どうしてなんだろうな
[2.どうしてなんだろうな]
放課後、あいつに立ち入り禁止である旧校舎に呼ばれた。
先生に見つからないかはらはらした。
そういえば、あいつの名前聞いてなかったな。
う~寒い。寒すぎる。暖房もない廊下で俺はもう何分待ったんだろう。
10分?20分?
「ごめん。」
「ヒッ!後ろから話しかけるな!」
「お前が答えて欲しがってた質問に答える。」
「お、おう。」
俺らは廊下を歩き出した。どこへ向かってるかは不明だが。
「まず、機械で能力が手に入るってことは、超能力は人間によって作られたものなのか?」
「もともと超能力は突然現れたもので、それに対策するために人工的に超能力が作られた。」
「超能力を作るのにどれくらいかかったんだ?」
「もともと超能力を作ろうと研究をしてた奴がいて、ある日超能力の仕組みを見つけた。
それも、夢の中でね。」
「なんか、話が出来過ぎてるような気がするが・・・。」
「誰かの能力のせいで、こんな出来過ぎてる話になったって説もあるけど、それはおいといて。
前から超能力を作っていたから、超能力が現れてから1か月ぐらいで完成した。」
「そうか。それじゃ次の質問だが、なんか今考えたらおかしいことが少しあって。」
「おかしいこと?」
「まず、俺が知らない奴に話しかけたってことだ。それと、お前が突然俺に能力を見せて
お前なら理解できそうだと思った、みたいなことを話し出したことだ。しかもその直後に異常事態が
起こり、もう一つの世界に行ったら大きい衝撃波のようなものに襲われ、別に能力者になろうと
思わなかったが、突然俺が能力者になりたいと思い、それで取得した能力が発動条件はわからないものの
お前によると強いらしく、まぁお前が授業に飽きて廊下を歩いていたのはいいとして
記録と読み込みの能力はある意味時間操作の能力でもあると考えられるがそいつのおかげで
俺がお前と会った日のログを―――
ハッ! お、俺なんか言ってたか?」
「早口過ぎて最後の方あまり聞き取れなかったが・・・まぁ、たしかに偶然が重なってるな。」
「あと、一番聞きたかった質問だが、お前の名前を教えてくれ。」
「私は佳子。」
「・・・苗字は?」
佳子「苗字なんか聞いてどうする。下の名前だけで十分だろ。」
「まぁ・・・そうだな。俺の名前は躁。」
佳子「変な名前。」
「言うな。それと、どうして3年・・・何組何番だか忘れたが
そこのロッカーが変な空間と繋がってるんだ?」
佳子「あっちの世界が本当の世界で、こっちの世界はifの世界。
もしあの時あれをしていたらの世界ってこと。それでこっちの世界でも能力者が現れたけど
破壊する能力じゃなかった。その能力者は、あっちの世界の存在を知ることになるけど
どう知ったのかは知らない。それであっちの世界へのゲートを作ったってこと。
なぜ3年6組10番のロッカーかというと、そいつの番号だったから。」
「そいつは今どうなったんだ?そして、なんでお前がそいつのことを知ってるんだ?」
佳子「そいつは今どっかで普通に働いて順風満帆の生活を送ってるだろうよ。それかホームレス。
私はあいつの妹。私が能力者になったのもあいつのせい。私はあいつの実験台みたいな扱いを受けてた。
能力をいくつもつけられた。そのおかげで私も知らない能力が私にある。自分の能力を
理解していないと、自分に能力があったとしても発動できない。コントロールが難しすぎるのよ。」
「その能力のうちの一つが、相手の心を読む能力か?」
佳子「そう。それと、今わかってるのは相手の本質を見抜く能力と、あっちの世界の危機を
察知する能力。」
「本質を見抜く能力は、面接官に向いてるな。」
佳子「まぁね。金稼ぎはできるだろうよ。でも、自分の力で金を稼がないと意味がないじゃない。」
「お前、いいことっぽいこというな。」
佳子「それと、こっちから質問なんだけど、能力をつける機械あるじゃない。完全に私のミスだが
能力をつけるモードじゃなくて、能力を解析するモードだった可能性があって。」
「え?ど、どういうことだ?」
佳子「まさかそんなわけないとは思う。しかし、一応訊いておくが、お前もともと能力者だったのか?」
「なわけないだろ。今まで発動したことも・・・あるかもしれないけど、そもそも超能力なんか
信じちゃいなかったし。」
佳子「そうね。そうよね。」
歩いてるうちにたどり着いたのは音楽室。
佳子「ここに能力者がいる。」
「そうなのか?敵か?」
佳子「味方。紹介してやるよ。」
そうすると棚の下の大きめの引き出しのようなところから男が出てきた。
?「どうも、初めまして。」
「まさかとは思うが、一日中ここにいるのか・・・?」
?「いえ、食事を買うためにコンビニに行くし、授業を受けるために新校舎へ行きますよ。」
「自分の家とかないのか?」
?「ありません。ですが、作ることはできます。おっと、名前を教えておきましょうか。
私の名前は、美山 達です。」
一瞬建築士なのかと思ったが、おそらく0から1を作るみたいな能力じゃないのかと予想した。
「俺は躁。よろしくな。」
達「宜しくお願いします。佳子さんから聞いてましたが、確か事実改変の能力をお持ちで?」
「あぁ、そうらしい。でも発動条件がわからんから使えんがな。」
達「ならば発動条件を見つけるまでですッ!!」
と言うとこいつはいきなり俺に殴りかかってきた!
「くっ・・・!」
・・・あれ?痛くないし、こぶしが止まって見えるぞ。
窓を見ると飛んでいる鳥が止まっていた。
「こ、これは・・・。」
目の前に突然文字が現れた。
年 月 日 時 分 秒 改変場所 改変内容
と書いてある。手書き文字で・・・。それに、下に記入できる場所のようなものがある。
一体何分止まっているのかわからないが、とりあえずこの文字から離れてみるか。
そうすると時が動き出した。
達「うおっ、一瞬で私から離れた。ということは危機を感じると時が止まる、などが考えられますね。
なんと、こんなすぐに見つかるとは。」
「なんか、時が止まって、目の前に文字が現れて、年月日とか改変なんちゃらとか。
その下に記入できそうな欄もあった。」
佳子「なるほどね。時が止まることで考える時間が与えられるわけね。」
達「どんどん小さいことを事実改変して、慣れていきましょう。」
「わ、わかった・・・。」
ということで、俺が一番嫌いな 練習 をすることになってしまった。
事実改変という名前を聞く限り、俺が過去にたくさん勉強したという事実に改変し
頭のいい高校に合格するという事実に改変し、将来給料の高い職に就くという事実に改変し
楽をして暮らせるようにできそうなんだが、佳子が言ったように、自分の力で自分の将来を変えないと
意味がないからやめておこう。それに、事実改変するためには、わざわざ身の危険を感じなきゃならん。
嫌だ。