通ケーキに指輪を隠す?中華なフォーチュンクッキーじゃアルまいしw」
「え。とてもロマンチックだろ?もうラギィなんかウルウルだったンだぜ?」
「ノドに詰まらせるわ」←
ヤタラ現実的な僕の推しw
「リア充って、ヤタラぶっ飛んだプロポーズをすれば腐女子が喜ぶと思ってますょね?でも、私達はシンプルで良いのです。片膝をつき、潤んだ瞳で指輪を下されば、ソレで充分なの!」
「ミユリさんの前推しの時には、ロマンチックに指輪を渡したけど…結局、彼女は心を病んでアキバを去った」
「飛行船を借り切ったのでしたっけ?でも、2月でしょ?」
元祖メンヘラなんだ(自慢?)。
「確かに、震えがヒドくて彼女、指輪がハマらなかったw」
「(ハマらなくてlucky!)…あら、スピア?ワークショップの準備、進んでる?」
「全然」
ベーグルを摘み、プイと出て逝く僕の元カノ会長。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
昼下がりの"秋葉原マンハッタン"。ガラス窓が西陽に輝く摩天楼群。その谷底に沈む、万世橋の会議室のドアが開く。
「辛い時にありがとう、デヴド・ライデ」
ラギィが握手して別れた相手は、死んだコブラの幼馴染だ。
「来たわょラギックス」
「マディーソ?」
「今のは、コブラの腹違いの…」
入れ違いに入って来たのはマディ。赤のワンピースだが、デートの時と互い、髪を下ろしたキャリアガールバージョンw
「YES。でも、マディーソ。デヴドは、プロポーズなんて信じられナイって。モチロン、相手が誰なのか見当もつかないと言ってたわ。コレでプロポーズの相手が誰か、知ってる人はいなくなった。捜査は完全にお手上げ」
「コブラは、いつも違う女の子を連れ歩いてた。(コスプ)レイヤーさんが多かったような気もスルけど」
「ヲバQ3の店舗電話とコブラのスマホも調べたけど、やっぱり特定の女性との通話記録は見つからない」
探るような目でラギィを見るマディ。
「私、未だ疑われてるの?」
「あ、いいえ。事件の晩はパーティにいたそうね」
「じゃ何で呼んだの?」
ビニール袋入りの婚約指輪を示すラギィ。息を呑むマディ。
「ねぇラギックス…こんなのもらったコトある?」
「ナイわ。貴女は?」
「未だょ。あのコブラが真剣交際だなんて。誰と抜け駆けしてたのかしら」
アラサー女子のキャアキャアトークが始まるw
「コブラは仕事人間だから、絶対店の子ね」
「ワカラナイわ。末広町ステーションの地底超特急でシンデレラエキスプレスしてたとか」
「…何か思い出したら教えて」
ファイルを閉じるラギィ。
「ごめんね、ラギックス。私、貴女にウソをついた。貴女のコトを警察じゃなくて友達として見てたの。スイスの寄宿舎時代、ママの化粧品でメイクしてくれたり、キスに舌を使うコトとか教えてくれたのに」
「ううん、マディーソ。私も必要以上に貴女に厳しくしていたわ。忘れて」
「でも、コレで捜査はフリダシね」
溜め息つく2人。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"w
「で、テリィ様。コブラがハマってたカフェって、やっぱり萌え系ですか?私の知らない御屋敷かしら」
「いいや、メイドのいない昭和な喫茶店らしいょ。あ、昭和だけどノーパンじゃナイから…とにかく、コブラは1人で通ってた。店に推しがいるというより、店外交友に使ってたンじゃナイかな。でも、このアキバで誰にもバレずに店外交友とか出来るかな」
「テリィ様はなさってましたが…他の人の婚約指輪だった可能性は?」
カウンターの中からメイド長自らの絡み。至福。
「絶対コブラのだょ。だって、女遊びを止めて、借金を返して、指輪を取り返すためにわざわざダイナーまで売った。男がそーまでスル理由は、ただ1つだ」
「キャー」
「あぁ…」
ヲタッキーズのエアリ&マリレから悲鳴が上がる。
2人でプロポーズし合って、指輪をハメるポーズw
「私、PCのトラブルシューターを好きになったら、ナンと彼はバングラデシュにいたわ」
「イケメンバイトに会うために、コンビニのレジ横コロッケを2ヶ月食べ続けたコトがアルけど」
「ミユリ姉様に会いに来るテリィたんみたいね」
悪かったな!
