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ドールプリンセスひとみ  作者: naruP
第1話
12/12

(12)

 ひとみと華蓮は家を出て、大通りにつづく道を歩いていた。

 華蓮はひとみが抱いているロックに目をやった。

「このぬいぐるみなおしたの、自分ひとりでやったの?」

「うん、そうよ。がんばったのよ」

「すごいわね、とっても上手になおしてあるわね。大変だったでしょ?」

「はじめはボロボロだったから」

「どこで買ったの?はじめからボロボロだったわけじゃないんでしょ?」

「おばあちゃんからもらったのよ。おばあちゃんがずっと探していた古いお友達だったんだって」

「そうなんだ。あ、ねえ、名前は?名前はつけたんでしょ?」

「うん、ロック。ロックという名前にしたの」

「かっこいい名前ね」

「えへへーー」

 ひとみが照れて頭をかいたとき、そのひょうしに胸のペンダントがキラリと光った。

「あっ」

 それを見て華蓮がなにか言おうとしたとき、危険な気配が2人をつつんだ。

 華蓮はハッとして前方を見た。おどろおどろしい不気味な空間が現れていた。

―――ダークゾーンだ!

 華蓮は眉をよせてそれをにらみつけた。

 その中に人影が見えた。見覚えのある影だった。

 華蓮の心が一瞬ひるんだ。

―――あのピエロのダークドールだ!

―――だけど!

 華蓮は唇をぎゅっとかんだ。

―――恐ろしい相手だけど、ウィルのかたきを射つなら今しかない!今ならここに仲間がいる!

