表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
英雄の風  作者: 才谷屋
1/1

第一話 薩長同盟

 この物語は坂本龍馬を中心に進みます。歴史があまり好きじゃない人にも分かりやすい様に書いてこうと思っています。物語は1863年(文久3年)から。で、いきなり文久3年から書いては歴史があまり好きでない人には分けが分からないので・・・まずは幕末の始まりから簡単に書いていきます。では始まり始まり・・・・・。


1、始まりのあらすじ・・・

 幕末の始まりは1853年(嘉永6年)にアメリカから「ペリー」という軍人が日本の政府(徳川幕府)へ開国をお願いにくる。ペリーはアメリカ大統領の国書を持って来日。その当時、日本は鎖国(国を閉ざした状態)にあった。ペリー初来日から半年後にもう一度、来日する。当時、徳川幕府の老中首座(幕府最高役職)の「阿部正弘」が「日米和親条約」を締結に調印する。その後、ロシアとも「日露和親条約」も締結する。これで、「鎖国」が終わる。その後、阿部正弘は心労がたたって亡くなってしまう。後を継いだ「堀田正睦」が通商条約(商売の関する条約)締結の勅許(天皇の許可)を京都におられる孝明天皇に頂く為に行ったが、勅許は降りず江戸に戻る。江戸に帰ってくると将軍継嗣問題(後継ぎ誰にするか)で騒然となっていた。13代将軍の「家定」(篤姫の夫)は病弱で後継ぎおらず、後継ぎ候補が二人出てきた。紀州藩(和歌山県)「徳川家茂」と水戸藩出身で一橋家に養子にいっていた「慶喜」が争う事になった。堀田正睦は彦根藩出身の「井伊直弼」に職を解かれてしまう(リストラ)。井伊直弼は後継ぎを強引に「家茂」決め又、様々な条約に関する書類には独断で調印する。・・・これに反対した人達を罰する。これが有名な「安政の大獄」。井伊直弼は1860年(万延元年)に水戸藩と薩摩藩(鹿児島県)の志士に暗殺されてしまう。これを「桜田門外の変」と言う。井伊の死後は「安藤信正」が継いだ。安藤は家茂の嫁に孝明天皇の妹「和宮」と強引に婚姻させちゃう。これを「公武合体」と言う。尊皇派(天皇を崇拝)が安藤を襲う。安藤は無事だったが・・・職をとかれてしまう。これを「坂下門外の変」と言う。長州藩(山口県)土佐藩(高知県)薩摩藩の志士たちが京都で暴れる。有名な事件としては寺田屋騒動と池田屋騒動。「寺田屋騒動」は薩摩藩の志士らが同士打ちした事件。「池田屋騒動」は新選組が尊皇派志士を斬りまくった事件。

長州藩は外国に対して攘夷(外国を追い出す運動)を決行する。これを「四国艦隊下関砲撃事件」と言う。薩摩藩はイギリスと問題を起こす。それが・・「生麦事件」と「薩英戦争」。



で、ここまでは幕末の前半・・・いよいよ1863年(文久3年)から物語の始まりです。物語は幕末の英雄の会話を中心に展開していきます。(時代の流れや人物の説明は随時簡単に入れていきます。)



2、あの暑い日・・・

 文久3年8月18日 尊攘派(天皇万歳+外国嫌いの集団)の暴走によって朝廷・幕府政治の混乱を心配した孝明天皇は「中川宮朝彦親王さん」に極秘に会津藩(ラーメン有名)と薩摩藩に「お主も悪よのう」と言って、長州藩を京都から追い出してまう。宮廷の御門(門を守る事は将棋で玉を取ったのと同じ)を制圧した会津藩と薩摩藩は長州藩の兵士および、三条さん(麿のリーダー)ら7人の公卿を長州への撤退をさせるクーデター(change)を決行し、長州藩系の尊攘勢力の一掃に成功する・・・これを「八月十八日の政変」と言う。この日より長州と尊攘派志士は幕府側に追われる。長州藩は続く「池田屋騒動」により多数の同志を失うという悲しい事件が起きる。この事件をきっかけとして、長州は京に軍を進め最後の博打にでる。


 京都の夏は暑い、盆地にある上に土地が狭い。しかも、今は多くの人でごったがえしている。

長州・尊攘派志士軍総勢1,600人。益田右衛門介・久坂玄瑞は山崎天王山に陣をかまえていた。


益田右衛門介・・・長州の偉い偉いお侍様。

久坂玄瑞・・・長州の吉田松陰先生の生徒でもの凄いインテリ。


「久坂君今回の挙兵・・・戦必ず勝たねばならぬ。もし、負ければ我が長州に後はない。」

「はっ。それは重々承知致しております。伝令によれば、皆様方配置につかれたようでございます。宝山に国司様。嵯峨天竜寺に来島殿。伏見のお屋敷には総大将の福原越後様。」


国司信濃・福原越後・・・長州の偉い偉いお侍様達。ちなみに、名前の信濃と越後は今で言う            長野・新潟だけどその土地に関係はありません。

来島又兵衛・・・戦国武将顔負けの猪武者。



「うむ。戦は近いようだな。」

「はっ」

久坂は改めて京に上がってくるまでの出来事を思い返していた。

今回の挙兵にあたって藩は二つに分かれての議論となった。挙兵に反対した高杉晋作と桂小五郎。この二人は吉田松陰が開いた松下村塾の門下生。同じ志を共にする同志である以上に固い友情で結ばれた友だった。(晋作・桂さん・・・もし、わしが死んだら後を頼む。)決意を新たにする。


