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辞職

作者: 狐

朝10時。この遅い朝をもう昼だという人もいるだろう。でもオイラからすると早朝なのさ。近所のフランス料理店で働いてもう4年になる。10時半出勤というのは朝が弱いオイラにはちょうどいい時間帯。シゴトを覚えるのに3日も要らなかった。今では接客や調理までほぼ全てのシゴトを任せてもらえる。飲食店で働く才能があるのだ。早起きしなくていいし才能もある。こんなに都合のいい職場は他にないだろう。それでもオイラは辞職しようと思う。

原因は副店長のマツバダケさんにある。彼は仕事ができるオイラを利用して自分はサボれるようにいつも計画を練っていやがる。

バレていないと思っていたら大間違いだ!店の営業はオイラに任せて自分は事務作業ばかりするというのはいつもの事さ。しかも急に厨房に顔を出したと思ったら洗い場の田中さんに「やり直し」と、靴の裏側のような顔で指摘している。その時の空気は地獄のように重い。みんな「お前が言うな…」と思っているからだ。その晩田中さんは泣いていた。オイラは彼の背中に手を置くことしか出来なかった。

1度マツバダケさんと2人きりで話したことがある。「俺空気読むの上手いんだよなー」と自分語りを始めたかと思うと「けど空気読めた上で言っちゃいけないこと言っちゃうんだよなー」と続けた。つまりあの地獄のような空気を作り出しているのは意図的というわけだ。その時オイラは空いた口が塞がらなかった。

辞職する理由なんてのは1つだけのわけが無い。バイトリーダーのササノウエさんだ。オイラはよく彼に叱られる。叱られるというより八つ当たりされている。オイラにバイトリーダーの仕事が取られそうで焦っているのか、マツバダケさんの横暴な態度が嫌なのか、学生のアルバイトのみんなのやる気がないのがムカつくのか、それともその全てか…。八つ当たりするにはいい相手が必要だ。嫌な思いをさせられるがバレないように内密に行わなければならない。オイラは職場で文句は言わないので八つ当たりするには絶好の相手だろう。八つ当たりをしている時の彼は気持ちよさそうだった。

オイラより古株のヒガシノヨコさんは弱い人だ。人を利用してなるべくトラブルに巻き込まれないようにしないと生きていけないのだ。田中さんがマツバダケさんに怒られて泣いている時も、オイラがササノウエさんに八つ当たりされている時も気づかないフリをしてた。立場が上なのは明らかにマツバダケさんやササノウエさんだ。だから2人に媚びることで自分は平穏に過ごせている。たとえ2人が間違っていても自分が攻められなければそれでいいのだ。それは正解な生き方なのか。オイラは彼のような生き方はしたくない。たとえそれが正解でも。

オイラは店長に体調を崩して働けなくなったとか色々嘘をつき辞職することになった。4年も働いていたオイラが辞めるとなってみんなは驚いていた。しかし自分たちのせいで嫌な思いをさせていたと薄々気づいている様子だった。全員に謝られた。けどそれはオイラに悪いと思ったからじゃなく自分たちの弱さをなかったことにしようという考えだ。作戦が見え見えだ。あんなに嫌な人間たちと一緒に過ごしていると自分が腐りそうだ!辞めて正解だと思う。今までオイラは、田中さんの下手くそな洗い場のフォローも、本来マツバダケさんがするはずのシゴトも、ササノウエさんの八つ当たり相手も全てをしてきた!そんなオイラが辞めたとなると上手く営業できないだろう。恐らく今頃店は大混乱だ!

そして店は崩壊する。いい気味だとすら思える。あースッキリした!

~数日後~

「あいつ辞めちゃったけどなんも変わらないっすねー笑」

「あいつ仕事全部奪うしムカついてたんだよなー」

「それより田中さんしっかり洗い物しろよ!前よりミス増えてんじゃん!」

(いつもあの子がフォローしてくれてたからいざ1人になるとどうしたらいいか分からない…)

「てゆーかあいつ名前なんだっけ?笑」

「ハハッ!名前くらい覚えてやれよ!…あれ、俺も忘れたわ」

「俺もっすよー。田中さん教えてよ?」

「あ、ぼ、僕も実は名前覚えてないんです。」

「全員に忘れられてるとか可哀想だねー笑」

「けどまた1人辞めちゃったしそろそろ次のターゲット決めとかないと」

「大丈夫。もう候補いるし。」


人間関係というのはとても難しい。

みんな心の底で思っていることは隠しながら生きている。

他人にも自分にも隠している。

それが上手くいくことともあるだろう。

いや、自分にとって不都合な感情を隠しているんだ。

そりゃ上手くいくだろ。

そしてそれが幸せなら正解だ。

自分に嘘をついて幸せになれるだろうか?上手くいっていると言えるだろうか?

ムカついても騙しても幼稚でもそう感じたのならそれが本当の自分。

変わりたいならまずはその感情を自分自身が受け止めなくてはならない。

それはとても苦しい見にさちかもしれないが。

少なくとも私は最後の瞬間に心の底から笑っていたいと思います。

主人公と一緒に働いている彼らは自分に嘘をつきながら生きています。そして自分はそういう性格だと言い訳をして成長が止まっている。

主人公は自分の感情に素直になるように努力している。そこが彼らとの違い。

しかしそういう人はあまり気に入られないそうです。

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