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パンドラの箱 ~萌えるゴミ発電所と異世界怪奇録~  作者: くぁwせdrftgyゆとりlp
第二章 Boys and Girls
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第六話 限りなく降り注ぐ魔法以上のユカイ(前編)

 尻尾でぶん殴られたはずの千影とメカ千影が何事もなかったようにダークデビルの顎にハリセンを叩き込もうとする。流石に警戒していたのか、ダークデビルは尻尾を振り回し2人を寄せ付けない。しかし、ダークデビルの意識が玲南に向けられた隙を突き、千影とメカ千影は一気に接近する。

『なんだ、なんなんだてめえらは!』

 玲南の攻撃はじわじわ蝕んでくる。一方の千影とメカ千影に攻撃されるとひっくり返りそうな激痛を伴う。

 ダークデビルが千影達を最優先攻撃対象に選んだのは間違いではない。


 ただ、その判断は。

 胴体部分に絡みついたワイヤーによって、ダークデビルは身体を文字通り輪切りにされる結果につながった。


■その6


『? ッ!?』

 一瞬の隙を突いて敵をバラバラにできたが油断はできない。相手は巨大とはいえ節足動物の姿をしたパラノーマルだ。頭部から切断された尻尾側も元気にのたうち回っているし、むしろ身体が軽くなって俊敏さが上がるかもしれないし、迂闊に近づいたら反射的に攻撃される危険もある。

 しかし、綺麗な切断面を見せている敵にトドメを刺すなら今である。ピクピクとした尻尾の動きに警戒しつつ、千影とメカ千影はハリセンを構え胴体側の切断面に突撃する。

 ハリセンを喰らわせる間合いまで、あと少しというところだった。

 切断面で何かがモゾモゾ蠢いたと同時に、頭を切り落とされた胴体がグズグズ腐っていくように崩壊し、周囲に無数の小さな粒々をまき散らす! それはまるで石の礫めいた激しさだった。

「んがっ、いてっ、いてて!」

 礫に目をやられないように、顔や体を隠すようにハリセンでしっかりガードする。ハリセンを突き破りそうな弾幕射撃に、千影とメカ千影がジリジリ後退していく。千影の右肩に鋭い衝撃が突き抜ける。あの黒い悪魔め、使い魔みたいなのを呼び出しやがったか。

 自転車で走行中にカブトムシから体当たりされた経験を思い出す。だが衝撃や痛みは比べ物にならないほど大きい。本当に弾丸を飛ばしてるように思える。たまらず、ぶつかった黒い礫を左手でつまみ上げた。

 それは小さい頃に遊んだ、ミニカーの車体だった。タイヤやドアは既に破損して失われているし、塗装も既にボロボロだ。

 え? どういう事? 虫じゃない? 虫達がミニカーでも飛ばしてる?

 その困惑が、反応の遅れを生む。


『考之ゑな』

 ハリセンを携えた千影の右腕が、不意に何者かに掴まれた。

 しまったと思った時はもう遅い。

『感レるゐだーッ!』

 ダークデビルがバラ撒いた礫が寄せ集まった拳状の塊が千影の顔面を張り倒す。起き上がろうとあがく千影に、容赦なく礫が襲ってくる。逃げるので精一杯だ。

『どうしました? 足が停まってますよーッ!』

 防戦一方な千影とメカ千影を、再生した尻尾で薙ぎ払うダークデビル。もちろん、彼らが影武者である事も、玲南と千影がダークデビルの死角となる背後から攻撃を仕掛けようとしている事もお見通しだ。弾幕を使い五線譜ワイヤーやハエ叩きを使う暇など与えない。礫で攻撃のタイミングをずらせればいい。それだけで大ダメージを食らう危険性はグッと少なくなる。

 あとは、影武者を置いて逃げ回る千影達を冷徹に追い詰めて、尻尾と顎でトドメを刺すだけのかんたんなおしごとだ。



 当然、そこに本物がいればの話だが。




 ダークデビルが無双する大通りから離れた、ここは立体駐車場跡地。顔を殴られる直前で影武者と入れ替わり、戦略的撤退を果たした千影達は身体に付着した礫を払い落とす。地面に落ちた礫の正体に千影は目を丸くする。それらは鉄道模型やラジコン、プラモデルの残骸だった。

「え……オモチャ?」

「そうだ。あのパラノーマルはオモチャを取り込んでパワーアップしたんだ」

「あの巨大ムカデもオモチャの集合体なのか?」

「正確には廃棄処分されたオモチャの残骸みたいだね★ オモチャに籠められた心のエネルギーを取り込んでパワーアップしたみたい。『萌えるゴミを取り込んで、パラノーマルの王にオレはなるッ!』つもりじゃないかな★」

 壊れたオモチャにはそれほどのパワーが秘められていたのか。この神父、そんな危険な物体を大量に秘蔵するとはどういう了見だ!

