第十一話 黙れ二次元嫁と結婚したリア充め
■その11
ダークデビルに取り込まれた萌えるゴミは、退治後直ちに日本想電職員の手で富嶽第一想発プラットホームへ戻された。その総重量は668㎏、コンテナ(※瓶などを回収するケース)83ケース分に及び、運搬が完了するまで2時間を費やした。
その間、一足先に富嶽第一想発に戻った千影と玲南と新牢神父はどうしていたのか。
まず玲南が管理棟会議室に、新牢神父が隣の応接室に呼び出され……
「千影くんのフォース修業は日本想電が玲南ちゃんに正式に依頼した仕事で、やり方については危険がない前提で玲南ちゃんに一任していたし、萌えるゴミが盗まれるトラブルも発覚した時もすぐに通報してくれたけれど……新牢神父さんだっけ? 富嶽第一想発のあんな近くにこっそり異空間を作成できるような人に協力を頼むなら、やはり事前に相談や報告は欲しかったかな。『富嶽第一想発で起きたトラブルは、有東木千影のフォースと何らかの関係がある』という玲南ちゃんの情報が正しかったと判明したわけだからね。もし想発敷地内に異空間作られていたら本当に不祥事ものだよ。よく覚えておいてね」
「はい、本当に申し訳ありません」
零比都から注意された玲南が神妙な面持ちで謝罪したのも束の間。
「んじゃ、この件はここまで。千影くんの修行進捗はどうなの?」
「え……もう終わり?」
即話題を変えてきた零比都に、玲南は拍子抜けした顔で零比都と虎野を見る。
「だって、修行手段は玲南ちゃんに一任してあるし、玲南ちゃんに注意すべき事は既にしたし、もういいじゃない」
「でも神父さん、木南さんから滅茶滅茶説教されてるみたいですけど」
玲南は応接間に繋がる扉を見ながら言う。防音設備は充実していて声は聞こえないが、音使いの玲南には室内のただならぬ雰囲気が伝わってくる。どんな修羅場になっているのか。
「そりゃ、あの神父はガッツリ説教されるだろうよ。『零比都たんはぁはぁ』も含めて、木南に報告済だから」
「あー……」
虎野が言う通り、零比都に変質者が絡んだ際の木南は本当に修羅となる。今回の元凶というだけでも激怒状態なのに、自分の妻に変な目を向けた男が相手となっては……
「でも、千影くんは応接間に呼ばれてないよね?」
「そりゃ、有東木君はトラブル解決の功労者だから」
「じゃあ、神父さんのしでかした事で千影くんはおとがめなしなんだね?」
「ないよ。あの神父さん、有東木君と思考や行動が独立してるようだからね」
玲南がほっと胸をなでおろす。今回彼女が一番気にしていた事だった。千影の能力から産まれた化身がやらかしたトラブルについて、製造者責任を問われたらどうしようと思っていたのだ。
「マガイモノに襲われた経験から、新牢神父みたいな存在を作り出せるようになったフォーサーと言う時点でも大概なのに、フォース自体が術者と独立して行動できるとか、ありえないレベルのレアだね」
話だけなら「お前は何を言ってるんだ?」案件である。千影の知らないところで玲南フィギュアや零比都フィギュアを買い漁り、作り手である千影を散々におちょくったり。発言した零比都も、千影の精神が無事なのかちょっと心配になっている。
「あの神父さんだけど、多分千影くんが0から造り上げた存在、じゃないと思うよ」
「え、それはどういう事?」
零比都が話に食いついてきた。
「神父さん言ってたじゃない。『私も少年の因果に取り込まれた存在だ』って。まあ、神父さんに聞いたところで教えてくれるかはわからないけど」
「木南相手に、『質問に答えが来ると思ったか? 大人は質問に答えないものだ』なんて言いかねないって事か?」
そんな返答をしたらカミナリが落ちるどころじゃすまないだろう。虎野は隣の応接間への扉を見つめた。さっきから不自然な振動でカタカタ揺れている、応接間のドアを。
「それと、千影くんの能力自体は木南さんが言ってたとおりだよ★ フォースパワーからフォーサーやパラノーマルを直接攻撃できる武器や物体を作る。物質生成型フォースだけど、フォーサーに覚醒したばかりなのに応用範囲が恐ろしく広いのが気になるね」
「あの由来不明な神父が、有東木君に力を貸している可能性は?」
