表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
パンドラの箱 ~萌えるゴミ発電所と異世界怪奇録~  作者: くぁwせdrftgyゆとりlp
第二章 Boys and Girls
44/177

第四話 瞳映る全てが嘘に見えても。

 色々な可能性が千影の頭の中によぎる。でも、どれが正解なのか答えが出ない。

「あ、あの。玲南?」

 千影が恐る恐る玲南に質問すると、玲南はいつものニコニコ笑顔で

「ん? パラノーマルにフォースをいじめられてるのに気づかない、おマヌケな術者の千影くん。何か御用ですか?」

 思いっきり険のある答えを返してきた直後、誰のものとわからない悲鳴が響く。

 千影が注意を逸らした、一瞬で決着してしまったようだ。


■その4



 地響きが周囲を揺るがし、廃墟から噴煙が上がる。巨大メカ決戦の勝者が、廃墟に倒れ伏しのたうち回る敗残者を冷たく見下ろす。正確には勝者ではなく、生存者の表現が正しい。五線譜ワイヤーに絡めとられ地面に倒された巨大メカ玲南の体表にひび割れが生じ、剥がれ落ちた塗装や外壁が空中で光の粒子になって廃墟に降り注ぐ。

 廃墟を駆ける黒い影。大きな籠を背負った神父である。崩れかけのビルにダブって見える、神父の部屋に並んでいた収納棚。神父は回収した玲南フィギュアを籠から棚へてきぱき戻して、再び光の雨が降る廃墟の中に飛び込む。

 どうやら光の正体は巨大玲南に取り込まれた無数の玲南フィギュアらしい。危険を顧みず飛び込む神父の雄姿には、最初に巨大メカ玲南を見た時

「今の心境を神父が例えてあげる! 夏休み明けに学校で久々に会ったあの娘の雰囲気がまるで別人になって、彼氏ができていたと聞かされた時にそっくりだ……夏休みの間に何があった! ナニがあったのかーっ!」と泣き崩れて

「いや、玲南フィギュアと巨大玲南って別人になりすぎだろ、アレ」と千影にツッコまれた姿は微塵も見受けられない。一流の清掃業者顔負けの仕事ぶりだ!

 玲南は巨大メカ玲南を縛り上げた五線譜ワイヤーで、閉店間際のお店で流れる『早く帰れよコール』の歌を流し込んで、巨大玲南をパワーアップさせた玲南フィギュアを光に変えて分離させたようだ。

「さて、千影くん。修行の続きしよっか★」

 事態を見守るしかない千影と巨大メカ千影に、玲南は何事もなかったように声をかけてきた。

「あの、玲南さん? アレほっといていいのか?」

『耳障りな、この歌やめろーッ!』

「……うん? 何が?」

 千影が言っているのは、もちろん巨大メカ玲南(だった何か)だ。五線譜ワイヤーに絡めとられ手足をジタバタさせる得体のしれない存在を、玲南は華麗にスルーして話を続ける。

「まず修行にあたって、千影くんは自分のフォースで何ができるのかを知る必要があるね★ 『フォースは心の才能。術者の望みを叶えるためにフォースはチカラを貸してくれる』。千影くんは覚えてるかな?」

「え、それは覚えているけど」

 不健全訴訟に巻き込まれた時、玲南の姿で現れた千影のフォースが術者である千影に語った言葉だ。木南や玲南本人も、いろいろな局面で言っていた。

「千影くんが望めば、フォースはいろいろなカタチに変化する。例えば、千影くんが巨大メカになるとか、ミイラになるとか」

「ミイラになって何か意味があるのかよ!」

「腐乱したゾンビの気持ちを理解できる、違いの分かる大人になれます★」

「だから意味があるのかよ!」

「玲南さんの気が済まないだけです★」

「うっ……」

 いつもと変わらぬニコニコ笑顔の玲南に気圧される千影。不細工な造形の巨大メカ玲南が気に入らないのはわかるけれど、この機嫌の悪さは一体? 訝しむ千影の前で

『そ、その歌をやめろと……言ってゐだろラがぁーっ!!』

 最後の力を振り絞り、建物に縋りついて立ち上がろうとしたメカ玲南が足をもつれさせ地面にダイブした。激突の衝撃でメカ玲南の外壁が全て剥がれ落ちて、その真の姿があらわになる。


 それはまるで昆虫のようであった。6本の黒い足といい、ツヤのある、黒光りした羽といい。転倒した様子は噴霧された殺虫剤から逃げきれず、仰向けでもがく台所を徘徊する黒い悪魔だった。それも巨大メカ千影と取っ組み合いができるビッグサイズで、誰がどう見てもパラノーマルです本当にありがとうございました。