「あ、アンタ! 廃棄された危険なオモチャも収集してるのかよ! 何の意味があって!」

「そ、そそそんないかがわしいおもちゃを集める趣味は私にはないぞ! 変な言いがかりはやめてもらおうか!」

 今の質問にいかがわしい要素があったのだろうか? というか、何故そんなに動揺する?

「壊れたフィギュアを集める趣味はないぞ。この近くに、廃棄されたオモチャを収納している場所があるだろ。そこにあったオモチャ類を取り込みやがったんだろう」


 しばしの沈黙。


「あ、ああ……あのパラノーマル! 富嶽第一想発の燃料パクってきたのかよーッ!?」

「まあ、正確には今運ばれてきて、引き取り手続き中のオモチャ類だろうな。保管庫に入ってしまえばパラノーマルは手が出せない。厄介な話だが、玲南ちゃんのワイヤーと歌。そして私のフォースもダークデビルとは相性が悪い。少年とメカ千影が連続で7回ハエ叩きで殴れば倒せるだろうが、時間をかけると萌えるゴミを取り込んで回復されるし、時間経過とともにパワーがぐんぐん上がっていく」

 文字通りのジリ貧である。

「おぉい! 打つ手はないのかよ!」

「本来、メカ千影は少年のフォース(God knows)に何ができるのか、術者自身に理解してもらう教材として玲南ちゃんと準備していたものだ。だから、あのロボットは少年の意識に沿った動きをしていただろ」

「はぁ」

 言われてみたら確かにその通りである。千影に危機が訪れた時、まるでもう1人の自分がいるように助けてくれたし、千影と同じ事を考えたようにバッチリのタイミングで攻撃してくれた。

「この廃墟はフォースを実践する場として私の部屋に拵えたVRだが、乱入してきたダークデビルが自分の住処として利用されてしまった。このまま萌えるゴミを持ち込まれ続けたら、この部屋はものの数分で廃棄されたオモチャで埋め尽くされ、我々は生き埋めにされてしまう」

 萌えるゴミに埋め尽くされて圧死! 人によっては喜ぶかもしれないが、3人にはそんな趣味はない。

「今から異空間の操作権限をダークデビルから奪い返す。それまで私は影武者を作ったり、他の作業は一切できない無防備状態になる。最低でも5分、玲南ちゃんと少年で時間稼ぎをしてほしい」


To Be Continued>

★登場人物紹介


木南 零比都(きなみ れひと)(旧姓島津)

●木南三十郎の妻。日本想電の幹部職員。21歳。玲南と同じく「想伝蜃奇録」の異世界からやって来た人物。

●身長150センチと小柄で、一見すると男子児童に見間違えられるほど中性的な見た目をしている。

●第一人称は「私」で、口調はやや少年っぽい。性格は天然ボケ気味でとても大人しいが、マチルダの名前を聞くと修羅となる。

●夫同様、日本想電に入り込んだ産業スパイや反想発を謳う過激派を調査する部署に所属する。表向きはフォーサーの育成を担当する。

●「想伝蜃奇録」の楽しさに魅了されファンとなっていた。執筆者である木南が異世界に研修でやって来た時、最初は「自分もお話に出してもらおう」と考えていたが、木南のあまりにも疲れ切った顔を見て打算的な考えを捨てて世話を焼く。曰く「元気がなさ過ぎてほっとけなかった」

●やがて彼が研修を終えて帰国した後、木南のいる日本想電へ研修に出向くが、木南の前カノが復縁を迫っていると知って激怒。マチルダを追い払うべく木南の偽装彼女役を買って出る。最終的にマチルダは刑事告訴され2人の前から去った。

●偽装彼女となった時に木南の元へカケオチ同然に押しかけ、偽装彼女から実際に彼氏彼女となり結婚する。現在は富嶽第一想発の近くにある家で木南と一緒に暮らしている。

●想伝蜃奇録のゲームでは、初心者へのチュートリアル的な、操作性の簡単なキャラクターに位置する。初心者が操作してもそこそこ戦えるが、使いこなすのは意外と難しい(千影曰く)

●フォースの基本を丹念に、忠実に磨き上げた結果、身体強化や防御といった基本技術全てが必殺技級の威力を持つに至った。中でも得意なのは接近戦で「接近を許したら一瞬で活け造りにされる」と称されるレベル。

●想伝蜃奇録の登場人物では、乙骨先生と並び最強候補筆頭とうたわれている。

●作中でもフォース能力を使用している描写がなく、詳細は不明(使わなくてもほとんどのパラノーマルを瞬殺できるため)

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