高杉晋作・・・長州の超人気者で奇兵隊という軍隊を作ってる。

桂小五郎(後の木戸孝允)・・・長州のイケメンでかつ、インテリ。完璧な人物。ちょっとお               堅い人。


「止まれ何者だ!!」

警護の兵士が制止する。見た目はこの当時としては背が高いが、どこか薄汚れ、髪は何日も洗っていないのか、てかっていて、縮れている。

「ほにほに・・・わしゃ、坂本ちゅうもんじゃ久坂さんに会わせておうせ」


坂本龍馬(主人公)・・・土佐のヒーロー。天然パーマの髪で背が高い。で、おしゃれ。


「何・・・!!得体の知れぬ奴は通せぬ」

「うーん、じゃ言うてもどうしても会いたいきに・・・。取り次いでおおせ土州浪人の坂本じゃきに。久坂さんとはそこそこの仲じゃきに。」

「うーむ。しかし・・・」

その時後ろから声がする。

「坂本さん・・・どうしてここに!!」

「おうおう、久坂さんお久しぶりじゃ。おまはんとちょっと話がしとうてのう。」

「お話とは!!」

「久坂さん・・・この戦無謀じゃきに今ならまだ間に合うきに止めにしいへんか??早まってはいけん、おまはんは、これから必要となる人物じゃきに。」

「坂本さん・・・お言葉ありがたい事ですが、なれど我が長州は朝廷をおわれ、多くの同志を失い窮地にたたされています。この状況を打破するには、もはや戦でのみしか解決はできません。いまさら兵を引くなど。我が命、もはやこの日本国の為に捧げる決意をしております。」

「その決意は見事じゃ。しかしのぉ・・・高杉さんも桂さんも今回の挙兵には反対したちゅうのを聞いたぞ!!この戦・・・長州はどうみても勝てん。たとえ、勝ったとしても戦で国は変わらん。内戦になるだけじゃ。そうなれば欧米列強の思う壷ぜよ!!」

「・・・・しかし、このまま引き下がっても我が長州は幕府に潰されるだけです。京にもう一度、勢力を取りもどさなければ・・・。」

「それは分かっちゅう。土佐藩の武市半平太ちゅうのが、今獄につながれちょる。以蔵さんも行方知れずじゃ。わしゃ皆好きじゃきに助けたい・・・。その策を今考えちゅう。それは、海軍じゃ。強力な海軍を作るんじゃ!!おーそうじゃ、高杉さんはどでかい陸軍を作っちゅうのを聞いとる。その二つがあれば、幕府なんぞ屁の河童じゃ!!」


武市半平太(瑞山)・・・土佐の郷士(身分の低い武士)のリーダー。土佐勤王党(土佐から            天皇万歳集団)の党首。ちなみに、龍馬とは遠戚にあたる。

岡田以蔵(通称:人斬り以蔵)・・・土佐の郷士で京の町で大暴れした人。


「ふふふふっ、失礼。しかし、どの様にしてそんな強力な海軍を作るんですか??」

「そうなんじゃ、そこが一番の問題。今わしゃ、神戸海軍操練所ちゅうところで塾頭をしちゅう。そこの軍艦を使って欧米と商売をする。そんで、こじゃんと儲けて軍艦を買うんじゃ!!そうじゃ、久坂さん海軍操練所に入らんか!?おう、それがええ!!」


神戸海軍操練所・・・黒船を操ったり、大砲ぶっ放したり等の訓練をする幕府の施設。


「坂本さん!!冗談じゃないですよ。その海軍操練所は幕府お抱えでしょう。私が行くわけには参りません。」

「あっそうじゃのう。うっかりしちょった!!」

「はははははっ」

なごんだ雰囲気に包まれる。その時、銃声がとどろく。

「何事じゃ!?」

兵士が報告に来る。

「はっ、我が藩兵が桑名・会津両藩の藩兵にしかけた模様。」

「何!!くそっ、早まった行動を・・・仕方がない全軍御所に向けて進軍開始!!」

久坂の大音声の命令がとどろく。

「坂本さん・・・ここは危険です。どうか安全な場所にご避難を。」

「・・・分かった。おまはんも命を大事にせえや!!決して早まるんじゃないぜよ。」

「はい・・・。お言葉痛み入ります。」

「じゃあの。・・・おっそうじゃ、大事なもん渡すの忘れちゅうとこじゃった!!高杉さんから預かりものでの・・・おまはんにちゅうことで!!これじゃ・・・。」

「はぁ・・・これは、お守り。」

「うんそうじゃ、この中に高杉さんからの文が入っちゅう。もし、身に危険がおよんだとき読みやぁとの事やきに。」

「ありがとうございます。では急ぎますのでこれで・・・」

「おう!!ではのう。」


 

