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パンドラの箱 ~萌えるゴミ発電所と異世界怪奇録~  作者: くぁwせdrftgyゆとりlp
第二章 Boys and Girls
57/177

第十七話 ウドンケンジョウレイ結界(その1)

2025/12/25 修正

■その17



 ウドンケンジョウレイ結界から現世に戻って来るなり、玲南のケータイが鳴り出した。かけてきたのは零比都である。

『玲南ちゃんどうしたの? 何かあったの?』

「ウドンケンジョウレイ結界に巻き込まれちゃった★ 今帰ってきたところ」

『……何で?』

「駅と想発入り口の間にパン屋台が出てて、そこでパンを買ったら……」

 玲南が丁寧に報告を終えた後、電話相手は相変わらず困惑した声で

『では、そのおかしなパンに関しては終わったんだね。移動パン販売について、こっちで調べておくね。それにしても……今どこにいるの?』

「どこって、想発入り口だよ。管理棟に戻るまで、あと5分くらいかかるかな★」

『そうなの? その割には、周りからやたらと人の話し声が聞こえるんだけど……』

「人の話し声?」

『そう、すごい沢山。後ろからすごく聞こえてるよ』


 現在地の富嶽第一想発入り口はトラックや貨車の往来は激しいが、周囲には運転手や係員以外の人気はない……


「ちなみに、零比都ちゃんにはどんな声が聞こえてるの?」

『宗教勧誘とかキャッチセールスの人達が必死に勧誘してるみたいだけど、想発敷地内にそんな人達が大勢入り込んでるのかな? そういうのは守衛さんに連絡して追っ払ってもらってね』

「あの、今本当に想発入り口……なんですけど」

 玲南がそこまで言ったところで通話が途切れた。電話の途中から玲南は顔を引きつらせていたが、電話の画面に表示された


『圏外 早く神の教えに帰依して人生やり直せ』

の表示と、目の前で繰り広げられる惨状に硬直する。


『ウマシカ教です。今日はうちの新聞を持ってきました! 是非読んで下さい!』

「要りません!」

 千影のハリセンが唸りを上げて、新聞を渡そうと群がってくる者達を一蹴する。縋りついてくるのはいずれも痩せ細って血色が悪く、今にも神に召されそうな者達だ。千影のハリセン、榛名のフォースで追い払ってもすぐに新手が現れる。

 玲南は理解した。電話中に、また結界の中に戻ってしまったのだと。

『ウマシカ上人を知っていますか? 人生は馬鹿になればどんな素晴らしい事でもできる! そう、ウマシカになれば怖いもの知らずですよグワーッ』

「馬鹿になればって、そういう意味じゃないと思います!」

『もしかして宗教だと思っていませんか? 大丈夫、宗教じゃないんです! 有名人が多数やって来る素敵なサークルです! 是非とも参加しませんかうばあー』

「さっきウマシカ教と言ってただろ! って玲南、電話終わったなら手伝って!」

 榛名に言われるまでもなく、玲南は既に他宗教の聖歌を歌っていた。その効果は絶大で、宗教勧誘のパラノーマル達がのたうち回って苦しみだすが、その苦しみはやがて怒りへ変わる。

『邪教の歌に魂を売り渡した悪魔の手先どもッ!! 罪を悔い改めるためにも我がウマシカ教の本部に今すぐ行きましょう! さぁ、さぁさぁ!』

「さっき宗教じゃないって言ってただろうが!」

『ねえどうして? これはキミのためを思って勧誘してるんだよ? どうしてそれがわからないの? ねえねえどうしてわからないの?』

「オレのためを思うなら今すぐ帰れ! さもなくば重油の海に生首晒して沈めるぞ!」

『今入信してくれたら、高枝切りばさみをお付けしますよ……ってちょっと少年、据わった目をしてはさみをちょっきんちょっきんするのは何故なんだねグワーッ!』

「うわ、本当よく切れるハサミだな」

 手にした高枝切りばさみの切れ味に千影は感心したように言う。ハサミの刃部分から滴る赤い液体は多分きっと高い場所に実ったトマトを切ったのだろう。気にしてはいけない。

『高枝切りばさみがお気に召さないなら、この高級羽毛布団もお付けしますよ! ってお嬢さん、どうして布団をじっと見てるんです?』

「あーいや、お前らスマキにしてネヴァ川に放り込むにはちょうどいいかなって思ってさ……」

『わ、私達は! あなたの人生の迷いや悩みを解決に導くお手伝いをしたいだけなんでごあ』

「あたしの悩みは、お前らにつき纏われる事だっての!」


 宗教勧誘のパラノーマルはことごとく蹴散らされ、最後に残ったのは留萌に縋りつく一体だけとなった。

『ウマシカ上人の神通力はインチキじゃないんです! ウマシカ上人を斬首しようとした兵士は、こんらんのバッドステータスにより自分の首を撥ねて……』

「うわぁぁぁ、首を撥ねると言いながら、何でオレのズボンずり下ろそうとするのさ!」

 留萌に引きずられても! 留萌のズボンからッ! 手を離さないッ!

『だからお願い! 一回だけ! 一回だけでいいから話を聞きに来て! 先っちょだけ、先っちょだけでいいからッ!』

「てめえ、ウマシカじゃなくってイタンヘか!」

 最後の宗教勧誘もといヘンタイも、千影のハリセンで退治された。

「留萌、大丈夫?」

「うわーん、怖かったよぅ」

 千影が留萌の頭をナデナデして宥めている。しかし、玲南も榛名も知っていた。パラノーマルに散々追いかけまわされた留萌だが、パラノーマル相手に振り回した拳がクリーンヒットしたりで、なんだかんだでしっかりパラノーマルにトドメを刺していたところを!

 宗教勧誘のパラノーマルを全滅させたと同時に。萌えるゴミを満載したトラックが千影達の前を通り抜けていく。

 元の世界に帰還できて、4人はすっかり安堵する。

「うん、どうやら結界の外に出られたみたいだね★」

「しかし……あたし達、どうして結界の中に戻されたんだろ?」

 榛名が口にした疑問に、玲南は留萌に顔を向け尋ねる。

「ねぇ、留萌くん?」

「何?」

「屋台で買ったパンを他にも隠し持ってるわけじゃないよね?」

「買ったのはクリームパンだけで、全部処分したよ」

 留萌が他にもパンを持っていて、それが原因で結界に呼び戻されたわけではないらしい。断腸の思いでクリームパンの廃棄に合意した留萌は疑われて不愉快さを隠さない。

「そうだよね。疑うような事を聞いてゴメンね。確認したかっただけなんだ。ちょっと待って、零比都ちゃんに電話かけるから」

「玲南、そろそろ戻らないと食事休憩終了に間に合わないぞ」

 千影の言う通り、広場に建てられた時計が午後1時50分を指していた。午後の勤務開始まで、あと10分もない。4人は大慌てで管理棟に戻る事にした。

 走りながらでも零比都に電話をかける事はできる。玲南が電話するのはもちろん、おかしな出来事が起こったと報告するためだ。


 しかし、零比都は電話には出なかった。

 悪い事は重なるもので、千影達は更に不穏な雰囲気に遭遇する結果となる。


To Be Continued>

街中出歩いている時に熱心な勧誘の人がすぐさま近づいてくるのが悩みのタネです。

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