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パンドラの箱 ~萌えるゴミ発電所と異世界怪奇録~  作者: くぁwせdrftgyゆとりlp
第二章 Boys and Girls
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第二十八話 スタッフが美味しくいただきました。

2026/1/29 加筆修正

■その28



 倉庫前を埋め尽くす群衆が、千影達の前に立ちはだかる。

『こいつらッ!! 私達反想発派は仕事もなく爪に火をともすような生活をしているのに!』

『けしからんッ!! こんなガキ達を雇うほど金が有り余っているなら、政治家の贈賄や買収も思いのまま!!』

 保管中の修繕用セメントや溶接機材が富の証とは斬新な発想だ。

『人々を堕落させる愚かなる日本想電め、もううんざりだ! 滅ぼさねば!』

『『そうだそう……アバーッ』』

 坊主憎ければ袈裟や檀家まで憎いと大騒ぎなパラノーマル達だが、榛名にとってお得意様でしかない。海面を割って海を渡ったモーゼのように速攻で蹴散らし一直線な通り道を作るが、パラノーマル達は両脇から即座に道を塞いでくる。

『お前のようなガキがいるから、社会が私達の活動に理解を示さないんだッ!』

『発電で利益を上げたのなら、私達にも利益を還元すべきです! それが企業としての当然の義務だろう!! その若さで大企業のイヌになり果てるとは恥を知れぎゃあああッ!!』

「せめて哺乳類に進化してからモノを言え!」

 千影のハリセンで叩き伏せ、玲南の五線譜ワイヤーで撥ね飛ばして先を進むが、パラノーマル達に囲い込まれ退路まで完全に断たれる。

『『日本想電だけじゃない!! キモオタ共がこの世に蔓延ってでしゃばる、その厚かましさは限度を超えている!! 貴様も同罪だぁーッ!!』』

『我々の主張が通らぬ社会など滅べ……グハァーッ!?』』

 襲いかかろうとした暴徒達の怒号が阿鼻叫喚の悲鳴に変わる。壮絶な破壊音と共に階段室から姿を現した萌え人面土器が、殺気を吐き出しながら一直線に千影達へ向かってくる!

『わわ、何だこいつは! 我々が何をしたって言うんだ、やめろべごば!?』

 標的を包囲するパラノーマル達は認識していないのか、暴徒達を片っ端から喰い散らかして進む。理不尽な捕食者の登場に浮足立った暴徒達を、4人は再び蹴散らして進む。萌え人面土器の追撃速度が想像以上に速い! だが、倉庫前の空間から廊下に出てしまえば、あとはプラントB棟中央制御室まで一直線。これなら何とか間に合う……と思いきや。

 廊下に跳び出した千影達は、目前の光景に絶句する。

「え? えッ!?」

 今まで自分達がいた場所と全く同じ場所。そう、倉庫前の広間だ。

 どういう事? 中央制御室に繋がる通路はどこに消えた? 倉庫前の広間を飛び出した先が、どうして倉庫前の広間に? まるで空間がループしているようだ!

 だが戸惑ってる暇はない。食物連鎖の営みに(萌え人面土器の)よる騒音(捕食行動)がすぐ後ろにまで迫っている!

『逃げようったって、そうは行かねえぞ!!』

『オレ達を見捨てて自分達だけ助かろうとは、これだからキモオタはダメなんだッ!!』

 萌え人面土器に喰われてたまるかとパラノーマル達も追いかけてくる。幸い、倉庫前を埋め尽くすパラノーマル達は皆無だ! 邪魔者がいなければ追手から逃げられる!

「ストップ!! このまままっすぐ、窓の外に出るよ!!」

「は? 玲南、お前何言ってるんだ!?」

 唐突に妙な事を言い出す玲南に、千影が思わず問いただすと

「この先は罠だよ! 廊下から制御室に向かったら、それこそ無限ループに堕ちて抜けられなくなる!」

「そんな! それじゃあどうするのさーッ!?」

「留萌くん、壁ぶち破れる!? 玲南さん達が通れるくらいの」

 壁ぶち抜くって、まさか!?

「ここから外へ脱出するよ!」

 窓の外って、ここ2階なんですけど! 2週間前まで普通の高校生だった千影や留萌に、とんでもない無茶ぶりを!

「大丈夫! 榛名ちゃんが空中に足場作ってくれるから、早く!」

「えっ、ってちょっと、おい!」

 留萌が実体化させた影に広間の窓ガラスをぶち抜かせ、玲南が千影の、榛名は留萌の襟首を掴む。

「しっかり掴まっててね、千影くん★」

「やっぱそうなるのかよォォォッ!!」

 覚悟を決めるしかない。2階の窓から外へ、アイキャンフライ!

「わひゃあああ」

 窓のあった箇所を突破したと同時に、何かぶつかる感触があった。それまでの倉庫前広間も、外に見える景色もその衝撃で取り払われ、千影は高所から重力に全身を引っ張られる感覚で玲南にしっかりしがみつく。

「!? ヤバイ、玲南、減速! 減速、ブレーキ!!」

「くッ……んあ?」

 榛名が叫ぶ。目下はまさに奈落の底。地獄の大気に満たされた廃墟が広がり、この落下速度では建物の崩壊を招き自分達が危ない! だが2人は空中の見えない足場を蹴るようにして順調に落下速度を殺し、瓦礫だらけの廃墟へふわり安全に着地する。千影や留萌の体重も加算されてるのに、こんな風に着地もできるのか。そんな感心も、現在地がどこなのかという疑問の前に霧散する。空間ループから脱出できたのは良いが、プラントB棟でも、B棟に隣接した緑地でもない。

「ちーかーげーくーん? どこ、触ってるのかな? かな?」

「え……あッ」

 玲南に怖い声を向けられ、千影が我に返り慌てて手を離す。空中で減速した際、玲南にしがみつくあまり、千影の掌から少し余る大きさの膨らみを、鷲掴みに……

『公衆の面前できゃいきゃいやってんじゃねえよ、これだからオタクは』

 足音がする。廃墟の陰から現れた人物に千影や留萌は見覚えがある。隔離結界内でおかしな発電を実践し、虎野に成りすまして千影達を襲撃した、やたらと肉体美を誇る色黒男だった。

 榛名の話では、この男が結界を歪ませて誤作動を起こさせた張本人らしい。わざわざ目の前に出てくるとはいい度胸だ。千影はこの男にいきなり空中に投げ出され、危うく大怪我しそうになった。

 怒りを露にする千影の傍で、玲南はいきなり五線譜ワイヤーを射出して敵を廃墟に吊るし上げる。

「アナタ、あの時の……ッ!!」

 そのままバラバラに切り刻む! もしかして玲南の顔見知り?

『そーだよ、てめえらのせいで酷い目にあわされ、マイ天使とも引き離されたオレだよ。このブス……』

 真逆の方向から何事もなかったかのように現れるが、五線譜ワイヤーでバラバラに切り刻まれる即落ち二コマ。

 マイ天使? ブス? 一体誰を指しているのか?

「おい玲南、お前の知ってる奴なのか?」

「零比都ちゃんストーカーされてたって話があったでしょ! こいつがそうだよ!」

「あー、コイツが零比都さんを散々に悩ませたって……確か、凪橋って名前だっけ」

 何だそれは。驚きを隠せない千影と留萌の前で、敵が激昂する。

『誰がストーカーだ、このブス女どもがぁぁッ!!』

 怒声を合図にして、飢えと渇きに苦しめられ、痩せこけた暴徒達が廃墟の奥から押し寄せる。


To Be Continued>

次回

『アナタにしか見えない(その(8))』

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