練習
[3.練習]
まず、周りで起きた小さいことを改変しようとした。しかし・・・。
身の危険がねぇ!わざわざ自分で道路に飛び出せとでもいうのか・・・?
それか達にでもまた殴りかかってくれとでも頼めばいいのか?
あー。だんだんやりたくなくなってきた。
そう考えながらトイレへ向かっていたら、トイレの扉の前で転んでしまった!
そしたらまたあの時みたいに時が止まり、目の前に記入欄のようなものが表示された。
えーっと、年月日とかは・・・。さっき、とでも書いとくか。
改変場所、俺が転ぶ、改変内容、俺は転ばなかった。
そうすると目の前の文字は消え、時は動き、俺は倒れた状態から立った状態へ
周りは俺へ視線を向けた状態から自分の正面へ視線を向けた状態へと一瞬で変わった。
年月日とかテキトーでいいんかい。なるほど、こういう風に使うのか。
能力を使える条件がもう一個ぐらいあってほしいなぁ。
例えば、満腹になると能力が使える、とか。
そういえば昨日、自分の能力を知っていないと能力が使えないとかあいつ言ってたな。
ってことは、一番最初に現れた能力者は、最初から自分の能力をわかっていたってことか?
ん~・・・やっぱり謎が出てくるなぁ。
そう考えていると、同じクラスで学校で唯一の俺の友達、西井 勇が話しかけてきた。
勇「躁くん、昨日どうしてワーク運んでくるの遅くなったの?」
「いやー、突然便意が現われ、トイレへ駆け込み、用を足したころにはすでに11時40分を越えていた
ということになるのであります。」
勇「えー?11時10分ごろから約30分排便してたってことになるよ。」
「まぁまぁ、なんかあったんでしょうね~。」
勇「何があったのか聞きたいところだね。」
「それより、お前もう一つの世界とか信じてるか?」
勇「ん~、あったらおもしろいだろうな~とは思うなぁ。見たことがないから信じてはいないね。
というか、あったとしてもこっちの世界から行けなかったら、なーんだって思うけどね。」
「まぁ、そうだよな。」
などと談笑をして、教室へ戻った。
一通り授業を終えて、家へ帰った。
佳子と達に会おうとでも思ったが、まぁいいだろう。
漫画とかでありがちの帰りに能力者に襲われる、とかがなくてよかった~。
あ、そういえば、佳子が拘束して置いてったあの女の人はどうなったんだろう。
ちょっと気になってきたなぁ。でももう家に帰ってきてしまったし
明日にでもあっちの世界に行くとするか。
今日はもう一つの発動条件を探すとするか。さすがに使いづらい。
まず、晩御飯をたらふく食べてみた。しかし文字は現れず。
水風呂に入り体温を下げてみた。しかし文字は現れず。
逆に熱いお湯にしばらく浸かってみた。しかし文字は現れず。
何分か息を止めてみた。文字は現れたが、これは身の危険を感じて能力を発動したことになる。
自分にデコピンをして痛みを与えてみた。文字は現れず。
夜更かしをしてみた。就寝するまで一切文字は現れず。
「なぁ、事実改変したい。」
と、恥ずかしい独り言を言ってみた。文字は現れず。
結局翌日体調が悪くなった。
あー最悪だ。もう発動条件はないんだろう。
今日も学校か・・・。今日ほど学校を休みたいと思ったことはない。
―――こういう時に事実を改変したいなぁ・・・。―――
そう思うと、時は止まらなかったが、目の前に文字が現れた。
マジかよ・・・これは体調が悪いから能力が発動したのか
本当に今日を休校日にしたいと思ったから発動したのか。
おそらく後者だと思う。そう思いたい。そうであってくれ。
つまり、本当に変えたいと思えば、能力が発動するらしい。
ついでに今日は休校日にしよう・・・。
したのはいいが、今日は何するかな。体調が悪いから、今日は一日中寝るか。
そして俺はベッドへ向かった。
?「・・・。」
・・・て・・・。
ぉ・・・て・・・。
起きて・・・起きて。」
「ん・・・?」
?「起きたね。おはよう。夢の中だけどね。」
「へっ?夢の中?」
?「そう。私に見覚えない?」
「あなたは・・・あぁ、あの世界で俺らに取り残された・・・。」
?「そう。そうよ。あの時はむかついたけど・・・まぁいいわ。未来のあんたに救われたからね。
それに、未来でもあんたに救われたし。」
「そ、そうなのか?でも、未来の人間が過去の人間に会えるって、それがあなたの能力なんですか?