「でも、なぜプロポーズされた相手はコブラを殺したの?」
「失うモノが大き過ぎた。きっと相手は既婚者ょ。テリィたんの大好物の不倫に違いナイわ!」
「キャー!テリィたん、不潔…じゃなかった、不倫!ミユリ姉様、テリィたんが大好物の不倫をしてるわ!」
最早この2人と話してもムダだ。切り捨てようw
「テリィ様。私が池袋から移りたての頃、良く御帰宅してくださいましたね。ゲームもせズ、ツーチェキも撮らズ。いつも御給仕スル私を見てた」
「(え。バレバレだった?)ミユリさんが、未だスーパーヒロインに"覚醒"スル前の話だね。y2k対応のデカい衛星ケータイを持たされて、いつも邪魔だからテーブルに置いてた。鳴るハズもナイのにね。あはは…あれ?もしかして」
「そうです、テリィ様。コブラは、カフェに通ってお茶してただけ。スマホもテーブルに置いたママだった。そして、ひたすら"誰か"を見てた」
僕は、やっと気づく。
「そっか…コブラは"誰か"を見てたンだ!プロポーズする勇気を奮い起こしながら」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
アキバの夕暮れ。黄昏に染まる神田リバーの川べりを歩く。
「カフェXから良く見えるのは…向かいの路面店か。あれ?セーラー戦士が出て来たぞ。コスプレカフェなのかな」
「いいえ。テリィ様、あの人はセーラー戦士コスプレの"男の子"です。女装マニアが集まる喫茶店カモしれません」
「とにかく、入ってみよう…ミユリさん、変身してくれ。その方が目立たない」←
店に入る2人。御屋敷ではなくコスプレ服のショップだ。
店員がハウスマヌカン的にコスプレ服を着用して接客w
「おお!さっきのは"セーラー戦士フラクタル"だ。2.72次元ミュージカル"往還機ゼンガーのスポンジ"が大ヒット中。しかし、もうコスプレ服が販売されてたのか…」
「テリィ様。私がいます!」
「え。ムーンライトセレナーダー?ホ、ホントだ。まさか、ミユリさん。アッチがモノホン?」
「違います!テリィ様、良く見て(胸がつるぺたw)!」
ムーンライトセレナーダーは(僕の趣味でw)セパレートタイプのメイド服だ。今もコスプレ店員が接客中。ん?アレは…
「"緊急連絡先デヴド・ライデ"の彼女、セシリ・シシリじゃナイか!」
「コブラは、自分の"緊急連絡先"の彼女のコスプレ姿を拝みにカフェへ通ってたの?」
「うーん確かにコレは厄介だ」
僕が曖昧に微笑み手を振ると、セシリは目を見開く。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
SATO司令部は、パーツ通りのゲーセン地下にアル。ココに来た段階でセシリの立ち位置は参考人から"捕虜"に変化w
「ココは何処?私が話すコトは何も無いわ」
「貴女とコブラとの関係を聞きたいの」
「だから…家族みたいだった、ってか、貴女、ムーンライトセレナーダーょね?実はモノホン見るのは初めてなの」
ムーンライトセレナーダーが、ムーンライトセレナーダー(のコスプレ娘)を尋問してる。マニア垂涎の激レア光景だw
「昔からの知り合い?」
「10年前ょ。同じレストランで働いてから。ねぇ何でソンなコトを聞くの?」
「コブラが、毎日貴女のコスプレ姿を見るために向かいのカフェに通ってたから」
息を呑むセシリ。
「毎日、私を見に?キモい…」
「おいおいソレはナイだろう。コブラの人生は、2週間前から大変化を遂げた。全ての女遊びを清算し、巨額の借金を返済してる」
「そして、セシリ。彼は、こんなモノまで買ってたの」
ビニールの証拠品袋入りのダイヤモンドの婚約指輪を示す。
ソレを見た瞬間、セシリは息を呑む。ブワッと涙目になる。
「貴女にょ」
「確かに、コブラは誰もが認める悪だった。その彼が、突然結婚しようと思った。その心変わりには、何かキッカケがあったからだ」
「あのね。SATOは超法規組織ナンだけど、ココにキャリアが自主的に提出した貴女のスマホの通話記録がアルわ。4ヶ月前から産婦人科に頻繁にかけてる。貴女、コブラの子を妊娠したのね?」
大声で泣き出すセシリ。
「一生誰にも話さないつもりだった!でも、私が妊娠したとデヴドが話すと、コブラが気づいたの…ホント、私は罪深い女ょね」
「私達は、警察じゃないから貴女を罰しない。ただ、真実だけを知りたいの。だから、話して」
「…父親が亡くなって、デヴドが帰郷した時、コブラが来て手を握ってくれた。その時、気づいたの。私が愛しているのはコブラなんだと」
どーしよーもナイ女だw
「じゃなぜデイビットと別れなかったンだょ?」
「デヴドは、他の女と寝て私を裏切ったりしない。コブラには傷つけられるのがわかってた。男として信用出来ない。そんな人の子供は産めないわ。だから、デヴドを選んだ。お願い!彼には秘密にして」
「ムリ。ソレに知ってたんじゃないか?事件の夜、デヴドは何してた?」
ムキになって答えるセシリ。
「家よ。私と寝てたわ!」
「一晩中(ヤッてたのか?)?」
「待って…まさか?ウソ!」
ホラ見ろ(一晩中ヤッてたンだろ?)←
「私が眠れないと言ったら、デヴドが睡眠薬をくれた…そんなコト、今まで1度もなかったのに」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
