<この世界の運命を決める真(?)ヒロインの話。ちがう、おまえじゃない>
何かを遺したい。半端でも良いから遺したい。死蔵したまま終わりたくない。
突然ですが…いや、ここまで来たならもうわかるだろうが、俺は一回死んだ。
何者にもなれずひっそりと社会の片隅で独り寂しく名無しの魔法使いX年生として
詳細は分からんが多分死ぬ前の苦しさからして急病死した転生者。今の名前は…
…スカール…スカール・レターン…性別は前と同じ男。祖国はインムーン王国。
レターン男爵家の四男。現住所はネターラケス大陸ワンダテイル地方にある
インムーン王国の首都マーナトノヨールにある通称:貴族区と呼ばれる
ツーサスリグリムネ区の一画にあるレターン男爵邸。
まあとにかく転生したんで喜んだ。転生前によくある神様(自称邪神)との
転生前のかくかくしかじかナンタラカンタラなやり取りの後に転生チートを
色々と頂いて転生させてもらったんですよ。そりゃーこんな俺でも
「捨てる神あれば拾う神あり」と喜んだわけですよ。さらに転生先も
少なくともハードモード確定では無さそうな貴族の子に生まれたんですよ。
んでもって今の俺には 奇 跡 の 幼 馴 染 …ああ、現実からして
ありえねえファンタジー要素沢山の可愛い幼馴染だった(過去形)アイツ…年上の
アヌンナキ=ヘーラー・レルゲーベーテーことナキは声も見た目もマジ美少女…
だ が 男 だ 。 こ こ に 来 て ま さ か の 男 ♂ だ 。
こ の 世 界 の 神 が 見 事 に や ら か し や が っ た
奇 跡 の 幼 馴 染 ( 男 の 娘 ) だ 。 マ ジ で 男 だ 。
大 事 な こ と だ か ら 何 度 で も 言 っ て や る 。
だ が 男 だ 。 だ が 男 だ 。 だ が 男 だ 。 だ が 男 …
あ゛あ゛あ゛あ゛も゛う゛ごの゛時゛点゛でや゛だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!
あえてマイルドに英語で言うオタク用語だとオトコノコ=トラップさんだ。
別に俺は神様を熱心には信じねえけど…言わせてくれよ…。
エリエリレマサバクタニ…我が神、我が神、何故、斯様な事をなさるのか。
お蔭様で(?)当初は何も知らなかった 何 処 か の 俺 が、
その超重大な真実を知るまでにそれとなくアプローチしちまった挙句…
これもう異性なら絶対にマジ惚フラグを神に捧げる大オベリスク級で
デデドン!! とブッ建てちまったもんだから今現在はもう既に手遅れっていうか
最初からフルスロットルな男姉ちゃんとか誰が得するんですかねぇ…?
少 な く と も 俺 じ ゃ ね え よ 。 絶 対 に 。
「…お ま た せ ♪…アイスティーしか無かったわ。でも今日のお昼ご飯の
お弁当はスカールくんの大好きなベーコンレタスブラッドソーセージ野菜オール
オニオンイチゴサンド…略してBLBLSYAOIサンドだよ★」
「出たなショ☆カー?! 何でイチゴ入れたし!? 大して略されてねえし?!」
「ショ☆カー? お姉ちゃんにも分かるように教えてよ。あとイチゴも
立派な野菜でしょ? お姉ちゃんも立派な男の娘でしょ? 何か問題ある?」
最初からフルスロットルでほぼ全て問題しかねえよ。そしてこの男姉ちゃん…
何か言いつつもパーソナルスペース侵犯。俺もう逃げる。三歩離れて二歩下がる。
止まれ、それ以上はまかりならぬ。我が聖域無断土足で侵すモノ何人たりとも…
このスカール・レターン…容赦はせぬッ!
「もー…!! 姉弟なんだから良いでしょ?」
「なあ、男姉ちゃん…"親しき仲にも礼儀あり"って言葉知ってる?」
「だからお姉ちゃんが弟に対して清く礼儀正しいスキンシップを…」
「普通の兄弟はそんな距離感ですらねえから?!」
浄化術式折込の玉葱鎧士セットの手入れに余念が無い理由がコレ。
だってしょうがないじゃない。男姉ちゃんは男の魔女だもの。
オマケに彼…女…いや、彼奴の天職能は既に特上位の魔女皇だ。
さらにこっちじゃ千人に一人しか持てないとされている第二天職能にも、
これまた既に上位職の真言操霊術師と来たもんだ。
隙あらば俺にスキンシップを図って魅了&呪印魔術をブチ込んで来るのだ…。
ちょっと待ってくださいよ? これなんて第一地獄:兄罪ですかね?
転生チートパワーが無かったら114.514%で何もかもンア゛ーッ! で
あ゛あ゛あ゛も゛う゛や゛だあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛な展開待った無しとなり、
前世から異性愛者な俺にとって間違いなく第二地獄:退廃男色だゾ…?
「どうして? だってスカールくんは昔は沢山好きって言ってくれたじゃない?
これまでに114514回は好きって言ってくれたじゃない」
「いやそんなに言ってないから。ナチュラルに過去を捏造するのやめてくれる?」
「ちなみに私は今日までにスカールくんのこと好きって114514回言ったよ?
あ、これでもう114515回だね! 120000回まであとたったの
5485回だね! お姉ちゃん頑張る! 達成したらきっと願いが叶うよね?」
「ヒェッ…?!」
最近は何かもうフルスロットル過ぎて半ば病ンデル気配マシマシだし…。
この間なんか偶々遊びに来てた近所の幼女ニニャンたんが俺の貴重な昼寝タイムに
暇だったのか便乗して不可抗力的に転寝しちゃってただけだったのに…
それを最悪のタイミングで見ちゃった時、躊躇無く何処からか取り出した
クッキングナイフを「じゃあ死ねッ! 永遠に私のモノになれッ!」って
普通にヤベー事言いながら俺めがけて剛速球してきたんだぜ?
転生チートパワーが無かったらもう即死ENDとか何なの?
…マジで誰が得すんの??? 何で敵も強くてニューゲームなの?????
ただ…男姉ちゃんは…その点を除けば、間違いなくさぁ…良い奴…なんだよね。
俺に近付いてくる数少ない貴重で希少な真正女子に(冷たい)笑みで脅しはしても
絶対に(俺以外には)暴力で訴えないし…? ごく当たり前いつものように
(何度も何度も鍵も錠も確実に変えている筈の)俺の部屋にご飯を作りに来るし?
何か部屋も掃除してくれるし? 頼んではいないし教えてもないが
俺の好物のお菓子とか用意してきてお前は俺の母ちゃんかレベルで色々と世話…
…なにこれ? まずいですよ?! 俺普通に外堀埋められてない?!
「それでさ、スカールくん? 結局どうしてわざわざ王都を離れて聖都アルテまで
来て暮らしてるの? 確かに私も極力実家に頼らない為って一応納得したけど…」
「あー…それか…」
こいつが普通にヒロイン候補だったら普通にはぐらかすなり尤もらしいウソで
終わるんだが、そうもいかない。
事の発端は俺の出生の件から語らなきゃならんのがメンドくせえ所かね…?