 「龍馬の奴・・・どこ行ってるんでぇ。ついに始まっちまった。」

幕府と長州の衝突に落ち着かない様子で龍馬の身を案じる。

「勝様・・・将軍後見職 一橋慶喜様が至急御所まで参る様にとの事でございます。」

幕府の下士官が上意(偉いさんの命令)を伝える。


一橋慶喜(後の徳川慶喜)・・・最後の将軍様。インテリで趣味が多い人。好物は豚肉。

勝安房守海舟・・・咸臨丸って言う船の船長でアメリカまで行った人。龍馬のお師匠様。ちなみに、船に弱い。


「何・・・!!てやんでぇ、こちはそれどころじゃねぇや!!」

「なんと申される。仮にも・・・」

「えいえい、うるせぇよ!!」

その時・・・

「勝先生ただ今もどりましたきに!!」

「おう、龍馬おせえじゃねぇか??どこいってやがった!!」

「ちょいと町の様子を見いに行っちょった。」

「そうか。慶喜公に呼び出しをくらっちまった・・・。今からちょっくら行ってくる。」

「勝先生お一人で行かれるがですか?」

「おうよ。」

「それは危ないきに、わしが護衛についていくぜよ。」

「そうか・・・そりゃ心強ええや。」

幕府側の下士官が支度を促す。

「それでは、お願いいたします。」


 その頃、長州軍はいっせいに蛤御門を目指し破竹の勢いで進軍していた。長州軍の勢いはすさまじく、桑名藩(蛤有名)・会津藩両軍は後退を余儀なくされていた。その長州軍の快進撃の中心は来島又兵衛率いる軍。長州勢は一時筑前藩(明太子有名)が守る中立売門を突破し、禁裏(麿の集会所)に進入するのであった。


「殿、危のうございます。長州の奴等は御所に進入したとのよし、ここは一時お退きを!!」

「ええい・・・うるさい!!ここを突破されれば、彼奴らの思う壺。ここはなんとしてもお守りせねばならぬ。」

「殿。勝安房守様が参られました。」

「うむ。通せ!!」

「はっ」

「勝安房ただ今御前に。」

「勝・・・この失態如何いたす!!」

「はっ。失礼ながら失態とは」

「神戸海軍操練所・・・。お主のたっての事で作ったというのに不逞の輩を育てておったのか?」

「はっ。それは・・・我が海軍操練所は藩を問うてはおりません。この国を憂う有志が集ってこざいます。決して幕府に仇をなすなど・・・。」

「先の池田屋の一件はどう説明する・・・勝!!操練所からも多数参加していたという話ではないか??」

「それは・・・」

「申し開きできぬか!?追って沙汰をだす。大儀であったさがれ。」

「はっ・・・」


 この間に長州軍は後退しつつあった。傍観姿勢をとっていた薩摩軍が動いたのだ。又、来島又兵衛の戦死が重なり総崩れの様相を呈していた。そんな中で久坂と寺島忠三郎は鷹司邸に侵入し、鷹司卿に懇願するも拒否され八方を塞がりとなる。


寺島忠三郎・・・久坂の親友。

鷹司卿・・・長州よりの麿。


「寺島・・・もはやこれまでだな!!」

「くっ・・・無念じゃ・・」

「ここは武士らしく潔く自刃しよう。」

「・・・・」

「どうした??」

「久坂さんはまだ死ぬべき時ではありません。ここは落ち延びて過日、京に長州の旗をお立て下さい。」

「何!!生き恥をされせというのか??」

「そうではありません。まだ、生きてなす事があるという事です。ここは死に場所ではありませぬ。」

「・・・もはや、四方敵だらけどの様にして突破する。どのみち討ち死にはまぬがれぬ。敵に屍をさらすよりはここで自刃して果てる。」

そういい終わると脇差を抜く・・・。

「お止めください。早まってはなりませぬ。」

「くっ。離せ・・・」

その時、高杉晋作からの文の入ったお守りが転げ落ちる。

「・・・これは!!高杉さんの」

はっと思い出す。(もし、身に危険が迫ったら文を開けろと・・・)

久坂はお守りの封を開け文を取り出す。

そこには「身はたとひ武蔵の野辺に朽ちぬとも留め置かまし大和魂」と書かれていた。

(これは・・・松陰先生の辞世の句!!高杉さん・・・ありがとう。まだまだ、ここでは死ねない。)

