事実改変
[1.事実改変]
大きい衝撃波のようなものがゆっくりとこちらに近づいてくる。
「もう時間がないから急げ。下級生。」
お前のせいで時間が無くなったんだろうが!
こうなったのは、ある冬の日。
俺が学校の廊下であいつと出会っちまったからだ。
授業中、俺は先生に頼まれて、職員室へクラス全員分のワークを取りに行った。
なんで俺一人なんだよ! ったく、あーめんどくせー。
職員室へ行くにはほかのクラスの前を通らなきゃならない。
教室の窓からこっちを見られるのがあまり好きじゃない。
そういえば、教室の窓から変なロボットのようなものが見えたことがある。
まぁ多分幻覚だろう。
なんてことを考えていたら、前から女子生徒が歩いてきた。
リボンの色は・・・三年生だ。
この人も先生の命令で何かを取りに行っているのかな。
・・・話しかけてみるか。
「こんにちは。」
「・・・どうも。」
「どうして授業中なのに、廊下を歩いているんだ?」
「授業に飽きたから。」
え?
じゅ、授業に・・・なんだって?
「えーっと、俺の聞き間違えかな、授業に飽きたからって聞こえたんだけど・・・。
先生に頼まれてワークかなんかを取りに行ってるんだよな?」
まさか、周りと違うアピールをしたいから、授業に飽きた~なんて理由で
廊下をうろついてるんじゃなかろうな。
「違う。いっつも同じような風景、同じような内容で、毎日同じ時間に授業をするなんて
飽きるに決まってる。」
まぁ、理解できなくもないが・・・。
しかし、そんな理由で授業放棄なんてきっと退学確定だし、それに常識的に考えて―――
「常識的に、って何。」
「えっ」
え、俺心の声漏れちゃってた?
「漏れてない。お前の心の声を聞いただけ。」
「はっ!?」
「私は自分の能力は人前では見せない。だが、お前ならなんとなく
私の能力を理解してくれるような・・・気がした、だけ。」
俺は困惑した。能力?お前なら?理解?
いろいろ考えていたら、こいつが突然あせったように俺の手を引っ張り、廊下を走りだした。
本当に突然だ・・・。
「ちょっと異常事態がおこったっぽい。一緒に来て。」
「能力とか異常事態とかなんなんだ!」
俺の話も聞かずに夢中で走っているこいつは、いったいどこへ向かっているんだ・・・。
そう思いながら走っていたら、ロッカールームについた。
「なんでロッカールームなんかに・・・。」
「元3年6組の10番のロッカーは変な空間につながってるの。
今のところ誰も開けないからバレてないみたいだけど。」
「どうしてここから変な空間につながっているんだ?」
「そういう質問は後で答えてあげる。今は私についてきてくれるだけでいい。」
「・・・わ、わかった。」
俺はこのよくわからん上級生についていく気にはならなかったが
なんとなーく、なんとかなりそうな気がしたので、こいつについていくことにした。
ロッカーを開けると、本当にどこかにつながっているらしく、真っ暗な空間が無限に広がっていた。
指を入れてみたら少し涼しかった。
ロッカーの中に入り、しばらく進むとボロボロなロッカーが現れた。
「このロッカーの中は、どうなってるんだ?」
「もう一つの世界につながってる。よく言うパラレルワールドとか異世界とかいうやつ。だと思う、多分。」
「は・・・?漫画の世界じゃねーんだぞ。そんなの信じられるか。」
「ロッカーの中が変な空間につながってるのも信じないのか?」
「それは・・・。」
「いくぞ下級生。」
ロッカーを開けると、知らない学校の3年6組の10番のロッカーの中へ通じていた。
「こ、ここは・・・。」
「もう一つの世界の令和高校。」
「・・・なんか不思議な感情が湧き上がってくるな。」
「目的地へ急ぐぞ。」
ついていくと、廃れた住宅街へたどりついた。
「ここはどんな世界なんだ・・・?」
「突然能力者が現れて、戦って、こうなった。