今の俺が生まれたレターン男爵家は法衣貴族(基本的に領地を持たない貴族)で
爵位も実質最下位な男爵家。さらに俺は四男。ノーチートなら絶望ルートである。
(上流なら兎も角、下流貴族も"働かざるもの食うべからず"は普通のようです…)
まーそこらへんは全然チートマシマシメガ盛りだから何も問題無いんで、後は
目下最大級の障害である幼馴染♂のナキも(俺以外には)悪い奴じゃないから
儚いが夢を見せてくれた幼馴染のよしみで傷つけないように突き放して離れて
テキトーに生きてチートでチャチャッと纏まったカネ稼いで土地買い家買い
普通の嫁さん貰って前世じゃ果たしたくても果たせなかった割と普通っちゃあ
普通の幸せな…だがしかし最終的完全ニート人生を謳歌してやろうと考えて準備を
そこそこに(ナキの猛烈アタックオンホモセクシャルを全力回避しつつ)進めてた
ある日のことだ。
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この頃にはもうチート能力もほぼ完全にコントロール下に置けてたから、
いつもの様にナキの不意打ちアタックオンホモに備えて諸々の感知を発動しながら
貴重な羊皮紙を何枚も無駄にしながら真面目に未来の計画書を書いてた時…
《この世界に生きとし生ける全ての善良なる心の持ち主達よ…聞こえますか…?》
「…は?」
この世界も漏れなく魔法がある異世界だったので、頭に直接語りかける術式も
存在していることは知ってるしウッカリ傍受しちゃうこともあったが…
基本その受信チャンネルはチートパワーも使ってOFFにしてるので
聞こえるはずの無い声にビクッとしつつ間抜けな声を上げちまったんだ。
「…? 気のせいか?」
まさかとうとうナキの奴も伝心魔術を会得しやがったのかと勘ぐったが、
ナキは姑息なようで姑息じゃない。そういう所だけはサッパリ爽やかナイスガイ。
「言いたいことがあるなら直接会って目を見てしっかりスカールくんの口を
口で塞g…舌を絡m…ハッキリ言うからね?」全然ダメだ全くナイスガイじゃねえ
普通にキティゲイだった。閑話休題。とにかく何だかんだで疲れてんだと考えて
じゃあ折角だから休憩するかと自室(地上3階)の窓を全開にして窓際に
ナキが張り付いてなかったと安心して青空見つつ軽く背伸びしてたら
《この世界に生きとし生ける全ての善良なる心の持ち主達よ…聞こえますか…?
私の声が聞こえたらそのまま聞いてください…!》
「ウソだろ、オイ…?」
これまでニアミスいやニアホモだった「異世界転生あるある&ねーよ」展開に
今度こそはあわよくばと一抹の期待を寄せつつ、真面目にハッキリ聞こえた
ナキのものではない透き通ったかなり若い女性の声に思わず言葉が漏れたんだ。
《私はこの世界…七天世界レーゲンボーゲンヴェルトで…今を生きる貴方達が
さまざまな解釈で信じている者…管理神の女神アルテセレヘカティアです…!》
「ちょ、え、ちょ、え…?!」
何となく窓の外から街の景色を見渡せば、俺だけじゃ無さそうだった。
全員が全員じゃないが、何かしらの魔術の才能か何かを持った一部の人らも
さっきの言葉に十人十色の反応を示してちょっとした混乱が起きていたのだ。
―アルテセレヘカティア様! 本当に女神様そのお方なのですか!?
―おい何なんだよ!? 何でアンタの信徒でもねえ俺にまで聞こえてんだよ?!
―おお…! 女神教団の教義に偽りなし…!! 神は実在する! おお、女神よ!
聞こえてた他の奴等の中には女神様を信じてる奴等もチラホラ居たようなので、
これもまたそれぞれの感情を込めて返事をしているのだが、どうもこの伝心魔術は
一方通行らしく、女神様からは多少の間を置いて返事に対する返事というよりは
それこそ前世の会見でテレビの向こうの相手に何言ってもしょうがねえ展開だ。
《天啓…この様な形d皆さんにただ伝えるだkとなっている事を許してください。
あまり時間がありませんので言わせていtだきます…》
ノイズみてえな感じが気になるが、女神アルテセレヘカティアの言葉は続く。
《これから早ければ最速で約11年後…皆さんには感知できませんが、
この七天世界と他の世界の間に生まれてしまった"滅びの歪み"が悪性変異して
私でも完全には予想しきれない形で顕現してしまう事が発覚してしまったのです。
本来であれば管理神である私が全てを防げれば良いのですが…ごめんなさい。
今もその歪みの拡大と変異を防いでいるのですが…こうして天啓の力で
伝えることが手一杯で…!》
「あー…これは…やばそう…」
突っ込んでもしょうがねえんだが、さっきよりちょっと早口になってきてる
女神様の言葉に見える範囲だけでも俺みたいに聞こえてる一部の連中が
どよどよガヤガヤうるせぇな…お前ら一方通行だって気づけよそろそろ…?!
《どうかこの声を拾うことが出来る七天世界の生きとし生ける全ての善良なる心の
持ち主の皆様! 恥を忍んでお伝えします! この世界を救うため、
私は自らの血を分けて生み出した神子を…リユーリアエルエリスマリアを
そちらの世界に間もなく遣わします! ですから…》
「………うーん…この…」
ぶっちゃけ無視したい壮大な物語か伝説か神話か叙事詩かナニカの幕開け臭い
語り…! まぁ俺は流石に自称とはいえ邪神のクソボケカス存在ファッキンEXに
転生させられた身の上なんでまかり間違っても勇者とかそういうのにはならん…
あれ、もしかしてその逆な魔王系で…げっ…失念ってレベルじゃねえぞ?!
あのファッキンEXの事だから究極トラップだったナキの一件からして
絶対に何かクッソめんどくせえモンをブチ込んでくるのでは…?! と邪推に
邪推が捗り過ぎてマジで頭痛くなる可能性アリアリじゃね? と懊悩してたのよ。
《この子をどうにか11年…sちらの世界を救えr可能性を持った娘を…!
救世主に…! 育てt…! ああ…まt歪mg…! dうか…!》
「……可能性としてあのファッキンEXが絡んでる可能性は視野に入れとこ」
…と、まあ事情が完全に飲み込めないがこの世界の女神様が自分の娘である
リユーリアエルエリスマリアという神の子を送るからしばらく預かってくれと…
…てなわけでダラダラするのもここまでかなと俺は足早に独り立ちセット片手に、
とりあえず件の神子ちゃんが何処に光臨するかはさっきの一方通行通信で把握した
女神の力の波長を元にサクッと割り出して…そこ…幸か不幸かこの世界で
言うまでも無く同名の女神を崇拝する女神教団の総本山の聖都アルテに
「おやおやスカールくん。何処へ行こうと言うのかね?」
「ウッソだろお前…」
>>>>>>
さも当然というか言ってないのに普通に最初の中継地に先回りしてやがった
恐るべき幼馴染♂ナキと共に(いつもの一進一退の貞操攻防を繰り返しつつ)
どうにか心身ともに過労…辛うじて無事に到着し、現在に至るというわけだ。
「どーせお前も聞こえてたんだろ? それが理由だ。察しろ男姉ちゃん」
「へぇ…? 神子様に…名前からして私が唯一持てないモノを持った女子が…?
ふぅん…ふふ、ふふふ…うふふふふふふふふふふふふふ…!」
「やめようね?! 何となく察せるからやめようね!? 一緒に世界救わない?」
やりかねねえ。こいつの心は何処まで行っても乙女だ。かみ合わぬ心身という
地獄は俺みたいな転生者であろうとも苦しいのだ。仮にこれまでの人生は兎も角、
とりまオッサンが幼女に転生してみろ。もう何か色々壊れても不思議じゃねえわ。
普通だったら何かを否定し憎悪しなきゃ正気を保てないだろうさ。
「…まぁ、流石に私も世界が何かあった時に幸せの絶頂だったら許せないし…
そういう意味ではスカールくんの言いたいことも分かるけどね? 出来ることは
出来るうちに全て排j…ヤれる事はヤれる内にやらなきゃダメだもんね」
男姉ちゃんはやっぱり俺以外に対して普通に良い奴だ。ちゃんと
心身のバランスが整ってたら親友で良かったろうさ。
「けれど…神子様って何時ごろ光臨するのかな?」
「さぁ…?」
まぁ女神の力の波長は日に日に増してるっぽいのは俺バッチリ知ってるし、
流石に他の何人かで気づいてる奴等もちゃんといるだろうからその辺は
殆ど心配してねえけどな。
だってしょうがないじゃない。何でそんなのが分かるかって言えば
感知でもそうだが聖都に国王陛下とか女神教の最大派閥の教皇に違教義の法王に
枢機卿の総代といった早々たる大御所さんズが虚虚実実な情報戦か何かを
何かしらやりつつ滞在してるんだもん。ビビれるのはそれだけじゃねえ…
他国では大オーガス聖王国の聖王だの女神教の正統教義派の最大主教なんて
お偉いさんに多分じゃなくてもお忍びでコッソリ来てた切れ者くさい王子っぽい
腕白っていうか既に眼光からして絶対に年齢不相応でヤベー少年も居るんだぜ?