「寺島・・・!!まだここでは死ねぬ。生き残るぞ!!」

「はい」



「勝先生・・・どがいでしたか?慶喜公は何と!!」

「龍馬よ・・・てぇへんな事になっちまいそうだ。まだ、わかんねぇが・・・海軍操練所危ないかもしんねぇ」

「何と・・・そんな。」

「それよりも・・・おめぇさん薩摩の西郷吉之助って知ってるか?」

「名前だけなら知っちょります。」

「おめぇさんと西郷さんを会わせてぇ・・・どうでぇ、あってみる気はねぇか?あれは、ていした男だぜ!!」

「勝先生お会いになったがですか?」

「おうよ。会ったぜ!!今回の戦の処分、長州に温情をかけてやってほしいってな事を話してきた。」

「そうがですか・・・」

「おめぇさんにとって薩摩は長州を追い落とした敵ではあるが、西郷はふてえ男だぜ一度会ってみな!!」

「勝先生がおっしゃるならば・・・」

「おう!!」


西郷吉之助(後の西郷隆盛)・・・上野公園に犬を連れている銅像が有名。超人気者。ちなみに、「隆盛」の名前は親の名前を明治になって間違ってつけられた。写真が嫌い。


一方、薩摩軍は鷹司邸の近辺まで軍を進めていた。薩摩軍を率いるのは西郷吉之助。

「中村どん・・・もうここらでよか。兵の撤退すっど!!」

西郷が黒々と日焼けした中村半次郎に目を向ける。


中村半次郎(後の桐野利秋)・・・京で大暴れした人。人斬り半次郎の異名を持つ。しかし、人を切ったのは一回だけとの話もある。


「はぁ、じゃどんまだ、長州の奴等がおりもすけんど。」

「窮鼠猫をかむちゅう言葉があるちここは、兵を温存するのが最善の策じゃ。」

「分かりもした。吉之助さぁが申されるならば・・・全軍こっから撤退じゃ!!」

薩摩軍は兵を退くのであった。

その様子を伺っていた寺島は久坂に進言する。

「久坂さん・・・薩摩軍が退いて行きます。」

「何!!」

「いまが絶好の機会・・・脱出しましょう!!」

「そうだな!!いや、彼奴らの罠ではないか??」

「そうは思えませぬ・・・例えそうだとしても今しか機会はございません。」

「今に賭けるか!!よし行くぞ寺島。」


戦闘は終了した。長州勢は壊滅し多数の死傷者をだし損害は甚大であった。戦闘後、落ち延びる長州勢は長州藩屋敷に火を放ち逃走。これより、長州藩は内裏(天皇のお住まい)や禁裏に向けて発砲した事等を理由に幕府は長州藩を朝敵(天皇の敵)として、この後第一次長州征伐を行うことになる。


「龍馬・・・。いやな予感が当たっちまった・・・。海軍操練所が閉鎖となる。」

「なぜじゃ!!」

「いや、池田屋に操練所から多数参加しちまった・・・。それが、頭の腐った役人どもには気にいらなかったらしい。奴等は「勝よ幕府の機関でありながら反幕府の者どもを育てていかがする」ってよ、ほざきやがった。幕府の役人どもは時勢が全然見えちゃいねえ。」

「これから、わしらはどうしたらええがですか?藩の捕吏に捕まるだけじゃ。」

「あぁ・・・その事ならおいらに任せてもらえねか?」

「はぁ・・・勝先生には何か心当りがあるがですか?」

「おめさんらの身を薩摩に預けようと思う・・・。この件に関しては西郷吉之助に承諾は得ている。」

「薩摩の西郷吉之助・・・。一度、会って話しがしてみたいがです。」

「おうよ、そうくると思って紹介状を書いておいた。これを持っていきな!!」

「すまんです。今回の件で勝先生の処分は如何なります?」

「それは分からん。切腹とはならねぇとは思うが・・・おいらの処分は江戸に下ってから沙汰するってよ!!」

「そうですか・・・。では、早速伏見の薩摩屋敷まで行って参ります。」

「おう。気よつけてな!!」


京の町は長州兵の残党狩りの新撰組と桑名・会津の兵がたむろしている。長州の桂小五郎は蛤御門の変をからくも生き残り、京の町に潜伏していた・・・。その廃墟と化した京の町を駆け足で伏見の薩摩屋敷に向かう。

(久坂さん・桂さん・・・無事だろうか!!心配じゃ。)

その時・・・行く手をさえぎられる。

「止まれ・・・お手前の藩名・姓名を名乗られよ」

「わしは土佐藩 才谷梅太郎でござる。」

「土佐藩とな・・・貴殿どうみても浪人。怪しい奴壬生の屯所まで来て頂こうか?」

「わしゃ・・・急いじょるきに通しておおせ。」

「何!!従わぬとあらば・・・われらには切り捨ても許されておるのだぞ!!」

そう言い終ると鯉口を切る・・・。

「・・・しゃないの、あまり剣術は好きじゃないきに特に真剣では・・」

その時、後ろから・・・

「ちょっと待った・・・君達ではとても太刀打ちできないよ!!それにこの人は怪しい人じゃない。通してあげなさい。」

「おお・・沖田くん!!いい所に来てくれた。助かったぜよ。」


沖田総司・・・新撰組の一番隊隊長で新撰組一の剣の使い手。池田屋では近藤勇とともに単身切り込み無傷であったという。しかし、その後以前から患っていた労咳を悪化させ寝込んでいた。イケメンに書かれる事が多いが・・・実は・・・。


※労咳・・・今で言う肺結核。この当時、不治の病として恐れられていた。


「お久しぶりです。坂本さん」

以前に龍馬とは京の町で切り結んでいたのであった。その時、龍馬は総司の必殺の三段突きをかわし総司は龍馬の実力を認めていた。その時から多少の交流があったのだ。


※龍馬は幕末屈指の剣の使い手。北辰一刀流の達人。


「ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ・・・・」

「うん・・・沖田くん大丈夫かや!?」

「大丈夫です。ちょっと風邪をひいてて」

「そうかや・・・。大事にしいや。おっと、こうしてはおれぬがじゃ・・・薩摩屋敷に急がねば。」

「薩摩屋敷へ・・・」

「おうそうじゃ、西郷さんに会いたいと思うてのう。」

「西郷吉之助!?」

「おう、沖田くんも知っちゅうがや?」

「ええ、お名前だけは。今、薩摩を動かしているお人だと。」

「そうじゃ、ものすごいふっとか男らしい・・・楽しみじゃ!!」

「坂本龍馬に西郷吉之助おもしろい組み合わせですねぇ」

「じゃあ、すまんのお。失礼するぜよ!!沖田くん体に気いつけて。」

「坂本さんこそ」

そう言い終ると颯爽と去って行く。

(ふう、危なかったぜよ・・・。沖田くんのおかげで助かったぜよ。)


伏見の薩摩屋敷・・・薩摩は京にも藩邸をかまえており、あまり人が駐在していなかった。龍馬とはこの後、伏見薩摩藩邸は深く関わってくる。


(やっと着いたぜよ!!)

