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パンドラの箱 ~萌えるゴミ発電所と異世界怪奇録~  作者: くぁwせdrftgyゆとりlp
第三章 Crazy Gonna Crazy
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第十一話 禁忌の地で(前編)

千影くんと玲南ちゃんが謎の異空間で恐ろしいバケモノ達と遭遇した、その裏で起きていた話です。


2021年5/10 日時が間違っていた所や(失踪が半年前になっていた箇所を、3か月前に修正)

わかりにくい表現を修正しました。

■その11



 空が夕焼けのように赤く染まる中、軽乗用車が走る。

「全く、あの子にも困ったものだわ」

「あんな事くらいで訴えるとか、馬鹿じゃねーの?」

「今まで育ててやった恩を忘れやがって……これまで育てるのにかかった金請求してやりたいぐらいだ」

「本当よ。あのゴク潰しが家を出て3ヶ月くらい音沙汰なくなったと思ったら、損害賠償請求訴訟って何よ! あの子が集めてた下らないオモチャやゲーム売ったくらいで! 家族である私達からお金巻き上げるつもりかしら!? 社会の厳しさ教えてあげなくちゃね!」

 搭乗者達の怒りを代弁するように、軽自動車は車輪がぶっ壊れそうな勢いで駆ける。

 老夫婦とその長男の怒りは、3ヶ月前に消息を絶った次男に向けられたものだ。生活が苦しいのにいい歳してアニメやゲーム、漫画に熱中する次男を子供じみた趣味から卒業させて真人間にしようと彼の自室にあったモノを中古ショップに売り飛ばすなどして一つ残らず処分し、これでやっと家がすっきりと家族3人大満足したところに、帰宅して自分の部屋が空っぽなのを見た次男がみっともなく発狂して家を飛び出した。

 その後次男の私物を売って得たお金で豪遊した3人だが、失踪した次男が入れていた生活費がなくなり家計はみるみる火の車状態。貯金ももうすぐなくなると困り果てていた所にで次男もようやく連絡して来て、あの子もようやく心を入れ替えて真人間になったのかと、滞納した3か月分含めた生活費を利子つけて家計に入れるなら特別に許そうかと思ったが……

 やって来たのは次男の代理人を名乗る弁護士だった。何でも、3ヶ月前に断捨離した品物の損害賠償請求をするつもりらしい。

 一家は今、怒りのまま未舗装の駐車場へ突撃した。



【富嶽第一想発職員用第三駐車場】

【関係者以外の駐車は固くお断りします。来客者様はこちらの来客者用駐車場を使って下さい→(案内地図)】

「オレ達はアイツの家族なんだから部外者じゃないだろ」

 後部座席に座っていた、意地悪そうな人相をした小太りな男が、第三者からも身勝手と判断されそうな理屈を口にしつつ車から降りた。お世辞にも綺麗とは言えない駐車場を選んだのは、ここが次男の職場に一番近く、人目につかず職場まで行けるからだ。

「それにしても、ずいぶん早い夕焼けねえ……」

 助手席に座る中年女性が空を見上げて言う。時刻は午後2時。夕焼けを思わせる赤い空に浮かぶ不気味な黒い雲がゆっくり風に流されていく。遠くの山々は暗く、駐車場近隣の植込みや木々は枯れはて、周囲には全く人気がない。彼ら3人が車で通った道路は発電所や製紙工場に面した大きなものでトラックや車の出入りも激しそうなのに、さっきから車が一台も通らない。

「いや、ちょっと待て……何か変じゃね?」

 小太り男の不安げな声は、彼らを包む圧倒的静けさの前にかき消された。

 異常な世界だった。彼ら3人以外、他には誰もいない。前後左右、見渡す限りどこにも人の気配がない。鳥といった動物もいない。季節は夏なのに発情したセミ達のでたらめな大合奏も聞こえない。

「なーにビビってるんだお前達。ここに来るのは2回目だろ。別に知らない場所じゃないんだ」

 車を運転していた父親の言う通り、彼らは5日前の金曜日にもここに来ている。前方に聳え立つ建物の正体を知っている。

 損害賠償請求という愚行を犯した次男はどこにいるのか。どうも、他の親族には富嶽第一想発に就職したと報告していたらしい。話してくれた親族には『あなた達、何で勤務先知らなかったの?』と不思議がられたが、自室を漫画やアニメ、ゲームだらけにして悦に浸る異常者の勤務先をどうして気にする必要があるのか。

 重要なのは、次男はかなり給料が良いところで働いているという情報だ。次男にとって大事な家族が困窮しているのに、家に納める生活費を3か月も滞納しただけでなく訴訟をちらつかせて損害賠償を請求した事は許せない。母がお腹を痛めて産んだ子が愚かな思い上がりを抱いている。それを説教すべく職場まで面会に行ったら、入口で守衛と押し問答になって追い返され、会う事は出来なかった。

 それから5日が過ぎ、今度こそ次男を改悛させるべく万全の準備をしてやって来たら、まさか職場が廃墟になっているなんて。夢でも見ているのか?