 仰向けで手足をピクピクさせるパラノーマルに、玲南が冷たく言い放つ。

「あんな萌え要素0な造形を玲南さんと言い張って、目だけでなく脳みそまで腐ってないかな? それも、一流のメーカーと職人さん達が可愛らしく作ってくれた玲南さんフィギュアから作るとか、生きてて楽しい? 酸素消費する資格あるの? 朽ち果てても酸素使うから、輪廻の果てから自主的に外れたらどうかな★ あ、そっか。パラノーマルだから酸素消費しないか★」

 本当に、何故気づかなかった? 玲南にとらえられてからずっと歌を聞かされ、自分の身体を維持できなくなってどす黒い虚数の塊を放出し始めているパラノーマルに。

「あ、あの……玲南さん?」

「ん? どうしたのかな、あの黒い悪魔を玲南さんそっくりと認識した、違いの分からない千影くん★」

 地雷を踏んだと思った。玲南が怒るわけだ。決着がついた後も虫を攻撃する歌を執拗に歌い続けるあたり、玲南も黒い悪魔が大嫌いなのだろう。

「いや……ごめんなさい」

「謝って許されるなら警察はいらないんだよ? 千影くんは一回、乙骨先生に良い眼医者さんを紹介してもらった方がいいよ★ 危険な器具と恐ろしい装備で視力もアップ★ 何でも見えるようになるかもしれないけどね。人の本心とか、あるいはそこら中にいる幽霊とか★」

「それもう視力ってレベルじゃないから! お願いだから許してください!」

 もう既に幽霊とか、おどろおどろしい音とか見えちゃってますから! 背景演出を背負って、ゴゴゴという擬音を実体化させながら凄むのやめて下さい!

「許してほしいなら敗走中の明智光秀を竹槍で襲撃して、首を取って来るんだよ★ 全く、フォースを黒い悪魔にいじめられていたの、千影くんが自覚してなかったとか、心配した玲南さんが馬鹿みたいじゃない……」

 最後の方は小声すぎてよく聞き取れなかった。千影がメカ千影を見上げる。同時に、時代遅れめいた造形のロボットも『何か聞こえましたか?』と言いたげに千影を見下ろした。まるで、ぽんこつロボットが千影の意識とリンクしているかのように。

 千影が呆気にとられると、ロボットも同じように動きを止めたり、まるで本物の分身みたい。


 そんな千影の思考は、トドメを刺されそうになっていた黒い悪魔の絶叫に打ち切られた。


『ごあああああーっ!!』


 黒い悪魔が全身からまき散らしたコールタールみたいな黒い液体が、猛烈な煙を上げて視界を遮った。煙の嫌な臭いに千影と玲南と神父が思わず顔をしかめた隙に


『下らない茶番を見せやがって……環境型セクハラだーッ!』

 煙幕の向こうに見える大きな影が、逞しい腕を鞭のようにしならせて千影達を薙ぎ払った。


To Be Continued>

★登場人物紹介


関之沢 玲南(せきのさわ れいな)

●想伝蜃奇録に登場する、サラサラセミロングの茶髪少女。高校一年生(物語に登場した時は中学一年生だったが、現在は高校に進学済み)主人公の一人である。

●身長171センチとかなりの長身だが細身。現実にはあり得ない典型的アニメキャラな顔立ちだが、基本的にものすごい美少女と認識されている(最初千影は違和感持ちまくりだったが、彼以外にはあまり違和感を持たれていないらしい)。雰囲気や表情はとても優しそう。

●突拍子もない発言で周囲を唖然とさせるが、頭の回転が非常に早い聡明な娘。

●第一人称は「私」「玲南さん」。

●想伝蜃奇録のアニメで声を当てた声優と全く同じ声で話す。『どんな音源を使っても、玲南の歌声を正確に記録・再生できない』と絶賛された、奇跡の歌声を持つ。

●気に入った人を容赦なくいじり倒す、根っからのサディスト。かつては榛名をいじり倒していたが、千影と出会って以降は彼も第一対象になりつつある。

●料理が得意。異世界の食文化には好奇心旺盛で、それゆえにカオスもまき散らす。

●パラノーマルに対しては見敵必殺。特に榛名や千影、その他仲間が攻撃された場合は情け容赦なしとなる。

●想伝蜃奇録作中では仲間を支援するバフ的役割だが、実際は戦闘も相当に強い万能キャラ。

ただしゲームでは高機能すぎて使いこなすのが尋常でなく難しいキャラクターに位置する(ゲームをやりこんで数少ない愛用者の一人になった千影曰く『人類が扱うには早すぎた操作性』)

●フォース『climbing wind』

五線譜を模したワイヤーで音楽を飛ばし、その音楽を具現化する。癒しの歌で怪我を治したり、弔いの歌で悪霊を成仏させるといった効果を発揮できる。

ワイヤーは玲南が自分のパワーで具現化させたもので、敵を縛り上げたり吊るしあげたり、外敵侵入を阻むバリケードにも活用できる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