「すんません、わしゃ土州浪人の坂本龍馬ちゅうもんじゃ。西郷さんに会いに来たきに取り次いでおおせ。これは勝先生の紹介状じゃきに。」

警備の藩士が応対する。

「土佐藩浪人の坂本殿!!しばし、待たれよ。」

「お願い申す!!」

半刻後・・・

「お待たせいたした。奥へどうぞ・・・」

「失礼いたす。」

藩邸奥の客間に通される。藩邸の中には鶏が飼われ、畑がこさえてある。そこで農作業に精をだす巨漢の男がいた。

「こちらでお待ちを・・・」

後ろのふすまがそっと開く・・・

無骨そうな男がお茶とお茶うけを運んでくる。

「粗茶ですがどうぞ!!そいで、こっちは薩摩芋でごわんど。よかったら喰ってたもせ。」

「これは痛み入ります。」

(薩摩芋・・・)

一刻ほどたつ・・・

「あのー、西郷さんはまだかいの??」

庭で農作業に従事している巨漢の男に声をかける。

「おうおう・・・まっこて、すまんちょいとおまちを!!」

そう言うと農作業がひと段落したのか、こちらに向かってくる。

「お待たせし申した。私が西郷です。」

「えっ・・・おまはんが西郷さん!!」

「すみもはん。おいは、物事に熱中すっと周りが見えもはん。かなり、お待たせしもうして、まっこてすまんことです。」

「いやいや・・・。おまはんが西郷どんとは思いもよらんかったぜよ。」

「本日の用件は勝先生よりお伺いしちょりもす。神戸海軍操練所の方々を受け入れるちゅう件でござろう。」

「その件もそうじゃけんど、わしゃ今回の長州征伐の件じゃ!!長州は手負いの獅子これ以上の追い討ちは止めにしてはくれんかのう!!」

「はてはて、困りもうしたのぉ・・・」

「西郷さん・・・長州は異国との戦には敗北はしたが、この経験は貴重じゃ今後、異国と渡りあうには長州の力は必要ぜよ。長州と幕府・・・西郷さんはどちらが今後日本国に必要かは分かっちゅうがか?」

「坂本さぁ・・・分かりもした。長州への今回の征伐は武力は行使しもはん。」

「西郷さん・・・ありがとう。」

「じゃっどん、戦の責任のある家老の処罰はせにゃ・・・。皆、納得しもはんそれだけは理解頂きたい。」

「・・・分かったぜよ。西郷さんと薩摩藩の立場もあるちゅう事は理解しちゅう・・・それは仕方ないことぜよ!!」

「おう、そうじゃぜひとも、坂本さぁに会わせたい御仁がおりもす。」

「それはいかなる御仁じゃ!?」

「我が薩摩藩家老の小松帯刀・・・。きっと坂本さぁと気が合うと思うちょりもす。誰かぁ小松さぁを呼んでたもせ!!」

「はっ・・・」


小松帯刀・・・龍馬と同級生。若いけど薩摩のとっても、偉いさん。ちなみに、篤姫とも同級生。


「おうそうじゃ、薩摩芋のお味はいかがでごわした?」

「たまるかぁ・・・。めっさおいしいぜよ。」

「そうでありもすか!!こん薩摩芋は恥ずかしながら、おいが丹精こめて作ったものでありもす。」

その時、ふすまが開き・・・男が入ってくる。

「お待たせいたしました。私が小松です。」

「はっ・・・。お初にお目にかかります。土佐藩浪人坂本龍馬です。」

この出会いがこの後、大きな波乱を生み時代を大きく動かす事になる。

「坂本さん・・・あまり硬くならずにお話しましょう!!色々、勝さんからはお話を伺っています。」

「はぁ・・・。」

「我が薩摩藩としても海軍操練所の方々の操船術は欲しているのです。まさに、我が藩にとっては渡りに船。ご不便はさせませぬ。」

「ありがたきお言葉であり・・・」

「どうされました。」

「普段使いなれちょらん言葉使ったきに噛みよりました。」

「ははははは・・・・」

西郷と小松に笑みがこぼれる。

「まっこて、坂本さぁはおもしろきお方じゃ!!」


3、亀山社中

 朝廷は幕府に長州に対して、征討ボコッテまえの勅命を下す。幕府は前尾張藩主徳川慶勝(名古屋の殿様)を総督(大将)、越前藩主松平茂昭(福井の殿様)を副総督(副大将)、薩摩藩士西郷吉之助を参謀ブレインに任じ、広島へ36藩15万の兵を集結させて、長州に進軍させる。一方、長州藩では「四国艦隊下関砲撃事件」の後に藩論が分裂し、保守派(徳川万歳)が政権を握る。征長総督参謀の西郷吉之助は禁門の変の責任者である長州三家老 国司信濃・益田右衛門介・福原越後の切腹、三条実美ら五卿の他藩への移転、山口城のぶっ壊しや撤兵(兵を退却させる)の条件を伝え、藩はこれに従い恭順(土下座)を決定する。


