第三十四話 さんをつけろよ凸助野郎!
お待たせしました。面接の結果は……どうなるんだろ_| ̄|○
2026/2/15 大規模修正
■その34
行きつけのスーパーで初対面の女性をいきなり口説き落とそうとして警備に取り押さえられた凪橋は、何故そのようなヘンタイにあるまじき愚行に及んだのか? 彼自身に説明させると全20巻外伝5巻に及ぶ文章量となってしまうので、10文字で表現できるように簡略化すると
『彼女に天使の後光を見た』
11文字になってしまった。これでは採点対象外なので別の表現を探してみる。
『人生におけるバグ。というかこいつの存在が人類のバグ』
凪橋を取り押さえた警備曰く。かえって字数が増えたけれど、この表現が一番正しいかもしれない。
「客をバグ呼ばわりするとは何事だ、あ?」
スーパーの事務所に連行された凪橋は、酷い言い草の警備達を前に机をドンと叩き弁を振るう。
とても、偉そうに。
「彼女の後姿から発せられる、あのオーラがキミ達にはわからないのか、これだから下級国民は。そんなだから警備などという仕事を恥ずかしくもなくやっていられるのだよ! いいかい、これはビッグチャンスなのだぞ! 彼女はまさに異次元の存在であり、オレと出会うためにこの世に降り立ったのだよ! 萌えが企業倫理によって穢されたこの現世において、これは奇跡なのだよ」
「あー、はいはい。その話はもういいからね」
このままでは全20巻外伝5巻分のあらすじを高速詠唱されると判断し警備が話を遮ったところ
「話を途中で遮るなァーッ!! 人の話は最後まで聞くと、学校で習わなかったのか!」
「教育を嘆く前に、まずは義務教育からやり直してこいッ!」
「警備をやってるような学歴最底辺ヤローが人の学歴を問える立場か!」
上から目線でモノを言うこの不審者、自分の立場が分かっているのか? お店に迷惑をかけるモンスター客よりも、真面目に仕事をする警備の方が偉いに決まってるのに。
「あー、はいはい。あいにくながら我々は当店でいきなり女性に痴漢する、不審者の行動原理が全く理解できませんのでねえ……」
『店内で若い女性に痴漢しようとした不審者を確保したが、反省の態度が皆無なので警察に引き渡し、ついでに当店への出入禁止を言い渡す』
警備員が記入した日報の内容に気づいた凪橋が激昂する。
「痴漢呼ばわりとは何事だーッ!! それに出禁だと!? 嫁に会えなくなるじゃねえかぁっ!!」
横から手を突っ込み、日報を取り上げてビリビリに引き裂く。
だが、この行いが警備達の怒りに触れてしまった。
「もしもし警察ですか? パトカー一台出前お願いしま」
「こんな事で警察呼ぶんじゃねえ! お店の評判が下がってもいいのか、ああっ!?」
パトカー出前なんてさせないと警備から電話を取り上げ、乱暴に通話を切る!
