表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パンドラの箱 ~萌えるゴミ発電所と異世界怪奇録~  作者: くぁwせdrftgyゆとりlp
第二章 Boys and Girls
53/177

第十三話 この人はお父さんだ……

■その13



 ダークデビルによる騒動の処理が済んだ直後。夕焼けで真っ赤に染まった空の下、神父はお別れの挨拶をする。

「それじゃあ、お別れだ」

「……とっとと消えろ。このヘンタイ神父が」

 ついつい本音を駄々洩れさせた木南を、虎野がすぐにたしなめる。

「木南、それでは有東木君がヘンタイみたいだよ」

「あ、ああああ……すまなかったね有東木君。そういうつもりはなかったんだが……」

「いえ、あの神父だけがヘンタイなのは事実ですから」

「褒められたッ!」

 何故か神父がふんぞり返って喜んでいる。褒めてないぞ!

「実はこう見えても、オレは有東木千影のフォースじゃあない」

「……は? じゃあ、お前は一体誰なんだよ」

「実はオレは……千影のパパです。息子がいつもお世話になっています」

 深々と頭を下げる神父の一言に、千影が凍りつく。

「そ、そんな……神父さんが千影くんのお父さんだなんて」

「っておい玲南! お前またそのボケをするんかいッ!」

「それではお別れだ。有東木千影よ、君は本当のパパを探すんだ。今のキミには無理だが」

 神父の背中に天使を思わせる大きな羽根が生え、ゆっくりと羽ばたいて空を飛んでいく……

 ってか、本当に空飛んでるし! 誰かに見られたらどうするんだって、ツッコむのもまずい!

 そう思いながら、千影はついつい怒鳴ってしまう。

「やかましいわ! お前みたいなダメダメ親父を持った記憶はねえわ!」

「ふっふっふ。パパは息子の成長を見守っているぞー」

 飛んでいく神父に向かって木南が吼える。

「コラ、ヘンタイ神父! お前私物にまみれた異空間をどうにかしていけ! 防犯上の理由からあの部屋は存在を認められないッ! 退去勧告に応じないなら、力づくで撤去するぞ!」

 神父は一瞬で地上に舞い戻り、噛みつくような勢いで木南に詰め寄って

「な、何だとてめえ! 人類の至宝が詰まったあの部屋を撤去するというのか! 赤いものも入っているというのに!」

 赤いものって何? 木南に迫る神父の血走った目から流れる血涙、口から吐血、血の汗だけでも十分赤いのに!



 千影が玲南と一緒にフォースの修行を始めてから5日目。富嶽第一想発のアルバイトが始まってから10日が経過した、8月2日(金)午後1時。

 交代要員への引継ぎを済ませた千影と幼馴染の大谷 留萌(おおや るもい)は、勤務シフトの関係上少し遅くなったお昼を食べようと、富嶽第一想発管理棟事務室を出て立食い蕎麦屋がある想発最寄り駅に向かっていた。

 その途中で千影は昨日襲ってきたダークデビルについて留萌に話した。

「ゴッドノーズ?」

「……」

 留萌が口にしたのは、なし崩し的に名前が決まってしまった千影のフォース名だった。新牢神父と玲南だけでなく虎野も零比都も千影の能力を『ゴッドノーズ』と呼びはじめたので、その都度千影が「いえ、まだ能力名決めてませんから」と訂正しつつ能力名を考えていたのだが、そのうち訂正が追いつかなくなって千影は考える事をやめた。

 ただ、ゴッドノーズという名前を渋々受け入れただけであって、してやったりとニヤリと笑った神父を木南と一緒にド突き倒すのをやめたわけではない。後頭部を引っ叩かれた衝撃で笑顔の仮面が外れ顕になった神父の不気味な素顔に、「「おちょくってんのか、てめーは!」」と爆発した2人の理不尽な怒りと共に、カオスがどうしようもないレベルにまで加速する。

 直後、周囲の景色がのたうつような感覚に千影の身体がふらついた。カオスによって世界が加速されて一巡し、時空に歪みが生じてヤバい事になったのかと思いきや、ヤバい事になっていたのは実は千影の方だった。木南曰く、フォースを直接攻撃できるゴッドノーズで新牢神父を攻撃したダメージが術者(千影)に反映されてしまったようだ。

 これにより、神父はゴッドノーズ(千影のフォース)で具現化した存在である事が確定した。

 しかし、術者にして主である筈の千影に、従である神父が全く赤の他人な行動を取るのは奇妙だった。術者である千影が知らない事を知っているし、できない事をいともたやすくやってのける。そこにしびれもしないしあこがれもしないが、どうやら神父は千影のフォース『で』具現化した存在であって、千影のフォース『が』具現化した存在ではないそうだ。

 わかりやすく言うと、千影の守護霊または背後霊がゴッドノーズで具現化したようなもの、らしい(だから千影の言う事を聞かないし勝手気ままにふるまう)。実際には地縛霊か憑依霊かもしれないが、詳細は今も調査中である。

 結局、神父が本当に何者なのかはわからずじまいだった。


 一方で、富嶽第一想発に極めて近い場所に異空間を作った件で罪に問われなかった神父は、木南(超絶不機嫌)に防犯上の理由から異空間を即刻消去せよと要求されて発狂しかけるも、渋々ながら部屋にあった私物を別の異空間に移動させる事を了解したのだが……