伏見寺田屋・・・薩摩藩定宿で文久2年4月23日に薩摩藩尊皇派が薩摩藩主の父で事実上の指導者島津久光(鹿児島の殿様)によって粛清された惨劇の宿。


「お登勢さん・・・お久しぶりやのう!!元気にしゆうか?」


お登勢・・・寺田屋の女将。


「龍馬さん・・・急にどないしはったん?」

「あぁ、これから薩摩に行くっちゅことになってなぁ。当分、会えんじゃきに別れの挨拶しよっち思って・・・。」

「薩摩にどすか・・!!また何用でどすか?」

「詳しい事は話せんけんど・・・これからどでかい仕事をしよっち思っちょる。今日は別れの為の宴じゃ。」

「はいはい・・・。じゃお先にお風呂にお入り下さい。ちょっと、においますよって!!」

「におうかいのぉ・・・」

自分の袖や腕をにおってみせる。久しぶりにお風呂につかる。

「ふうー。生き返ったぜよ。やっぱ、寺田屋のお風呂は最高じゃきに・・・。」

「龍馬さんお湯加減はいかがどすか??」

「ええ湯加減じゃ!!・・・おまはんはお龍がか!?」

「はい、お龍どす。龍馬さんたらここ最近、全然お顔見せへんから心配しましたえ!!会いに来たと思ったら薩摩に行きはる言うなんて。」

「すまんのぉ。」


お龍・・・龍馬の彼女。


湯からあがった龍馬は最近の疲労からか眠気が襲ってきた・・・。

「お龍すまん、ちょっとねむうなったもんで、布団しいてくれんかのう。」

「はいはい・・・ちょっと待っとって!!」

お龍が二階の普段から龍馬が使用している部屋に布団をしく。深い眠りに入る・・・。

(武市さん・以蔵さん・・・土佐の皆どうしちゅう!!吉村・那須さんは吉野で散ってしもうた。無事でいてくれ・・・)

「龍馬さん・・・龍馬さん・・。起きてくれなはれ!!」

眠い目をこする・・・

「おう・・・すまんのぉ。すっかり眠ってしもうた。」

「二刻ほど眠ってましたえ」

「ほうか・・・」

「それより、お食事ができてますえ!!一階にお越しやす。」

お登勢が龍馬を促す。

「おーー。まっこて、今夜は豪勢じゃのう!!わしの好物の軍鶏鍋じゃ。」

「しばしのお別れよって今日は豪勢にしました。」

「すまんのぉ・・・。今は持ち合わせがない・・・この借りはすぐに返すきに。」

「そんな気にしはらんでもええどすえ!!」

「それはいかん・・・絶対返すきに!!」

「はいはい・・・待っとります。それより、お龍お酒を持ってきて!!」

「はい・・・ただいま!!」

お龍が酒と龍馬宛の文を持ってきた。

姉乙女からの文は全て寺田屋に届くようになっていた。

「龍馬さん・・・乙女さんから文がたまっておすえ!!」

「おお・・すまん・のぉ・・・」

あまりの空腹に口に物を詰めている状態で返事をする。

龍馬は体型通りに大食いであった。

文を開く・・・・それは姉乙女からの文であった。

「龍馬元気にしていますか・・・。今、土佐は大変な事になっています。心して読むのですよ。武市さんが先日、切腹をしました。武市さんは主君への不敬罪として翌日切腹の判決が下されました・・・。武市さんは腹を三段にかっさばき後藤・乾ら上士らに意地と悔しさをを見せ付けたという事です。以蔵さんも皆斬首に処せられました。けっして、上士どもに捕まるのではないですよ。」