俺にチートパワーが無かったら…あーいやソレ逆に気づかないほうが幸せか…?
………うーぬ………ダメだね。ついつい変な方向に考えがいくわ。
「けど伯父様…んんん! 陛下まで聖都に来るのは…色々考えちゃうよね」
ナキが超能力じみた”何か”を持ってるのは間違いないが流石に情報通な理由は
そっちじゃねえ。ナキは大公の嫡男なんだ。色々あって継承権はゼロに等しい――
大公継承権…? なにそれおいしいの? …スカールくんとの将来の邪魔に?
じゃあ、いらなーい★ せっかくだから大公家の人間であることもやめようか?
え? それは流石にダメ? 何なの? 死ぬの? みんな私の手で死ねばいいの?
――…何なのはこっちのセリフだよ畜生…まぁ兎に角ナキも立派な王族であり、
下手すりゃ全然王子様で女神様…は管理神であって全ての創造神っていう
わけじゃないらしいから結果的にやらかしやがった創造神が…まぁナキが
身も心もパーフェクト大公爵令嬢ってか全然普通にプリンセス…大蛇足か。
兎に角そういう立ち位置だからそういうのには普通に詳しい。だから面倒な話も
テキトーで通じてしまう(のが地味に怖い)が話が多少なりとも早くて助かる。
「折角だから今日の午後に聖都の中央広場で開催される公式発表をスカールくんと
楽しく、スカールくんが大好きな私…げふんげふん!…私特製の愛えk……
…特別製のベーコンレタスブラッドソーセージ野菜オールオニオンイチゴサンド…
略してBLBLSYAOIサンドを食べて睡眠…スイートミントアイスティーを
飲みつつ談笑しながら待とうって話だったもんね?」
「二度も突っ込まねえぞ男姉ちゃん…」
完全に朗らかな美少女スマイルの裏に潜めてるつもりの己の欲望が全然全く
隠しきれてないナキを余所に俺もう競歩の最高速度で中央広場に逃げる。
やべークスリごときで俺を如何にか出来ると思ってるなら永遠に甘いんだよ!!
お前の目論見の成功は俺のプログラムには絶対に存在しないんだよ!!
あと異物混入はやめろ!!! クスリより駄目な奴だから絶対に食わな…!!
…クソが俺のために作ってくれたのは事実だから食うフリはしてやるよ…。だから
そのためにも色々誤魔化せる愛用のタマネギ鎧兜騎士…こっちじゃオリジナルの
一張羅だったから折角なので勝手に借用した偉大なるジークマイヤーの名を冠する
装備で広場に向かうのも辞さない!! 一応コレ正装で通してるし!!
>
聖都アルテの中央広場はかつて無い賑わいと思われる。何せ数カ国の首脳陣さえ
参列してんだから未来の歴史書の一ページは問答無用で確定だろうさ。
「こういう時だけは貴族生まれで良かったなぁって思うよね」
「まあな」
ナキは思いっきり大公家のコネを使って特等席である。俺も含まれる。
はーメンドくせぇマジで…。ナキはまあ立ち位置からして有名人だから別段何も
この場じゃ問題ゼロだが零細男爵四男坊な俺はそういうわけにもいかん。
何しろ正装の鎧姿とはいえ、兜と鎧からどう見てもダブルタマネギ甲冑騎士姿。
色んな意味で浮きますよー浮く浮く。空気もろとも場違い職種間レビテーション。
「色んな人たちから聞けるだけ聞いてみたんだけど…えーっと神子様こと
りゅーりあるええりすまり…」
「リユーリアエルエリスマリア様な。んでまぁ名前からして大変だし立場的にも
今後はもっと手っ取り早く親しみを込めて呼ばれるだろう聖女様でいいだろ」
「そうだね。聖女様がこの辺りに光臨するんじゃないかなって話」
サンドイッチは普通に食った。変な味はしなかった。絶対に何かヤベーのを
複数混入させてるのは絶対に間違いないが【鑑定】したら死にたくなるだろうから
敢えて見ないでしょうがねえから食ってやった。普通以上に旨かったのが不気味。
ブラッドソーセージってレバーソーセージより好き嫌い分かれるクセのあるのが
相場なんだけど…全くクセを感じない…何だろう…俺ノンケだから凄く勿体無い。
俺ノンケだから何でナキはちゃんと体が完全に女の子じゃないのかと悔しくなる。
何で余計なハンドガンを股間にぶら下げてんだろうかと泣きそうになってくる。
「……なぁ…アヌンナキ…」
「お姉ちゃん、お姉さま、アニン、ナキ…お好きな呼び方でどうぞ」
「…オイ兄k」
「お姉ちゃん、お姉さま、アニン、ナキ…お好きな呼び方でどうぞ………………
…………次"兄貴"ッテ言ッタラ今スグ永遠ニ天国デ一緒ニナロウネ?」
「…ひぃ…ッ?! …………やっぱこういうのやめようぜ男姉ちゃん」
「もう! 相変わらず変な発音で呼ぶー…!」
意地でもお姉ちゃんと誤認するお前が言うな。あとさっきのマジで怖かった…。
前世で目撃した本物のヤーさんの恫喝現場が天使の諭し場に思えたわ…!
汚い大と小のダブルバーストをやらかすかと思ったわ!
「………そろそろ、か?」
「…みたいだね」
中央広場に用意された特製の壇上に偉そうな感じの人が出てくる。
多少静まったがそれでもザワザワしてるのは変わらない。
「静粛に! 静粛に! オホン…天啓を受けられた者達は言わずもがな…
ついに我々でも身近に感じられるほどの女神様の天啓が下された!
我々の独自の調査により、今日この日、この場所に間もなく女神様の息女たる…
神子リユーリアエルエリスマリア様すなわち聖女様が…」
お偉いさんが説明し終わる前に壇上の中央付近に神聖な感じの魔方陣が浮かぶ。
お偉いさんは大慌てで下がって、各陣営から選抜されたであろう護衛さんズが
優雅で美しい…? 足並みでブワーッと魔方陣の周りをやり過ぎない程度に囲む。
いよいよ神子リユーリアエルエリスマリアこと聖女様のご光臨イベント本番だ。
「ほんじゃー…しっかり鑑定させてもらいますかね…?」
「見定めないとね……色々と」
噛み合ってるようで噛み合ってないだろう言葉を皮切りに俺とナキは
柔らかに光り輝く魔方陣の中央…送り出されたであろう…ある意味では
異世界召喚な光景を目撃者として見る事になるのだ。
「遂にお出ましになられ……!?」
ここまで来ると俺以外の感知系能力者や教団関係者でも分かるレベルで
女神の力を感じ取って光臨現場で待機してたら現れました聖………………えっ!?
……………………………………………………………………………………幼女?!
「ふぁ…?」
いかにも「私は女勇者とも言える聖女です」な格好でプラチナブロンドと白髪を
足して2で割ったようなどこか儚さを感じさせつつも秘めたる力は多分モブでも
息を呑むレベルで感じ取れそうな雰囲気を持った銀髪緑眼で色白な「幼女」が、
見た目相応っぽい声色と反応を返した。おっといけねえ鑑定さんよろしく!!