万世橋の捜査本部。
「拘置所へ連れてって」
「閉じ込めて!」
「わかりました、ヲタッキーズ」
エアリ&マリレが制服警官に突き出すのは…デヴドだw
「ラギィ。デヴドは黙秘してる。でも、奴のアパートから、コブラのカニ型リュックと現金が見つかったわ。靴底が液体窒素で割れた靴もね」
「アレだけ裏切られたンだから仕方ナイか」
「何を言ってるの?マリレ、殺人は殺人ょ。許されない」
僕は、ラギィとヲタッキーズの話を聞く。
「思うに、セシリはコブラを取るべきだったと思うな」
「何で?彼女の気持ちこそワカルわ。コブラみたいな人は、思い通りにナラナイ。トキメキはあっても、いずれ裏切られて、自分が傷つく。リスクが大き過ぎるわ」
「何のリスクだょ?いつもカラダとココロは正直だ。本能の赴くママに愛し合うべきだと思う」
名言だ。良いコト逝うなw
「…そういや僕は、もうコレで逝かなきゃ」
「カラダとココロが命じるママにマディとデート?」
「おや?聞いてないのか?もうマディとはデートはしない。今から御帰宅さ。スピアがどんな結論を出したか知りたい」
微笑み僕を見送るラギィ。入れ違いにトムデが出現w
「ラギィ。一見落着?」
さっきまで僕が座ってたデスクサイドの椅子に座る。
「今回は、協力してくれてありがとう」
「覚えてるか?この前、中華ディナーが途中だったょね。今から"マチガイダ・サンドウィッチズ"でどう?ビールとハンバーガーとか?」
「(この人バカ?マチガイダならハンバーガーじゃなくホットドッグでしょ?)行きたいけど…別の日は?」
思いがけズ断られパニくるイケメン。
「何か用事でも?」
「…明日はどう?」
「大丈夫だ。じゃ明日」
慌ててオスマシ顔を作るラギィ。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
その夜の"潜り酒場"。
スーツケースを横に勉強しているスピア。
「お!やっぱり旅行に行くコトにしたのか、スピア」
「YES。1時間後に出発」
「でも、ソレは…旅行を楽しむトラベラーの顔じゃナイな」
スーツケースを置きカウンターに座るスピア。
「スピアの気分が良くなるよう何か僕に出来るコトは?」
「実はアル。秋葉原にいろと命令してくれない?」
「え。マジか?」
何と期待を込めた目で僕を見上げる。
「そうか、わかった…なぁスピア。来週は僕の"元カノ会"のワークショップだろ?とても大事な会合だ。友達と遊んでる場合じゃない。今週末はちゃんと準備に当ててくれ。コレは元カレとしての命令だ」
すると…スピアが抱きついて来るw
「ありがとう、テリィたん!スマホしなきゃ…もしもしレイシ?ごめん。テリィたんからいきなりステーキ、じゃなかった、イキナリ旅行に行くなって言われちゃったの。ワークショップの準備しないと…そう!そーなの。でしょ?何がイケてる元カレょね?自分で言っておいて」
片手でスマホ、片手で僕の口を塞ぐスピア。
「OK!たくさん写メして。じゃバイバイ…ありがとう」
スマホを切ったスピアとハグ。スピアがスイカ級の巨乳を押し付けて来て…ミユリさんはコレ見よガシに大きな溜め息w
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
五つ星レストラン"ヲバQ3"の開店直前。
「みんな集中して!丁寧な気遣いをね!では頑張って」
「マディ、いよいよ再開ね?」
「ラギィ!そうょ、コブラの代わりに最高のシェフを見つけたんだから」
マディは紫のワンピース。ラギィは赤いジャケット。
「あら"新橋鮫"さん?また私を尋問に来たの?」
「コレはコレは。ジェニ・ウォン"鉄女"シェフ。Q3の主任シェフだって?でも、今宵はお友達として言わせてくれる?おめでとう」
「ありがとう!今日のコース、食べて行ってね」
トレードマークの迷彩バンダナを〆て厨房に消える。
「ラギィ。結局デヴドがコブラを殺したンだって?」
「YES。自供に拠れば、セシリのメールを見て、コブラが生きてれば自分が捨てられると思ったみたい」
「まぁ美食版"カインとアベル"ね」
お洒落をして来たラギィが誘う。
「マディ。モチロン今、忙しいわょね?」
「いつものコトょ…なぜ?」
「私に1杯付き合わない?実はね…テリィたんがムーンライトセレナーダーを泣かせたのょ」
違うだろ。話を作るなw
おしまい
今回は、海外ドラマによく登場する"鉄人シェフ"をテーマに、冷凍死体で発見される鉄人シェフ、その緊急連絡先、そのフィアンセ、厨房のパティシエ、スープ職人、皿洗い、多彩なライバルシェフ達、東秋葉原を牛耳る賭け屋、敏腕警部のスイスの寄宿学校時代の友人、冷凍殺人犯を追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズ、敏腕警部などが登場しました。
さらに、主人公の元カノのワークショップ騒ぎや美食界事情などもサイドストーリー的に描いてみました。
海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、先が見えて来た円安に焦りを感じるインバウンドで溢れかえる秋葉原に当てはめて展開してみました。
秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。