土佐藩では上士と郷士の身分制度が厳しかった。今の北朝鮮並み。で、脱藩という藩を逃げるという行動を起こす人がいっぱいいた。(脱北みたいな)龍馬もその一人。


「なっ・・・武市さんが切腹・・・。」

お龍が龍馬の顔を覗き込む様に見る。

「龍馬さんどうされはったん??」

「皆死んでしもうたがか・・・だから言うたっち上士を甘く見たらあかん・・・。」

ぼそぼそと口にしながら部屋を出る・・・。

「龍馬さん食事もういいんどすか??」

「・・・すまんが一人に。」

「・・・」

龍馬と武市半平太は遠戚であり、幼い頃からの親友であった。



「龍馬さんどないしたん?お龍!!」

「分かりません。何や文を読んだらああなってしもうて・・・」

「文・・・!?」

お龍がお登勢に乙女からの文を渡す・・・。

「・・・龍馬さん。お龍、今夜は一人にさせてあげたほうがようどす。」

「どないな事、書かれていたんどすか??」

「龍馬さんのお友達が・・・・。」

「そうどしたかぁ・・・。」


次の日・・・

「おはよう!!お登勢さん」

「おはよう・・・龍馬さんもう大丈夫どすか??」

「うん、大丈夫じゃ。殺された土佐の仲間の為にもやらなあかん事が山ほどあるきに!!」

「・・・そうどすかぁ。」

「龍馬さんその恰好は・・・もう立たられはるんどすか!?」

「うん、今日は勝先生のお別れの日。お別れの挨拶をしたいきに!!そんでそのまま、京の薩摩藩邸に行くぜよ。」

「お龍に会わずに行きはるんどすか!?」

「うん、お龍には申し訳ないが・・・急ぐきに。お龍には必ずまた戻ってくるちゅうこと伝えてくれんかねや!?」

「・・・はい。無事に戻ってきてくれなはれ!!待っとります。」

「じゃあのう!!」

朝靄の中を颯爽と去っていく。


この頃、長州では高杉晋作が下関戦争の後、奇兵隊(陸軍)を結成し長州藩の佐幕派(徳川万歳)勢力と交戦しこれを打ち破って藩論を倒幕へと導いていた。


「高杉さん・・・。やっと藩が落ち着きましたね。」

「おお・・・。久坂くん!!まあ、家に上がりたまえ。」

「失礼します。」

久坂玄瑞はあの禁門の変を生き抜いていたのだ。あの日、鷹司邸で絶対絶命の危機を奇跡的に脱出し最近、長州へ帰藩していたのだ。

「お邪魔します。おうのさん!!」

「こんにちわ。」

おうのと呼ばれた女性は晋作の妾であった。

「おうの。酒を持ってきてくれ!!」

「寺島くんの事は残念だったが・・・よく無事で帰ってきてくれた!!」

寺島忠三郎は御所脱出の際、流れ弾に不運にも当り死亡していた。

「ええ・・・。あの時は、死も考えましたが・・・高杉さんからもらった文を見て帰ってこられました。ありがとうございます。」

「うん・・・。文って!?」

おうのが酒を持ってくる。

「どうぞ!!」

「かたじけないです。」

「えっ・・・!!坂本さんが高杉さんからの文と言って・・・。」

「・・・ありがとう!!坂本くん。久坂くんそれは・・・坂本くんが君に生きてもらう為に考えた策だ。僕は坂本くんに会っていないし、文なんて書いていない。」

「・・・そうだったのか。」

「坂本くんに感謝しないと!!それより、久坂くん・・・ゴホッ、ゴホッ、ゴホッ・・。」

苦しそうに咳き込む。

「高杉さん大丈夫ですか!?」

「ゴホッ・・・ゲハッ・・」

口から血をはく。

「高杉さんまさか・・・。」

「労咳だ。他言はしないでくれ!!」

おうのが介護する。

「高杉さん・・・。無理しないで下さい。高杉さんの病が良くなるまで、私が奇兵隊の指揮を執ります。」

「何!!大丈夫だ!!それは僕の仕事だ。それに・・・君には無理だ。」

「いえ・・・。高杉さんには今病に打ち勝ってもらわねばなりません。高杉さんはこれから長州・・・いえ、この日本国にとって必要な人となります。ここで無理されて倒れられては国にとって大損失です。」