虎野の問いに玲南は一瞬うーんと考え込み
「……まあ、神父さんが作ったメカ千影くんという媒体と一緒にパラノーマルを倒したわけだから、力を貸して貰ったというのは間違いではないし、千影くんがフォーサーとして覚醒したきっかけに関係があるかもしれないね。千影くんは自分がいつ覚醒したのか、全くわからないんだって★ まあ、ダークデビルを倒すために神父さんが力を貸そうとしたら、千影くんが勝手に大暴走してダークデビルを一方的に倒しちゃったし、千影くんの能力と神父さん自体は別物かもしれないね★」
「それだと、神父は有東木君のフォースを覚醒させるきっかけであって、フォースが具現化した存在ではない、となるけれど。玲南ちゃんはどう思う?」
「千影くんの能力が具現化した、という説明は間違ってはいないと思うよ。神父さんは千影くんがフォーサーとして成長した未来の姿、みたいな感じだもの。戦闘はあまり得意じゃないみたいだけど、できないフリしてるだけかもしれないよ★」
「なるほど。ご報告ありがとう」
「あっ★ あともうひとつ。『私も少年の因果に取り込まれた存在だ』って神父さんが言っていたけれど……千影くんが富嶽第一想発でアルバイト始めたきっかけとか、調べた方がいいかもしれないね」
「それはもしかして、ダークデビルが元々有東木君を知っていたかも……という話かい?」
トドメを刺そうとした千影に一瞬のスキを作るために、ダークデビルは何かを叫んでいた。
玲南達にはその絶叫の意味はほとんどわからなかったが、千影は何故か動揺してしまい、そこを襲われた。
千影には、あの叫びは何か特別な意味でもあったのか。
■
その後、千影も会議室へ通された。
虎野からパラノーマル退治に協力してもらった礼を伝えられ、玲南が注意を受けた事と、神父についてはものすごいお説教をされていると説明された千影は
「あー、あの神父はうんと厳しく叱ってやってください。かまいません」
千影がそう言い放った直後、不意に応接間の扉が開かれ、神父が千影目がけて駆け寄ってきた。
「な、何を言うんだね少年! 助けてあげた恩人への寛大な処置を願うのが人としてのスジじゃないのかね!」
「悪い事をしたら、しっかりと反省させるのが人としての務めです」
ズタボロ状態の神父に詰め寄られて抗議されるが、千影は顔色一つ変えず冷たい返事をする。
「空気を読めよお前! お前は私の術者だぞ!」
「えー? 術者って言われても……術者の知らないところで神を騙るなんて」
「神父なんだから神の教えを説くのは当たり前だろ!」
「国語の問題です。気がついた時、フォースに『God knows』という名前がついていて、これから未来ずっとネ申と囃し立てられる術者の心境をお答えください(5点)」
要するに、千影は自分の知らないところで勝手にフォースの名前がつけられた事が気に入らなかったのだ。それも神を冠する名前とか!
「そ、そんな事で! そんな事でっ!」
背後に現れた巨大な黒い影に頭を鷲掴みにされ、神父は引きずられるようにして応接間へ退場していく。
「最終回ではないぞよ……もうちっとだけお説教は続くんぢゃ」
通常時500%増で不機嫌な木南が、17巻の後42巻まで続いた不吉な言葉と共に神父を無造作に応接間へ放り込む。
『ツーカン/カンカン/ツーカンカンツー/ツーツーツー/ツーカンツーカン/ツーツーカンツーカン/カンカン/ツーカンツーツー/カンカン/カンツーカンツーカン/ツーツー/ツーカンカンカンツー/カンカンツーカンカン/ツーカンツーツー/ツーツーツーツー/カンツーカンツーカン/ツーツーカンツーカン/ツーカン/ツーツーカン/ツーツーカンツーツー/ツーツーカンツーカン/カンカン/カンカンツー/ツーカンカンカンツー!』
(訳 黙れ二次元嫁と結婚したリア充め!)
「やかましいわ! 誰がリア充だ! 仕事でリアル充実しすぎて死の予感ぷんぷんしてるんじゃ!」
机をツーカン叩く神父に構わず、応接間の扉が無情に閉じられる……
To Be Continued>
気がついたら一周年。
更なるカオスを目指して頑張ります。
次回はGW中に更新します。




