あなたも、私も、レビューをもらうには、この方法しかありません! 修行編その2
(すうっ~)
(せえのぉ)
「愛してま~す!」
この日、自分は、仕事が休みだったものですから、王都の隠れ家で、ひたすら書類を整理していたのです。一日中、ゆっくりまったり過ごす予定だったのですが……。
「ピンポーン」
「はい。作者ですが……」
「ちわっす。会長、遊びに来たっす!」
そう言って、もふもふ尻尾を、ふりふりしている、狐人の男の子。
「おお、モルトか! おあがりよ」
彼は、作者が今連載中の『砂漠の国の歩き方』にて、主人公の執事として、日夜頑張ってくれている狐人のモルト君です。
「何か王都も、物騒っすよね~」
「何かあったのか?」
「それがっすね、今、ギルドに『サラマンダー』が来ているらしいっすよ!」
「お、おい、*サラマンダーって、いつの話だよ!」
*注:『転生社畜の領地経営』に登場する女の子四人組パーティー。無敵。一部の間では『不沈艦』などとも呼ばれている。伝説のトーチの戦では、たった四人で、連合軍十二万を撃破したことは有名。他にもギルドをぶち壊すなど、さんざんやらかしている。
後に銅像も建てられたが、彼女たちのダメ出しが相次いだせいで、何度も造りなおされた結果、本人たちとは似ても似つかぬ美少女戦士の銅像になってしまった。彼女たちの功績を讃える演劇のキャスティングにも執拗に介入し続けた為、結果的に彼女たちの素顔は謎のままになってしまっている。
「何でも、扉の向こうから修行に来たらしいっす。会長のお知り合いっすか?」
「い、いや、知らんぞ。いいかモルト。誰かに『サラマンダー』のことを聞かれても、作者とは無関係って言うんだぞ!」
「はいっす」
「でも、何で『サラマンダー』なんてわかるんだ? 誰も知らないだろうに」
「それが、例の旗を持ってるんで疑いようがないっすよ」
「げっ、まじか……。よくあんなもん街中で広げられるな」
「ギルドの受付の女の子も、信じられないけど本人たちで間違いないって言ってたっす」
モルトはそう言いながらも、もふもふ尻尾をぶんぶん振っている。これは、おねだりのサインかな?
作者の出した、山盛りのお団子ドーナツケーキをパクつきながら、ひとしきり和んだ後、モルトは、こともあろうに、とんでもないことを言いだしたのだった。
「そういや会長って、連載中の作品には、まだレビューしたことないっすよね」
「た、たしかに……」
「何故っすか?」
「そ、それは……」
「普段、偉そうなこと言っておきながら、無理とか、言う気っすか」
「い、いや違うぞ」
「どうせ、書きにくいから、書いてないだけっしょ!」
「ち、違うわ!」
もふもふ尻尾を揺らしつつ、もきゅもきゅと、団子ドーナツを頬張る狐人君。こ、こいつは……。人の家で御馳走になりながら、何て失礼な奴だ!
「連載中の長編に、自らレビューしないと、会長の言うことなんて、誰も信じないっすよ」
た、たしかに……。レビューを書くにあたり、連載中の作品は、今後どう話が転がるかも知れず、正直、書きにくいです。
下手なこと書いたら、作者様に、迷惑が掛かるんじゃないか……なんて思いがち。長編ならなおさらです。
そういえば、『砂漠の国の歩き方』も、連載中の長編! そりゃ、書きにくいよ。これは、レビューを書くようになって、初めてわかった感覚でした。
……って、あっ、今、速報が入りました。『砂漠の国の歩き方』に、レビュー頂きました! 初レビューです! 猫らてみるく 様! ありがとうございます!
その、感激の初レビューの全文が、こちら。
◇
転生3世の異世界での過ごし方。いろいろと「常識」が「非常識」になっちゃって、ズレていきます!
投稿者: 猫らてみるく [2021年 07月 26日 20時 46分]
主人公レオン=クラーチの祖父は転生者。
つまり、レオンは転生3世なのである。
転生に際してのオマケ的チート能力は無いし、前世の記憶とかも無い。
ただ、祖父の方針でちょっと普通でない教育を施されたため、生まれながらにいる世界の「常識」とはかけ離れてしまっているのだ。
そして一方、公爵令嬢イザベル=クロウ。
彼女は彼女で、箱入り過ぎる環境と思い込みの強さで、やっぱり「普通」とは言い難いのであった。
この2人の邂逅が引き起こす、とんでも展開がこの物語の発端である。
レオンは貴族社会に馴染めず、むしろ辺境で暮らしたい。しかし、その辺境の様子は、想像を遥かに超えた事態になっていた……。
そして、イザベルの妄想は留まるところを知らず、どんどんおかしな方向へ……。
さらに主人公の妹や自由奔放な執事、その他ユニークな登場キャラクターも楽しい作品だ。
この後、どうなることやら?
是非、一読を!
◇
思わず、歓喜の舞を踊りだす作者に対して、ジト目のモルト君。
「会長も少しは、猫らてみるく様を見習ったらどうっすか?」
こ、コホン。何を当然のことを言っているのだね。
強がる作者に、モルトは黙って、一冊の本を差し出したのでした。
(続く)