「………………………………………………………ブふぉッ?!」
「えっ、どうしたのスカールくん?!」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
《管理神子:真正聖女》リユーリアエルエリスマリア 女 七歳 神族
<ふわ…? 何だか沢山の人間さん達に取り囲まれてますけど…? お母様?
聞いていた話とちょっと違うですよ?? お母様? …本当に声が届きません…
えっと…確かこの中から最も一途で強いあ――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ちょっと待てよ女神様ァ?! 余裕無さ過ぎダルォ?! つうか鑑定さんが
本当にチート過ぎてこれメチャクチャ色々とマジで危険なヤツじゃねえか?!
「スカールくん!? 大丈夫?! そんなに?! そんなに見惚れるレベル?!
可及的速やかに実力行s」
「ごめんナキ今はマジで黙れ!!」
「えっ…?! す、スカーr」
どうもこの世界の女神様はマジで切羽詰ってたのが分かっちゃうよ?!
年齢と見た目はもうこの際どうでもいいんだよ! せめて内面は
それこそ俺みたいなテンプレ異世界に流転した地球人とかじゃねえけど
何かしら年齢不相応にシッカリしたメンタルの持ち主であれと!!
そう思ってたのに!?! あの反応と心じゃどう見ても天啓そのまんまで
「マジ時間無かったからお前らの良心を信じて救世主に育てろ」って女神さん…
アンタそれは流石にさぁ…!?
「あ、えっと…その…私の周りに居る皆様の誰が私の…」
「「「「我ら/私達/俺ら/拙者一向/です/だよ/だ/ござる!!!!」」」」
「ほぁ…ッ?!」
うわー…最悪ぅ!!!! どいつもこいつも全員が全員で思いっきり
功を焦りやがったよこの俗物共め!?!?
<これは…思った以上に…>
<<<<<チョロそうだな>>>>>
<これはロリコンじゃなくても理性を持ってかr…駄目だ…我が野望の為に…>
<世界を全て敵に回してころしてでもうばいとる覚悟であの娘に臨まねば…!>
<クズな俺でも分かるぜ…あの小娘は世界の運命を変える、変えられる…!!>
<奪って良いのは、奪われる覚悟のあるヤツだけだ…!>
<勝った………計 画 通 り…ボクは…ボクは…新世界の…神になる!!>
<神聖王に、我は成る!!>
「………………」
「す、スカールくん?! 顎が外れそうな勢いだけどだいじょぶなの!?」
だいじょばねえよ最悪だよ開いた口が塞がりようがねえよ!! 揃いも揃って
選抜された各陣営の聖女護衛候補共もゲスの極みオーバーキルだよバカヤロー!!
これは駄目だ周りで何となくマークしてた重要人物っぽいの総なめ【鑑定】開始!
【神速】も限界近くまで発動待ったなしド畜生この野郎!!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
《現インムーン国王》ヤズイウ・T=インムーン114世 男 51歳 聖人
<酷いのう…あやつもこやつも揃いも揃って野獣の本性が見え隠れしておる…!
浅ましや…! 度し難き程に浅ましや…! ああ幼き聖女様…ワシは…かつて
国の為とはいえ若かりし頃《野獣王》とまで蔑まれるような事をしてきました…!
だからこそ…だからこそ残る余生を貴方様をお守りし通すことで…
贖罪させて頂きますぞ…! …で、出来れば…出来れば…いつか…おじいちゃ―
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
うるせぇよ! うるうるせぇよ!! うるせぇよ!!! 顔面とか諸々が
色んな意味で《野獣王》が相応しいのに中身がどんだけ純真高潔なの陛下ァ!?
…でも、俺は…アンタを一生尊敬するぞ! 国王オオオオオオオオッ!!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
《教皇》ロデリク=ランソルフ・アレクサンデル66世 男 72歳 人間(獣)
<先代教皇インケテウスも墓土の下、息子のセザレも素晴らしい右腕となった。
曲者の統括枢機卿のクソガキは已む無しとして、もはや枢機卿団も
我が手足そのものじゃろう…! しかし神子とやら…十にすら届かぬとはいえ……
稚児趣味など持ち合わせておらぬこの朕の心さえ動かすか…! 落ち着け…!
落ち着くのだ、朕よ! アレをこの手元に置き見えぬ首輪を嵌められれば…
早摘みも視野に入れつついずれこの朕が世界の唯一無二の―
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
駄目だコイツ世界のためにデス確定ノートにメモ。見 た 目 だ け な ら
素晴らしき我が陛下と魔逆の好々爺なナイスシルバーだがもう種族紹介欄にも
ケダモノ認定で大正解大殺界の真正真祖のクズ。はぇー…すっごい…アレ、駄目。
俺がクズなら、アレは紛れもなくケダモノ。死んで当然レベル。語彙も死ぬ。
つーかあんなのがこの国で根深く入り込んでる女神教の最大派閥の教皇?
無い。マジ無い。ありえないわッ! 自称が朕とか舐めんのはテメーの***を
セルフ***レベルで死に消え去れ腐り果てろ。朕って響きはダサいが滅私の
意味を込めて使う生前戒名みたいなもんだぞ? さては無知だなオメー?
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
《聖大天使派法王/ロリコン――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
はいこの状況その立場でその称号は完全ギルティ見る価値さえなし。次!
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
《現オーガス聖王/理想主義者》アルマンフィ――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
最後に聞こえた痛い脳内宣言してる痛い若王様ね。はい次ー。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
《統括枢機卿――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
《正統教義派最大主教――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あーえーと教皇失格の当て馬ナンバー1、2ー次々~。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
《神極星帝国皇帝/少年覇王》エクスィアルド=ノヴァ・オ・カオス・ラギュラ
男 14歳(第壱位神偽装【122歳】) 人間(〃偽装【半神族(新生体)】)
<何もかもが計画通り…世界の全ては余の手の平…おっと…ボクの計画通り…
さて…そろそろ邪魔なイロモノ護衛共にはスマートにご退場いただこうk――
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ハイハイ覇王覇王世界制覇をマジでやりかねねえ覇王はアバーーーーーッ?!
駄目だあのゲスゴミクズカスのアクの強さを全然無視して良いマジ魔王なのが!?
おい女神様ァ!? もう歪みの極致な最大有力候補でチェックメイトっていうか
絶体絶命的ファイナルアンサーなんですけどー!? おい何だあの異能の海!?
自力で転生してるじゃねえかコイツでもう全部おkじゃんよ?!
おいどうすんだよもう世界が詰んでる詰んでるー?! どいつもこいつも
我が陛下ヤズイウ国王様じゃ手に余るってレベルじゃねえ大ボス超大手有力候補
列強オンパレードフェスティバルカーニバルファイナリティブラスト五秒前ェ?!
「…ちょ、俺もう逃げ駄目それ駄目とりま一本点けてタバコ休憩挟ますとこ!!」
すー…………ごふぉーあ…! 大丈夫、【神速】のお陰で「世界そのもの」は
一秒も経過してない。俺よりヤベー時間系異能持ちはあの少年覇王にも無い…!
まだだ! まだ終わらんよ!! 俺のバカ脳をフルアクティベーション!!
それ何だかマスターベ…最後しか合ってねえよ俺ぁ!!
「ふはぁ…! 時間も手段もまだ在る!」
せっかチートはこういう時こそ! 失敗はチートプログラムには無いんだよ!
聖女…えー聖女といえば…? 思い出せウィキ★ディア!
「駄目だ昨今のファンタジー聖女あるある不自然オールオアナッシングで!!」
…婚約破棄? バーカ! 逆ハーレム? この俺ェ!!
禊祓えや清め給えや痴れ者オレイ!!
「もふもふ…ちがう、そうじゃない! おい聖女のパートナー勇者出て来いや!!
……影も形も無いし違う、少年覇王!! テメーの勇者称号は
絶賛(?)多忙を極める管理女神様に代わって剥奪よ!?!」
混乱のKIWAMIアーーーーーーーーーー?!
>>>
…やべえ…体感じゃもう一日は経過してる…!? それでもまだ…!
