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パンドラの箱 ~萌えるゴミ発電所と異世界怪奇録~  作者: くぁwせdrftgyゆとりlp
第二章 Boys and Girls
77/177

第三十七話 仕置人と鬼嫁(その7)

2026/2/17 修正

■その37



「不審者だと? それはお前の方だ。誰に断ってオレの家に入ったんだ、てめえ!」

 殴られた顔面と、ディスプレイへめり込んだ後頭部の痛みにサンドイッチされ、凪橋は招かれざる来訪者を睨み返す。

 そう、ここは凪橋の家。居住者の許可なく立ち入る事は不法侵入である。

「ここが? お前の家?」

 直後、周囲の闇を消し去るような強い光が凪橋を照らした。目は眩んだ状態で、近づく気配から遠ざかるように後ずさる。光に目が慣れ、次第に周囲が見えてくる。

 どこだ、ここは?

 そこは全く見知らぬ場所だった。彼の家には机と椅子が並べられた会議室みたいな部屋はない。

「こいつだよ。富嶽第一想発(うちの職場)に隠しカメラ仕掛けたの」

 困惑する凪橋に別の声がかけられる。見ると、顔色が悪い男の後ろに、これまたえらく背の高い優男が立っていた。男達の職場に隠しカメラ仕込んだと言ってるが、それは盗撮じゃないか。何を言ってるんだ、この男は!

「そうかそうか。するとうちの職員を脅迫したのもこいつなわけだな。その上初対面の零比都に人目憚らず迫り、盗撮までするとか……」

「はぁ? 変な事言うんじゃねえよ! オレが脅迫? 盗撮? おかしな言いがかりはやめぎぼご」

 疫病神みたいな雰囲気の男に再び鉄拳を喰らわされ、吹っ飛ぶ凪橋。殴られた顔面だけでなく椅子に叩きつけられた背中がマジで痛い。

「もう調べがついてるんだよ凪橋威知郎さん。先月、富嶽第一想発(ウチ)の従業員6名がいきなり本社に退職届郵送してきたんだけど、お前さん達(RATT構成員)が家に押し掛けて退職届を書くように脅迫したんだって? いくら分別のつかない学生や過激派かぶれとはいえ、笑える限度を超えると最早オイタじゃ済まないんだよ」

「! そうか、ここはひょっとして富嶽第一想発かぁ?」

 木南の言葉から、凪橋は現在地が富嶽第一想発だと推測した。そして全身を襲う痛みが想発職員によるものと理解した途端に猛烈な怒りの感情が沸き上がってきた。

「確かに退職届書かなければ56すって脅して書かせたさ。だがそれがどうした? 想力発電なんかに加担する犯罪者もどきを真っ当な道に戻してやっただけだろが! それより問題なのは、オレが今富嶽第一想発(こんなところ)にいるところだろう!? それに今、オレはてめえに殴られた! 誘拐と傷害で訴えられたくなければ」


――激痛により意識が吹っ飛びました――


「大丈夫大丈夫、オレ達との話し合いが終わればキミは無傷で帰れるから」

 笑顔で友好的態度をアピールする木南と虎野の前で、凪橋は中指を逆方向に曲げられた右手を抑え、のたうち回る。

「お、オレの中指をあらぬ方向にへし折る事のどこが話し合いだぁ?」

 すると木南は笑顔のまま

――激痛により意識が吹っ飛びました――

「ぎゃああああ!!」

「いやゴメンね。いきなり中指突き立ててきたからビックリしちゃってさ。でも、これで指は治ったし、どんな大怪我しても治せるのわかっただろ? さぁ話し合いをしようぜ」

 あまりの痛みに凪橋は涙が止まらない。何でこんな痛い目にあわないといけないのか。

 虎野はニコニコ笑顔で腰をかがめ、激痛でうずくまる凪橋の耳元で囁く。

「で、今回キミと話し合いたい内容は他でもない。凪橋さんはウチの女性職員につきまとったり盗撮したよね? それ、金輪際やめてもらいたいんだけど」

 虎野の声は不吉極まりない雰囲気を秘めていたが、凪橋には理解できなかったようだ。

「はぁ? このオレにそんな事言ってる暇があるなら、レヒトにつき纏うストーカーどうにかしろよ、この無能が! 女性職員守れないクセに責任転嫁するとか最低な会社だな、やっぱ滅んだ方が」


――検閲により削除されました――


「オレはストーカーにつき纏われるレヒトが心配だっただけだ、オレがストーカーとか冤罪だr」

――検閲により削除されました――

――検閲により削除されました――

――検閲により削除されました――



「はい、たった今あなたから謝罪をいただきました。凪橋さんは今後、零比都さんに接近したり零比都さんを盗撮するといった迷惑行為を一切しない事で合意しました」

 使い古されたボロゾーキンみたいにズタボロとなった凪橋の頭上で、虎野の事務的な声が響く。ボロゾーキンと表現しているが、木南が完璧に治しているので身体的なダメージは皆無だ。

 ただ、脳髄を抉られるような痛みに蹂躙された凪橋は立つ事もままならないくらい精神も体力も疲弊した状態であった。着衣がいろいろな体液でぐちゃぐちゃになっていて、激痛から解放された後も反抗する気力さえない。