「お店の評判下げてるのは、騒ぎを起こしたお前だろ!!」
「はぁ? よく聞け、店の評判が下がるのは、お客の人生がかかっているのに邪魔をした底辺どもの行いによるものだ!! お客様に責任転嫁するな!」
「やかましい! お前はただの痴漢で悪質なクレーマーじゃないか! そもそも出禁決定なんだから客じゃねえわ!」
「底辺警備はまず巨悪を取り締まってからモノを言え!」
悪びれる様子が微塵もない凪橋に、呆れすぎた警備達は一周して冷静さを取り戻したようだ。皮肉たっぷりに質問する。
「あー、我々は店内で迷惑行為をする、チンケなクレーマー取り締まるのが仕事なんでねえ。で、高学歴を自称する癖に店内で痴漢を働いたオレ様にお尋ねしますけど、そもそもお前さんの言う巨悪って何ですかね?」
「え……そりゃ資産家とか、賄賂を貰う与党政治家だろ?」
自分の見識を全く疑った事がない真顔に、警備達の見解が『駄目だこいつ……早く何とかしないと……』で完全に一致する。
「ああ、はいはい。思考回路が高尚すぎて自分達には理解できません。ここから先は警察に任せるとしましょ」
「もしもし警察ですか? 迷惑行為を咎められ逆上して事務所で暴れ回る危険人物が一人います。直ちにパトカー一台オネシャス!」
「あ、こらおい! 何で国家権力の犬に仕事丸投げしてるんだおい! 職務怠慢だぞ! それで給料もらってて恥ずかしくねえのか、底辺が!」
椅子に拘束された凪橋が叫ぶが、もう誰も取り合わない。
「……と、危険人物がわけのわからない事を口走ってて、ええはい」
『ほほぉ、市民生活を脅かす愚か者がいるみたいですねえ……』
犬呼ばわりされた警官の怖い声が響き、夜の闇に包まれたスーパーにパトカーが複数台、けたたましい音を立ててやって来た。駆けつけたお巡りさん達が凪橋を警察署に連行していく。
「おいこらお前達、警察は凶悪犯を取り締まるために忙しいのだぞ! 底辺どもが、お巡りさんの仕事を増やしていいのか、おいこら」
「続きは署で聞くからね」
こうして凪橋は警察署に連行され
――以下検閲によって削除されました――
スーパーで買い物中だった零比都が、見知らぬ男にいきなり求婚された、その2日後……――
■
「ちょっと待て、検閲って何だ? これでは過去に何があったのか、正確にわからないだろう」
意外にも、凪橋視点の再現映像が唐突に終了した事に、一番最初に声を上げたのは神父だった。
『検閲によって削除されたため、解析結果の表示ができません。別視点からの解析に切り替えます』
「検閲って、誰が検閲してるんだ!」
『人々の良心、倫理によります』
「「「「「「それ検閲じゃなくて忖度って言わないか?」」」」」」
千影、留萌、玲南、榛名、虎野、神父達6人による見事な異口同音。続けて神父は言った。
「検閲によって資料を見せないという事は、今の映像に資料としての価値がないという事になるだろう!」
神父の尤もな指摘に
『……わかりやすさを考えて、ここから先は別視点からの映像に切り替えます』
「検閲の話はどこに行ったんだよ!」
まるで千影みたいなノリでSILLYにツッコむ神父を、虎野と千影が意外そうな顔で見ている。これまでふざけた方向に話を転がしてきた新牢神父にとっても、資料映像の検閲は予想外なようだ。もう1つの操作画面でSILLYのパラメータを調べている。
そして、証拠映像は零比都視点によるモノに切り替わった。
■
「零比都さん、災難だったわね」
「もう本当怖かったよぅ、あの人! 何なんだろう」
富嶽第一想発居住棟3階の事務室で、零比都は昨夜の出来事に激しく憤っていた。見ず知らずの色黒男に手を掴まれ、零比都はあまりの気持ち悪さに悲鳴を上げて男の手を振りほどこうとしたが、彼は手を決して離そうとはせず、やって来た警備員達が男を取り押さえる時まで、延々と呪詛みたいな言葉を浴びせられた。
何とか変質者から解放された零比都だが、周りにいたお客や従業員から「あの男はあなたを口説き落とそうとしていた」と知らされた事でSAN値が一瞬で0になってしまい、警察へ迎えに来てくれた木南のおかげでやっとの思いで家に帰り、家に着くや否やショックのあまりぶっ倒れた。翌日目を覚ました時も全身真っ白け状態で表情が戻らず、回復に一日かける事になった。
零比都は運命を本気で呪った。神は何故、自分にこのような試練を与えるのか。
仕事が忙しい時期なのに、こんな事で休んでしまって申し訳ない。最近、RATTに代表される過激な反想発団体が大暴れしていて、想電職員達も頭を悩ませているのだ。
To Be Continued>