世界は30秒も経過してない!! ナイスチート! ラブイズチート!
ノーチート! ノークソゲーエンジョイ!! 他意は無い!!!
こちとらバカなりに真剣丸一日で悩んでんだよドちくせう!!
「………………………………………………………………動いてるよなぁ」
何がってあの少年覇王の偽ボク余ショタジジイだよ! ざっけんなよおおおおお
こんのイケショタがあああああああああああああああああああああああああ!!!
そのイケメンチートの鼻の穴に指突っ込んで灰色脳にデコピンさせろおおお!!!
我武者羅ガムシャラシャーシカで良いセンスなユアープレティグッドアイディアを
頭に詰まった脳クソから搾り出してんだよォオオオオオオ!! ホントはもう
今すぐ逃げたいんだよォオオオオオオオオ!! 助けてジークマイヤー?!
クァドラブルタマネギナイツオブラウンズぅー?!!!
「…やっぱ騎士だよな…あの聖幼女ちゃんを絶対に裏切らない裏切れない無敵の…
…守護者…ガーディアン…………守護神ッ!!! それな!!!!!」
やったぜ。今なんか最高に気持ちええんじゃ!! スローライフぅ?!
世界が終わったらそれどころじゃねえよ。これは絶対に無視してはいけない。
そこまで自分はゲスじゃないしなりたくない。
「【神速】限界許容…突p…解除…!」
考えるな。感じたままに…! 世界は動き出す…! 行くぜ相棒!
いつか使うかもしれないと思ってタマネギ鎧に入れといたストック式の…
【神速】術式…レベル1発動! ごめん聖幼女ちゃん! 初見ビックリドッキリな
タマネギモンスターがそっちに行くけど今だけはお嬢ちゃん許して!!
チート盛り沢山の俺式スペシャルアーマーよ…壊れても止まるんじゃねえぞ!!
「ぬぁ~ん…もんつかr…なんじゃ~きさまはぁ~…!!」
…ウソだよ、ウソだといっておくれよマイマジェスティ!! あ、クソが……
少年覇王め…! 気づきやがった…!! ゲス滲み出るヤバい魔剣を抜いたッ?!
テメーの【光速】じゃレベル100でも無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!!
<邪魔はさせん…! 余が新世界の神となる最初の生贄はキサマがさk―
《【精神干渉】【絶対捕食者咆哮】ォオオ!! …五月蝿エンダヨオオ!
コノくそじじいガアアアアアアアア!! 今スグソノくそ魂魄諸共ニ
消滅シタク無カッタラ三歩下ガッテ弐ノ足踏ンデロヤアアアアごるあああああああ
アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア?!?!》
―kにな、ん…だと…ぉおお~~~!?>
お願い女神様ァ…! 上手くいったら何かご褒美を寄越しやがれください!!
【サモン…!! ……この世界最強天元突破の守護神ないし守護天使ィィイ!!】
《今世界ヲ守護シ多忙瀕スル管理神ノ女神ガあるてせれへかてぃあニ代ワッテ…
故アッテ正体ヲ明カセヌガ赦シ給へ! 敬姉神ノ世界ヲ想フソノ慈愛正シク
大イナル女神一切ノ疑イナシ!! 義ニ因ッテ我ガ眷属神…使イヲ…!
敬姉神ガ血肉分ケ産ミシ女神子…聖女りゆーりあえるえりすまりあノ守護シ…
守護熾天使トシテ預ケ諸姉ガ乞イ願イシ救世ガ果タサレシソノ時マデ神子ノ
傍仕エ使役ニ利用イタダキ此方コソ乞イ願イ…ええい面倒…御無礼!!!!
…多元世界天主MθθRNUS=MRKBAREL・MθRNBLKSS…汝ノ
今ノ主タル聖女ノ守護天使名ハめかとろん!! 我ガ命ニ応ジ、
使ノ役目ヲ果タセええええええええええええッ!!》
「『承知いたしました、我が主よ』」
「「「「「ッ!?」」」」」
ぬわぁんもう疲れたぁん…!! kそがァ! スキルの精神汚染が酷い~~~!
途中から何を言ってるのか俺でもわかんねぇなコレ…!? マトモに聞き取れたの
多分聞こえてても答えられねえ神クラスだけっぽいけど…!!
何かもうノーモーションで召喚成功してたんだが?! なにこれ?!
「『今も尚ご尊顔をお隠しになられる我が主よ、時空停滞を用いましたので…
せめて私へ御身の声を空気振動にてお掛け頂けないでしょうか?』」
やべぇ…呼んだまではいいんだけど…この召喚対象さん…本名が
クッソ長いし真名出しも悪いと思ったから咄嗟に仮名で契約させたけど…?
ってか…「分かるんだけど分からん言葉」…エノク語? 天使語? うるせ~~!
知らね~~! でもまあいいや、デフォルトで入ってた言語チート万々歳!!
いつでもセキュリティ最高プライバシー最強の秘密の会話にお一つ如何!?
「『悪い。ふざけてる場合じゃなかった。時間停滞だから時間流れるのな』」
「『お戯れを…では、先ずお時間を頂きありがとうございます我が主よ』」
「『ごめん、こっち見ないで天を仰いで。今から声そっちから飛ばすんで』」
「『失礼いたしました、我が主よ』」
「『また悪いんだけど、時間停滞は止めて。んで第三の目でバカやりそうな
連中に睨みを利かせといて』」
「『御心のままに』」
―「少年覇王」―
せ、世界が動いた…!? 何だあのタマネギ…?! いや、違う!?
あの謎タマネギアーマーナイトも天を仰ぎ…?! なん…?!
「天、使…?!」
いや違う…! か、隠す気も無いと言うのか?! 「隠すまでも無い」と!?
ボクが…このボk…余が…余を前にして尚その傲慢…!! 万死にあt…
「…駄目だ」
今、動くのは最悪手…?! 天から声が…!? あの偽天使も第三の目では…
この余を凝視して…! たとえ異界神とてその視線は実に不愉快だッ!!
せめて…せめてボクだけを好敵手と定めろ!! お前とて…お前とていつか…!
『DH、WGSY。SNYUNSSMTYRSINDSN』
『KMWNI。KNJNTKDK悪意ARSBTNMNHZNB破壊STII』
何を…?! 何を言っている…!?! 余の…この…ボクが…!?
知らない高位魔導言語で何を暢気に語り合っているのだ…?! あ、悪意と
…破壊…? クソ…! せめて前後の文脈さえ理解できれば…!
たった二つの単語では2552通りの判断候補までしか絞れぬ…!
くっ…! まだ、この体の脳髄では成熟度合いが今一つか…!!
「ATHMKST」
「畏まりました。我が主よ」
…!?
「ガッ!?」
「「「「「おわぁあああああああッ?!」」」」」
何だこの波動はッ!? 駄目だ僕でも防ぎきれなッ…?!
>
ふう…メカトロンさんマジでドがつく有能…"後は任せた"で、とりま邪魔そうな
周りのゲスどもを少年覇王もろともに吹っ飛ばしてくれたぜ。
「ほぁ…?」
「ご無事で何よりです。リユーリアエルエリスマリア様」
「にゃ?! ほぇ?! あ、あなた何なのですかっ?!」
「天啓でお聞きになったと思いますが、あなた様の母上たる管理神…
この世界の主神的存在たる女神アルテセレヘカティア様の御慈悲に感銘を受けた
異界の超常次元存在たる我が主が貴方様を来るべき時までお守りするように
遣わされました天使メカトロンに御座います」
「………はにゃ?」
「………『我が主よ、聞こえますか?』」
うをっ!? いきなり心に話しかけ……ごめん。何か問題あったか?