鬼気迫る表情で高杉に言い寄る。

「・・・・分かった。養生する。必ず病に打ち勝ってみせる!!それまで、君に奇兵隊をお願いする。」

「ありがとうございます。私はこれで・・・」

久坂は高杉邸を後にする。

「久坂様!!」

後ろからおうのが久坂に声をかける。

「あっ、おうのさん!?」

「ありがとうございます。」

「えっ、何ですか。」

「高杉は私が養生してくれと言っても聞かず。このままでは・・・あの人の命が・・・。でも、久坂様が助けてくださいました。」

「いえ・・・そんな。高杉さんの事お願いします。では・・・。」

「はい。」


一方、龍馬たち土佐郷士達は薩摩藩の伏見の薩摩藩邸に匿われていた。

「坂本さん・・・わしらこれからどがいなるんでしょうか?藩邸の外には捕吏の目が光っちゅうし。」

龍馬にそう言うのは、沢村惣之丞。


沢村惣丞之・・・龍馬とともに脱藩をした土佐の郷士。


「ほうじゃのぅ。わしゃ今、勝先生から教わったカンパニーちゅうもんを考えちょる。

「カンパニー!?」

「そうじゃ・・・。それにはお金がいる。薩摩からなんとか資金を出してもらわねばならんち。」

「わしら脱藩郷士に薩摩が出してくれますかねぇ?」

「うん・・・。薩摩に行って小松さんや西郷さんを説得せにゃあならん。」

「薩摩に・・・・。」

不機嫌そうな顔をする。

「何じゃおんし・・・そんな顔して!!」

「薩摩はあまり好かん。長州を追い落とした敵じゃ。」

「・・・それは分かっちゅう。しかし、今やこの国で一番の雄藩じゃ。」

「それは頭では分かっちゅうですが・・・。しかし、心は長州にあります。」

「・・・・」


「中村でごわす。ちょっと、失礼してようごわすか!?」

「ええですよ。」

龍馬が答える。

「坂本さぁに土佐のお仲間から文が届いちょりもす。」

龍馬に文を渡す。

「すまんのぉ。おぉ、中岡からの文じゃ。」

「後、勝さぁの事でごわすけど・・・。江戸にて蟄居ちゅう裁定がでたでごわす。」

「良かったち。切腹じゃのうて・・・。」

沢村と共に、安堵の表情を浮かべる。

「坂本さぁと土佐のお仲間がたに薩摩にお越し頂く準備ができもした。明後日、国元へ帰らるる西郷さぁと共に薩摩へ!!」

「分かりました。よろしゅうお願いします。」

「それでは、おいは失礼しもす。」


中岡慎太郎・・・龍馬の知人。結構、几帳面な人。


慶応元年5月1日龍馬らを乗せた船は薩摩・鹿児島錦江湾に入っていった。

「おぉ・・・やっぱ、薩摩はすごい藩ぜよ。皆見てみいあの砲台群を・・・。」

龍馬が歓声を上げる。

「これが、イギリスと戦った薩摩の砲台・・・。」

「そうじゃ、この藩しか幕府に太刀打ちできる藩はない。のぉ、岡健!!」


岡本健三郎・・・元々、脱藩した龍馬を捕まえにきた土佐の下横目(警察)だったが、龍馬を慕って行動を共する。


「坂本さぁ!!」

「あぁ、西郷さん。」

「まっこち申し訳なかとですが、全員の下船はできもはん。坂本さぁだけ・・・。」

「うーん。そですかぁ・・・皆、申し訳なかが船で待っとおせ。」

龍馬が皆を見る。

「分かりました。船の方が安心ですきに。」

岡本健三郎が代表して答える。


下船した龍馬は西郷の家に向かう。

「西郷さん、カンパニーの件久光公に何とぞよろしゅう頼みます。」

「うーん、おいは久光公とは折り合いが悪かど・・・じゃっどん、一蔵どんは気に入られよるよって、一蔵どんにお願いしもはんど。」

「一蔵どん・・・とは、大久保一蔵どんかのう!!」

「坂本さぁは知っちょりもすか?」

「今、薩摩藩を動かしちょる御仁じゃと。」

「うん、そん通りでごわす。一蔵どんがおらんと薩摩藩はどうにもならんと。」

西郷が立ち止まる。

「ここがおいの家でごわす。」

「ほぇー、ここが・・・」

想像していた以上の家だ。その時・・・

「西郷どん・・・。お帰りでごわすか!!」

「おぉー。こいは、いい所に!!」

「こちらの御仁は!?」

声の主が西郷に問いかける。

「こちらは坂本龍馬さぁ。で、坂本さぁ・・・こちらは大久保一蔵どん。」

「大久保さんよろしゅうお願いします。」

「おいこそ、よろしくお願いしもす。」

龍馬が手を差し出し握手を交わす。

「う・・・ん、こいは!!」

「あぁ、これは西洋式の挨拶でシェイクハンドじゃ。」

「まぁ、ここはおいの家に上がってたもせ。」


大久保一蔵(後の大久保利通)・・・薩摩のインテリ。よく冷酷非情と言われるが、結構熱い男。


「イトー。飯と酒を用意してたもせ!!」

ご飯と酒が用意される。

「すまんのぉ。」

「ところで、西郷どん・・・。今回の長州征伐はどげんすっと!!」

この頃、幕府は今度こそ長州を叩き潰そうと各藩に長州征伐に参加するように指令を発していた。

「一蔵どん。坂本さぁは・・・」

「分かっとると・・・。半次郎どんから長州の内情について手紙が届いたっち。長州では佐幕派が後退し、再び討幕派が力を盛り返したっと!!今、長州を叩いとかんと、後々面倒になる。この前の時とはいかん!!」

「・・・・」

龍馬が話に割って入る。

「大久保さん。もうすでに、長州は手ごわい藩になっちょる。今、藩の実権は桂さん等が握っちょる。そんでもって、久坂さんと高杉さんが奇兵隊ちゅう軍隊を作って守りを固めちょるそうじゃ!!そんでもって、今回の長州征伐には各藩財政難やらで反対しちゅうという話じゃ!!」

大久保が身を乗り出す。

「坂本さぁ・・・どげんしてそんな事情に詳しかと!?」

「今、長州におる中岡ちゅう同士から先日長州情勢についての文が届いたっち・・・。」

懐から文を取り出す。

「ほれこれじゃ!!」

大久保と西郷に見える様に文を広げる。

「・・・・」

「・・・なんと、久坂と桂が生きとったとは!!」

大久保が驚嘆する。

「ほんでもって、幕府は今度こそ長州を潰そうと総大将に一橋慶喜だそうじゃ!!この幕府軍に薩摩が加勢となれば・・・今度こそ長州は終わり。で、そん次は薩摩!!!」

「・・・なんっち。長州の次は薩摩じゃっと!!」

西郷が身を乗り出して龍馬に問う。

「薩摩は幕府にとっては目の上のコブじゃ!!薩摩っちゅう敵を潰した後、日本は西欧列強に食われるっち。」

「なんと!!」

西郷と大久保が同時に反応する。

「坂本さぁ・・・我が藩はどげんしたら・・・!?」

「うん。わしにええ策が一つあるっち!!」

「坂本さぁの策とは?」

大久保が龍馬に問う。

「わしが考える策ちゅうがは・・・。薩摩と長州が手を結ぶ!!この策しかないぜよ。」

「長州と手を結ぶ・・・!?そげな話長州が乗るとは思えん。」

大久保が西郷の顔を見る。

「おいもそう思いもす。坂本さぁ!!長州は薩摩に対し憎悪の念を積もらせとりもす。どげんして手を結ぼっち言われもすか?」

「それにはカンパニーじゃ!!」

「カン・・パ・・ニー!?」

西郷が龍馬の顔を不思議そうに見る。

「そうじゃ!!憎み合うた同士仲直りするには・・・お互いに利益になる話が一番!!」

「利益になる話!?」

「今、長州は幕府軍に対抗するにも武器が不足しちゅう。銭があっても幕府が貿易を禁じちょるよって武器を買うことができんちゃ!!そこで、わしらどこの藩にも属さん浪人がカンパニーを作って薩摩名義で武器を購入してそれを長州に持っていくがじゃ。ところで今年の薩摩は米は豊作かいの??」

「今年も米は不作でありもす。京におる我が藩兵の兵糧に頭を痛めておりもす。」

大久保が怪訝そうに答える。

「ほうか・・・。今年も長州は米は豊作だそうじゃ!!ここまで言えばわかるじゃろ!?長州には武器を、薩摩は長州から米を買うちゅう事で、まずお互いの利益で手を取り合うがじゃ・・・それを行うのは。わし等のカンパニーちゅうわけじゃ。」

「・・・・」

大久保と西郷が驚きの顔をする。

「そんカンパニーを作るには、大久保さんから久光公に進言してもろうて、資金を出してもらわないかんち!!」

「坂本さぁ・・・分かりもした!!さっそく明日にでも久光公に進言しもっそ!!」

大久保が答える。

「大久保さん頼んます。」

「しかし、坂本さぁは突拍子もない事考えもすな!!明日、小松さぁにも会ってそん話と今度の長州征伐の件わが藩の立場も話合わんとなりもはん。」




































評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