表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パンドラの箱 ~萌えるゴミ発電所と異世界怪奇録~  作者: くぁwせdrftgyゆとりlp
第二章 Boys and Girls
70/177

第三十話 仕置人と鬼嫁(その6)

2026/2/10 修正

■その30



「さっきまで、隔離結界内部の駆除機能が全く動作しなくって大変だったんだ。パラノーマルが異常密集してる時に結界が不具合を起こして、巻き込んでしまって本当に済まなかったね」

 案内された中央制御室で虎野に説明され、4人は顔を見合わせる。萌え人面土器が亡者達を喰い尽くしてくれて救われたが、アレはやはり結界の駆除機能が具現化した存在だったのか。

「そうそう、キミ達が無事に戻って来た事を零比都さんに伝えておかないと」

 無線を取る虎野の言葉に、玲南はハッとして問いただす。

「そうだ虎野さん! 零比都ちゃんは? 零比都ちゃんは今、どこ!?」

「キミ達がなかなか来なかったから心配して探しに行ったよ」

「虎野さん! 黒幕は()()凪橋だよ!」

「……なん、だと……」

「前から気になってたんだけど、その凪橋って、本当に零比都さんをストーカーした本人なのぜ? 私は詳しい事知らないから何とも言えないんだけど」

 玲南達のただならぬ雰囲気に榛名が口を挟む。千影と留萌も、想伝蜃奇録で零比都がストーカーされるようなエピソードを読んだ覚えはない。

「まさか、富嶽第一想発の元職員が何かやらかしたってオチか?」

 千影の脳裏には、管理棟事務室をゴミ屋敷状態にしたエンジニア達が浮かんでいた。かつて富嶽第一想発で職員が起こした不祥事を疑っているのだ。虎野がこれを否定する。

「いやいや。日本想電の職員じゃないよ。むしろ逆。反想発の人間だ。どこかに写真アップされてないかな……」


『話は聞かせてもらった!』


 中央制御室の想力炉操作コンソールに突然電源が入り、胡散臭い笑顔をした神父姿の男がドアップで映し出される。何も言わずに画面の電源を切ろうとする千影に、新牢神父は慌てて

『ちょ、ちょっと待て! 待ちたまえ少年いや待ってくれ下さい! 私は真面目な話をしようと……』

「何で想力炉の操作コンソールに出てくるんだよ!」

『そりゃ当然だろ? ウドンケンジョウレイ結界の再起動や、結界機能を狂わせた原因、そして侵入者の情報を調べてたんだから』

「え、じゃあアンタ、侵入者の正体わかったのぜ?」

『ああ、バッチリだよ榛名ちゃん。キミ達が遭遇した凪橋というのは、この男じゃないかね? ネットに上がっていた画像だが……』

 神父を映していた操作コンソールが違う映像に切り替わった。景色からすると、撮影された場所は富嶽第一想発の入り口にある植込み付近みたいだ。大きなカメラを手にした、眼鏡をかけた色黒な男性が【想力発電は廃止汁!】という横断幕を掲げた大勢の中に映っている。結界の中で千影達を見下し罵声を浴びせてきた、あの色黒男その人だ。

「そうそう、この人だよ★」

「ふぅん。昔、富嶽第一想発に押し掛けてきた、想力発電に反対する過激派ですか?」

 留萌の言う通り、横断幕の内容は反想発デモと容易に想像できるモノだった。事実、結界内部で出会った凪橋の言動には反想発派に通じるモノがあった。

「大谷君の言う通り、この男は反想発の過激派だよ。フルネームは凪橋 威知郎(なぎはし いちろう)。種籾まで食べておきながら、田んぼにお米が実らないのは社会と政府が悪い、政府は謝罪しろって本気で考えるような人だね。ああ、大谷君これどうぞ」

「わぁい♪ クリームパンだー」

 念願のクリームパンを手に満面の笑みを浮かべる留萌の隣で

「想力発電反対を訴えて暴動でも起こしたのかな★」

「それはこの男にとって日常茶飯事だよ」

 一体どんな人生だ。

 その後、千影達は過激思想てんこ盛り革命闘士かぶれの人生を目の当たりにする――



 萌えという概念が、一級萌創世士と呼ばれる国家資格保持者のみに許された嗜みだった時代。

 周囲のあらゆるものに悶々とする一級萌創世士は、それこそ前方後円墳の美しさにはぁはぁして不敬を問われて処刑される危険に怯えながら、土偶や埴輪といった数々の萌えを産み出した。

 そんな古き良き社会も終わりを告げ、萌えの大量消費社会が訪れる。武器や兵器どころか、挙句の果てには萌え擬人化した雌カマキリに食べられたいという、萌え大量消費通り越して萌え漁色になりつつある風潮に警鐘を鳴らす一人の男がいた。


 そんなに萌えるネタに飢えているのなら、恐らく世界初といわれる萌え人面土器(何故か人語を話す)に萌えてみろと想力発電所の前で熱く主張して、反想発の群衆からも理解されずドン引きされる。それが凪橋威知郎であった。

 何故、人は誰も萌え人面土器を理解できないのか。大学生の頃に友人から格安で売ってもらった

『拙者拙者詐欺避けのありがたいツボ』が、人生は孤独ではないと教えてくれた。

 夜の静寂に心を押し潰されそうな時に、お喋りしてくれる土器達が孤独を癒してくれるのに。


『凪橋さぁーん? いるんでしょ、返済期限過ぎてますよ?』

『お使いになっているOSは間もなくサポート終了します。いい機会だから買い替えましょう』

『逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ逃げちゃダメだ』

『ボエボエボエ……』


 終日こんな調子で話しかけてくる土器の声がうるさいと苦情が殺到し、アパートから退去させられた。

 家財一式と萌え土器を持って実家に帰ったら、息子が喋る土器を売りつける詐欺師に成り果てたと絶望した両親から勘当されて家を追い出された……



 そんな人生を送っていた彼もまた、運命と呼べる出会いを果たす。

 それは食品スーパーで8割引きの総菜が9割引きになる瞬間を、店内で待ち構えていた時に訪れた。

 凪橋の前に現れたのは、物語の世界から現実にやって来たような、ありえない美貌の女性だった。華奢な体格で、美少年に見間違えられそうな童顔で非現実的な白い髪をしている。本当に中性的な雰囲気だが、彼女の性別を間違えるような失礼はあり得ない。彼女はまぎれもない天使だ。


 想伝蜃奇録の物語からそのまま出てきたような、彼女の姿を視界におさめた凪橋は、ショックのあまり思考中枢がおかしくなってしまったのかもしれない。

 気がついた時、凪橋はフラフラした足取りで彼女に近づき、買い物をしていた零比都の手を掴んで求婚し。



 他の買い物客から、お使いにやって来た女の子にイヤラシイ目的で迫った変質者と見なされ、駆けつけた警備に取り押さえられ事務所に連行された……


To Be Continued>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