「『どうした。メカトロン』」
周りでも空から聞こえる(ように仕向けた)俺の声にガヤがうるせえけど…
とりあえずクソガキも天を静かに睨むように見つめてるし動きも止まってるので
このまま話し続けて引きつけよ。
「『誠に申し訳ありません…畏怖すべき権能渦巻く我が主よ…
情操教育は実に十三万年ぶりで…こればかりは間違っても責任はとれません…
…私は如何様にこの場を諌めれば良いのでしょうか』」
「『………』」
「『我が主よ?』」
「『…周りを警戒しつつ我が声に耳を傾けよ』」
俺も一番メンドくさそうなクソガキを見張ってるから他の有象無象が
変な動きしたらブッ飛ばせ。でも殺すな。面倒だしリユーリアエルエリスマリアの
情操教育に宜しくないから。あとお前は他の皆にも分かる大陸交易語…
有象無象が喋ってる言葉で答えて牽制してやれ。
「…失礼いたしました、我が主の御心のままに。では、私は今後どのような形で
彼女を心理的に守護すれば良いのかお教えください」
…そーね…。とりあえず物理的な脅威は今のところ形を潜めてるから、
後はリユーリアエルエリスマリアちゃんの情操教育でマトモに出来そうなのが
そこの…そう、インムーン国王ヤズイウ陛下と…うん。その人は
リユーリアエルエリスマリアちゃんに近づけさせてあげて。
「承知いたしました、我が主よ………もし、そちらの御老公…貴殿が
この国の盟主ヤズイウ王か?」
「ふぁっ!? な、何故ワシの名を―」
「我が主は全てを見通している。今この場でもっとも彼女…私の守護対象である
聖女神子リユーリアエルエリスマリア様の精神的支柱であると判断した。
貴殿はこちらへ進み出でて私と我が主が許可したモノ以外は何物も
一切合財近づけさせないよう目を光らせてくれ」
「……! 承知したッ!! 聖女様! 今そちらへ参りますぞー参る参る!!」
ノリ良いっすね国王陛下…まぁ何か生きがいになったっぽい聖幼女ちゃんを
めっちゃ強いメカトロンが「守って良いよ」って言ったんだから当然か。
「みゃ…?」
「ご無礼仕ります聖女リユーリアエルエリスマリア様…このような状況ですが、
このワシ…インムーン国王ヤズイウ・T=インムーン114世が来たからには
ご安心くださいませ…邪心あるバカどもはそこな天使…」
「今の私の名はメカトロンです」
「そう! アルテセレヘカティア様の御心に答えた別なる神性の御使いたる
天使メカトロン様と共に認められたこのワシが! 残る一生を全て掛けて
貴方様を来るべき時まで穢れなき救世主として! お仕えいたしますので!
ご安心くださいませ!!」
ホントノリ良いっすね国王陛下…まぁいいや陛下の下心は孫バカ爺のソレだから
全然安心して任せられ…でも情操教育って考えるとちょっと不向きかな…
チート鑑定で見たら国王陛下の全盛期って血みどろな事多過ぎィ!?
地球のヴラドさんみたいなヤベー私刑してんじゃん?! …自らの正義の為なら
悪の手法も容赦なくやってるのね…いや、でも今はそれくらいの人が必要か…
聖幼女ちゃんを綺麗なままで女神様の所に帰せるに越したことないし…。
「えと…あの…ヤズイウおじい様…?」
「ふぁっ!?」
陛下ェ…。
「『メカトロン、聖幼女…いや聖女リユーリアエルエリスマリアに周りの人物を
よく見定めろって言ってやれ。ゴミどもは俺が見張っておくから』」
「畏まりました。我が主よ…リユーリアエルエリスマリア様…少々お気汚しと
なってしまいますが、周りの者たちの内面を探れる限り探ってください」
「ほぇ…?」
メカトロンに言われるがままに聖幼女ちゃんは(俺含めた)ゴミどもを含めて
じーっ…と眺めt…いけねぇ精神系防御メガ盛りで防御術式展開…俺は置物…
俺は置物…人畜無害なジークマイヤーもどきのタマネギアーマーナイトとです…
「うっ…!!」
メカトロン! リユーリアエルエリスマリアに何か心が落ち着く術式を!
「畏まりました。我が主よ」
メカトロンが指を弾けば聖幼女ちゃんに見てるだけで浄化されそうなレベルの
神聖にも程がありそうな聖なる気配漂う魔法をやりましたねぇ!
「ほぁ…?! あ、ありがとうです…」
「お気になさらず。貴方様を守護するのが私の仕事ですので」
「………はっ!?」
我に返った国王陛下も佇まいを直したな…よし、こういうの勢いも大事だから
ここで一気に畳み掛けてゴミ共を公的にも私的にも近づけない大義名聞を
デデドン! と、ブチ込んでやるぜ!!
「『メカトロンよ…他にも聖女の傍に寄る事を許せる者は在るか?』」
「少々お待ちくださいませ……………"WRRNADNSISARMNHSBTHRFS"」
―ズゥン…!!
「「「くっは…!?」」」
…うわ…この場に居た大多数が無理やり平伏してんだが…。
おっ、あん少年覇王も膝立ちしてんじゃーんザマァwww
「お目汚し失礼いたしました我が主よ。この場には聖女様の傍に寄る資格ある者は
ごく少数であることが判明いたしましたが…如何様になさいますか?
この場で粛清いたしますか?」
「『マジでやめろ。人間の国際関係は度し難いレベルで愚か故に、
粛清などしては余計な難癖ばかりを招くだけだ』」
「誠に申し訳ありません…我が主よ」
お前は平伏すんn…いや、いいか。ちゃんと天を見ろよ。間違っても
本体の俺を見るなよ。話がややこしくなるだけだからな? フリじゃねえぞ?
「おおむね理解いたしました。我が主よ」
顔…は仮面だからハッキリわかんねえけど…そこで疑問系の顔やめてマジで。
「粛清…だと…?」
あ、あのクソガキまだ元気あるな。おいメカトロンあいつには重圧を三倍…
いや四倍でぶっかけろ。
「畏まりました」「んぐァッ!?」
メカトロンさんマジ有能でマジ圧倒的感謝…! 俺には勿体無いな…。
「その様なことは御座いません、我が主よ。貴方様の深謀遠慮には
このメカトロン、ただ只管に脱帽するばかりです」
やめてマジでハードル上げないでぇ!? 俺こっちの世界に転生してきてから
まだ18年しか経ってないからこの辺の勝手は前世の経験で推測してるだけなの!
「流石です我が主よ」
「『マジやめてよ。マジで褒めるな俺の心が死ぬ』」
「お気遣いも流石です」
「『…はにゃし戻すけど…お前から見て傍仕えに良さそうなの何人かいる?』」
「…そうですね…であれば…ふむ…」
メカトロンが何人かを指名すると…最後に未だ腑に落ちない顔して突っ立ってた
これまた偉そうな感じのお兄さんが…
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
《統括枢機卿/現実主義者?》レイオ7世 男 28歳 聖人(真正教皇候補)
<…天使メカトロン…? アルテセレヘカティア様の天使の序列にそのような…
いや、そういえば先ほど漏れ聞こえた別の高次元存在の天啓の主の…そうか…
なるほど…この世界も捨てたものじゃないということだな…>
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
これまた凄いヤツいたわ…! チートならではのご都合主義圧倒的感謝!!
クソハードモードかと思ったらイージーモードあーイケソ…。
「…お、オムニアカーディナル…?! 何故…貴様がここに居るのだ…?!」
教皇失格め…あ、メカトロンちょっと倍増し重圧タンマ。
「何故…? ほう…? アレクサンデル66世教皇聖下? その状況でまだ
御身の現状をご理解しておらぬのですな? いや、実に興味深い」
あっ?! と、思ったときには平伏しなかった善良な人々の冷ややかな視線で
イヤッフゥ針の筵ざまぁwww次回の教皇選出会楽しみですねぇ!