「もしかしたら、ろくでなしの(ひなた)に神様がバチを下したんじゃねえの?」

「そ、そーよね聡明(さとあき)! 当然よね! この3ヶ月間、私達家族の生活を支援する義務を怠ったのだから!」

「しかし、出来損ないがまさかこんないいところに勤めていたとは……」

「あんな異常者をバイトとして使ってる辺りレベルが知れてるってものだぜ、親父」

「本当よ。もっと生活費徴収できるんじゃないかしら」

 でも、3人とも今は次男に下された天罰を素直に喜べない。強気な口調だった父親も、異常な静けさに呑まれ始めている。

 天罰を与えるなら次男だけにして、自分達家族を巻き込まないでほしい。本心ではそう思っていた。


『目的地周辺です、ナビを終了します』

『目的地周辺です、ナビを終了します』

『目的地周辺です、ナビを終了します』

『目白勺地周辺です、ナスビを糸冬了しゑす』

『自的地週辺です、ナビを終了レます』

「やかましいわぽんこつっ!」

 車内で狂ったように連呼するカーナビに父親が怒鳴る。ビビらせるようなタイミングで誤動作しやがって。ぽんこつカーナビ売りつけたディーラーには、後でクレームつけて無償交換させてやる。

 そう思った矢先に、カーナビとは別物の合成音声が後方から聞こえた。

『本日の動画は……視聴者の皆さんから寄せられた体験談です……』

「おい聡明、こんな変な状況でゆーちゅーぶ(そんなもの)見てるんじゃねえよ!」

「い、いや見てねえし! いきなり再生始まったんだよ! さっきまで圏外だったのに!」

 どこか外部と電波が繋がって連絡も取れた安堵感よりも、唐突に動画再生が始まった不気味さが上だった。

「っとに、こんな不愉快な思いをしたのも全部(あの子)のせいよ! 慰謝料に上乗せして、あの子に支払ってもらいましょ」

「本当そうだよな、オフクロ! 全部アイツが悪いんだ! アイツの部屋に逢った私物全部売り払ったくらいで損害賠償請求とかふざけた事しやがって!」



『……オレの部屋にあったゲームやBD、漫画や小説。映像編集に使っていたPC、その他換金できそうな品物は全て売り払われた。お金にならないものは全て燃えるゴミや萌えるゴミに出された。中には現在プレミアがついてるものもあり、売却したお金は生活費として全額没収された。これにはオレも長年の不満が爆発し、ついに家を飛び出した……(中略)……実は収集品の目録は別に保管してあって、収集品を全て捨てられ空っぽになった部屋の写真と一緒に会社の弁護士に相談したところ『損害賠償と慰謝料請求できますよ!』と太鼓判を押され、オレは実家のバカ親とクズ兄貴を訴える事にした……』


 それまで次男への怒りを爆発させていた一家3人だが、いつしか自分達が奇妙な場所にいる事や次男の職場に突撃する目的も忘れ、身に覚えがある内容の動画に見入っていた。



『弁護士が損害賠償請求に行って1週間もしないうちにバカ両親とクズ兄貴がオレの職場に押し掛けてきた。守衛所で押し問答となり追い返され、すぐ弁護士に警告をしてもらった。しかしあの3人は5日後に再び職場にやって来た。『損害賠償請求や慰謝料請求をやめないと酷い目に合わせるぞ、このゴク潰しが!』とか、『そもそもお前の職場は萌えるゴミを処理する所なんだろ、じゃあ萌えるゴミに出されたお前のコレクション品を始末したのは職員であるお前だ! 言いがかりつけるなら逆に訴えてやるぞ!』と釘付きバットを手に暴れ回ったらしく、すぐさま警察が呼ばれた』


 ギクリとする3人。確かに、聡明が車から出して足元に置いた大きなバッグには凶器になる釘付きバットが入っているけれど……

 まるで自分達をネタにしたような、この動画は何なんだ? 確かに今日は最初の襲撃から5日が経過している。釘付きバット持って陽の職場に突撃して、守衛を突破したら発電所をくまなく探して陽を懲らしめるつもりだったけれど、こんな計画は当然誰にも話していない。まるで自分達の未来を予知するような内容だ。

 もしそうだとしたら、これから3人は警察のお世話になるのか?


『しかし、3人は警察に捕まる事はなかった』

 動画で語られる内容にホッとする3人。

 だがしかし! 動画はこれで終わりではない。長男・聡明のケータイが再生する動画の結末は、一家3人の安堵を吹き飛ばすような内容だった。


『警察が来る直前でバカ両親もクズ兄貴も大慌てで逃げだして行方不明になった。警察が捜索した結果、バカども3人は事故なのか事件なのか自殺なのかもわからない変死体となって発見された……』


To Be Continued>

できるだけ早く続きを上げますのでお待ちください。

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