 想定外だったのは、大量の私物を別空間へ一度に移動させる神父の力量や、想発敷地ギリギリに異空間を設置する技術を虎野が大絶賛し、日本想電の上層部も神父に注目し防犯におけるアドバイザーになってほしいと依頼した事だった。何せ、クーデターを企んだ外川が異空間にアジトを作った時も、大量の物品を一度に異空間に持ち込めないため、日本想電に察知されないよう長い時間かけて少しずつ運び込ぶしかなかったのだ。それまで訓練を積んだフォーサーが高速道路を100km/hで走っていたのに、この神父は300km/hで楽々追い抜いていった……そんな感じだった。

 こうして日本想電における地位を手に入れた神父は、富嶽第一想発の隣にある関係施設で異空間を作る事が許可され、普段はそこでフィギュア達や二次元嫁を愛でる毎日を送っている。

 神父が製作したメカ千影は騒動終了後に千影とのリンクが切れて動かなくなり、最初は神父の私物もろとも廃棄される予定だったが、神父の移住先が決まった後は廃棄処分を免れ、玲南フィギュア達を収納した棚の隣に飾られている。


「あー、だから木南さん面白くなさそうな顔してたのか」

 苦笑いする留萌の前で踏切が鳴り出して遮断機が下りた。踏切に隣接する駅の向こうからやって来た4両編成の貨物列車が踏切を渡りきった所で停止し、駅の貨物ホームに隣接する線路へ進路を変えてバックする。

「そうそう。ロクデナシ神父が持っていた技術が、木南さんの負担を大幅に軽減できるものばかりだったみたいで、木南さんも文句言えなかったらしいんだ。尤も、神父が相変わらず木南さんには横柄だから、結局あの2人は仲が悪いままなんだけどさ」

 千影達の目前を小さなボンネットがついた古めかしい外見の電気機関車が通過したところで遮断機が上がり、最寄り駅の立食い蕎麦屋にたどり着いた2人は、トッピングのメンチカツが乗った特盛カケソバを注文する。

 つるつる。つるつる。

 美味しそうにソバやうどんを食べる音が響く。手ごろな値段で美味しいソバが食べられる上に、てんぷらやメンチカツといったトッピングも豊富で隠れた人気店だ。

 ソバを受け取った2人は駅舎のベンチに腰掛け、骨董品のような電気機関車が唸り声をあげながら貨車を動かす様子を見ながら無言で特盛カケソバを食べて栄養補給に専念する。

 これから終業までがまた長い。


 つるつる。つるつる。

 千影達のすぐ隣で、美味しそうにソバを食べている2人組の女子高生が

「美味しい。替え玉お願いします」

「玲南さんも替え玉ほしーな★」

「いや、ここのカケソバには替え玉ねえから!」

 いつの間にか隣でソバを食べていた榛名と玲南の勘違いに、千影がツッコんだ。


To Be Continued>

今までほとんど描かれていなかった、富嶽第一想発における仕事内容の描写を少しずつ増やしていきます。


★登場人物紹介


岳南 榛名(たけなみ はるな)

●想伝蜃奇録に登場する、赤に近い茶髪をポニーテールでまとめている少女(髪を下すとかなり長い)。高校一年生(物語に登場した時は中学一年生だったが、現在は高校に進学済み)主人公の一人である。

●身長162センチ。細身で小柄なようだが意外に背は高い。

●雰囲気はクールで、ソシャゲにはまって通信代や課金に絶句する現代っ娘だが、想伝蜃奇録作中では熱血なバトルものから少女漫画、SFに歴史ものと幅広いジャンルの漫画を読んでいたり、小説だけでなくラノベ、異世界の漫画や書物、未冥書房の怪しい出版物まで詳しい。想伝蜃気録の二次創作ではオタク扱いされていた。

●実際の本人はミーハータイプなオタク。必死になって隠していたが、ゲームやアニメの名台詞をうっかり言ってしまうせいで、玲南や零比都にはバレバレだった。

千影や留萌(読者)達には、よくある二次創作ネタがまさか彼女本来の姿(公式設定)だった事で驚かれた。

●最近は開き直りつつある。

●異空間で都市ガスタンクに求愛されていた留萌を助けた後、留萌の周囲で起きる騒動に巻き込まれる。留萌と仲が良く、富嶽第一想発では留萌と一緒に行動する。

●アルバイトのため玲南と一緒に富嶽第一想発にやって来た。「未来から来たお手伝いロボットが、ガキ大将にいじめられる居候先のダメ少年に嫉妬してダメ少年をイジメてしまう」伝説のウス=異本に冒涜的な続編があると聞き、それも探している。

●想伝蜃奇録には人ではない可愛らしいマスコットも登場するが、実はマスコット達を一番可愛がっている。最近アオジルとも仲良くなった(何故かすごく気に入っている)。アオジルにもなつかれている。

●想伝蜃奇録のゲームでは初心者から中級者向けのキャラクター。

●フォース『FripSide』

壁といった障害物に隠れている敵を、障害物を無視して攻撃できる。榛名曰く

「殴った部位がゴムみたいな感触になって、拳や蹴りが障害物の向こうに突き出ていく」

床を踏み鳴らして地震みたいな振動を起こしたり、鍵のかかった扉を鍵を使わないで開ける、自分が受けるダメージを他に押し付けてノーダメージにする事も可能。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