「次のコンクラーヴェで無傷の再選が出来るとは思わぬよう忠言いたします。
無論、仮に再選が出来たとしても…貴方の教皇治世は長くありませんがね」
「う、ぐ…が…!」
メカトロンないすぅ!! ここで問答無用のプレッシャーは
ファインプレーってレベルじゃねえぞw
「語るに落ちるとはこの事ですね。我が主よ」
ニコニコ笑顔でさりげなく良い仕事してるクセにお前ってセンスパネェな。
「有難う御座います。我が主よ」
というワケでメカトロンさんはヤズイウ陛下と一緒に選出した傍仕え候補達を
さらに大公開…圧迫やりすぎ…面接で絞り込み始める。
「はぇー…何だか凄いことになってるねぇスカールくん?」
「ナキ…」
何でお前無事…あ、そうか…コイツの邪心って基本は
俺メインじゃないですかアアモウヤダアアアアア!!!
「ほぇ…? …ふぁ…! すごい…!」
あれ、なんか聖幼女ちゃんがこっち見て………ナキをガン見してる?
「あっ! 聖女様!?」
トテトテとしつつも油断なく小走りでナキに歩み寄って手を取っ…?
「え? えっと…聖女さま?」
「すごいです! すごいです! お姉さま凄いです!!」
「おっふぅ?! お、おね…おねねねね…!?」
リユーリアエルエリスマリアちゃん凄いな…あのナキが腰砕けそうなんだけど。
………これもし俺が何かの間違いでナキをお姉様呼ばわりしたらヤバそうだな…
「とても一途な愛の波動を持ったお姉さま。問います…貴女が私を導く
良き指導者ですか?」
ドッギャアアアアアアアン!!(スカールの脳内SE)
「「「……………!」」」
圧迫やり過ぎ面接の関係者と(俺含めた)傍観者一同が静止した。
「えぇ…?」
「おい男姉ちゃん。その反応はマジで死ぬぞ」
「えええええええええええええええええ!?」
うん。反応が魔逆だね。
「あのう…お姉さまの隣の…えっと…タマネギ騎士さん…?」
「あ」
いけね。ジークマイヤー兜したまんまだった。脱g…駄目だ此処で顔を
見られては色々とまずいですよ! とりま平伏すとこ。
「…ご無礼をお許しください聖女神子リユーリアエルエリスマリア様…」
「あっ! あの…! 聖女さままっ?!」
「男姉ちゃん頭が高い平伏あくしろよ」
言いつつナキも平伏させまする。
「ほぇ…? あのう…所でお姉様のお隣の貴方様はどちら様ですか?」
さて、ここも正念場だな。
「…俺は隣のアヌンナキ=ヘーラー・レルゲーベーテー…この国の大公次子の
縁者ですが、たかが末席貴族の子なのでこの場での名乗りはご勘弁くださいませ」
「え、ちょスカーr」
「お姉ちゃん…お願いだ…俺の立場を慮って…!」
「え…………うん、わかった…!」
キリッと対外用の男前スマイルで佇まいを直したナキ。
何でコイツこんな…色々と…あーもう!!
「改めましてお初にお目にかかります聖女リユーリアエルエリスマリア様…
私がアヌンナキ=ヘーラー・レルゲーベーテーです。聖女様におきましては…」
スラスラと淀みなく出るわ出るわ何も知らない女子なら間違いなく勘違いMAXは
確実にイケる男前モード…。
「聖女様のお気持ちは大変恐悦至極に御座いますが…悲しいかな…私は
持って生まれた体の性は男なので聖女様の傍仕え…まして教導者としての資格h」
「それが何だというのです?! お姉様は間違いなく愛に生きる乙女!!
わかりました! では救世主の役目を果たした暁にはお母様に直談判して!!!
お姉様の心に相応しい体にしてもらえるようお願いします! だからお願いです!
私のマスターになってくださいです!!」
ナキの表情が凍りついた。しかしその顔は喜色満面なのが隠せてないね。
そらそうか。性同一性障害で苦しむ人間を手っ取り早く救済してやるのを
神の奇跡でご褒美ブチ込んで差し上げると言われたらな…
「ほ、ホントに…?! 本当ですか聖女さま!!?」
「二言はありませんです! 私を助けて世界を救うのです! 当然のお礼です!
本来は人間さん達を創造した神の責任ですが! そこはお母様の権能で
ちょちょいのちょいなのです! ですからお願いです!」
聖幼女ちゃんが深々と頭を下げた。そしてナキは……………お、男泣き!!?
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおあああああああああああああああ!!
いいいいいいいいいやったああああああああああああああああああああああ!!
やったるよお! 私やったるよお! 聖女さまを立派な救世主にいいいいいい!!
世界最高の救世聖女にいいいいいいいいいいお育ていたしますううううう!!!」
ナキの圧倒的感謝の意味での土下座平伏ッ…!
「それじゃスカールくん! 救うもん救っちゃお!!」
「バッカお前俺の名前を言うなゴルァ?!」
メカトロン?!?!
「ご安心ください我が主よ。かの鎧騎士の身の安全は委細問題ありません」
「『今日一番の仕事大儀である!!!!!』」
ところで何したの? あ、俺とお前の内緒話でお願いするわ。
「『主のご本尊を示す単語は全て認識阻害を掛けております』」
「『ナイスゥ!!! 何かお礼したいけどお前に見合うお礼が思いつかね!!』」
「『主がお喜びになる事が何よりの報酬でございます』」
「『駄目それ。形で示すくらいさせて』」
まぁ何も思いつかないんだけど。
「『では…主の前世の名をお聞きしても宜しいですか?』」
「『…え? そんなのでいいの? 木村康則ってんだけど』」
「『ご尊名承りました。有難う御座います、我が主よ』」
この名前嫌いなんだよね…昔キモヤスって仇名付けられててさ…
「『お時間を頂ければ即座に時空転翔で愚か者共を滅しますが』」
それはいい。一応前世での未練は断ってるつもりだ。なぜならこの世界で
その無念を晴らすと決めてるんでね…はぁー…早く悠々自適生活してぇマジで…
「『出すぎた真似をお許しください我が主よ』」
「『だからもういいってマジで…あとお前はもう皆の言葉に戻して牽制続けて』」
「了解いたしました。我が主よ」
ナキの方は…うーん聖幼女ちゃんが感極まって抱きついてるから凄い嫌そ…
どうにか堪えた引きつり笑顔でその場を凌ごうと頑張ってんね。
「さて…どうするかね…」
とりまゴミどもをチェック…うん…聞き耳立ててる余裕ありそうなヤツは
居なさそ…うーん…念のためメカトロン重圧割り増しよろ。
―ズズゥン…!
「んゴパッ!?」
「「「「「うぐぁっ!?」」」」」
…うわ…あんなんクソガキのメンツが丸つぶれってレベルじゃねえぞ…
メカトロンさんマジ万能超絶有能最高お前が一杯いたら呼びたい気分だ。
「大変誠に申し訳ありません我が主よ…不肖このメカトロン…この世界に連なる
77の異世界を私に代わって管理守護しきれる立場に匹敵する権能を持つ
高位存在の臣下の神々の席次は未だに…76であれば居るには居ますが…?
『ですが…その者が管理している世界の一つに主の居られた世界に匹敵…
あるいはそれ以上に厄介な世界を管理していますので…』」
「「「ッ!?」」」
うーん、この…どこから突っ込んで良いのかマッタクわかんないんだね。
《こ、これは一体…何が…?》
「ファッ?!」
「あっ、お母様ッ!! やっと出てきましたです!!」
「「「「「?!?!?!」」」」」
ふと聞き覚えのある天啓ヴォイスがしたので見たら……女神様の幻影ががが!?
…おーおー誰も彼もが平伏平伏ゥ! 俺も俺も! ここ大事! モブれ俺!!
にしても女神様…めっちゃ聖幼女ちゃんをちょっと大人にした感じの姿なのね。
圧倒的巨峰がママ感を全力全開絶好調で結婚してくレベルの…
モブれやこのごん俺ェ!