 どうしてこんな酷い目に合わされるのか。これで終わってよかったと思うしかない。


「まあ、話し合いで解決したのは零比都へのストーカー行為だけ、だけどな」

 思わず顔を上げるような、木南の声だった。

 嗚呼。まさか、そんな。


凪橋(アンタ)を含めたRATTのメンバーが、ウチの職員を脅迫したり暴行した件は、もうアンタ一人が謝罪して解決する話ではないからねえ……」


 凪橋を笑顔で見下ろす木南を見て、彼は理解した。


 オレ達の戦いは(ここからが)まだまだ(本当の)これからだ(地獄だ……)



 不快な臭いが闇に落ちていった凪橋の意識を呼び起こす。顔をしかめるような強烈な臭いに耐えられず目を開ける。眩しい青空と、周囲から聞こえるヒソヒソ声に出迎えられて思考が動き出し、凪橋が起き上がる。

 そこは凪橋の自宅近くにあるゴミ捨て場だった。カラス避けに張られたネットの上から大の字で寝ていたのだ。ヒソヒソ声はゴミを捨てに来た近隣住民のものらしい。邪魔だと言わんばかりにゴミ捨て場から追い出された。起こしてくれてもいいのに、本当に気が利かない連中だ。

 自分の身に何が起きたのか? どうしてこんなところで寝ているのか?

 わけがわからない。身体に怪我はないし、痛みもない。今までの出来事は全て夢?


「あー、凪橋さんだね?」

 親切にも、声をかけてくれる人がいた。

 最大の問題は、凪橋が一番会いたくない職種の人達だった事だが。

「警察なんだけどね、あなたを含めたRATTの構成員が富嶽第一想発の職員さん6名脅迫した件でキミを調べさせてもらうんで。はい、これあなたへの逮捕状ね。これに基づいて凪橋さん逮捕させてもらうから」

「え、ええ……えええええ!?」


 こうして、凪橋は抵抗する間もなく、893な人達と紙一重な雰囲気の刑事達から手錠をはめられ、警察署へ連行された……


To Be Continued>

★登場人物紹介

虎野 向日(とらの むこう)

●富嶽第一想発に勤務する、31歳の想力エンジニア。木南とは高校時代からの同級生で盟友。

●身長190センチという長身でしかもイケメン。穏やかな雰囲気通り面倒見も良く、新人バイトの教育も担当する。服の下には鍛え上げられた肉体がある。

●木南とは高校時代からの付き合いだが、実際に仲良くなったのは一緒に富嶽第一想発のアルバイトに行った大学時代から。在学中は木南が執筆した小説に挿絵を提供したり自作の漫画も描いていた。想力発電所のバイト中に異世界の神秘と遭遇しフォーサーとして覚醒。大学卒業後は日本想電に入社し想力発電のエンジニアの道を歩む。

●大学院へ進んだ木南とは大学卒業後も交流は続き、就職後に木南がリストラされた時は日本想電に就職できるように手引きした。

●富嶽第一想発にアルバイトに来た理由は『面白いオモチャがあったらこっそり……』という、きわめてヨコシマな内容だったのは秘密。今も珍しいオモチャを見るとオモチャ好きの血が騒ぐらしい。

絵もプロ並みに上手く、未冥書房出版と契約して相伝蜃奇録の挿絵やキャラデザインも担当する多芸な人物である。

●大学時代に描いた漫画については黒歴史らしい。木南曰く「デタラメの一歩向こうにある、罪深い作品」

●最近、その黒歴史を探られる事があったようだ……

●穏やかな人物に見えるが木南同様怒るとガチで怖い。

●熟練のフォーサーだが、能力は戦闘向きでなく戦闘能力はかなり低い(修行中の千影や留萌よりも戦闘力が低い)。にもかかわらず、戦闘力最強レベルの木南や零比都と同じレベルの厚遇を受けている。これは持っているフォースが他に類を見ない超レアで、日本想電への貢献度がずば抜けて高く、組織を支える屋台骨と評価されているため。

●能力が戦闘に全く向いていないので、物理攻撃でパラノーマルを倒す。そのため筋トレをかかさない。

●イタズラ電話をかけてきた相手を受話器から引きずり出してオシオキする技術(玲南と千影がよくやっている)は、元々虎野が持っていたフォースの技術である(富嶽第一想発のFAXで凪橋を会議室へ連れてきて尋問した)

なお、虎野はある人物から教えてもらったそうだ。虎野から玲南に伝わり、何故か千影もできるようになった。


●フォース『There(ゼア) must(マス) be an(ビア) angel(ネンジェル)』(中の人などいない!)

通信回線が機能する環境下でのみ有効な常時発動型の能力。日本想電に関して著しい不利益をもたらすデータや資料、動画や音声データのやり取りを監視し、情報の遮断や意味のないデータに改竄できる。普段は富嶽第一想発敷地内から盗聴や盗撮されたと疑われる不正な通信検出・遮断に使用される。

※裏切者が内部情報流出させるためにしかけた盗聴器などは、この能力で無効化される。

●フォース『Playing(プレイン) with(ウィズ) My(マイ) Heart(ハート)

未登場。

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