国・・・いや、世界にはもう手に負えなくなったって世界。」
「そうか・・・。どうして能力者が現れたんだ?」
「そういう質問は後で答えてあげる。今は私についてきてくれるだけでいい。って、言ったでしょ。」
「わかったわかった。で、異常事態ってなんだ。」
「悪い奴が現れたんだ。それも知らない組織のね。」
「なんで知らない奴を敵って判断できるんだよ・・・ってか、俺には何ができるんだ?」
「私の見方の能力者が少なすぎて困ってるんだ。そこで! お前に能力をさずけてやる。」
「は!?」
面倒ごとに巻き込むのだけはやめてくれ・・・。
そうするとこいつは小さい機械をポケットから出してきた。
「こいつの上にある青いボタンを押せば、能力が手に入る。」
「なんで俺なんだよ!他のやつでもよかっただろ!」
「頭の悪い奴は現実で能力を使いまくって、人をもてあそんだり、破壊したりして
能力者の存在が世界中に知れ渡ってしまう。そして、この世界みたいになる。」
「・・・俺が現実で能力を使わない保証もないぞ。」
「お前はそんなことはしない。見た時からわかってた。・・・敵のおでましだ。」
振り向くと、そこには組織の制服?のような服を着ている女性がいた。
?「能力者と、一般人?この世界に一般人なんか残ってたんだな。」
「これからこいつは能力者になる。そして、お前を倒すだろう。」
「お、おい!俺はまだ能力者になるなんて言ってないぞ。勝手に決めるな!」
「そうか、じゃあここで死ぬかもな。」
?「な~早くしてくれないか?わざわざ待ってやってるんだよ~。なるならなる、ならないならならない。
さっさと決めてくれ。」
いやいや、そんな急に大事な選択を迫られても・・・!
どうする・・・?どうする俺・・・!?
そう悩んでいると、後ろから爆発音がした。
「きたか。」
?「え、初めて見た。何あれ。」
とても大きい衝撃波のようなものが後ろから迫ってきていた。
俺の頭の中はぐちゃぐちゃだ・・・。
「お前が能力を持てば、あの壁を壊せる能力が身につくかもよ。壊すことが出来れば
少人数の人間が助かると思う。」
?「なんかやばそうだから帰る、またね。」
「いやお前は返さん!」
なんか能力を使うのかと思ったら、その女性を羽交い絞めして拘束しだした。
?「何だよ能力使えよ!」
「あなたのせいでこの世界に来る羽目になったんだ。少しの時間拘束する。
さぁ、能力者になるか、ならないのか、決めろ。」
いや、俺は・・・俺は・・・!
「能力次第じゃあの衝撃波みたいなのを消せるんだな。」
「・・・あぁ。」
「何人かでも救えるかもしれないんだよな。」
「そうだ。」
「わかった、能力者になってやる。ただし条件がある。」
「なんだ?」
「・・・ワーク運び手伝えよ!」
ボタンを押した。―――
そうすると、漫画にありそうなキラキラキラ~みたいなエフェクトもなければ、変身するわけでもない。
女神っぽい声も、ド派手な音もならない。そもそも、普通こういうボタンって赤じゃないのか?
「さてと、お前の能力は何かな?」
「俺の能力は・・・。」
機械には、「事実改変」と書いてあった。
「こ、これは・・・よかったな、強い能力だぞ。」
「どうやって能力を使うんだ?」
「能力の発動条件は人それぞれだからな。私にはわからない。」
「お、おい!もう衝撃波が近いぞ!」
「そろそろ3時間目が終わるころだな。」
「あ・・・。」
大きい衝撃波のようなものがゆっくりとこちらに近づいてくる。
「もう時間がないから急げ。下級生。」
お前のせいで時間が無くなったんだろうが!
?「お、おい!私を置いてくな!」
急いで2人でロッカーへ走り、元の世界へ戻った。
「危なかったな。まだ三時間目は終わってないぞ。」
「危なかったな、じゃねーよ!ったく・・・約束通りワーク一緒に運べよ!」
「OK」
まだ状況を整理できていないまま、ワークを急いで運んだ。
当然怒られた。