しかも夢の中だなんて。」
?「私の能力は記録するのとその記録を読み込む能力。ゲームでしたことあるでしょ、セーブとロード。
そんな感じ。この時間でセーブしたから未来からロードしてこの時代に記憶を持って行ける。
未来でセーブを、いやバックアップといったほうがいいかな、バックアップしてれば、また未来に戻れる。
私が夢の中で過去をロードできるのは、私の能力は夢でも使えるから。夢の中でセーブしたら
夢の中でロードできる。なぜあんたが夢を見た日でピンポイントでセーブしてるかというと
たまたまこの日の夢の中で、夢の中でセーブロードできるって気付いた日だから。その日にたまたま
あんたが夢を見て、しかも私が見た夢の世界と同じ夢の世界に来たから。なぜ当時私と
夢の中で会えなかったのかというと、まぁ、あんたと私の位置が遠かったから。って、話長いよね。
ごめんねー。でもわかりやすくしたつもり。」
なぜ俺と同じ夢の世界にいたとわかるのかがわからんが、まぁいいだろう。
「うー・・・まぁ理解した。で、ここで俺と何するんだ?」
?「まぁ、ちょっとあんたに能力の練習をさせたい。」
練習?どうやって・・・。
?「夢の中だと発動条件なしに能力が使える。試しに、あそこに会社員いるだろ?
突然あいつが財布を落とすんだ。だから、その事実を改変してみろ。」
「え?わ、わかった。」
能力を使おう、と思った瞬間目の前に文字が出てきた。
「うお、ほんとに条件なしで能力が使えるんだな。よし、じゃあ改変してみるか。」
記入欄に記入し、能力を発動させた。少し待ったが、会社員は財布を落とさなかった。
?「おー、ほんとに改変できるんだね。次に、あそこのビルが崩れるから、崩れたビルが地面に落ちずに
空中で止まるように改変してみろ。」
「わかった。」
改変した。そしたら、ビルが崩れだし、ビルが地面に落ちそうになるが、地面から5m上に止まった。
?「すげぇすげぇ!おもろいなー。じゃあ次は、前の事実を改変してみよう。じゃあ、あの崩れたビルが
地面に落ちたってことにしてみろ。」
改変。たしかに、年月日と時間を指定できるってことは、未来のことも過去のことも改変できるよな。
そうすると、さっきまで空中に固定されていた崩れたビルは、一瞬で床に落ちた状態へ変わった。
「もうこんぐらいでいいか?」
?「最後にもう一個!物を生み出してみろ。改変場所を○○が現れないにして
改変内容を○○が現れるにする。」
改変。佳子を出現させた。なるほど・・・ここで○○が起きなかったことも事実ってことか。
これじゃこの世にいない誰かをよみがえらせることもできるってことか。戦国武将とか。
佳子「躁か。それと隣にいるのは・・・誰だったかな。」
?「あんたが拘束したまま置いてった超能力者、池島 アリス(いけしま ありす)だ。」
佳子「あ~思い出した。つーか、アリスとかふざけてんのか?」
アリス「私はハーフだ。日本人とアメリカ人のな。英語はしゃべれないけど。」
佳子「あっそ、で、ここで何してんの?」
「アリスに能力の練習に付き合ってもらってるんだ。無い場所から出現させることもできるらしい。
ちなみに、試しに出現させたのが佳子ってことだ。だから今ここにお前がいる。
あぁ、ちなみにここは夢の中らしい。」
佳子「は?夢の中?・・・あ、私さっき寝たんだ。つまり、私が寝たって事実も改変させたことになるな。」
アリス「そういうことになるな。さて、いろいろ気になってると思うから、説明をする。
私があんたらと普通に会話してる理由とかね。」
アリスは佳子に、アリスと俺がここにいる理由などもろもろを教えた。
佳子「なるほど、夢の中で条件なしで能力を使えるのは初耳だ。どこで知ったんだ?」
アリス「実は未来のあんたから聞いたんだ。しかし、この様子だとここで初めて知って
未来でその話を知らない私へ教えたってことか。つまりメビウスの輪のように繰り返されてる
ってことになるな。」
佳子「なーんで未来の私はあんたなんかに教えたんだろうね。」
アリス「ちょっと考えりゃわかる話。未来で私に伝えれば、私が過去に戻って躁君に能力の練習を
させて、躁君に能力の応用力をつけてもらって、未来で助けてもらうってこと。」
佳子「こいつに助けてもらう事なんかないでしょ。自分たちで十分だと思うんだけど。」
アリス「私だって、自分たちでなんとかできる問題だけだったら、躁君に能力の練習なんかさせないよ。
でも、起きるのよ。躁君にしか解決できない問題が。」
佳子「どんな問題だ?」
アリス「それはお楽しみってことで。いずれわかることだし、今は教えない。
そろそろ時間だから戻るね。過去の私を、よろしくね。」
「なんか、すいません。」
アリス「全然いいのよ~。それじゃ!」
そう言うと、アリスは消えた。
「そろそろ、俺も起きるとするかな。」
佳子「ああ、ついでに私も夢から覚ましてくれ。」
改変。数秒後に夢から覚めない事実を夢から覚めた事実へ改変した。
疲れた・・・。