 華蓮は腹を決めた。


 華蓮はダークドールをにらみつけたまま、横にいるひとみに語りかけた。

「ねぇ、ペンダントだと先生に見つかったら没収よ。それに今日みたいなことがあってもまずいでしょ?」

「あ、うん」

 ひとみは華蓮がなにを言っているのかわからなかった。

「だから私は、こうやって制服のリボンの裏につけてるの!」

 華蓮はチラリとプリンセスハートを見せた。

「えっ!西園寺さんも?」

「そうよ」

 驚くひとみに笑みを残し、華蓮はプリンセスハートを頭上高くかかげた。

「華蓮・プリンセス・ドールアーーップ!」

 華蓮がかかげた緑色のプリンセスハートが輝き、無数の光の帯がはなたれた。

 その光の帯が華蓮の身体をつつみこみ、美しいドレスとなった。

 右手にはプリンセスロッドが表れた。

 華蓮はそれをくるくるくるっと華麗にあやつり、ピタリと小脇に止めた。

 カツンとヒールをあわせ、前方の敵に言いはなった。

「ドールプリンセス華蓮!」


「なんだ、腰抜けプリンセス。やるのか?」

 ダークピエロはあきれた。

「今日はこの前のダークベアより強いダークライオンがいるんだが、大丈夫か?またやられちゃうぜ」

「オレの相手はこいつか~?弱そうなやつだな」

 ダークライオンはあくびをして首をまわした。

「まあ、いいや。さっさと片付けてやるぜ」


 ダークライオンはいきなり飛びかかってきた。

 その爪が2人をおそう。

「あぶないっ」

 華蓮はひとみをかばって背中に一撃を受けた。

「あっ、西園寺さん大丈夫っ!?」

 華蓮は苦痛に顔をゆがめた。

「早くあなたも変身して!」

「うんっ」

 ひとみはプリンセスハートを高くかかげた。

「ひとみ・プリンセス・ドールアーーップ!」

 プリンセスハートからたくさんの赤い光のリボンが打ち出され、渦を巻いた。

 そのリボンがひとみの身体に巻き付いて美しいドレスとなった。

 頭上に伸ばした右手にプリンセスロッドが表れた。それを一度大きくまわしてピタリと止めた。

「ドールプリンセスひとみ!」


「ひとみっ」

 華蓮がかけよった。

 2人は目でうなずきあうと、同時にふりかえった。

「さあ、いくわよ!」

「ふふん、生意気な!」

 ダークライオンは一声吠えて突進してきた。

「きゃあっ!」

 2人は簡単にはじきとばされてしまった。


 体勢を整えきれないうちにダークライオンの爪が2人を襲う。

 そのとき、

「そうはさせないぞ!」

 ロックがダークライオンの鼻っ面に噛みついた。

「うがっ!」

 ダークライオンはのけぞってロックをはね飛ばした。

 くるくるっと身体をひねって着地したロックは

 2人を守るようにダークライオンの前に立ちふさがった。

「大丈夫っ?ひとみちゃん!」

「ロック!」

 ひとみと華蓮はロックのそばにかけよった。

「やるな、ワンコロ!」

 ダークライオンは舌なめずりをした。

「だがな、今は不意をつかれたが、いるとわかっていりゃあ、お前みたいなちびスケに遅れをとるオレじゃあねえぜ」


 その言葉の通りだった。


 それからというもの、ひとみたちは防戦一方となってしまった。

 プリンセスロッドで防ごうとしても、ダークライオンのパンチは強すぎた。体当たりは強烈すぎた。

 ひとみと華蓮はそれをすんでのところでかわすのが精いっぱいだった。

「わっはっはっ、いつまでかわしきれるかな?いくぜ!」

 次から次へとダークライオンの攻撃が襲い掛かってきた。

 ロックもさんざんにやられている。


 ダークピエロは伸びをしながらその戦いをながめていた。

「ははーん、こりゃ楽勝だ。俺様が戦いに加わる必要はなさそうだな」


 何度叩きのめされたかわからなくなってきた。

 ひとみも華蓮も肩で息をしている。

 互いに目と目を見合わせた。

―――どうしよう?

―――どうする?


 その時、2人の後ろから声がした。

「ちょっと待ってて、ひとみちゃん」

「ロック!」

ロックは前に進み出た。

そして一度目をつぶるとダークライオンをにらみつけた。

ロックの左目からサーチライトの光がはなたれ、その光輪がダークライオンの身体をさぐった。

「どこだ?ダークライオンの弱点は!」

ダークライオンが素早く動くので、なかなかライトの焦点がさだまらない。

前後左右にライトが動く。

と、その動きがダークライオンの腹部で止まった!


「わかったぞ!ひとみちゃん、お腹だ!お腹にあるほころびが弱点だよ!」

「ありがとう!」

ひとみはすっくと立ち上がった。


「何をいってやがる。とどめを刺してやるぜ!」

ダークライオンは恐ろしい咆哮をあげてひとみに襲いかかってきた。

「やれるもんならやってみな!」


ダークライオンが大ジャンプをして飛びかかってきた。

腹のほころびがまる見えだ。


そのとき、ひとみのプリンセスロッドの先端が赤く輝き始めた。

「ソーイングーー」

ひとみはプリンセスロッドを腰に構えた。

「アウトーーー!」

ロッドを華麗にまわし、ダークライオンに突きつけた。

ロッドの尖端から赤い光がほとばしった。

その光は無数のかぎ針に変わりダークライオンの全身をつつみこんだ。

そして腹のほころびを手がかりにつきつぎとダークライオンの縫い糸を抜き取っていった。


「うおぁーーー」

ダークライオンはあっというまにバラバラとなってしまった。


「な、なんてぇ技だ!一撃で倒しやがった!」

ダークピエロは地面に横たわったダークライオンの残骸とひとみを交互に見つめていた。


「まだやるの?!」

ひとみの声に、ダークピエロは真っ青な顔をして逃げていった。

「お、おぼえてろーーー」


「やったわね!すごい技を持ってるじゃない!」

華蓮がひとみの腕をつかんだ。

「なんであんな技ができたんだろう?」

ひとみはプリンセスロッドを不思議そうに見つめた。

「私は……もう夢中で戦っただけ……」

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