《リユーリアエルエリスマリア…? あなた…一体何をしたのですか?》
「えぇー…!! ひどいですお母様!!」
なんと微笑ましい母娘喧嘩…どれ…ガン見してるが
普通に良い人そうな他モブの視界ジャ☆クでよく見とこうかな…
媚びチャンスあったら思いっきり利用しt…命惜しくばモブれやモブれ!!
《そうなのですね………あの…もし…?》
「…? 私ですか…?」
うをぅいメカトロンんん~ッ!? あ、お前仮面してんじゃんお前は外せ一応!
俺は兜を装備中で棚上げクソ野郎だけども!! ほら俺一応平伏中だから?!!
「……はい。私で宜しければ何か…?」
《あッ!? りがとうございます! 何処の世界の大神とお見受け致しし…?》
「…失礼いたします…今の私の名はメカトロン…故あって我が主より真名を…」
いいよ女神様との秘密の言葉あればそれでぶっちゃけて!! お前が要!!
つうか今更だけど…何だその究極無双オトメ絵イケメンフェイス?!
ほんの一部で良い! オラにそのイケメンチートを分けてくれぇ!!!
「『わ、我が主よ…?』…コホン…この世界の管理神アルテセレヘカティア殿…
何か神の言語はありますか? 何分我が主との契約がありますゆえ…
この世界の人間に理解される言葉では正式な挨拶も適いませぬ故…」
《そ?! そうなのですね?! おかのしたぁッ!!》
「………お母様ぁ…?」
わかる(天下無双)超わかる(銀河無双)わかりみるる(??無双)
俺も前世でクソ親父が再婚相手にそんな感じで56したいレベルだったから。
《そ、そ、それでは…【この言葉は大丈夫でしょうか? 旧い管理神言語の
一つなのですが…?】》
「少々お待ちを…認証完了…【委細問題ありませぬ。とても美しい言葉ですね】」
《【ホァッツ?!】》
「………おかあさまァア?」
女神様ェ……………でもふくれっ面の聖幼女ちゃん可愛いよ聖幼女ちゃん。
《【取り乱して申し訳ありません…それで…あの…】》
「【多にご無礼を仕る…改めまして管理神アルテセレヘカティア殿…
私の名は多元世界天主メタトロニオス=メルカバーリエル・ミトロナブラクサス…
一部の単語に我が主が嘗て存在した異世界の神語に似た発音を含みますが、
まったく別のモノですので悪しからず畏み畏み申す…】」
《と、とんでもございません!! あっ…【失礼しまちゅた!
こちらこそご無礼ををを…! わわたたしは七天世界レーゲンボーゲンヴェルトの
管理神をしてますアルテセレヘカティアとももも…!】》
「…オカアサマァ…?」
「聖女さま…あの…地味に苦し…」
「あ…! ご、ごめんなさいですお姉様…!」
ナキも有能だな…しかしナキは全く動じないのね。まあ男ならそんなもn…
違ウネ。なきハ俺一筋ダモンネ…アアモウヤダアアア…!!
あいつの勘おかしいよマジで…! 完全に病ンなるモードで睨むんだもの…!
「【アルテセレヘカティア殿…あまりお時間を取らせても致し方ありませんので…
挨拶もタケナワとは言えませぬが…そろそろ…?】」
《【そう…です…ね…そうですよ…ええ…こんな状況ですから…】》
深呼吸して最初の天啓の時くらいの意気込みモードに戻った女神様。
やっぱり出来る女性はカッコいい。さっきの様を見る前ならね。
《それでは…自らも異界神にして外なる義勇神の御遣いたる天使メカトロン殿…》
「有難う御座います。七天世界レーゲンボーゲンヴェルトの管理神たる
アルテセレヘカティア殿…」
《…あの…よろしければカティアないしアルティと…》
「…え?」
良きに計らえだよ。
「では…御厚意に甘んじさせて頂きますカティアどn」
《アルティがいいです! あっ…》
女神様ェ…現抜かすのニャメロン…!
「…ヤズイウ王…少しの間周りを抑えてほしい…【アルティ殿。ここからは
高速言語でお話致しましょう。流石に時間停止では我が主を徒に煩わせますので…
ソレデハイキマス―――】」
《ふぁっ?!【あ…ソウデスネシツレイタシマシタ―――】》
「ぬを?! はッ! 委細お任せあれ!! 誰ぞある!!!」
「「「こちらに」」」
「まずは神罰にて動きを止めておる不届き者共を例外なく拘束せよ!!
統括枢機卿! 力を貸してくれい!!」
「「「はっ!」」」
「微力ながら尽力いたしましょう。動ける枢機卿団の皆様! 戦場ですぞ!!」
「「「委細承知!!」」」
あ…コレはアレだ…色々と"ちょっと長くなる"ヤツだ。そっちは聞き流しとこ。
さっきからナキの方も聖幼女ちゃんと何か歓談してるし…?
「"やおい"…? お姉様? "やおい"とは何ですか?」
「やおい…それは真実の愛の一つが―
俺は神速を瞬間発動してナキの頭をアイアンクローしにかかった。
「え、ちょ、ス、スカールくん…? どうしてお姉ちゃんの頭をアイアンクローし
ひぎいいいいいいんんんんんにゃああああああああああ!?」
「ごめん、お姉ちゃん許してぇ…!!」
いたいけにも程がある聖幼女ちゃんに邪にも程があるってレベルじゃねえ
フジョーシヤオイーアの教えを吹き込もうとしやがったので如何に基本は
良い奴であろうとこのスカール容赦できぬ。その腐ったミカンには死なない程度に
SP攻撃性魔力を直でブチ込んでやるぜ。唯でさえヤベー奴らだらけだってのに
ちょっと接点が得られたらすぐコレだよ。俺に近づく女子は幼女でさえ
普段は神敵…アーチエネミー認定とかさぁ…? 大体にしてn
「んんんんんんんんほぉぉぉなにこりぇえええええええええええええええ!?
しゅっごおおおおおおおおおおおおい?!」
あ、やべ…手元が狂ったか? …何で今にも絶頂しそうな顔になって…?!
「…落ちろッ!」
「びゃああああああしゅごいいいいいふんもっふ?!」
明らかに艶声だったので首トンせざるを得なかった。何なのこの人…?
「お姉様ぁ!? な、何をするのですかッ?! いくらお姉様の縁者とはいえ…!
これは余りにもひどいです!!」
「…勘弁してくだしぁ聖女様ッ!! この件は良識ある女性として…
いや普通に良識人として許されざる行為だったので仕方なくこうしたのですッ!」
「意味が分かりませんです!! お姉様は私に何か大切なことを教えt」
「大切じゃないです! 生きていく上では知らなくても問題ありません!!
むしろ知ったら心が穢れて聖女様のお母上たる女神様に合わせる顔がががが!?」
聖幼女ちゃんが掴み掛かってきた…なにこれ。どうしてこうなった。
おのれファッキンEX貴様かぁ?! 絶対に許さんぞ!!! いつか…いつか必ず
メカトロンみたいな連中で固めて今はやれる気しないがチートフルパワーで
時空を超えて消し去ってしまぅれぇるあならー?!?!?!
「あのののの聖女様ままままままちょちょちょまままま―
しょうがねえな…【多元分神】で分身呼ぶか…
はぁーメンドくせぇーマジで…。
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んで状況が沈静化してきた時の束の間…
「『我が主よ…私は後々の件は如何様にすれば良いのですか? 恥ずかしながら…
私は先のアルティ殿との話でも言いましたが、後継者を立てないうちに
安易に身を固めるような真似は…』」
「『いやお前ンなモン知らねえし今それどころじゃねえから!!!!!
それマジにガチ自分でガチ何とかしろメカトロン!!!』」
全部終わった後の女神様との結婚を前提にしたお付き合いまで見切れるか!
童貞を舐めるな!!
<ご清読有難う御座いました。続きも書けたらやりますねぇ!!>